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第494話 隠された未来
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【 美波・アリス 組 3日目 AM 2:43 貴族街P地区 】
ーー楓とみくが霧島隊との激闘を繰り広げてから少しの時間が経った。ここはその場所から数10km離れた所。絢爛豪華な建物が並び立つ上流階級の者たちが住まう場所。そんな場所に不釣り合いな汗と埃にまみれた者たちが駆け抜けている。
だがただ走っている訳ではない。息があがり、若干の恐怖感を顔に浮かべての疾走。何者かに追われているようだ。逃げ隠れしながらの逃走劇。それがそろそろ終わりを迎える時に差し掛かる。
「はあっ…はあっ…!美波さん…!!追いつかれます…!!」
『埒が明かん。ミナミ、やるしかないぞ。このままでは他の敵まで引きつけかねん。』
ーー2人の声は当然耳に届いている美波だがそれに答えられない。もはや追っ手と戦うしかない事はわかっている。わかっているのだがそれに踏み切れない。理由はアリスだ。美波はどうしても魔法を使わせる事に踏ん切りがつかない。今イベント中にまだアリスは一度も魔法を使ってはいない。美波たちはアリスから魔法の使用条件は聞いていた。決められた回数だけは放てるという点だけアリスは伝えた。それなら普通に考えてデメリットは無い。だがどうにも美波には嫌な予感が拭えなかった。根拠は無い。ただ単に美波の勘でしかないが魔法には何とも言えない嫌なものを感じていた。だからこそ美波はアリスに魔法を使わせる事を躊躇っていた。
「…わかった。戦うわよっ。」
ーー躊躇ってはいるが逃げる事も叶わない。美波の願望としては逃げている間に慎太郎か楓の組との合流を期待していた。だが想像以上に広大なフィールドであったこのエリアでは時間と運が足りなかった。美波に出来る事は腹をくくり、自分とノートゥングで追っ手を仕留める事だけだ。
ーー美波たちは足を止め、背後に迫る追っ手に対して意識を集中する。すぐに追っ手は現れた。
「ようやく観念したか。」
ーー現れたのは男2人。美波たちが途中で出くわした周隊のリッターだ。男たちからは何の圧も感じられない。その場に存在するのかも怪しい程に圧も気配も感じない。
「劉邦、見ろ。測定器の反応がAに達している。かなりの強者だ。」
「ほう。となるとあの黒髪がシマムラかセリザワか。」
「どうだろうな。奴らならS以上もあるかもしれん。美女だと言う情報には当てはまるがセリザワとは身体的特徴が一致しない。シマムラかアイバだろう。恐らくはアイバの可能性が一番高い。」
「なるほど。あの金髪のガキは件の魔道士か。測定器は反応しないんだろう?」
「ああ。測定不能を表示している。間違いないユウキアリスだ。」
中国語だ。何を話しているかはわからないけど私たちの事を言っているのはわかる。最初から私たちが狙いだった…?それならセイエンという男から逃げる事は出来ないって事になる。マズイ。あのお城にはセイエンがいる。もしも目的地がお城なら絶対戦わないといけなくなる。さっきあの男を見た限りでは多分だけど楓さんと牡丹ちゃんでも絶対勝てない。束になってフリーデンとグローリエを使っても勝てるとは言い切れない。セイエンとは絶対戦っちゃいけない。どうしよう。ここで《予知》を使ってみるべきかしら…。もう3日目になっているんだから使ってもイイかもしれない。うんっ、やってみよう。
私は男たちが話している隙に《予知》を発動させる。全ての時が止まり、私だけが違う世界へと連れて行かれるような奇妙な感覚に包まれる。
ーー
ーー
ーー
ーー
ここは…どこ…?建物の中…?薄暗い…。燭台がある。ここは…お城…?
ーーガタンッ
扉が開いた…?何かしら…?それより何でみんないないの…?誰もいない。おかしい。いつもなら必ず誰かいるのに。……扉に行ってみよう。
立派な扉だ。玉座に続く扉かしら。中を見ないとダメだよねっ…?怖いなぁ…いくらここには存在しない身体とはいえ怖いものは怖い。でもいつまで視られるかわからないんだから覚悟を決めるしかないよねっ…。よしっ…!!
