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調査
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浮気してる筈の夫のフラミーが帰って来るのは三日後で、あまり時間はありません。
その神父さんと浮気の現場に突撃すれば、離婚も簡単に済むでしょう。
「では奥様、私もお供いたします。奥様お一人では不安でしょうし」
「有難う、マッケナ。……自分の意思で外出するなんて久し振りだから緊張するわね」
フラミーの為に外出する事はあっても、自分から進んで外出する事はありませんでした。
前の私だったらフラミーに対する申し訳なさで一杯になってましたが、もう遠慮する必要はありません。
私は侍女のマッケナを連れて、教会に向かいました。
教会で神父さんを探してフラミーの浮気と離婚の事を話すと、神父さんは呆れた様な表情をしています。
「……何という事だ。あまりいい噂を聞かないから調査をしようと思っていたが、まさか浮気までとは」
神父さんの話によると、フラミーが管理する教会の孤児院では悪い噂が絶えないそうです。
最初は養子を取った親の皆さんから大人しくて育てやすいと評判でしたが、最近になってその子供達から虐待の報告があったとか。
浮気処か子供達への虐待もしていたなんて……私には良き妻として日々の生活を縛っていたのに、自分だけは好き勝手してたのね。
全く、何で私はあんな夫の為に尽してたのかしら? 馬鹿馬鹿しくて仕方ないわね。
「分かった、そういう話なら調査しよう。この事は教会の運営にとって大問題だが、この際、仕方ないだろう」
神父さんはその後、私の提案でアスラム・ウィッキンスという街の衛兵長を頼る事にしました。
彼は教会の人ではありませんが、教会にはよく顔を出していてフラミーの知り合いでもあります。
夫の事でよく相談したり、困らされて悩んでいる私を教会で慰めてくれ……私が今までの夫婦生活を我慢できたのも、アスラムやマッケナの様な人がいたからです。
そして、私が彼を夫がいる孤児院へ連れて行こうと提案したのは……アスラムもフラミーには悩まされているからです。
教会に来ているのだから孤児院の手伝いもしてくれと横暴な態度のフラミーに、アスラムは何度も悩まされてきました。
私もあの人もフラミーには悩まされていますし、丁度いい機会でしょう。
神父さんはフラミーを呼びに行き、彼は大勢の部下を連れて教会にやって来ました。
「エスリン、久し振りだな。聞いたぞ、フラミーが浮気をしていると。全く……人には厳しい癖に自分にだけは甘いのだな」
「そうなのよ。私ったら何で、フラミーの為に我慢をしていたのか……ほんと馬鹿らしいわね。
それはそうと、どうしてこんなに衛兵を連れて来たのですか?」
「あぁ、これはだな、フラミーが自分は孤児の世話をしている素晴らしい人だから自分の仕事を手伝うのは当然と煩くてな。
断ったら何を考えてるのか衛兵の宿舎まで抗議しに来たりして……部下も巻き込んで困らせてたんだよ」
「……本当に何を考えてるのかしらねぇ」
話の後、私達は夜まで待って教会の孤児院へ浮気の調査をしに行く事となりました。
フラミーはアスラムに三日後には教会から家まで送ってくれと言っているので、浮気の現場は孤児院で間違いないそうです。
……あれだけ人には厳しくしていたフラミーが、本当に浮気をしていたのか。
真夜中でも窓が光る孤児院に辿り着くまでは、心の奥底にそんな少しばかりの疑いがありました。
「……信じたくは無いけど、普通なら子供達の為の孤児院は、こんなに夜遅くまで灯りは点いてないわよね」
浮気している証拠を見つける為に、私エスリン・バニンスカは夫のフラミー・バニンスカがいる教会の孤児院に向かっていました。
自然に囲まれた、家から離れた田舎にある教会の孤児院は、普段から人が訪れる事は少なく浮気するにはピッタリです。
ましてや、こんなにも夜が遅ければ孤児院までの道程は暗く、近付く事すら困難でしょう。
「エスリン、君はここで待っていてくれ。あいつは人に怒る時、手が付けられなくなる事で有名でな。もし浮気の現場を直撃して逆上でもされたら、君が怪我をしてしまうかもしれない」
アスラムは真剣な表情をしながら、私を気遣って言ってきます。
「有難う。でも、今まで散々、私に構わず好き勝手していた夫には今日ぐらい、思いっ切り言ってやりたい気分なのよ。それに……」
私がアスラムに言いかけた言葉は、教会の孤児院から聞こえてきた、これ以上ない位に恐ろし気な甲高い子供の悲鳴でかき消されました。
声を聞きつけたアスラムは慌てて孤児院に押し入り、部下や神父さんも同時に突撃します。
私もそれに続いて孤児院に入り、中で夫のフラミーと……その傍で泣いている女の子の姿が見えました。
あんな年端も行かない女の子が、どうして外まで聞こえる悲鳴を出していたのか……それを考えただけで、背筋がぞくっとする悪寒がしてきます。
フラミーはあの子に、一体、何をしようとしてたのでしょうか?
