俺'sヒストリー

かつしげ

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第520話 和解

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「まずは大前提としてあなたに伝えたいの。私たちはあなたの敵ではない。それだけは信じて欲しい。」


ーーサーシャが真剣な表情で慎太郎にそう告げる。割と強張った表情のサーシャ、リリ、葵であるがそれとは対照的に慎太郎は緩んだ表情で答える。


「てか、今更だろ?少なくとも俺はお前を敵だとは思ってないよ。当たり前だけどリリも葵も。」


ーーその慎太郎の言葉にサーシャは目を見開く。葵に至っては声を出すぐらいだ。


「…意外ね。そんなに私を信じていいのかしら?」

「サーシャは悪い奴じゃないよ。それぐらいわかる。」


ーーお前サーシャまで誑し込むつもり?


「たーくんなら絶対、葵は信じられないけど、とか言うと思った。」


ーー葵が自虐的に言うと慎太郎はキリッとした顔で葵に言う。


「何言ってんだよ。葵は信用してるよ。今回の件はお前が協力してくれなきゃこうはいかなかった。葵の事は心から信じてる。」


ーー慎太郎の言葉を聞いて葵の目から涙が溢れた。なんか物凄く嬉しかったからだ。


「なんだろう、なんかすっごい嬉しいんだけど。いつも私は弄られてばっかだからなんかそう言われると涙が出る。」

「おーよしよし。泣いちゃダメだよ葵ちゃん。良かったね、良いことあったね。」

「本当ね。良かったわね葵。」

「いや、私の涙の原因アンタらだからね!?」


ーーうんうん、やっぱアンタらはそうじゃなきゃね。


「てゆーかサーシャさ、それ話す前にたーくんのサイドスキルについて考えた方がいいんだけど。」

「サイドスキル?何の事?」

「いやね、たーくんのサイドスキルが【 巻き戻し 】なんだよ。」

「は……?なにそれ……?ああ、なるほど。だから葵がここにいたわけね。」


ふむ、サーシャは賢いな勝手に自分で理解してくれたらしい。


「田辺慎太郎、どういうこと?どうしてあなたのサイドスキルが【 巻き戻し 】なの?」

「いや、俺にもわかんないんだけど。なんか死んだら発動したみたいな。」

「死んだ?あなた死んだの?」

「ん…まあ…」


なんか気まずいな。この流れだと誰に殺されたのか答えないといけない流れだ。


「私に殺されたって訳ね。」

「えっ…!?いや、違うよ?」


無駄に鋭い。

ーーサーシャは鋭いからね。


「隠さなくていいわよ。」

「違うって。隠すっていうか、俺が飛び込んで勝手に剣に刺さったんだよ。飛び込まなければ死ななかったし。俺が悪い。」

「優しいのね。そういう所嫌いじゃないわ。」

「お、おう?」


気のせい?なんか少し笑ってない?あんま表情に変化ないから確信ないけど笑ってるような。


「……リリちゃん、本当に良いの?やっぱりサーシャ、たーくんにホレてない?」

「んー?リリちゃんは別に気にしないけどな?私たち3人でタロウにべったり?いや~ん!!4Pとかリリちゃん困っちゃう~!!」

「誰もそこまで言ってないよ!?」

「あ。葵ちゃん入れたら5Pか。」

「私を勝手に混ぜないで!?」


あそこはいったい何をふざけてんだ?

ーー気にしない気にしない。


「そもそもがサイドスキルの発動条件がおかしいわね。」

「発動条件?」

「ええ。サイドスキルは瀕死に陥った時に目覚めるの?でも死んでしまったら目覚めないわ。それなのにあなたは目覚めた。更に言えば【 巻き戻し 】はサイドスキルではなくメインスキル。サイドスキルに付与されたりはしない。」

「つまりどういうこと?」

「誰かに植え付けられたのかもしれないわね。」

「……誰かって大体想像出来るんだけどやっぱりーー」

「アインスでしょうね。」

あの野郎一体なんなんだ。俺の身体改造でもしようってのか。


「この際だからあなたに聞いてみたい。アインスと何か繋がりがあるの?もちろん答えたくなければ答えなくていいわ。」

「答えたくないなんてないよ。サーシャにはちゃんと話すよ。」


ーーお前今度はサーシャ狙ってんの?


