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114.闇もまた、あなたをみている
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「……うぇ、はぁーうぇ」
「ユミール様、奥様はまだ眠っていらっしゃいますから、どうかお静かに」
「はぁーうぇ……」
ユミールの声が聞こえ、ユズルバさんとのやり取りがだんだん鮮明に聞き取れるようになると、私の意識はやっと目覚めた。
「ユミール、母上はここよ」
まだぼんやりとする意識の中右手を伸ばすと、小さな手がしっかりと私の手を握りしめた。
「はぁーうぇ、いたいない?」
もう片方のちっちゃな手が私の頬に触れる。ピリッと少し痛みが走ったが、表情に表さず笑顔で答えた。
「ええ、ちっとも痛くないわ」
こんなところどうして怪我したのかな……
よいしょっと起き上がると、倦怠感と全身のあちこちに痛みを感じた。特に左手は少しでも動かすと激痛が走る。
「っぅ、」
ベッドの側で心配そうにこちらを見上げているユミールに、「心配ないわ、寝過ぎちゃっただけよ」と返して、艶々する黒髪をゆっくり撫でた。その頃には、私達の身に何が起きたのかありありと思い出すことができるようになった。
あのマズラーの憎悪に染まった瞳、そして倒れたロワさんとユミールの姿……
今になって、足の先から恐怖が這い上がる。愛する家族が死に捕らえられようとしていたのだ。
しかし、
私達は生き延びた
ちらりと左手に目をやると、丁寧に包帯が巻かれている。しかし包帯から覗く指先は、内出血で紫に染まっていた。私の怪我が治りきっていないところや、陽の高さからいって、事件のあった当日の夕方だろう。
ドドドっという地響きが聞こえ、あらかじめユズルバさんが開いた扉からロワさんが飛び込んできた。
「レン!」
そう叫ぶと、ユミールもろともぎゅうっと抱きしめられた。ロワさんとユミールの温もりに触れて、思わず涙腺が緩んでしまう。家族が無事で、本当に、本当によかった。
「ロワさん……アレは、どうなりました」
名前を呼ぶだけでも吐き気がする男の末路を、念の為確認する。
「安心しろ、始末した」
「ありがとうございます」
硬い声のロワさんの頬をそっと撫でて、広い胸に頬を寄せた。
まだ事態が把握できずに緊張しているユミールは、私の寝着をしっかりと握りしめ、側を離れるものか!という意思を明確に表している。
「ユミール、悪い奴は父上が退治しました。もう安心ですよ」
そう言うと、ユミールはさらに私にしがみついてきて、小さな声で呟いた。
「はぁーうぇまもれなかった。こんどはまもる」
こんな幼児に心配させるなんて、私は母親失格だ。子どもには、なんの心配もかけず伸び伸びと育って欲しい。純粋な心を傷つけたと思うと、マズラーをもう一度殺しても飽きたらない。
「ありがとう、ユミール。その気持ちだけで嬉しいわ。でも、悪者に飛びかかっていくには、あなたはまだ小さすぎるのよ。戦うのは、父上のように大きくなってからにしてね」
「ユミール、母上を守ろうとしたのだな。その心意気は買おう。しかし、敵の力量を推し量ることも大切な力だ。勝てない敵に突っ込むのは愚かな行為だぞ」
真面目な顔で、一歳ちょっとの息子に戦いについて話し始めるロワさんをどうにか押し留め、ユミールを抱きしめた。今彼に必要なものは、説明よりも温もりだ。
「ありがとうユミール、大好きよ」
沈む夕陽を背景に私達は事件について再び語ることはなく、静かに夕べを過ごした。そして、親子三人(お腹の子も入れれば四人)手を繋ぎ、川の字になって眠った。まだあの悪夢について話すには、心の準備が必要だったから……
