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第三章 ドタバタの歓迎会
飲めば馬脚を露す
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「ったく卑怯者め。いざとなったら姐さんを頼りやがって……そうだ、新入り!注いでやったからこれ飲めよ」
かなめがいつの間にか掠め取っていた誠のグラスにビールを注いだものを差し出した。
「すみません。気がつかなくて……」
頭を下げながら焼けた豚玉に、タレを塗り青海苔と鰹節を散らす。かなめはそんな誠を見つめながら満面の笑みで誠を見つめていた。
「良いってことよ!今日はお前が主賓なんだから……ほらぐっとやれ!ぐっと!」
誠は一息にグラスを傾け、ビールらしきものは誠の胃袋の中に納まった。目の前でかなめがにやにや笑いながら誠を見つめている。その不敵な表情にカウラがいかにも不審そうな視線を送っていた。
誠はそんな様子を見ながら、次第に周りの世界が回りはじめるのを感じていた。上座の嵯峨が複雑な表情を浮かべながら自分を見ているのが分かった。
「ったくかなめの奴は……仕方ないな……」
何かを悟ったというようにぼそりと嵯峨がつぶやいた言葉が、遠いはずの誠の鼓膜の奥で反響した。
人の声は聞こえるが、意味が理解できない。まっすぐに座ろうとしても上半身がゆらゆらと揺れる。
「体調が……悪いんれすかね」
誠が誰に聞かせるわけでもなくつぶやくが自分のろれつが回っていないことだけはわかった。
突然誠はいてもたってっもいられなくなりはじかれたように立ち上がった。
回る世界。焼けるような喉。誠の意識はまったく朦朧として、自分でも何をしているのか、なぜここにいるのかわからなくなる。
そして心の中で何かがはじけた。
「一番!神前誠!脱ぎます!」
手を上げて宣言する誠を座敷にいる全員が注目した。
「脱げー!早く脱げー!」
下座で様子を伺っていたアイシャが叫んだ。
かなめは待っていましたとばかりに口笛を吹いてあおってみせる。
「西園寺!貴様、さっきのビールに何か細工したな?」
ようやくかなめの細工を悟ったカウラは誠を座らせようと立ち上がりながらかなめをにらんだ。
「そんなこともあったっけなあー。それより新入りが脱ぐって言ってるんだ。上司として関心あるんじゃないの?」
ラム酒を口に含みながら、かなめはカウラを振りほどこうとする誠を眺めていた。
「何を馬鹿なことを。やめろ!シュバーキナ大尉。あなたからも言ってください!」
カウラは懇願するように叫んだ。淡々とお好み焼きを焼いていたマリアが顔を上げ大きくため息をついた。
「馬鹿だなあ、こういう時は……」
そう言うとマリアは立ち上がって誠のそばまで行った。そして誠が何かを言おうとするまもなく、マリアは手馴れた調子で誠の鳩尾に一撃をかました。ズボンに手をかけようとしていた誠はそのまま意識を失っていく。目の前が暗くなるのが自分でも分かった。
「馬鹿が……」
カウラのつぶやきを聞きながら誠は意識を失っていった。
かなめがいつの間にか掠め取っていた誠のグラスにビールを注いだものを差し出した。
「すみません。気がつかなくて……」
頭を下げながら焼けた豚玉に、タレを塗り青海苔と鰹節を散らす。かなめはそんな誠を見つめながら満面の笑みで誠を見つめていた。
「良いってことよ!今日はお前が主賓なんだから……ほらぐっとやれ!ぐっと!」
誠は一息にグラスを傾け、ビールらしきものは誠の胃袋の中に納まった。目の前でかなめがにやにや笑いながら誠を見つめている。その不敵な表情にカウラがいかにも不審そうな視線を送っていた。
誠はそんな様子を見ながら、次第に周りの世界が回りはじめるのを感じていた。上座の嵯峨が複雑な表情を浮かべながら自分を見ているのが分かった。
「ったくかなめの奴は……仕方ないな……」
何かを悟ったというようにぼそりと嵯峨がつぶやいた言葉が、遠いはずの誠の鼓膜の奥で反響した。
人の声は聞こえるが、意味が理解できない。まっすぐに座ろうとしても上半身がゆらゆらと揺れる。
「体調が……悪いんれすかね」
誠が誰に聞かせるわけでもなくつぶやくが自分のろれつが回っていないことだけはわかった。
突然誠はいてもたってっもいられなくなりはじかれたように立ち上がった。
回る世界。焼けるような喉。誠の意識はまったく朦朧として、自分でも何をしているのか、なぜここにいるのかわからなくなる。
そして心の中で何かがはじけた。
「一番!神前誠!脱ぎます!」
手を上げて宣言する誠を座敷にいる全員が注目した。
「脱げー!早く脱げー!」
下座で様子を伺っていたアイシャが叫んだ。
かなめは待っていましたとばかりに口笛を吹いてあおってみせる。
「西園寺!貴様、さっきのビールに何か細工したな?」
ようやくかなめの細工を悟ったカウラは誠を座らせようと立ち上がりながらかなめをにらんだ。
「そんなこともあったっけなあー。それより新入りが脱ぐって言ってるんだ。上司として関心あるんじゃないの?」
ラム酒を口に含みながら、かなめはカウラを振りほどこうとする誠を眺めていた。
「何を馬鹿なことを。やめろ!シュバーキナ大尉。あなたからも言ってください!」
カウラは懇願するように叫んだ。淡々とお好み焼きを焼いていたマリアが顔を上げ大きくため息をついた。
「馬鹿だなあ、こういう時は……」
そう言うとマリアは立ち上がって誠のそばまで行った。そして誠が何かを言おうとするまもなく、マリアは手馴れた調子で誠の鳩尾に一撃をかました。ズボンに手をかけようとしていた誠はそのまま意識を失っていく。目の前が暗くなるのが自分でも分かった。
「馬鹿が……」
カウラのつぶやきを聞きながら誠は意識を失っていった。
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