「正直俺はアインスと繋がりはない。だけど俺と牡丹にフライハイトとフリーデンをアイツから貰った。それと前に言われたんだよ、ツヴァイ一派は敵だって。リリだけは敵じゃないけどリリの弱みを握って脅してるって。」

「はあー?そんな事私らしてないよ!?」

「リリちゃん葵ちゃんに脅されてたの?あんな写真やこんな動画を撮られてそれで脅されたリリちゃん。それでも葵ちゃんはやめなくて毎晩リリちゃんの身体を……」

「ちょっとリリちゃん黙ってよっか!?」


「信じてもらえるかどうかはわからないけど私たちはリリにそんな事はしてないし、田辺慎太郎の敵でもーー」
「ーーだからわかってるって。」


ーー慎太郎がサーシャの言葉を塞ぐ。


「サーシャたちはそんなことをしてない。信じてるよ。ていうか俺が勝手にそう思ってる。」

「……そう。」


ーー……やっぱこいつブン殴った方がいいね。



「アインスは私たちと対立してるからたーくんたちを私たちにアテたいんだろうね。」

「敵対?なに?派閥争いみたいな?」

「えっと…どこまで言えるんだろう。」


ーー葵が困った顔をしているとサーシャが口を開く。


「初めから話すわ。田辺慎太郎、私たちは過去の俺'sヒストリーの参加者なの。」

「楓さんが誰だかに聞いたって言ってたからそれは知ってる。」

「そう。そして私たち3人はその回の俺'sヒストリーで皆死に絶えた者たちなの。」


ーーサーシャの言葉に慎太郎は言葉が出ない。慎太郎は楓からそこまでは聞いていなかった。楓自身がわざわざ敗者の話をするまでもないと判断したからだ。自分たちには関係無い。全員揃ってクリアする。そう考えての事だった。しかし慎太郎にとってそれはとても重要な事だった。リリが敗者だから。リリが死んでいるのだから。


「えっ、ちょっとまってどういうこと。サーシャもリリも葵も死んでるの?」

「そうね。」

「えっ。ゾンビなの?」

「少し違うわね。少なくとも私たちは皆生きている。食事もするし睡眠もとる。心臓だって動いているわ。」

「確かに。リリの心臓動いてたし。」

「え?なんでたーくんリリちゃんの心臓動いてるってわかるの?」

「ん?タロウの手をこうやってしたから?」


ーーリリが葵の手を取り自分の胸を触らせる。当然葵はパニクった大きな声を出す。


「えっ!?リリちゃんたーくんに胸触らせたの!?」

「えっ?触らせたよ?」

「えっ!?なんでそんな普通なの!?」

「えっ?普通じゃダメなの?」

「ごめん頭痛い。私の感覚がおかしいのかな。」

「リリはあなたをからかってるだけでしょ。」


なにこの3人の漫才。こんな芸人みたいな3人だったの。ちょっとびっくりなんだけど。特にサーシャ。牡丹より澄ました顔してるくせにこんななのかよ。


「それは後にして話を戻すわよ。」

「は~い!」

「……これ◯◯に言ったら血が流れる気がするんだけど。」


葵が何かブツブツ言ってるな。疲れてるんだろう。コイツのポジションは俺と同じだ。ツッコミ担当みたいだもん。人ごととは思えない。

ーーあー確かに。ポジション同じかもね。


「私たちは生き返った。ツヴァイのおかげで。」

「なんでツヴァイ?」

「あの子が最後まで残ってクリアしたからよ。」

「マジでか。」

「そしてツヴァイはクリア報酬として私たちを生き返らせた。」

「ツヴァイいい奴じゃん。」

「そうね。あの子は本当に優しいいい子よ。」


なるほどー。でもさ、ツヴァイは男だろ?ハーレム形成してたんじゃん。こんな綺麗どころを3人も用意してたんじゃん。

ーーお前自分のこと棚に上げてなにいってんの?