翌日、ユミールをアズルさんに預けた私は、スワノフさんと共に、主殿にあるロワさんの執務室へ向かった。朝から側を離れようとしない旦那様を主殿に追い立てたのは私だ。昨日は総督一家襲撃という前代未聞の一大事であったが、こうして家族は無事に戻ったのだから、混乱をこれ以上増やしてはいけない。上に立つ人間だからこそ、何事もなかったかのように平然としていなければならない時もあるのだ。
特に、他国からの使者の前ではね……
今回の一件がマズラーの単独の犯行ではないことは、先刻承知している。マズラーの言っていた支援者とはいったい誰なのか明らかにしなければならない。足の付きやすいゴアの使者は無関係とは思うが、高級酒の出所や納品の経緯などはっきりさせなくてはならないのだ。
これから主要な家臣を集めて、朝儀という名の対策会議が始まる。私は、もう一度気を引き締めて踏み出す足に力を込めた。
一晩休んだら、全身の擦過傷と疲労はだいぶ良くなった。ただ、頭を踏まれた時にできた額の傷と、左手親指の骨折はまだ治癒には数日を要するかもしれない。額はパックリと裂けていたらしく、ミカさんが丁寧に縫合してくれたそうだ。どうりで血だらけになったわけだ。今朝抜糸してもらって、引きつれ感が無くなりスッキリした。
左手の親指に関しては、私の折り方に問題があったらしく、治癒力向上の紋を持ってしても完治ができるかわからないと言われた。
まぁ、細かい作業に支障は出るが、ロワさんとユミールが無事ならば後悔はない。私の親指一つで最悪の事態を回避できたのであれば、御の字だ。
「ロワさん、お待たせしました」
執務室には、ミカさん、サノスさん、そして第一騎士団団長のババラバさんも顔を揃えていた。遅れて入った私は手招きするロワさんに抱き抱えられ、いつものポジションに落ち着く。その横に書類を手にしたスワノフさんが立った。ロワさんが私の左手と額の包帯を見て顔を歪めたのがわかったが、あえて気がつかないフリをした。
「それでは、賢師からの報告を聞こう」
低いがよく通る声でロワさんが促すと、サノスさんが一歩前に進み出た。身分からしたらミカさんの方が上だが、ここは賢師としての序列を優先させるらしい。
「今回使用された毒は、古の文献にのみ名前が記された死の接吻に相違ありません。全身の肉を震えさせ、呼吸を止める恐ろしい毒です。かの昔、我らノーグマタを殺すために作られたこの毒は、先先代様の時代にその元である暗殺集団を壊滅させて、製造方法は闇に葬られたはずです。そう考えますと、今回使われたのは、その当時に作られた毒である可能性が高いと思われます。しかし、闇取引で手に入るとしても、その額は恐ろしく高い値になるでしょう。犯人が支払えたとはとても思えません……」
サノスさんが、死の接吻について記された古い文献を見せながら首を傾げた。
「それにしても、どうやって兄上は毒にあらがえたのですか。レンの話では、通常の二十倍の量が混入されていたようです」
ミカさんがそうロワさんに尋ねると、ロワさんは虚空を睨んで黙ってしまった。そして思い出すようにゆっくり話し始めた。
「私にもわからぬが、レンの助けを呼ぶ声が聞こえ、御霊の存在を近くに感じたのは覚えている」
私はその時の光景を思い出し、躊躇いながら口を開いた。
「私の見たものがお役に立つかわかりませんが、立ち上がったロワさんから血煙が上がっているのが見えました。あれは毒を排出させるための瀉血のようなものでしょうか」
「ほう、それは興味深い」
サノスさんがメモを取り出して猛烈な速さでペンを走らせ始める。
「兄上は体は小さくとも、古の狂戦士の中でも歴代最強の力の持ち主ですからね、毒を体外に排出したと聞いても、今更驚きはしません。ただ、この件については、サノス師ともう少し研究させてください。今後このような事が二度と起こらぬように……」
