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1.ドキドキ!異世界転生しちゃったぞ!
罪悪感と心機一転
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倒れた母を介抱し、不安げな父にどの程度覚えているのか聞かれ、答えを聞いて意識を飛ばしかけた父を呼び戻して、と落ち着くことのない両親との再会。ちなみに俺には妹がおり、状態が分からないからと別室待機していたところ起こったこの騒ぎが気になったらしく寝室までやってきた。
くりっとした目にふわふわのイエローオーカーの髪をした大変可愛らしい妹であるが、家令に状況を尋ねた後使いもにならない両親を一瞥しため息を吐いているあたりなかなか大物な気がする。
その予想は正しく、「お兄様。覚えていらっしゃるかわかりませんが、お兄様にとって魔力を制御できるようになることは生活に直結します。体調が良いからと後回しにせず、そちらの訓練も行ってみれば?」と記憶喪失を受け止めた上で俺のやるべきことを提案してきた。
いや、色々としっかりし過ぎてやないか? これが異世界の常識か? と横目でメイミさんを見てみれば、小さく首を横に振られた。なるほど、妹はすこぶる出来がいい、と。
そしてそのまま「これじゃ居ても意味がない」と妹は両親を引き連れ、出ていく背中を見送るとようやく部屋が静かになった。
「……俺、愛されてるんだね」
「左様でございます。ですので、何も憂うことなくお体を休ませてくださいカノン様」
「そう言う割にはスパルタ……なんでもないです」
思わず漏れた言葉にジロっと向けられたメイミさんの視線から逃げ、なんだかんだで疲れた俺はぼふりとベッドへ体を沈ませる。
……俺のせいじゃない。気が付いたらこうなっていて、どうしようもなかった。
そう考えるも、どうしたって罪悪感が心の中に湧き上がる。理由はどうあれ、俺はあの人たちから愛する息子を奪ったのだ。
本当は記憶が奥底に残ってるとか、いつか体から俺が弾き出されるとかもあるかもしれない。だが現状、紛れもなく彼らの『カノン』はいない。
しかも、返そうったってやり方も分からなければ出来るかすら不明。……まいった。
「っても、やっぱどうにもできんしな……」
いつの間にか外は暗くなり、灯りの消された部屋で丸まる俺の目には何も映らない。
何も、何も知っていることがない。
俺の不安のように広がる暗闇を振り払うよう瞼を閉じ、さらに小さくなった俺はいつしか眠っていたらしい。
次の朝目覚めると、窓の向こうは清々しい快晴。この世界に来てから朝は必ずメイミさんに起こされていたのだが、今日はその時間より幾分か早く起きれたようだ。
「すぅ…………太陽が眩しいのはどこも同じ、かぁ」
そっと窓に近づき窓を開け、目一杯空気を吸い込んだ俺は空を見上げて一人呟く。
異世界に来て違う体に入り、思っていたより心の整理が付いていなかったみたいだ。
そもそも、悩むにしても知識が圧倒的に足りていない。うじうじするのは大分気が早い選択である。
そんなことをしている暇があるならば、とにかく前に進む。里香直伝のポジティブ思考だが、昔もそれでなんとかなったのだから俺も前向きに考えよう。
そして家族や妹、何より『カノン』には悪いが、あまり以前がどうだったかというのは考えないようにさせてもらおう。なんといっても欠片も頭の中にないのだから『カノン』の模倣なんてできっこない。
そうでなくてもどこから手を付ければ良いのか分からないほど問題は山積みなのだ。いずれ『カノン』は俺という意識なのか肉体の持ち主なのか問題みたいなものが立ちふさがるかもしれないが、それはそれでその時にまた向かい合わせてもらいたい。
「さしあたって、やっぱ常識を知らんことにはな……」
実際何歳なのかは知らないが、要求されている内容から察するに今のところ俺は貴族の子供としてダメダメな存在。常識もどこまで元の世界と同じか分からないため、まずはそこから知っていこう。当たり前のことって聞かないとわざわざ教えてくれなかったりするしな。
