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1.ドキドキ!異世界転生しちゃったぞ!
実は期待をしていたけれど……?
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驚き顔のメイミさんに「魔力について知りたい」とお願いしてからひと月経ち、現在俺はその奥深さに唸っていた。
この世界には魔力があり、魔法がある。うっすら知っていたことではあるが、ちゃんと知識をつけ始めるとなかなかに複雑なものであった。
まず、魔力とは生命力とも言い換えられるようなもので、人間だけでなく量は少ないが他の動植物も持っている。
そして基本的にある程度体外に垂れ流して周りに影響を与えており、その量は感情の昂ぶりに応じて増えたりもするそうだ。穏やかな木々の微弱な魔力に触れてリラックス、とか、怒っている人に魔力の塊をぶつけられて威圧される、とか。そんな感じである。
魔力の乱れる体質だった俺が人の多い場所で体調を崩しがちだったのも、そういったことが関係している。他人の機嫌による魔力のうねりに引きずられてたってことだな。要は魔力を感じやすい体質ってわけだ。
この魔力の漏出というのは訓練すれば制御できるそうで、なんとこの屋敷の使用人は全員魔力の漏れを全くなくせるんだという。凄い。
「常に意識するとなると大変ですが、制御自体は簡単ですよ」
なんてメイミさんは言っていたが、多分ここの人たちはその大変なことをやってのけてるんだろう。俺に負荷をかけまいという本気度が伺える。
だがそのお陰でありがたいことに、先生探しをするまでもなく魔力操作の訓練を始められた。一人でこっそり練習していてもちょっと変な感覚になるとすぐ誰かしらがどこからともなく現れ手を貸してくれるし、見守られながらの特訓は事故もなにもなく今のところはやれている。
「他者の魔力を遮断する魔導具もありますが、身に付けられるほどの大きさとなると耐久度に限界があります。やはり、カノン様ご自身が身を守れるようになるのが確実かと」
とは家令のロバートさんの意見であり、魔力を自分の意志で自在に動かせるように、が一先ずの目標だ。
ゆくゆくは魔法も使えるようになりたいが、それはまだ先の事。魔法にはやっぱりというか属性もあるようで、属性魔法なんかは魔力の判定を行ってからしか訓練もしてはいけないのだそう。扱える属性には得意不得意があり、下手に不得意なものに手を出すと想定外の結果になるから、らしい。ついでに魔力量も見るそうで、意図せずクソデカ魔法をぶっぱなさない様にって意味もあるんだろう。
まぁ大体髪色で得意属性は予測できるみたいだが、決まりは決まりだ。ついでに、瞳の色は属性に全く関係ない。色が透き通っているほど魔力量が多い傾向はあるが、それもあまり確実ではないとのこと。
なんにせよ、全ては判定待ちということである。この国では10歳になった子供から順次平民貴族関係なく判定の儀式を受け、自分の魔力と魔法について知っておく義務があるという。判定機関の本拠地は王都であるが、申請すれば辺境にも足を伸ばして来てくれるそうだ。
俺の場合、先週渋々といった様子で王都に戻っていった両親と妹がそっちで申請をしてくれたらしく、判定のため派遣された人がそろそろ到着するかもしれないという手紙も貰った。楽しみだな。
そして、忘れてはいけないのが勉強である。
知識については壊滅的で、これで人前に出ようものなら「あら、将来有望な御子息ですのね(笑)」と扇の下で笑われること間違いなしだ。
ただでさえあそこの嫡男病弱で大丈夫かしら的な勘ぐりを母が積極的に茶会に参加し打ち消してはいるらしいけど、長引けば長引くほどに貴族としての価値が下がっていくのは俺でもなんとなく分かる。
幸いにして体は覚えているというやつで、何回かやってみれば中身が違っても簡単なマナーくらいならそれとなくできるようになっていた。
とはいっても応用や咄嗟の対処なんかはできないため、ダメダメであることに変わりはないが。貴族の学園というのが例に漏れずこの国にもあり、それの入学が15歳。マナーもそうだがざっと5年で侯爵令息に相応しい知識を叩きこむため、魔力操作と共に目下頑張り中といったところだ。