つーことはさ、リリってヤられちゃってんの?まさかの非処女?そういえばリリが処女って聞いてないぞ。キスは初めてとは言ってたが処女だとは言ってない。ツヴァイの奴はただの性欲の塊でヤる事しか頭にないだけかもしれない。

ーーすっごい風評被害なんだけど。


クッソ、俺のリリになんて事しやがんだ。

ーーお前のじゃないけどな。


いくらリリを救ってくれたといっても肉欲の限りを尽くすなんて鬼畜の所業じゃねえか。て事はサーシャもヤられてんのか。サーシャはアッチの方もこう淡白なんだろうか。マグロなのだろうか。

ーーお前最低だな。


葵ともしてんだよな。葵はまだ見た目高校生になったばっかな感じで幼い感じだけど身体は大人なのか。

ーー死ねよクズ。



「ツヴァイってモテんだね。こんな綺麗どころ3人も揃えてハーレム出来るんだからさ。ははっ、羨ましー。」


ーーなんか情けなくて涙出て来た。


「あなた何を勘違いしてるの?ツヴァイは女よ?」

「えっ!?そうなの!?」


なんじゃそりゃあ。今年最大の衝撃なんだけど。ツヴァイが女なの!?男だと思ってたんだけど。いや、今考えれば背丈とか女だよね。勝手に男と思い込んでた。


「マジか…ツヴァイ女なのか…いや、今はそれはいいか。話の腰を折っちゃうからな。つーかそれならサーシャたち死んで無いじゃん。生き返ったんだし。」

「そうね。でも死んでるのと然程変わらないわ。私たちの命は条件付きだから。」

「条件付き…?」


まさかアレか。火時計の火が消えるまでに女神の首を取って来いとかって奴か?それまでにやらなければ冥界に戻す的な。クソ野郎。冥王を倒さねばならんな。サンクチュアリに行って俺の聖衣を取って来ないと。


「私たちは歳をとらないの。永久に死んだ時のまま時が止まっている。それだけならまだどうにか出来るんでしょうけど太陽の光と月の光を長時間浴びる事も出来ないの。そういう呪いを受けているのよ。」

「…太陽の光と月の光がダメって……キツすぎだろ。」


そっか。だからリリは時間気にしてたのか。なんか色々と謎が解けた。


「ていうか一番気になるのはこんな会話してて大丈夫なの?」


普通に考えればリリたちに何かしらの仕掛けが付けられていてもおかしくない。むしろそれが普通だ。常軌を逸した力を使う事が出来る謎の秘密結社みたいな連中がその程度の事が出来ないわけがない。


「それが不思議なもので連中も盗聴とかは出来ないのよ。」

「えっ、なんで?人生き返らせる事が出来て、太陽の光と月の光にあたるとダメみたいな仕掛け出来るのにマイクロチップ埋め込むぐらいの事出来ないの?」

「ええ。オルガニの連中もこっちの世界に進行は出来ない。条件を揃えればできるけどそれに条件を使いたくないって所ね。だからこそ俺'sヒストリーを使っている。」

「ごめん話が見えない。」

「俺'sヒストリーのクリア者の報酬は覚えているでしょう?」

「どんな願いでも叶えるってやつ?」

「ええ。アレってオルガニが叶える訳ではないのよ。『崩核』という願いを叶えるアイテムを使って叶えるの。」


なるほど。つまりは7つの玉と同じ力があるということか。


「クリアしたらそのアイテムを使わせてくれるってことね。なるほど、つまりはオルガニの連中も願いを叶えたいから最後に掻っ攫って来るから気をつけろって事だな。」

「全然違うわ。」

「あら~?」

「『崩核』を使って願いを叶える為には代償が必要なのよ。”贄”となるね。そしてその代償は願いの程度により大きくなる。」

「あ、なんか読めて来た。その”贄”が俺らプレイヤーって事か。」

「ご名答。だからそんな貴重な”贄”を消費してまでこっちの世界に進行とか私たちの監視とかには充てられないのよ。」

「なるほど。はーん、かなり理解して来たな。人数集めて殺したいのはこういう背景があるわけね。」


やっとわかったぜ。やっぱりオルガニってのは悪の秘密結社だったんだな。いっちょ俺が倒して世界救っちゃう?