それと、魔法だ。こればっかりは妹の言っていたように早急に学ぶ必要がある。なんといっても未知のモノ、うっかり使って大惨事、なんて御免被りたい。
「…………よし、やったるぞ!」
グッと拳を握り、俺が気合を入れたのと同時に部屋の扉が開く。俺が既に起きていたことにメイミさんが驚いていたが、俺はそのビックリ顔に向かってやる気を表すべく元気よく声をかけた。
くりっとした目にふわふわのイエローオーカーの髪をした大変可愛らしい妹であるが、家令に状況を尋ねた後使いもにならない両親を一瞥しため息を吐いているあたりなかなか大物な気がする。
その予想は正しく、「お兄様。覚えていらっしゃるかわかりませんが、お兄様にとって魔力を制御できるようになることは生活に直結します。体調が良いからと後回しにせず、そちらの訓練も行ってみれば?」と記憶喪失を受け止めた上で俺のやるべきことを提案してきた。
いや、色々としっかりし過ぎてやないか? これが異世界の常識か? と横目でメイミさんを見てみれば、小さく首を横に振られた。なるほど、妹はすこぶる出来がいい、と。
そしてそのまま「これじゃ居ても意味がない」と妹は両親を引き連れ、出ていく背中を見送るとようやく部屋が静かになった。
「……俺、愛されてるんだね」
「左様でございます。ですので、何も憂うことなくお体を休ませてくださいカノン様」
「そう言う割にはスパルタ……なんでもないです」
思わず漏れた言葉にジロっと向けられたメイミさんの視線から逃げ、なんだかんだで疲れた俺はぼふりとベッドへ体を沈ませる。
……俺のせいじゃない。気が付いたらこうなっていて、どうしようもなかった。
そう考えるも、どうしたって罪悪感が心の中に湧き上がる。理由はどうあれ、俺はあの人たちから愛する息子を奪ったのだ。
本当は記憶が奥底に残ってるとか、いつか体から俺が弾き出されるとかもあるかもしれない。だが現状、紛れもなく彼らの『カノン』はいない。
しかも、返そうったってやり方も分からなければ出来るかすら不明。……まいった。
「っても、やっぱどうにもできんしな……」
いつの間にか外は暗くなり、灯りの消された部屋で丸まる俺の目には何も映らない。
何も、何も知っていることがない。
俺の不安のように広がる暗闇を振り払うよう瞼を閉じ、さらに小さくなった俺はいつしか眠っていたらしい。
次の朝目覚めると、窓の向こうは清々しい快晴。この世界に来てから朝は必ずメイミさんに起こされていたのだが、今日はその時間より幾分か早く起きれたようだ。
「すぅ…………太陽が眩しいのはどこも同じ、かぁ」
そっと窓に近づき窓を開け、目一杯空気を吸い込んだ俺は空を見上げて一人呟く。
異世界に来て違う体に入り、思っていたより心の整理が付いていなかったみたいだ。
そもそも、悩むにしても知識が圧倒的に足りていない。うじうじするのは大分気が早い選択である。
そんなことをしている暇があるならば、とにかく前に進む。里香直伝のポジティブ思考だが、昔もそれでなんとかなったのだから俺も前向きに考えよう。
そして家族や妹、何より『カノン』には悪いが、あまり以前がどうだったかというのは考えないようにさせてもらおう。なんといっても欠片も頭の中にないのだから『カノン』の模倣なんてできっこない。
そうでなくてもどこから手を付ければ良いのか分からないほど問題は山積みなのだ。いずれ『カノン』は俺という意識なのか肉体の持ち主なのか問題みたいなものが立ちふさがるかもしれないが、それはそれでその時にまた向かい合わせてもらいたい。
「さしあたって、やっぱ常識を知らんことにはな……」
実際何歳なのかは知らないが、要求されている内容から察するに今のところ俺は貴族の子供としてダメダメな存在。常識もどこまで元の世界と同じか分からないため、まずはそこから知っていこう。当たり前のことって聞かないとわざわざ教えてくれなかったりするしな。
それと、魔法だ。こればっかりは妹の言っていたように早急に学ぶ必要がある。なんといっても未知のモノ、うっかり使って大惨事、なんて御免被りたい。
「…………よし、やったるぞ!」
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