なお、俺の先生はメイミさんとロバートさん。家庭教師とかいないの? って始めは思ったが、なんと2人は学園に入学するのに遜色ない程度までの教育なら出来るらしい。万が一俺の体質が治らなかった場合を考え、王都に来なくとも遅れを取らないようにと父が選定したのだそうだ。スーパーメイドとスーパー家令である。
だが、本来なら持っているはずの基礎知識もないために想定よりも大幅に勉強に時間を割く必要が出ている現在。メイミさんは通常業務がありロバートさんも領地の運営という大切な仕事があるため、俺の勉強にそれほど時間を取れるわけでもない。
結果一日4時間みっちり超スピードで情報をぶつけられるという過密スケジュールを組み、教えられているのが母国の名前からというのがなんとも情けないものだが、「はじめてのおべんきょう」レベルから始めてもらっている割には俺の知識の吸収速度は速い方だろう。
この国の名前はバステス王国。国境近くに時折魔物が出ることはあれど基本的には温暖で平穏な国であり、魔物も隣のフォーリン辺境伯領を始めとした辺境の領主がバッチリ討伐してくれる。
魔法には火・水・土・風・光・闇の6属性があり、4つの属性を持つ者は多い反面光と闇の属性を持つ者は滅多にいない。それというのも光属性は稀に産まれる以外では王家の血筋にしか現れず、闇属性は魔物が殆どを占めているから。
光はともかく闇はそんな背景があるため、黒髪というのは忌避されるものである。情勢によっては「獣の子」と呼ばれ親ともども迫害されていた時期もあるとか。
反対に、光属性の者は魔物と魔物の生み出す瘴気を遮断する要になるという聖石に力を注いだり作り出したりできるため、見つかり次第手厚く保護される。王族であれば次期国王に、そうでなければ「聖者」もしくは「聖女」と呼ばれ、平民であっても貴族学園に入学できることになる……
どれもこれも、どこか聞き覚えのある内容なのだ。それは俺の中に『カノン』の記憶が蘇ったからではない。
それよりも以前、俺が『嘉音』であったころの記憶。
そう、どうやら俺は「きみすき」の世界に転生したようだった。
この世界には魔力があり、魔法がある。うっすら知っていたことではあるが、ちゃんと知識をつけ始めるとなかなかに複雑なものであった。
まず、魔力とは生命力とも言い換えられるようなもので、人間だけでなく量は少ないが他の動植物も持っている。
そして基本的にある程度体外に垂れ流して周りに影響を与えており、その量は感情の昂ぶりに応じて増えたりもするそうだ。穏やかな木々の微弱な魔力に触れてリラックス、とか、怒っている人に魔力の塊をぶつけられて威圧される、とか。そんな感じである。
魔力の乱れる体質だった俺が人の多い場所で体調を崩しがちだったのも、そういったことが関係している。他人の機嫌による魔力のうねりに引きずられてたってことだな。要は魔力を感じやすい体質ってわけだ。
この魔力の漏出というのは訓練すれば制御できるそうで、なんとこの屋敷の使用人は全員魔力の漏れを全くなくせるんだという。凄い。
「常に意識するとなると大変ですが、制御自体は簡単ですよ」
なんてメイミさんは言っていたが、多分ここの人たちはその大変なことをやってのけてるんだろう。俺に負荷をかけまいという本気度が伺える。
だがそのお陰でありがたいことに、先生探しをするまでもなく魔力操作の訓練を始められた。一人でこっそり練習していてもちょっと変な感覚になるとすぐ誰かしらがどこからともなく現れ手を貸してくれるし、見守られながらの特訓は事故もなにもなく今のところはやれている。
「他者の魔力を遮断する魔導具もありますが、身に付けられるほどの大きさとなると耐久度に限界があります。やはり、カノン様ご自身が身を守れるようになるのが確実かと」
とは家令のロバートさんの意見であり、魔力を自分の意志で自在に動かせるように、が一先ずの目標だ。