「たのむ」
ロワさんも重々しく頷いた。ロワさんをここまで苦しめたのだ、他のノーグマタが攻撃を受けたらひとたまりもなく死ぬだろう。一般人である私なんて考えるまでもない。
ロワさんの抗毒を助けたのは、多分祖先の木を墓標とする始祖の御霊の力によるものだろう。とんだ事件で聖域を汚してしまったが、後でお礼に行かなくてはならない。
ロワさんをユミールの元へ導いてくれたのも、その御霊らしい。
その後、救助されるまでの経過をババラバさんから聞かされて驚いた。私達の異変にいち早く気づき、ババラバさんに知らせたのは他でもないスルトくんだった。もしかしたらお腹の子がスルトくんを呼んでくれたのかもしれない。この子とスルトくんには、やはり目には見えない繋がりがあるのだろうか……
私がぼんやりと、お腹の子とスルトくんに思いを馳せていると、話はマズラーの後ろ盾の存在に移っていた。
「そういえば、マズラーはその支援者のことを“幼き子を好む”と話していました。ユミールを土産として連れて行こうとしていたくらいです」
私の言葉が終わらぬうちに、ロワさんの体が一回り大きくなったような気がした。怒りに膨らんだ真力が行き場を求めて渦を巻いている。ロワさんの気持ちが痛いほどわかる私は、そっとその怒りに震える腕に触れた。
「それならば、心当たりがある」
絞り出された声は、苦渋を滲ませしわがれている。
「大金持ちで、胸糞の悪い無類の子ども好きと言ったら、一人の名前しか浮かびません」
スワノフさんも軽蔑を込めて吐き捨てるように言った。ババラバさんも見当がつくのか嫌悪を顔に浮かべている。
「ロンダ総督の実弟、ワシーム……奴に違いない」
私は以前、一度だけこの男に会った事がある。名前も今言われて思い出したくらいだ。そんな男から底知れぬ憎悪を向けられて、私はただ茫然とするしかない。
窓の外は春爛漫とした風が、植栽を優しく揺らしている。執務室にはいまだ真冬の暗鬱とした闇が凝っていた……
「ユミール様、奥様はまだ眠っていらっしゃいますから、どうかお静かに」
「はぁーうぇ……」
ユミールの声が聞こえ、ユズルバさんとのやり取りがだんだん鮮明に聞き取れるようになると、私の意識はやっと目覚めた。
「ユミール、母上はここよ」
まだぼんやりとする意識の中右手を伸ばすと、小さな手がしっかりと私の手を握りしめた。
「はぁーうぇ、いたいない?」
もう片方のちっちゃな手が私の頬に触れる。ピリッと少し痛みが走ったが、表情に表さず笑顔で答えた。
「ええ、ちっとも痛くないわ」
こんなところどうして怪我したのかな……
よいしょっと起き上がると、倦怠感と全身のあちこちに痛みを感じた。特に左手は少しでも動かすと激痛が走る。
「っぅ、」
ベッドの側で心配そうにこちらを見上げているユミールに、「心配ないわ、寝過ぎちゃっただけよ」と返して、艶々する黒髪をゆっくり撫でた。その頃には、私達の身に何が起きたのかありありと思い出すことができるようになった。
あのマズラーの憎悪に染まった瞳、そして倒れたロワさんとユミールの姿……
今になって、足の先から恐怖が這い上がる。愛する家族が死に捕らえられようとしていたのだ。
しかし、
私達は生き延びた
ちらりと左手に目をやると、丁寧に包帯が巻かれている。しかし包帯から覗く指先は、内出血で紫に染まっていた。私の怪我が治りきっていないところや、陽の高さからいって、事件のあった当日の夕方だろう。
ドドドっという地響きが聞こえ、あらかじめユズルバさんが開いた扉からロワさんが飛び込んできた。
「レン!」
そう叫ぶと、ユミールもろともぎゅうっと抱きしめられた。ロワさんとユミールの温もりに触れて、思わず涙腺が緩んでしまう。家族が無事で、本当に、本当によかった。