その神父さんと浮気の現場に突撃すれば、離婚も簡単に済むでしょう。
「では奥様、私もお供いたします。奥様お一人では不安でしょうし」
「有難う、マッケナ。……自分の意思で外出するなんて久し振りだから緊張するわね」
フラミーの為に外出する事はあっても、自分から進んで外出する事はありませんでした。
前の私だったらフラミーに対する申し訳なさで一杯になってましたが、もう遠慮する必要はありません。
私は侍女のマッケナを連れて、教会に向かいました。
教会で神父さんを探してフラミーの浮気と離婚の事を話すと、神父さんは呆れた様な表情をしています。
「……何という事だ。あまりいい噂を聞かないから調査をしようと思っていたが、まさか浮気までとは」
神父さんの話によると、フラミーが管理する教会の孤児院では悪い噂が絶えないそうです。
最初は養子を取った親の皆さんから大人しくて育てやすいと評判でしたが、最近になってその子供達から虐待の報告があったとか。
浮気処か子供達への虐待もしていたなんて……私には良き妻として日々の生活を縛っていたのに、自分だけは好き勝手してたのね。
全く、何で私はあんな夫の為に尽してたのかしら? 馬鹿馬鹿しくて仕方ないわね。
「分かった、そういう話なら調査しよう。この事は教会の運営にとって大問題だが、この際、仕方ないだろう」
神父さんはその後、私の提案でアスラム・ウィッキンスという街の衛兵長を頼る事にしました。
彼は教会の人ではありませんが、教会にはよく顔を出していてフラミーの知り合いでもあります。
夫の事でよく相談したり、困らされて悩んでいる私を教会で慰めてくれ……私が今までの夫婦生活を我慢できたのも、アスラムやマッケナの様な人がいたからです。
そして、私が彼を夫がいる孤児院へ連れて行こうと提案したのは……アスラムもフラミーには悩まされているからです。
教会に来ているのだから孤児院の手伝いもしてくれと横暴な態度のフラミーに、アスラムは何度も悩まされてきました。
私もあの人もフラミーには悩まされていますし、丁度いい機会でしょう。
神父さんはフラミーを呼びに行き、彼は大勢の部下を連れて教会にやって来ました。
「エスリン、久し振りだな。聞いたぞ、フラミーが浮気をしていると。全く……人には厳しい癖に自分にだけは甘いのだな」
「そうなのよ。私ったら何で、フラミーの為に我慢をしていたのか……ほんと馬鹿らしいわね。
それはそうと、どうしてこんなに衛兵を連れて来たのですか?」
「あぁ、これはだな、フラミーが自分は孤児の世話をしている素晴らしい人だから自分の仕事を手伝うのは当然と煩くてな。
断ったら何を考えてるのか衛兵の宿舎まで抗議しに来たりして……部下も巻き込んで困らせてたんだよ」
「……本当に何を考えてるのかしらねぇ」
話の後、私達は夜まで待って教会の孤児院へ浮気の調査をしに行く事となりました。
フラミーはアスラムに三日後には教会から家まで送ってくれと言っているので、浮気の現場は孤児院で間違いないそうです。
……あれだけ人には厳しくしていたフラミーが、本当に浮気をしていたのか。
真夜中でも窓が光る孤児院に辿り着くまでは、心の奥底にそんな少しばかりの疑いがありました。
「……信じたくは無いけど、普通なら子供達の為の孤児院は、こんなに夜遅くまで灯りは点いてないわよね」
浮気している証拠を見つける為に、私エスリン・バニンスカは夫のフラミー・バニンスカがいる教会の孤児院に向かっていました。
自然に囲まれた、家から離れた田舎にある教会の孤児院は、普段から人が訪れる事は少なく浮気するにはピッタリです。
ましてや、こんなにも夜が遅ければ孤児院までの道程は暗く、近付く事すら困難でしょう。
「エスリン、君はここで待っていてくれ。あいつは人に怒る時、手が付けられなくなる事で有名でな。もし浮気の現場を直撃して逆上でもされたら、君が怪我をしてしまうかもしれない」
アスラムは真剣な表情をしながら、私を気遣って言ってきます。
「有難う。でも、今まで散々、私に構わず好き勝手していた夫には今日ぐらい、思いっ切り言ってやりたい気分なのよ。それに……」
私がアスラムに言いかけた言葉は、教会の孤児院から聞こえてきた、これ以上ない位に恐ろし気な甲高い子供の悲鳴でかき消されました。
声を聞きつけたアスラムは慌てて孤児院に押し入り、部下や神父さんも同時に突撃します。
私もそれに続いて孤児院に入り、中で夫のフラミーと……その傍で泣いている女の子の姿が見えました。
あんな年端も行かない女の子が、どうして外まで聞こえる悲鳴を出していたのか……それを考えただけで、背筋がぞくっとする悪寒がしてきます。
フラミーはあの子に、一体、何をしようとしてたのでしょうか?
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