ゆくゆくは魔法も使えるようになりたいが、それはまだ先の事。魔法にはやっぱりというか属性もあるようで、属性魔法なんかは魔力の判定を行ってからしか訓練もしてはいけないのだそう。扱える属性には得意不得意があり、下手に不得意なものに手を出すと想定外の結果になるから、らしい。ついでに魔力量も見るそうで、意図せずクソデカ魔法をぶっぱなさない様にって意味もあるんだろう。
まぁ大体髪色で得意属性は予測できるみたいだが、決まりは決まりだ。ついでに、瞳の色は属性に全く関係ない。色が透き通っているほど魔力量が多い傾向はあるが、それもあまり確実ではないとのこと。
なんにせよ、全ては判定待ちということである。この国では10歳になった子供から順次平民貴族関係なく判定の儀式を受け、自分の魔力と魔法について知っておく義務があるという。判定機関の本拠地は王都であるが、申請すれば辺境にも足を伸ばして来てくれるそうだ。
俺の場合、先週渋々といった様子で王都に戻っていった両親と妹がそっちで申請をしてくれたらしく、判定のため派遣された人がそろそろ到着するかもしれないという手紙も貰った。楽しみだな。
そして、忘れてはいけないのが勉強である。
知識については壊滅的で、これで人前に出ようものなら「あら、将来有望な御子息ですのね(笑)」と扇の下で笑われること間違いなしだ。
ただでさえあそこの嫡男病弱で大丈夫かしら的な勘ぐりを母が積極的に茶会に参加し打ち消してはいるらしいけど、長引けば長引くほどに貴族としての価値が下がっていくのは俺でもなんとなく分かる。
幸いにして体は覚えているというやつで、何回かやってみれば中身が違っても簡単なマナーくらいならそれとなくできるようになっていた。
とはいっても応用や咄嗟の対処なんかはできないため、ダメダメであることに変わりはないが。貴族の学園というのが例に漏れずこの国にもあり、それの入学が15歳。マナーもそうだがざっと5年で侯爵令息に相応しい知識を叩きこむため、魔力操作と共に目下頑張り中といったところだ。
なお、俺の先生はメイミさんとロバートさん。家庭教師とかいないの? って始めは思ったが、なんと2人は学園に入学するのに遜色ない程度までの教育なら出来るらしい。万が一俺の体質が治らなかった場合を考え、王都に来なくとも遅れを取らないようにと父が選定したのだそうだ。スーパーメイドとスーパー家令である。
だが、本来なら持っているはずの基礎知識もないために想定よりも大幅に勉強に時間を割く必要が出ている現在。メイミさんは通常業務がありロバートさんも領地の運営という大切な仕事があるため、俺の勉強にそれほど時間を取れるわけでもない。
結果一日4時間みっちり超スピードで情報をぶつけられるという過密スケジュールを組み、教えられているのが母国の名前からというのがなんとも情けないものだが、「はじめてのおべんきょう」レベルから始めてもらっている割には俺の知識の吸収速度は速い方だろう。
この国の名前はバステス王国。国境近くに時折魔物が出ることはあれど基本的には温暖で平穏な国であり、魔物も隣のフォーリン辺境伯領を始めとした辺境の領主がバッチリ討伐してくれる。
魔法には火・水・土・風・光・闇の6属性があり、4つの属性を持つ者は多い反面光と闇の属性を持つ者は滅多にいない。それというのも光属性は稀に産まれる以外では王家の血筋にしか現れず、闇属性は魔物が殆どを占めているから。
光はともかく闇はそんな背景があるため、黒髪というのは忌避されるものである。情勢によっては「獣の子」と呼ばれ親ともども迫害されていた時期もあるとか。
反対に、光属性の者は魔物と魔物の生み出す瘴気を遮断する要になるという聖石に力を注いだり作り出したりできるため、見つかり次第手厚く保護される。王族であれば次期国王に、そうでなければ「聖者」もしくは「聖女」と呼ばれ、平民であっても貴族学園に入学できることになる……
どれもこれも、どこか聞き覚えのある内容なのだ。それは俺の中に『カノン』の記憶が蘇ったからではない。
それよりも以前、俺が『嘉音』であったころの記憶。
そう、どうやら俺は「きみすき」の世界に転生したようだった。
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