ーーあんま調子に乗んな。


「私たちの目的はこの身体にかけられた呪いを解く事。その為に田辺慎太郎、あなたに力を貸して欲しい。」


サーシャが俺に頭を下げる。それに呼応するようにリリと葵も頭を下げた。考えるまでもない。俺の心は決まっている。


「頭、上げてくれ。そんな事しなくたって俺の答えは決まっている。俺にできる事なら協力するよ。」


3人が頭をあげるとリリと葵は明らかに嬉しそうな顔をしている。サーシャはよくわからないが少し嬉しそうな顔に見える。


「ありがとう、田辺慎太郎。」

「でも他のみんなには協力得られるかはわからないよ?」


ていうかみんなに言えないよな。特に牡丹。血の惨劇が起きそう。
うーん、俺だけが協力するしかないのか。だよな。みんなにメリット無いもんな。


「あなただけでも全然構わないわ。はっきり言ってしまえば私にはそれが理想。」

「え?なんで?」

「それがツヴァイの願いだから。」

「ツヴァイ?なんだってツヴァイが?」

「ツヴァイはあなたの知り合いよ。」

「えっ!?えっ!?」


えっ!?えぇぇ!?知り合い!?ツヴァイが!?えぇぇ!?


「えっ!?誰!?誰なの!?」


誰だよマジで。同級生?生徒?親戚?いやマジわからんよ。それっぽいやつなんている?いなくね?


「それはツヴァイが自分で言うまで待っていてちょうだい。」

「えー、そこで内緒なのかよー。」

「タイミングがあるのよ。でもこれだけは信じて。ツヴァイは敵ではない。あなたの敵になるなんて事は絶対に無いから。」


ーーサーシャが慎太郎に懇願するような目を向ける。サーシャの表情が崩れた。それだけツヴァイの事を慎太郎に信じてもらいたいのだろう。彼女のそんな気持ちがいつもの冷静さを乱した。だが慎太郎の答えはそんな彼女を嘲笑うかのようなものだった。


「もうお前らを敵だなんて思ってないよ。リリは当然としてサーシャも葵も敵だなんて思ってないよ。当然ツヴァイだって。まー、ツヴァイの正体は気になるけどそれは本人が明かすまで触れないでおくさ。」


ーーサーシャは黙って慎太郎を見る。彼女が何を思ったのかはわからない。だが、少なくともサーシャからは幸せな感情が漂っていた。


「ありがとう。」

「どういたしまして。」

「まだ話し足りないけどまた今度にしましょう。身体が持たなくなって来たわ。」


そう言ってサーシャはリリと葵の方を向く。月明かりの下でもわかるぐらいに2人の顔色が悪い。サーシャより早く来ていたから2人は体調が悪いのだろう。2時間持たないって事か。


