レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞

橋本 直

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第一部 「覚醒」 第一章 配属先は独立愚連隊?

若干の後悔

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「かなめには会ったのか?」

 あくまで食事のついで、茶飲み話、そんな雰囲気を纏って嵯峨が口を開いた。空になった茶碗に酒を注ぎ終わると、十分に焼けたメザシを七輪から降ろして皿の上に並べている。

「ええまあ……」

 目の前で飲酒している部隊長にかなめの飲酒のことを尋ねてもはぐらかされるだけだろうと誠は言葉を飲み込んだ。

「あいつは俺の姪でね。まあ見ての通りの問題児で、俺の部隊に押し付けられたわけだが……まあ根は悪い奴じゃないがかなりの曲者だ。奴とお前を連れてきたカウラがお前さんの小隊の正規の部隊員ということになるんだが……どっちもきついからねえ……せいぜいいじめられないようにがんばってくれよ」

 そう言いながらメザシを見つめる嵯峨は誠の方を振り向くこともなかった。ただ嵯峨はただ皿の上に並んだメザシをどれから食べるかを悩んでいるように誠には見えた。

 誠は二人の上司となる女性のことを思い出した。がさつなサイボーグ西園寺かなめと何を考えているのかわからない人造人間カウラ・ベルガー。確かにこうまとめてみると、かなり自分の居場所が特殊であることがわかる。

「一応、会いましたけど、別にそんな怖い人じゃないような……」

 嵯峨のためというよりは自分の為、そんな気持ちで誠はそう言った。

「わかるよそのうち。それにしても後悔してるんじゃねえか?一応、東都理科大出てるんだ。中堅の機械メーカーの営業なら就職活動が遅れたからって入れただろ?」

 軍に誘った時にいった言葉と矛盾だらけの言葉を吐く嵯峨に、さすがに気の小さい誠もカチンときた。すべて嵯峨の言うとおりである。誠より出遅れて就職活動を始めた研究室の同期も大学院への進学を考えている者を除けば、全員が卒業式までに就職を決めていた。

 だが、もう過去の話だ。そう誠は自分に言い聞かせるようにして目の前で二匹目のメザシを口に運ぼうとする嵯峨に話しかけた。

「ロボットとかそういうの興味があったので……それにこの部隊は非常に錬度の高い部隊と聞かされていたものですから」

「あっそう。まったくどんな説明されたのか知りたくもねえが……おい!ちっこいの!」

 嵯峨が話の途中に急に身を乗りだしてそう叫んだ。そこには先ほどバイクでこちらの建屋に帰ってきたであろうランがとうもろこしを頬張っていた。

「奴がうちの機動部隊隊長クバルカ・ラン中佐は……そうか、あいつにはお前さんを玄関まで迎えに行かせたんだったな。一応、こっから先はあいつにここの案内させるから……って!ちんたらやってねえで早く来い!」

「わかりました!」

 ランは一言叫んだあと、食べかけのとうもろこしを置いたままこちらに急ぎ足でやってきた。初対面で見た時と同じ鋭い目つきに三つ編みという見た目はどうにも育ちが悪そうなお子様である。

「頼まれたことは最後までやれよ。早速案内してやんな」

 それだけ言うと嵯峨は再び湯飲み茶碗に手をかけた。

「じゃあ隊長失礼します!」

 ランはいかにもとってつけたような敬礼をした後、誠に目配せする。誠は一回直立不動の姿勢をとって敬礼した後、建物の奥へと向かうランについて歩き始めた。
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