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第469話 Another 4
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ーー気持ち悪い
ーーまたいつもの感覚だ
ーーまとわりつくようなナニカがいる
ーー身体中を舐められているように気持ち悪い
ーー私を呼ぶ声が気持ち悪い
ーー連れて行かれる
ーー誰か、助けて
「アンナさん、起きて下さい。」
私は目を覚ます。寝ている私を覗き込むように見ているのはクランメンバーの船曳幻夜だ。相変わらず笑いのない眉間にしわを寄せた真面目な顔でいる。私より1つ上の高校三年生なのだが、そんな表情のせいか二十代半ばぐらいによく見られるらしい。
「うなされていましたが大丈夫ですか?」
幻夜はいつも敬語だ。年下の私や美穂に対していつも敬語なのである。
「うん、大丈夫だよ。ありがとう幻夜。」
「良かった、安心しました。」
そういうと幻夜は右手の中指で眼鏡のブリッジをクイッと上げる。
私は知っている。幻夜のコレは癖なんだ。表情には出さないけど、安心した時には必ず右手の中指でブリッジをクイッとする。いつもは眼鏡直す時に幻夜は右手の親指と人差し指でテンプルをつまんで直す。不器用な男だよね。でもそこが幻夜の良い所かな。
「さてと、またオレヒスかぁ。台本読んでたのになぁ。」
「アンナさんは相変わらず多忙ですね。また新しい仕事ですか?」
「読んでたのは新しい映画の台本。主演でやるんだ。」
「今やっているドラマもあるのに大変ですね。昨日の演技も素晴らしかったですよ。ビデオに録画しました。」
「なんか友達に見られるのって恥ずかしいよね。ていうかビデオって。」
「私は古い人間なものでビデオテープに魅力を感じるのです。」
「私と1コしか違わないでしょ。」
「今度はどのような役柄なのですか?」
「幻夜が好きな感じではないかなぁ?漫画が原作のSFアクションだから。」
「なるほど。オレヒスみたいなものですね。」
「あー、近いかも。異能力バトルものみたいだから。」
「個人的には日本アカデミー賞主演女優賞を受賞した作品である『島風』のアンナさんが素敵だと思いますが、新たなアンナさんを見れるのでそちらの映画も興味深いですね。」
「なんかテレますな。って、仕事の話をしてる場合じゃないよね。オレヒスに集中しよう。状況は?」
幻夜に聞きながら辺りを見渡してみる。ショッピングモールのような場所だ。中は随分と荒れ果てている。前から思っていた事だけどこのエリアって一体なんなんだろう。運営側が作ったものなのか、それとも未来の世界なのか、はたまた過去の世界なのかはわからない。でも、私には作り物には到底見えない。
「簡潔に言えば美穂さんと凱亜さんはそれぞれ別にいます。」
「3組に分かれてるってこと?」
「はい。そしてエリアにはリッターオルデンの連中がいます。数名から数十名とのことです。」
「それは厄介だね。私、リッターとは戦った事まだ無いんだよなぁ。」
「私はありますよ、凱亜さんも。」
「え?そうなの?」
「はい。数回前のイベントで彼らが乱入して来ました。凱亜さんが滅茶苦茶にしてしまいましたが。」
「あのダメホストはデータ取るって事しないからなぁ。」
「私の見立てではそこまで強い輩ではありませんでしたね。恐らくは”爵位無し”かと。」
「今回は”爵位有り”が来るかもね。それも”上位貴族”が。」
「可能性はあります。凱亜さんも美穂さんも恐ろしく強いのはわかっていますが複数で来られると不利です。早急に合流を目指しましょう。」
「まず美穂を探さなきゃ。ダメホストは単独で動かしといた方が良いでしょ。能力的に。」
「そうですね。凱亜さんはが負けるのは想像出来ません。一番想像出来ないのはアンナさんですが。」
「えー、こんなか弱い少女なのに?」
「全ての能力が凶悪じゃないですか。ドラゴン出せて『神具グライヒハイト』まで使える化物です。」
「なんかその言い方酷くない?」