「わかった。早く戻った方がいいな。リリ、葵、大丈夫か?」

「まだ大丈夫だよ。」

「私もまだ大丈夫。」

「無理しないでくれ。そうだサーシャ、これって光に当たるとダメなの?建物内なら平気ってこと?」

「そうね。でも私たちはどこかの建物に居られないわよ。お金だってそんなに持っていないし、何より居住する部屋も無い。漫画喫茶やホテルには居られないわ。」

「んー、あのさ、サーシャがここに来た時のワープみたいなのってどこにでもいけんの?」

「そうね。基本的にはどこにでも行けるわよ。それがどうかした?」

「んじゃコレ使いなよ。」


ーー慎太郎はポッケから鍵の束を取り出す。束といっても鍵屋みたいに膨大な量では無い。3つ鍵がついている。その内の1つを外してサーシャへ手渡した。


「これは?」

「静岡に別荘あるんだよ。まあ別荘っていったって豪華なのじゃないよ?凄い安く売りに出されてた中古で小さいコテージみたいなのを前に買ってさ。そこ使いなよ。」

「いいの?」

「全然行ってないから汚れてるだろうし狭いけどそれでいいなら。缶詰と非常用の水とかは備蓄してあるから好きに飲み食いして。賞味期限大丈夫なはずだから。あとコレも。」


ーー慎太郎はポッケから今度はカードを取り出してサーシャに渡す。


「電子マネー3万は入ってるから好きに使って。無くなったら取りに来てよ。遠慮はいらない。」

「あなた…どうしてここまで…?」


ーーサーシャは慎太郎の行動があまりにも理解できなかった。絆があるリリに対してならわかるが自分と葵の為にここまで支援する慎太郎の気持ちが理解できなかった。


「言ったろ?協力するって。」

「……。」


ーーお前やっぱりサーシャ口説いてんだろ。


「……ありがとう、田辺慎太郎。本当にありがとう。」

「おう。あ、そうだ。別荘の場所教えないとな。えっとそんじゃリリにーー」
「ーー連絡先交換すればいいでしょう?はい。あなたのスマホ出して。」

「あ、そうだな。ほいほい。」


ーーサーシャと慎太郎が連絡先交換しているのを気怠くなって来た身体ではあるが葵がマジマジと見ながらリリに話しかける。


「……ねぇ、リリちゃん。やっぱサーシャってアレなんじゃない?自分から連絡先交換してるとかありえないんだけど。」

「リリちゃんおねむになって来たからわからない~。」

「……この子なんでこんなに余裕あるんだろ。ええぇ……サーシャまでアレだったら修羅場待った無しなんだけど。なんで私がこんな胃の痛い思いしないといけないんだか……。」


ーーどんまい葵。


「んじゃ葵も交換しようぜ。その方が都合良いし。」

「えっ?あ、うん。」


ーー葵もトコトコと慎太郎に近寄り連絡先を交換する。なんでちょっと嬉しそうなのお前も?やっぱり葵はドブ茶ね。


「そんじゃ後から住所送るから。とりあえず葵とリリの調子悪そうだからもう戻った方がいいよ。」

「そうね。それじゃそうさせてもらうわ。田辺慎太郎、とりあえずはいつも通りにしていなさい。アインスたちに気取られないように普通に。リリとも普通に。私と葵ともいつも通りにね。私たちが声をかける時以外は知らないフリで。むしろ憎しみを出していた方がいいわ。」

「難しい注文だな。ま、がんばるよ。」

「それじゃ私たちは戻るわね。本当にありがとう、田辺慎太郎。」

「気にしないでいいって。」


ーーなんでサーシャと慎太郎の距離こんなに縮まってんの?なんか相棒みたいになってんだけど。


「リリ、またね。」

「うん、またねタロウ。」


ーーこっちは恋人みたいな空気出しやがって。


「葵。」

「ん?」

「本当にありがとう。お前がいなかったら絶対上手くいかなかった。全て葵のおかげだ。」

「そんなことないよ。きっと私がいなくてもたーくん上手くやったよ。」

「それこそそんなわけない。葵のおかげだ。ありがとう。お前の為ならなんだってするから。なんかあったら頼ってくれ。俺は絶対お前を裏切らないよ。」

「……。」



ーーお前今度は葵?絶対殴ってやる。



「……そういうのがアレなんだよなぁ。」

「え?なんだって?」

「なんでもなーい。んじゃね、たーくん。」

「おう。」


ーー3人が空間を破って裂け目に入り公園から消えていく。それを見届ける慎太郎。慎太郎は自分の手を見つめ力強く握り締めた。


「……良かった。ちゃんと歴史を変えられた。」


ーー惨劇を回避出来た事に安堵を見せる慎太郎。少しの間の後に慎太郎は公園を出てマンションへと足を進める。


ーー【 巻き戻し 】という大きな力を取り戻した慎太郎。だがこれはあくまでもアインスによって操作されたもの。どこまでがアインスの計算通りなのだろうか。それとももうアインスの思惑から外れた行動なのだろうか。
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