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教室の壁に張り出された名前の羅列された紙。それには、この前行われたテストの上位成績者が記されている。やる気の向上、緊張感の促進などと理由付けられた成績発表は一部には好評で、一部には大不評だ。確かに1000人もいる同級生の中から上位50人に入れたならば栄誉な事なのだろうが、それ以上に名が乗らない実力不足を突きつけられる可能性が高いのだからしょうがないことである。
そのため、熱心にその紙を見つめた後あからさまに残念そうな顔をした俺のことを、きっと同級生は不思議に思うのだろう。俺の名前、”佐野 衛”という文字の並びは一位の欄にしっかりと印字されているのだから。
高校に入学してから上位5位以内、3年になってからは1位を譲らない俺のことをみんなは天才だと呼んだ。だが、俺は知っている。本当の”天才”は、俺以外にいることを。
「修二郎! お前、またテスト前に勉強をさぼったな!?」
「…………うっせぇなぁ……ほっとけよ、衛」
昼休み開始のチャイムが鳴ったと同時に訪れた高校の屋上、立ち入り禁止となっているこの場所への侵入許可を先生から貰った俺は、案の定人気のない場所で眠りこけていた男を叩き起こした。肩を掴んで揺さぶる俺を片手で制し、ゆっくりと瞼を開いたのは幼馴染の修二郎だ。
のそりと起き上がり俺を視界に入れた瞬間ため息をついた修二郎の顔にはありありと「面倒くさい奴が来た」と書いてあり、早々に立ち上がって何処かへ行こうとする修二郎に慌てて俺は縋り付いた。
「おい、おい! 何処へ行こうとしてるんだ!」
「どこでもいいだろ……」
「よくはない! 俺は、お前と話したいことがある!」
「俺にはねぇ。じゃあな」
「ま、待て! 待てって……なぁ、修二郎……」
「…………はぁ。早く話せ」
ずるずると引きずられかけていた俺が半泣きになって名前を呼べば、両目に俺を写したままたっぷり時間をかけて修二郎はその場に留まることを決めてくれた。俺を見下ろす顔は俺が立ち上がってもなお上にあり、すらりとした印象を持つが実のところそれなりに鍛えている修二郎の体は俺の全力の縋り付きにもびくともしない。高校に入ってから染めた髪は落ち着いた金髪で、頭上に昇った太陽の光が反射し美しい顔をきらきらと装飾していた。
「……修二郎。前から俺は思っていたんだが、修二郎にはモデルやアイドルって道もあると思うんだ」
「それが話したかったことか? だったら俺は」
「違う違う! 思わず口から出てしまっただけで、それが言いたかったんじゃない! えっと……お前の名前が載ってなかったんだが」
「ああ……そりゃそうだろうな」
「! なんで!? 俺と約束しただろう!? 俺がその……ああいうことすれば、次のテストでは学年50位以内に入るって……」
「今までサボりにサボってた奴がたった数ヶ月でそこまでいける訳ねぇだろ。……でもまぁ、効果はあったかもな?」
ぴら、と目の前にぶら下げられたのは、修二郎のテスト結果だった。全教科でピッタリ同じ数字が並んだ点数と、『51位』という順位。それを目にした俺はキッと修二郎を睨みつけて声を張り上げた。
「お前、わざと手を抜いたな!!!!!」
そのため、熱心にその紙を見つめた後あからさまに残念そうな顔をした俺のことを、きっと同級生は不思議に思うのだろう。俺の名前、”佐野 衛”という文字の並びは一位の欄にしっかりと印字されているのだから。
高校に入学してから上位5位以内、3年になってからは1位を譲らない俺のことをみんなは天才だと呼んだ。だが、俺は知っている。本当の”天才”は、俺以外にいることを。
「修二郎! お前、またテスト前に勉強をさぼったな!?」
「…………うっせぇなぁ……ほっとけよ、衛」
昼休み開始のチャイムが鳴ったと同時に訪れた高校の屋上、立ち入り禁止となっているこの場所への侵入許可を先生から貰った俺は、案の定人気のない場所で眠りこけていた男を叩き起こした。肩を掴んで揺さぶる俺を片手で制し、ゆっくりと瞼を開いたのは幼馴染の修二郎だ。
のそりと起き上がり俺を視界に入れた瞬間ため息をついた修二郎の顔にはありありと「面倒くさい奴が来た」と書いてあり、早々に立ち上がって何処かへ行こうとする修二郎に慌てて俺は縋り付いた。
「おい、おい! 何処へ行こうとしてるんだ!」
「どこでもいいだろ……」
「よくはない! 俺は、お前と話したいことがある!」
「俺にはねぇ。じゃあな」
「ま、待て! 待てって……なぁ、修二郎……」
「…………はぁ。早く話せ」
ずるずると引きずられかけていた俺が半泣きになって名前を呼べば、両目に俺を写したままたっぷり時間をかけて修二郎はその場に留まることを決めてくれた。俺を見下ろす顔は俺が立ち上がってもなお上にあり、すらりとした印象を持つが実のところそれなりに鍛えている修二郎の体は俺の全力の縋り付きにもびくともしない。高校に入ってから染めた髪は落ち着いた金髪で、頭上に昇った太陽の光が反射し美しい顔をきらきらと装飾していた。
「……修二郎。前から俺は思っていたんだが、修二郎にはモデルやアイドルって道もあると思うんだ」
「それが話したかったことか? だったら俺は」
「違う違う! 思わず口から出てしまっただけで、それが言いたかったんじゃない! えっと……お前の名前が載ってなかったんだが」
「ああ……そりゃそうだろうな」
「! なんで!? 俺と約束しただろう!? 俺がその……ああいうことすれば、次のテストでは学年50位以内に入るって……」
「今までサボりにサボってた奴がたった数ヶ月でそこまでいける訳ねぇだろ。……でもまぁ、効果はあったかもな?」
ぴら、と目の前にぶら下げられたのは、修二郎のテスト結果だった。全教科でピッタリ同じ数字が並んだ点数と、『51位』という順位。それを目にした俺はキッと修二郎を睨みつけて声を張り上げた。
「お前、わざと手を抜いたな!!!!!」
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