私は開いている扉から中を覗き込む。
『聖杯…。聖杯…。聖杯…。聖杯…。』
人の声がする。中はもっと薄暗い。何も見えない。目が慣れれば見えるのかしら。
『聖杯…。聖杯…。聖杯…、間違いない。』
この声…聞いた事がある。誰かしら…?聞いた事がある。間違いない。誰の声…?
『この為の聖杯…。この為の聖剣…。そして、この為の…』
何をぶつぶつ言っているんだろう。暗くてわからない。それにこの声は誰…?絶対知ってる…
『邪魔な”神”等を始末しなければならない…。それが役目…。』
もう少し近くに行けばわかるかなぁ…?あ…私はここに存在しないんだからバレる事ないんだよねっ。それなら堂々と近くに行こう。うんっ。
私は立ち上がり扉の中へと入る。一歩一歩近づいて行くと声の主の姿がだんだんと見えて来る。そしてその姿が見えた時、私は誰だか気付いた。
「えっ…!?どっ、どうしてあなたがいるーーがあッーー!?」
私は喉に激痛を感じ咄嗟に手で抑える。手のひらを見ると何か温かい液体が付着している。鼻に鉄臭い嫌な臭いを感じた。血だ。
『あぁ…、そうか…、お前は《予知》を使えるのだったな…。精神体としての身体が未来へと来てしまった。余計な仕事をしてしまったな。』
私はあまりの激痛に膝をつく。マズイ。絶対マズイ。声帯を切られているから声は出せない。何より血が止まらない。このままじゃ出血多量で死んじゃう。それに何であなたがいるの。あなたが1人でいるなんてありえない。
『どこの地点から来たのかは知らんが…もう戻れ…。そんな顔をするな…ここで殺してもお前は死なん…。だが…ここで見た事はもっていけない…。まだ知られるのは面倒だからな…。』
◯◯がラウムを開き、剣を取り出した。私は逃げようとするがそれよりも早く◯◯が剣を払って私の首を落とした。
ーー
ーー
ーー
ーー
ーー
「ああああァァァッーー!?」
私は息を荒くし手で首を抑えている。何!?何なの!?どうして首を抑えているのかわからない。手を見ても何もついてはいない。だけどなんだかわからない恐怖が身体に染み付いている。
『おい、ミナミどうした!?』
「美波さん!?」
「ぴっ!?」
ーー突如として異変をきたす美波にアリスたちは戸惑う。その顔は恐怖に染まり、全身から汗が噴き出している。アリスはリッター2人が何かをしたのかと警戒するが、当の2人も怪訝な目でこちらを見ている。この2人がやったわけではない。なら尚の事アリスには美波の身に何が起こったのか理解出来なかった。
『ミナミどうした?何があった?ゆっくりでいい、話せ。』
ーーノートゥングは努めて冷静な口調で美波を落ち着かせる。背中をさすられる事で美波は少しずつ落ち着き口を開く。
「首が…首が落とされた…」
『安心しろ。お前の首はちゃんとある。』
「違うの…最初に声帯を切られて…それから首を…」
『大丈夫だ。妾がおる。』
「うん…うん…」
ーーノートゥングの支えにより美波は次第に元に戻っていく。それを見てノートゥングは本題へと切り出す。
『誰にやられた?奴らか?』
「……わからない。《予知》を使った所までは覚えてるんだけど…」
『《予知》を使ったのか?何か視えたのか?』
「…覚えてないの。」
『奇妙な話だな。《予知》を使って視えなかった事など一度も無い。それにミナミへの明らかな攻撃。普通に考えれば対峙している奴等がナニカをしたと考えるのが妥当だが、奴等自身もこちらを奇怪な目で見ていると来たものだ。』
ーーノートゥングが少しだけ何かを考える素振りを見せるがすぐにやめた。そして美波とアリス、ちび助を見て口を開く。
『だが今は目の前の連中をどうにかせんとならん。ミナミ、やれるな?』
ーーノートゥングの目を見て美波は答える。
「うんっ…!大丈夫よっ!!みんな心配かけてごめんっ!!」
ーー美波は立ち上がりリッター2人に向き直る。
『奴等が呆けておる間に作戦会議だ。絶対にここを乗り切るぞ。』