「酷くありませんよ。私と戦った時の事覚えてます?全身の骨折られたんですからね。酷いのはアンナさんです。」
「ま、まぁ、あの時は私たちと幻夜は敵だったし。」
「冗談ですよ。私はあの一戦以降、アンナさんを師だと思っております。起床と就寝時にはアンナさんの写真に礼をし、いつでも敬いの目を向けて精進してます。」
「私をそんな目で見てたの!?」
「はい。言ってませんでしたが、私の部屋はアンナさんのグッズで一杯です。壁から天井までアンナさんのポスターで埋め尽くし、写真集、CD、DVD、ブルーレイ、と全て揃えております。」
「私の幻夜のイメージ崩壊したよ!?アンタ真面目サムライじゃなかったの!?」
「お陰で今ではアンナさんの背後に後光が見えます。」
「あ、コレだめなやつだ。」
「とまあ、冗談は置いておきましょう。」
「良かった、冗談だったんだね。」
「はい、流石に後光はまだ見えません。」
「あとは全部本当なの!?」
幻夜のキャラ壊れてきたなぁ。今度幻夜の家行った時に私のポスターは剥がしておこう。
「そうは言うけどスキル無しで戦ったら一番強いのって幻夜じゃない?室町時代からある影に隠れた暗殺剣の免許皆伝なんでしょ?」
「そのような怪しい剣は持ち合わせておりません。隠れた剣術なのは否定しませんが。」
「だもん武器持ってたら絶対最強じゃん。強すぎるから剣道の試合に出られないぐらいなんでしょ?」
「出られなくはありませんよ。ただ、出る意味はありませんね。一度、全日本剣道選手権大会で優勝された方と勝負をした事がありますが、私に一太刀も浴びせる事は出来ませんでした。表の舞台で日本一になった程の方でそれなのですから学生相手では一歩間違えれば命を奪ってしまうかもしれません。」
「ほら、やっぱ最強じゃん。」
「いえ、スキルを使わなくても強敵だと感じる方は何名もおりますよ。当然美穂さんも達人ですし。」
「あー、美穂はねー。」
「それに、対峙した事は無いのではっきりとはわかりませんが、芹澤楓殿や島村牡丹殿も相当出来るかと。」
「”五帝”の?へー、なんかやってるんだ?」
「武術に精通してると思いますよ。画面越しでも闘気が溢れ出ていましたから。美穂さんと同等かもしれませんね。」
「ヤバいじゃん。女で美穂と戦える人なんていないと思ってた。世の中広いなぁ。でもその言い方なら幻夜は負けないって事だね。」
「自惚れてはいませんが私の方が随分上だと思います。」
「やっぱ最強じゃん。」
「いいえ、一人だけ、私より強いかもしれない方がいます。」
「え?誰?蘇我夢幻は”武器使うタイプじゃない”じゃん?」
「橘殿です。」
「…………誰?」
タチバナさん…?そんな人いたっけ…?
「”闘神”の序列6位の方です。いや、5位になったのかな。中年の方がおりましたでしょう。」
「あー、目つきの鋭いおじさんの事かぁ。あの人強いの?」
「ええ。アンナさんたちと会う前に一度橘殿をエリアで見かけた事があるんです。あの人、血の臭いがします。」
「血…?そりゃあ他のプレイヤー倒したら血の臭いぐらいするんじゃない?」
「そうじゃありません。実際の世界で人を斬った事がある、そういう血生臭さです。」
「それってただのヤクザじゃないの?ああいう連中って日本刀で人殺したりしてそうじゃん。」
「そんな屑共とは違いますよ。間違いなく死合いです。」
まあ幻夜が言うならそういう世界もあるのだろう。ちょっとフィクションの臭いしか私には感じられないけど裏の世界ってのはあるんだしね。
「なんか話が逸れちゃったね。エリアの様子みながら動こうか。」
「そうですね。」
まず私たちはフロアの探索を始めてみる。少し歩いてみるがやはり所々戦闘痕が見られる。一体いつ出来たものなのだろう。私は考えながら歩いていると、一際大きく荒れている場所へと出る。本屋さんだろう。棚が引っ繰り返り本が所々に散っている。そして一番酷いのは本屋さんから少し離れた所にあるエスカレーター付近だ。壁が数カ所穴が空き、今にも崩れ落ちそうな感じになっている。
