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四、
しおりを挟む風の強い日だった。今日は半日で仕事を上がり、アパートに帰ってきた。
ドアを開けると、少年の苦しそうな息遣いが聞こえた。それは動物のような、まるでオットセイの鳴き声のようだった。嫌な予感がした。
浩太は体をくの字に折り曲げ、オオッオオッと苦しそうに喉を鳴らしていた。喘息発作が出たのだろう。
それを見ると、こっちまで気分が参る。しゃがみながら浩太の背中を擦ってやった。
「大丈夫か? 待っていろ。すぐに水を持ってきてやるからな」
キッチンにいき、蛇口を捻ってコップに水を汲んだ。
「飲め」
少年は、むせながらその水を飲んだ。
「お前、吸入器を持っていないか?」
少年は肯き、パソコンの前に無造作に置かれたものを指差した。
「わかった」
義信はそれを手にすると、少年の口を上に向けさせ、一度、二度とボタンを押して薬を肺の中に注入してやる。
酷い時には今のように二度吸わせるのだ。浩太は薬を吸い込むと、体をぐったりとさせた。喘息発作は思いの外、エネルギーを消費する。それはよくわかる。自分もそうだった。
義信は新鮮な空気を部屋の中に入れるために窓を開けた。そして、濡れタオルを喉に当ててやり、咳をする度に背中を叩き、その後優しく擦ってやる。
喘息とは孤独なもの。どれだけ苦しいのかをわかっている分、心配は尽きない。困ったな、このままにしてよいものか。
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