ーー楓とみくが霧島隊との激闘を繰り広げてから少しの時間が経った。ここはその場所から数10km離れた所。絢爛豪華な建物が並び立つ上流階級の者たちが住まう場所。そんな場所に不釣り合いな汗と埃にまみれた者たちが駆け抜けている。
だがただ走っている訳ではない。息があがり、若干の恐怖感を顔に浮かべての疾走。何者かに追われているようだ。逃げ隠れしながらの逃走劇。それがそろそろ終わりを迎える時に差し掛かる。
「はあっ…はあっ…!美波さん…!!追いつかれます…!!」
『埒が明かん。ミナミ、やるしかないぞ。このままでは他の敵まで引きつけかねん。』
ーー2人の声は当然耳に届いている美波だがそれに答えられない。もはや追っ手と戦うしかない事はわかっている。わかっているのだがそれに踏み切れない。理由はアリスだ。美波はどうしても魔法を使わせる事に踏ん切りがつかない。今イベント中にまだアリスは一度も魔法を使ってはいない。美波たちはアリスから魔法の使用条件は聞いていた。決められた回数だけは放てるという点だけアリスは伝えた。それなら普通に考えてデメリットは無い。だがどうにも美波には嫌な予感が拭えなかった。根拠は無い。ただ単に美波の勘でしかないが魔法には何とも言えない嫌なものを感じていた。だからこそ美波はアリスに魔法を使わせる事を躊躇っていた。
「…わかった。戦うわよっ。」
ーー躊躇ってはいるが逃げる事も叶わない。美波の願望としては逃げている間に慎太郎か楓の組との合流を期待していた。だが想像以上に広大なフィールドであったこのエリアでは時間と運が足りなかった。美波に出来る事は腹をくくり、自分とノートゥングで追っ手を仕留める事だけだ。
ーー美波たちは足を止め、背後に迫る追っ手に対して意識を集中する。すぐに追っ手は現れた。
「ようやく観念したか。」
ーー現れたのは男2人。美波たちが途中で出くわした周隊のリッターだ。男たちからは何の圧も感じられない。その場に存在するのかも怪しい程に圧も気配も感じない。
「劉邦、見ろ。測定器の反応がAに達している。かなりの強者だ。」
「ほう。となるとあの黒髪がシマムラかセリザワか。」
「どうだろうな。奴らならS以上もあるかもしれん。美女だと言う情報には当てはまるがセリザワとは身体的特徴が一致しない。シマムラかアイバだろう。恐らくはアイバの可能性が一番高い。」
「なるほど。あの金髪のガキは件の魔道士か。測定器は反応しないんだろう?」
「ああ。測定不能を表示している。間違いないユウキアリスだ。」
中国語だ。何を話しているかはわからないけど私たちの事を言っているのはわかる。最初から私たちが狙いだった…?それならセイエンという男から逃げる事は出来ないって事になる。マズイ。あのお城にはセイエンがいる。もしも目的地がお城なら絶対戦わないといけなくなる。さっきあの男を見た限りでは多分だけど楓さんと牡丹ちゃんでも絶対勝てない。束になってフリーデンとグローリエを使っても勝てるとは言い切れない。セイエンとは絶対戦っちゃいけない。どうしよう。ここで《予知》を使ってみるべきかしら…。もう3日目になっているんだから使ってもイイかもしれない。うんっ、やってみよう。
私は男たちが話している隙に《予知》を発動させる。全ての時が止まり、私だけが違う世界へと連れて行かれるような奇妙な感覚に包まれる。
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ここは…どこ…?建物の中…?薄暗い…。燭台がある。ここは…お城…?
ーーガタンッ
扉が開いた…?何かしら…?それより何でみんないないの…?誰もいない。おかしい。いつもなら必ず誰かいるのに。……扉に行ってみよう。
立派な扉だ。玉座に続く扉かしら。中を見ないとダメだよねっ…?怖いなぁ…いくらここには存在しない身体とはいえ怖いものは怖い。でもいつまで視られるかわからないんだから覚悟を決めるしかないよねっ…。よしっ…!!