「不自然ですね。ここまで来る間の店を見ても荒れている店もあれば綺麗なままの店もある。天災や暴動によって荒れているのなら均一になっていないと不自然に感じます。これは多くても数名同士の争いによって出来たものではないでしょうか?」
幻夜の話を聞きながら私は目を下に向ける。気になる”焦げ”を発見したのでしゃがんで確認する。やっぱり間違いない。
「私もそう思う。だって魔法の痕があるよ。フェーゲフォイアーを使ったのかな。」
私の言葉に幻夜が目を細める。
「近くに魔道士がいるという事ですか?」
「ううん。コレ、随分時間が経ってる。多分前のイベントか過去のオレヒスで出来たものじゃないかな?恐らくは前者だろうけど。」
「アンナさん以外の他”3人”の魔道士が使ったという事ですか?」
「アインスが言った通りならそうだろうね。白水愛華、結城アリス、ソフィア・レプニンの誰かかな。」
「魔道士がこのエリアにいれば好都合ですね。マヌスクリプトを奪う好機となります。」
「まーねー、マヌスクリプトはなかなか手に入らないし。グリモワールなんて本当にあるのかどうかも怪しいよ。って事で幻夜、どうする?」
私は幻夜流し目をおくる。幻夜も当然わかっているようだ。
「1人ですね。」
幻夜が腰に差す剣型のゼーゲンに手をかける。いつでも攻撃に移せる態勢を作る幻夜は頼りになる。
下から上がってくるエスカレーターから人の頭が見える。男だ。ミリアルドたちと同じ服を着ている。リッターだ。かなりの魔力を感じる。
「おや?勘の良いプレイヤーたちですね。気配を消して近づいたのにまさか待っているとは思いませんでした。これは楽しめそうだ。初めまして。俺は、ブルクグラーフの爵位を賜りしリッター、葛尾隊隊長、葛尾亮です。楽しみましょう。バトルを。」
ーーまたいつもの感覚だ
ーーまとわりつくようなナニカがいる
ーー身体中を舐められているように気持ち悪い
ーー私を呼ぶ声が気持ち悪い
ーー連れて行かれる
ーー誰か、助けて
「アンナさん、起きて下さい。」
私は目を覚ます。寝ている私を覗き込むように見ているのはクランメンバーの船曳幻夜だ。相変わらず笑いのない眉間にしわを寄せた真面目な顔でいる。私より1つ上の高校三年生なのだが、そんな表情のせいか二十代半ばぐらいによく見られるらしい。
「うなされていましたが大丈夫ですか?」
幻夜はいつも敬語だ。年下の私や美穂に対していつも敬語なのである。
「うん、大丈夫だよ。ありがとう幻夜。」
「良かった、安心しました。」
そういうと幻夜は右手の中指で眼鏡のブリッジをクイッと上げる。
私は知っている。幻夜のコレは癖なんだ。表情には出さないけど、安心した時には必ず右手の中指でブリッジをクイッとする。いつもは眼鏡直す時に幻夜は右手の親指と人差し指でテンプルをつまんで直す。不器用な男だよね。でもそこが幻夜の良い所かな。
「さてと、またオレヒスかぁ。台本読んでたのになぁ。」
「アンナさんは相変わらず多忙ですね。また新しい仕事ですか?」
「読んでたのは新しい映画の台本。主演でやるんだ。」
「今やっているドラマもあるのに大変ですね。昨日の演技も素晴らしかったですよ。ビデオに録画しました。」
「なんか友達に見られるのって恥ずかしいよね。ていうかビデオって。」
「私は古い人間なものでビデオテープに魅力を感じるのです。」
「私と1コしか違わないでしょ。」
「今度はどのような役柄なのですか?」
「幻夜が好きな感じではないかなぁ?漫画が原作のSFアクションだから。」
「なるほど。オレヒスみたいなものですね。」
「あー、近いかも。異能力バトルものみたいだから。」
「個人的には日本アカデミー賞主演女優賞を受賞した作品である『島風』のアンナさんが素敵だと思いますが、新たなアンナさんを見れるのでそちらの映画も興味深いですね。」
「なんかテレますな。って、仕事の話をしてる場合じゃないよね。オレヒスに集中しよう。状況は?」
幻夜に聞きながら辺りを見渡してみる。ショッピングモールのような場所だ。中は随分と荒れ果てている。前から思っていた事だけどこのエリアって一体なんなんだろう。運営側が作ったものなのか、それとも未来の世界なのか、はたまた過去の世界なのかはわからない。でも、私には作り物には到底見えない。
