俺'sヒストリー

かつしげ

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第478話 嫌な戦い

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【楓・みく 組 2日目 PM 9:11 市街地D地区 】



紫髪のお姉ちゃん…霧島茜ゆーたか、霧島茜が鞘からゼーゲンを引き抜く。あの形…楓チャンたちとは違う形や。フェンシングで使う剣より太いけどなんやったっけ。


「あの剣、レイピアね。」

「あ、それやそれ。レイピアや。あんなん初めて見たよね。」

「そうね。他のリッターたちも剣を持っていたけどロングソードの形状から大きくかけ離れた奴はいなかった。それが今回は突き特化のレイピア。」

「でも…タロチャンが言うてた通りなら最終解放で形状が大きく変わったゼーゲンはそんな大した事ないんやろ?ならあのお姉ちゃんそんなでもないんちゃう?」

「どうかしらね。私には凄く強大な圧を感じるんだけど。」

「そらそーやけど…」


タロチャンの話がガセとは思わんけど霧島茜から感じるオーラは物凄いで。あのゼーゲンやって恐ろしい圧を放っとる。とても最終解放が大したことないなんて思われへん。


「あー、その話なら少し補足していいかな?」


霧島茜がウチらに話しかけてくる。


「確かに最終解放で大きく形状が変わるゼーゲンは大した事ないよ。でもね、使用者の意思で形状を変える事も出来るんだよ。もちろん全部がそうではない。S級以上の魔力がある者のゼーゲンは最終解放で思った通りの形状に変える事が出来るんだよ。」

「へぇ、そうなのね。貴重な情報ありがとう。でもそれって自分が強いって言ってるみたいよね。」


楓チャンが目を細めて霧島茜を見る。楓チャンの圧も恐ろしいぐらいや。これが本気の楓チャンか。もしも敵やったら恐ろしすぎるで。


「そうだね。結構強いと思うよ。」


霧島茜が自信を持って答える。自分の強さに相当自信あるんやな。全くブレてへん。


「それでもあなたは負けたんでしょ?それにブルクグラーフ、城伯って事だけど、随分と下の方の爵位じゃない。それって大した事ないからそれしか与えられなかったんじゃないの?ウフフ。」


おぉ…楓チャンめっちゃ煽るやん。楓チャンってSっ気強そうやもんね。楓チャンとは敵対しとうないわぁ。


「アンタ…あんまり調子に乗ってんじゃないわよ…!!茜はーー」
「ーー涼子、いいって。」


青髪のお姉ちゃんがキレそうになるのを霧島茜が止める。


「だって…!!」

「大丈夫大丈夫。だって事実だもんしょーがないよ。私が負けたのは本当だし、下級貴族なのも本当の事。」

「それは違うわ!!茜は強かった!!負けたのは私が弱かった事とカルディナの奴の策に嵌められたからじゃない!!」

「カルディナ?」


青髪のお姉ちゃんがまくし立てるように言っている。その中のカルディナって言葉に楓チャンが反応を示している。なんやろ。知ってんのかな。ん?あれ?カルディナって…確か一緒にお茶飲んだあのハーフの人の事…?


「それは言い訳だよ。私が強ければ涼子を守れた。涼子のせいじゃないよ。カルディナも関係ない。」

「……私はまだ納得なんてできないわ。だからこそおとなしくオルガニに従ってるのよ。」

「あはは…涼子は強情だからなぁ。」

「ちょっといいかしら?」


楓チャンが手を挙げ、それをリッター2人が不思議そうな顔で見る。


「なにかな、芹澤楓さん。」

「カルディナに何をされたの?」

「どうして?別にあなたに関係ないじゃない。」


さっきあんだけ煽ったからやな。青髪のお姉ちゃんが楓チャンに対して敵対心剥き出しの態度が出とる。


「あの女に嵌められたってのが理由で負けてその爵位になったのなら私の早とちりだった。謝るわ。ごめんなさい。」


楓チャンが深々と頭を下げる。それをリッターの2人はキョトンとした顔で見ている。こういうトコが楓チャンの良いところだよね。


「あっはっは!!素直なんだねキミ!!いやー、気に入った!!気に入ったよ!!うん!!涼子もそう思わない?」

「……まあ。素直なのは良いんじゃない。」

「だってさ!!あー、笑った。よっぽどカルディナについて知りたいんだね。いいよ、教えてあげる。まー、そんなに勿体振る話でもないんだけどね。ボロボロになったカルディナが私の前に現れて、涼子が襲われてるって教えに来たの。それを信じたバカな私は、トラップが仕掛けられた場所に誘導されて、身体の自由を奪われ殺されたってだけだよ。」