私は開いている扉から中を覗き込む。
『聖杯…。聖杯…。聖杯…。聖杯…。』
人の声がする。中はもっと薄暗い。何も見えない。目が慣れれば見えるのかしら。
『聖杯…。聖杯…。聖杯…、間違いない。』
この声…聞いた事がある。誰かしら…?聞いた事がある。間違いない。誰の声…?
『この為の聖杯…。この為の聖剣…。そして、この為の…』
何をぶつぶつ言っているんだろう。暗くてわからない。それにこの声は誰…?絶対知ってる…
『邪魔な”神”等を始末しなければならない…。それが役目…。』
もう少し近くに行けばわかるかなぁ…?あ…私はここに存在しないんだからバレる事ないんだよねっ。それなら堂々と近くに行こう。うんっ。
私は立ち上がり扉の中へと入る。一歩一歩近づいて行くと声の主の姿がだんだんと見えて来る。そしてその姿が見えた時、私は誰だか気付いた。
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私は喉に激痛を感じ咄嗟に手で抑える。手のひらを見ると何か温かい液体が付着している。鼻に鉄臭い嫌な臭いを感じた。血だ。
『あぁ…、そうか…、お前は《予知》を使えるのだったな…。精神体としての身体が未来へと来てしまった。余計な仕事をしてしまったな。』
私はあまりの激痛に膝をつく。マズイ。絶対マズイ。声帯を切られているから声は出せない。何より血が止まらない。このままじゃ出血多量で死んじゃう。それに何であなたがいるの。あなたが1人でいるなんてありえない。
『どこの地点から来たのかは知らんが…もう戻れ…。そんな顔をするな…ここで殺してもお前は死なん…。だが…ここで見た事はもっていけない…。まだ知られるのは面倒だからな…。』
◯◯がラウムを開き、剣を取り出した。私は逃げようとするがそれよりも早く◯◯が剣を払って私の首を落とした。
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「ああああァァァッーー!?」
私は息を荒くし手で首を抑えている。何!?何なの!?どうして首を抑えているのかわからない。手を見ても何もついてはいない。だけどなんだかわからない恐怖が身体に染み付いている。
『おい、ミナミどうした!?』
「美波さん!?」
「ぴっ!?」
ーー突如として異変をきたす美波にアリスたちは戸惑う。その顔は恐怖に染まり、全身から汗が噴き出している。アリスはリッター2人が何かをしたのかと警戒するが、当の2人も怪訝な目でこちらを見ている。この2人がやったわけではない。なら尚の事アリスには美波の身に何が起こったのか理解出来なかった。
『ミナミどうした?何があった?ゆっくりでいい、話せ。』
ーーノートゥングは努めて冷静な口調で美波を落ち着かせる。背中をさすられる事で美波は少しずつ落ち着き口を開く。
「首が…首が落とされた…」
『安心しろ。お前の首はちゃんとある。』
「違うの…最初に声帯を切られて…それから首を…」
『大丈夫だ。妾がおる。』
「うん…うん…」
ーーノートゥングの支えにより美波は次第に元に戻っていく。それを見てノートゥングは本題へと切り出す。
『誰にやられた?奴らか?』
「……わからない。《予知》を使った所までは覚えてるんだけど…」
『《予知》を使ったのか?何か視えたのか?』
「…覚えてないの。」
『奇妙な話だな。《予知》を使って視えなかった事など一度も無い。それにミナミへの明らかな攻撃。普通に考えれば対峙している奴等がナニカをしたと考えるのが妥当だが、奴等自身もこちらを奇怪な目で見ていると来たものだ。』
ーーノートゥングが少しだけ何かを考える素振りを見せるがすぐにやめた。そして美波とアリス、ちび助を見て口を開く。
『だが今は目の前の連中をどうにかせんとならん。ミナミ、やれるな?』
ーーノートゥングの目を見て美波は答える。
「うんっ…!大丈夫よっ!!みんな心配かけてごめんっ!!」
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