「簡潔に言えば美穂さんと凱亜さんはそれぞれ別にいます。」
「3組に分かれてるってこと?」
「はい。そしてエリアにはリッターオルデンの連中がいます。数名から数十名とのことです。」
「それは厄介だね。私、リッターとは戦った事まだ無いんだよなぁ。」
「私はありますよ、凱亜さんも。」
「え?そうなの?」
「はい。数回前のイベントで彼らが乱入して来ました。凱亜さんが滅茶苦茶にしてしまいましたが。」
「あのダメホストはデータ取るって事しないからなぁ。」
「私の見立てではそこまで強い輩ではありませんでしたね。恐らくは”爵位無し”かと。」
「今回は”爵位有り”が来るかもね。それも”上位貴族”が。」
「可能性はあります。凱亜さんも美穂さんも恐ろしく強いのはわかっていますが複数で来られると不利です。早急に合流を目指しましょう。」
「まず美穂を探さなきゃ。ダメホストは単独で動かしといた方が良いでしょ。能力的に。」
「そうですね。凱亜さんはが負けるのは想像出来ません。一番想像出来ないのはアンナさんですが。」
「えー、こんなか弱い少女なのに?」
「全ての能力が凶悪じゃないですか。ドラゴン出せて『神具グライヒハイト』まで使える化物です。」
「なんかその言い方酷くない?」
「酷くありませんよ。私と戦った時の事覚えてます?全身の骨折られたんですからね。酷いのはアンナさんです。」
「ま、まぁ、あの時は私たちと幻夜は敵だったし。」
「冗談ですよ。私はあの一戦以降、アンナさんを師だと思っております。起床と就寝時にはアンナさんの写真に礼をし、いつでも敬いの目を向けて精進してます。」
「私をそんな目で見てたの!?」
「はい。言ってませんでしたが、私の部屋はアンナさんのグッズで一杯です。壁から天井までアンナさんのポスターで埋め尽くし、写真集、CD、DVD、ブルーレイ、と全て揃えております。」
「私の幻夜のイメージ崩壊したよ!?アンタ真面目サムライじゃなかったの!?」
「お陰で今ではアンナさんの背後に後光が見えます。」
「あ、コレだめなやつだ。」
「とまあ、冗談は置いておきましょう。」
「良かった、冗談だったんだね。」
「はい、流石に後光はまだ見えません。」
「あとは全部本当なの!?」
幻夜のキャラ壊れてきたなぁ。今度幻夜の家行った時に私のポスターは剥がしておこう。
「そうは言うけどスキル無しで戦ったら一番強いのって幻夜じゃない?室町時代からある影に隠れた暗殺剣の免許皆伝なんでしょ?」
「そのような怪しい剣は持ち合わせておりません。隠れた剣術なのは否定しませんが。」
「だもん武器持ってたら絶対最強じゃん。強すぎるから剣道の試合に出られないぐらいなんでしょ?」
「出られなくはありませんよ。ただ、出る意味はありませんね。一度、全日本剣道選手権大会で優勝された方と勝負をした事がありますが、私に一太刀も浴びせる事は出来ませんでした。表の舞台で日本一になった程の方でそれなのですから学生相手では一歩間違えれば命を奪ってしまうかもしれません。」
「ほら、やっぱ最強じゃん。」
「いえ、スキルを使わなくても強敵だと感じる方は何名もおりますよ。当然美穂さんも達人ですし。」
「あー、美穂はねー。」
「それに、対峙した事は無いのではっきりとはわかりませんが、芹澤楓殿や島村牡丹殿も相当出来るかと。」
「”五帝”の?へー、なんかやってるんだ?」
「武術に精通してると思いますよ。画面越しでも闘気が溢れ出ていましたから。美穂さんと同等かもしれませんね。」
「ヤバいじゃん。女で美穂と戦える人なんていないと思ってた。世の中広いなぁ。でもその言い方なら幻夜は負けないって事だね。」
「自惚れてはいませんが私の方が随分上だと思います。」
「やっぱ最強じゃん。」
「いいえ、一人だけ、私より強いかもしれない方がいます。」
「え?誰?蘇我夢幻は”武器使うタイプじゃない”じゃん?」
「橘殿です。」
「…………誰?」
タチバナさん…?そんな人いたっけ…?