「だけじゃないでしょ!!変な装置を使って私の映像見たいなの出したんだから。」

「それって3Dホラグラムって事?」

「難しい事はわからないわ。でも、実体と区別がつかないぐらい精巧なものだったのよ。だから茜は騙された。」

「そんなん出来るん…?装置って事はスキル関係ないって事だよね…?」

「あの女なら出来るわよ。IQ220を超える超天才なんだから。」


せやった。そんな事ゆーとったわ。


「へー、頭良さそうだとは思ってたけどそんな凄かったのかー。なら私が嵌められたのもしょーがないかー。」

「しょうがなくないわよ。茜はなんでそんな呑気なのよ。」


なんかこの人ら悪い人じゃないよね。なんか戦いたくないな。


「あはは、涼子は困った子だなぁ。」

「困るのはアンタよ。」

「話はこんなトコだけど大丈夫かな、芹澤楓さん?」

「ありがとう。参考になったわ。」

「どういたしまして!!あー、なんか嫌だなー、キミたち良い子だから戦いたくないなー。」


霧島茜が手にしてるレイピアをぷらぷらとさせている。出来る事ならウチも戦いたくない。それが叶うならそれに越した事はない。


「そうね。私も戦いたくないわ。さっきは煽っちゃったけど仲良く出来るなら仲良くしたい。」

「だよねー。でもね…一応私たちもお役目として来てるんだよね。だから…戦わないのは無理かな。」


場の空気がピリッと締まる。やっぱ戦わんとあかんのか。しゃーないな。


「残念ね。友達になれそうだったのに。」

「そうだね。芹澤楓さん。」

「何?」

「隊長にはね、それぞれ持たされているスキルがあるんだよ。」

「持たされているスキル?」

「うん。プレイヤーのスキル、特装を封印するってやつ。」


霧島茜のその言葉に戦慄が走る。首から背中、腋の下、汗が噴き出しているのがわかる。それあかんやん。絶対あかんやつやん。


「安心してよ。私はそんなの使わない。持てる力だけでキミたちを倒すよ。ゼーゲンの差だけは許してね。」

「へぇ、それを使った方が楽なんじゃないかしら?」

「卑怯な真似はしたくない。それだけだよ。さ、始めよう。お喋りを続けるともっと情が湧きそうだからさ。」


霧島茜の空気が変わるのを感じる。やっぱだめか。戦闘やな。


「楓チャン、どないする?」

「私が霧島茜を相手にするわ。みくちゃんはあっちの青髪の女をよろしく。」

「大丈夫なん?アレ、めっちゃ強いで。」

「わかってるわ。あなたこそ青髪も強いわよ。」

「わーっとる。最終解放には至ってなくてもウチと同じ3段階や。相当強いのはちゃんと理解しとる。」

「よし、それじゃ頼むわよ。死んじゃダメだからね。」

「楓チャンもやで。」

「了解。行くわよ。」


ウチらが駆けると同時にリッター2人も駆ける。剣と剣。拳と拳が激しくぶつかり合い、戦闘が開始した。
楓チャンと霧島茜がここから離れるように移動しながら斬り返しを行なっている。楓チャン、死なんといてな。


「さてと、始めるわ。私は中之島涼子。」

「ウチは綿谷みく。」

「同じ戦闘スタイル同士、仲良くやりましょうか。」

「それは遠慮するわ。」


ーー2人が軽く口元を緩める。それを合図に間合いを詰め、激しい攻防が開始した。
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