「ロワさん……アレは、どうなりました」
名前を呼ぶだけでも吐き気がする男の末路を、念の為確認する。
「安心しろ、始末した」
「ありがとうございます」
硬い声のロワさんの頬をそっと撫でて、広い胸に頬を寄せた。
まだ事態が把握できずに緊張しているユミールは、私の寝着をしっかりと握りしめ、側を離れるものか!という意思を明確に表している。
「ユミール、悪い奴は父上が退治しました。もう安心ですよ」
そう言うと、ユミールはさらに私にしがみついてきて、小さな声で呟いた。
「はぁーうぇまもれなかった。こんどはまもる」
こんな幼児に心配させるなんて、私は母親失格だ。子どもには、なんの心配もかけず伸び伸びと育って欲しい。純粋な心を傷つけたと思うと、マズラーをもう一度殺しても飽きたらない。
「ありがとう、ユミール。その気持ちだけで嬉しいわ。でも、悪者に飛びかかっていくには、あなたはまだ小さすぎるのよ。戦うのは、父上のように大きくなってからにしてね」
「ユミール、母上を守ろうとしたのだな。その心意気は買おう。しかし、敵の力量を推し量ることも大切な力だ。勝てない敵に突っ込むのは愚かな行為だぞ」
真面目な顔で、一歳ちょっとの息子に戦いについて話し始めるロワさんをどうにか押し留め、ユミールを抱きしめた。今彼に必要なものは、説明よりも温もりだ。
「ありがとうユミール、大好きよ」
沈む夕陽を背景に私達は事件について再び語ることはなく、静かに夕べを過ごした。そして、親子三人(お腹の子も入れれば四人)手を繋ぎ、川の字になって眠った。まだあの悪夢について話すには、心の準備が必要だったから……
翌日、ユミールをアズルさんに預けた私は、スワノフさんと共に、主殿にあるロワさんの執務室へ向かった。朝から側を離れようとしない旦那様を主殿に追い立てたのは私だ。昨日は総督一家襲撃という前代未聞の一大事であったが、こうして家族は無事に戻ったのだから、混乱をこれ以上増やしてはいけない。上に立つ人間だからこそ、何事もなかったかのように平然としていなければならない時もあるのだ。
特に、他国からの使者の前ではね……
今回の一件がマズラーの単独の犯行ではないことは、先刻承知している。マズラーの言っていた支援者とはいったい誰なのか明らかにしなければならない。足の付きやすいゴアの使者は無関係とは思うが、高級酒の出所や納品の経緯などはっきりさせなくてはならないのだ。
これから主要な家臣を集めて、朝儀という名の対策会議が始まる。私は、もう一度気を引き締めて踏み出す足に力を込めた。
一晩休んだら、全身の擦過傷と疲労はだいぶ良くなった。ただ、頭を踏まれた時にできた額の傷と、左手親指の骨折はまだ治癒には数日を要するかもしれない。額はパックリと裂けていたらしく、ミカさんが丁寧に縫合してくれたそうだ。どうりで血だらけになったわけだ。今朝抜糸してもらって、引きつれ感が無くなりスッキリした。
左手の親指に関しては、私の折り方に問題があったらしく、治癒力向上の紋を持ってしても完治ができるかわからないと言われた。
まぁ、細かい作業に支障は出るが、ロワさんとユミールが無事ならば後悔はない。私の親指一つで最悪の事態を回避できたのであれば、御の字だ。
「ロワさん、お待たせしました」
執務室には、ミカさん、サノスさん、そして第一騎士団団長のババラバさんも顔を揃えていた。遅れて入った私は手招きするロワさんに抱き抱えられ、いつものポジションに落ち着く。その横に書類を手にしたスワノフさんが立った。ロワさんが私の左手と額の包帯を見て顔を歪めたのがわかったが、あえて気がつかないフリをした。
「それでは、賢師からの報告を聞こう」
低いがよく通る声でロワさんが促すと、サノスさんが一歩前に進み出た。身分からしたらミカさんの方が上だが、ここは賢師としての序列を優先させるらしい。