「”闘神”の序列6位の方です。いや、5位になったのかな。中年の方がおりましたでしょう。」
「あー、目つきの鋭いおじさんの事かぁ。あの人強いの?」
「ええ。アンナさんたちと会う前に一度橘殿をエリアで見かけた事があるんです。あの人、血の臭いがします。」
「血…?そりゃあ他のプレイヤー倒したら血の臭いぐらいするんじゃない?」
「そうじゃありません。実際の世界で人を斬った事がある、そういう血生臭さです。」
「それってただのヤクザじゃないの?ああいう連中って日本刀で人殺したりしてそうじゃん。」
「そんな屑共とは違いますよ。間違いなく死合いです。」
まあ幻夜が言うならそういう世界もあるのだろう。ちょっとフィクションの臭いしか私には感じられないけど裏の世界ってのはあるんだしね。
「なんか話が逸れちゃったね。エリアの様子みながら動こうか。」
「そうですね。」
まず私たちはフロアの探索を始めてみる。少し歩いてみるがやはり所々戦闘痕が見られる。一体いつ出来たものなのだろう。私は考えながら歩いていると、一際大きく荒れている場所へと出る。本屋さんだろう。棚が引っ繰り返り本が所々に散っている。そして一番酷いのは本屋さんから少し離れた所にあるエスカレーター付近だ。壁が数カ所穴が空き、今にも崩れ落ちそうな感じになっている。
「不自然ですね。ここまで来る間の店を見ても荒れている店もあれば綺麗なままの店もある。天災や暴動によって荒れているのなら均一になっていないと不自然に感じます。これは多くても数名同士の争いによって出来たものではないでしょうか?」
幻夜の話を聞きながら私は目を下に向ける。気になる”焦げ”を発見したのでしゃがんで確認する。やっぱり間違いない。
「私もそう思う。だって魔法の痕があるよ。フェーゲフォイアーを使ったのかな。」
私の言葉に幻夜が目を細める。
「近くに魔道士がいるという事ですか?」
「ううん。コレ、随分時間が経ってる。多分前のイベントか過去のオレヒスで出来たものじゃないかな?恐らくは前者だろうけど。」
「アンナさん以外の他”3人”の魔道士が使ったという事ですか?」
「アインスが言った通りならそうだろうね。白水愛華、結城アリス、ソフィア・レプニンの誰かかな。」
「魔道士がこのエリアにいれば好都合ですね。マヌスクリプトを奪う好機となります。」
「まーねー、マヌスクリプトはなかなか手に入らないし。グリモワールなんて本当にあるのかどうかも怪しいよ。って事で幻夜、どうする?」
私は幻夜流し目をおくる。幻夜も当然わかっているようだ。
「1人ですね。」
幻夜が腰に差す剣型のゼーゲンに手をかける。いつでも攻撃に移せる態勢を作る幻夜は頼りになる。
下から上がってくるエスカレーターから人の頭が見える。男だ。ミリアルドたちと同じ服を着ている。リッターだ。かなりの魔力を感じる。
「おや?勘の良いプレイヤーたちですね。気配を消して近づいたのにまさか待っているとは思いませんでした。これは楽しめそうだ。初めまして。俺は、ブルクグラーフの爵位を賜りしリッター、葛尾隊隊長、葛尾亮です。楽しみましょう。バトルを。」
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