「今回使用された毒は、古の文献にのみ名前が記された死の接吻に相違ありません。全身の肉を震えさせ、呼吸を止める恐ろしい毒です。かの昔、我らノーグマタを殺すために作られたこの毒は、先先代様の時代にその元である暗殺集団を壊滅させて、製造方法は闇に葬られたはずです。そう考えますと、今回使われたのは、その当時に作られた毒である可能性が高いと思われます。しかし、闇取引で手に入るとしても、その額は恐ろしく高い値になるでしょう。犯人が支払えたとはとても思えません……」
サノスさんが、死の接吻について記された古い文献を見せながら首を傾げた。
「それにしても、どうやって兄上は毒にあらがえたのですか。レンの話では、通常の二十倍の量が混入されていたようです」
ミカさんがそうロワさんに尋ねると、ロワさんは虚空を睨んで黙ってしまった。そして思い出すようにゆっくり話し始めた。
「私にもわからぬが、レンの助けを呼ぶ声が聞こえ、御霊の存在を近くに感じたのは覚えている」
私はその時の光景を思い出し、躊躇いながら口を開いた。
「私の見たものがお役に立つかわかりませんが、立ち上がったロワさんから血煙が上がっているのが見えました。あれは毒を排出させるための瀉血のようなものでしょうか」
「ほう、それは興味深い」
サノスさんがメモを取り出して猛烈な速さでペンを走らせ始める。
「兄上は体は小さくとも、古の狂戦士の中でも歴代最強の力の持ち主ですからね、毒を体外に排出したと聞いても、今更驚きはしません。ただ、この件については、サノス師ともう少し研究させてください。今後このような事が二度と起こらぬように……」
「たのむ」
ロワさんも重々しく頷いた。ロワさんをここまで苦しめたのだ、他のノーグマタが攻撃を受けたらひとたまりもなく死ぬだろう。一般人である私なんて考えるまでもない。
ロワさんの抗毒を助けたのは、多分祖先の木を墓標とする始祖の御霊の力によるものだろう。とんだ事件で聖域を汚してしまったが、後でお礼に行かなくてはならない。
ロワさんをユミールの元へ導いてくれたのも、その御霊らしい。
その後、救助されるまでの経過をババラバさんから聞かされて驚いた。私達の異変にいち早く気づき、ババラバさんに知らせたのは他でもないスルトくんだった。もしかしたらお腹の子がスルトくんを呼んでくれたのかもしれない。この子とスルトくんには、やはり目には見えない繋がりがあるのだろうか……
私がぼんやりと、お腹の子とスルトくんに思いを馳せていると、話はマズラーの後ろ盾の存在に移っていた。
「そういえば、マズラーはその支援者のことを“幼き子を好む”と話していました。ユミールを土産として連れて行こうとしていたくらいです」
私の言葉が終わらぬうちに、ロワさんの体が一回り大きくなったような気がした。怒りに膨らんだ真力が行き場を求めて渦を巻いている。ロワさんの気持ちが痛いほどわかる私は、そっとその怒りに震える腕に触れた。
「それならば、心当たりがある」
絞り出された声は、苦渋を滲ませしわがれている。
「大金持ちで、胸糞の悪い無類の子ども好きと言ったら、一人の名前しか浮かびません」
スワノフさんも軽蔑を込めて吐き捨てるように言った。ババラバさんも見当がつくのか嫌悪を顔に浮かべている。
「ロンダ総督の実弟、ワシーム……奴に違いない」
私は以前、一度だけこの男に会った事がある。名前も今言われて思い出したくらいだ。そんな男から底知れぬ憎悪を向けられて、私はただ茫然とするしかない。
窓の外は春爛漫とした風が、植栽を優しく揺らしている。執務室にはいまだ真冬の暗鬱とした闇が凝っていた……
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