俺'sヒストリー

かつしげ

文字の大きさ
上 下
426 / 539

第426話 風の力

しおりを挟む
【 慎太郎・美波・みく 組 廃工場(夕方) 】



「金色…アルティメット持ちか。」

「それだけ自信満々だからトラップをガッツリ仕掛けてあんだと思ってたらそういうことか。」

「メインのアルティメットに加えてサブを周辺に設置済み。こら調子に乗るわな。」


男たちがペラペラと状況についての説明をしている。


「だがそれがどうした?俺たちはアルティメット持ちじゃねぇ。だがなーー」


男のリーダー格と思われる男が喋っていると身体から銀色のエフェクトと、足元に銀色に輝く魔法陣が現れる。それは周囲にいる他の3人も同様だ。リーダー格の男と同じように銀色のエフェクトが身体を纏い、足元には銀色に輝く魔法陣が展開される。
間髪を入れず足元にある銀色の魔法陣から上空へ向けて光が現れると男たちのプレッシャーが跳ね上がる。その圧はメインスキルアルティメットと同等、いや、アルティメットに勝るとも劣らない程や。


「どうだ?テメェもそれなりに修羅場くぐってんならわかんだろ?俺たちのこの力が。俺のサブスキルはバフSSだ。効果は察しの通り身体能力の大幅上昇。それにオマケ付きだ。ま、当然オマケの内容は教えてやらねぇがな。」


リーダー格の男がニヤニヤしながら勝ち誇ったようにウチを見ている。どいつもこいつもウチをナメとる。めっちゃ腹立つ。タロチャンにも腹立つ。絶対ウチに謝罪させたる。

ーーまー、さっきの慎太郎の態度はちょっと酷いよね。ああやってからかう所がモテないんだよね。人の嫌がる事はしちゃダメだよ。慎太郎は反省しないとね。


「オラ、お姉ちゃん。かかってこいよ。俺らから行ってトラップにかかるようなバカなマネはしねぇぜ。ま、かかって来ねぇならこっちから遠距離ーー」
「ーートラップなんか仕掛けとらんわドアホ。」


私は男たちの言葉を遮る。


「なんでお前ら如きにサブスキルなんか使わなあかんねん。メインスキルだけで十分や。グダグダしゃべっとらんでとっととかかってきーや。」


ウチの言葉を聞き男たちが目つきを鋭くさせる。女にここまで言われた事にキレたんやろ。器の小さい奴らや。

ーーうーん、みくちゃん怒ってるね。口調が荒いもん。それもこれも全部慎太郎のせいだね。


「…ちょっと調子に乗りすぎだな。」

「流石にアタマに来たわ。」

「こりゃお仕置きが必要だな。」

「少し懲らしめるつもりだけだったがもう容赦しねぇ。ガンガンやってやろうぜ。」


男たちが身につけているそれぞれの武器を取り出す。全員がゼーゲンを持っている。未開放ではあるが、ゼーゲンの祝福によって身体能力が更に引き上げられ、より一層男たちの出すプレッシャーが力を強める。


「さ、戦闘開始や。」


ーーみくの頭上に魔法陣が展開する。魔法陣から放たれる金色の光を浴び、みくを包む金色のエフェクトが一層輝きを増す。


「時空系か。だがそれがどうしたァ!!行くぞテメェらァァァァ!!!」


ーーリーダー格の男の怒声が合図となり男たちはみくへと襲いかかる。手にしているゼーゲンは槍型と短剣型が2名ずつ。短剣型を手にしている男たち2人で左右からの連続攻撃を繰り出す。短剣型の特性である速さを使ってみくを追い込む。そして槍型を使う男たち2人がみくの死角から突きによる一撃必殺を狙って来る。今日出会ったばかりの即席チームではあるが各々の特性を引き出し、最善の策を講じて来る。かなりの強者たちだ。上級プレイヤーであってもこの連携を相手に1人で立ち向かってはたちどころに風穴を開けられるのがオチである。それぐらい男たちの連携はよく取れていた。

ーーだが男たちは気づく。何度その攻撃を繰り返してもみくに当たらない事に。そもそも何度も繰り返しているのがおかしい。最初の一撃で身体に穴が開いて即終了しているはずだ。それなのに何度も繰り返し、それどころか何度やってもカスりもしていない。この異常事態に男たちの顔から余裕が消える。


「な、なんで当たらねぇんだ…!?」

「恐らくこの女の時空系は速度を上げるか攻撃を躱すのに特化したヤツなんだろ!!」

「ビビんな!!このまま攻撃してりゃあそのうち女の効果が切れる!!躱してるだけじゃ脅威にならねぇよ!!」


ーー男たちが怒鳴り声を上げながら指示を出す。そんな男たちを冷静な目で見ていたみくだが、そろそろ動き出す事を決める。


「なら躱すだけやないってトコ見せたろか。」


ーーみくの身体を包む金色のエフェクトが輝きを強める。


「ーー鎌鼬」


ーーみくが爪で引っ掻くように手を上にあげると、周囲にある風が集まり、風の刃を形成し始める。形成した無数の風の刃がみくの射程内にあるあらゆるモノを引き裂いていく。


「ぐがぁ…!?」
「がァァァァ!?」



ーーそれをモロに浴びた男たちは傷口から血飛沫を上げながらその場に倒れ込む。


「なんだこりゃあ…」

「風…?」

「刃物で切られたような傷じゃねぇか…!?」


ーーみくの技を喰らった男たちは得体の知れない力に恐怖を感じ始める。だがリーダー格の男は心は折れていない。状況を精査し、冷静な口調で男たちに指示を出す。


「ビビってんじゃねぇよ。大した傷じゃねぇだろ。この程度の威力なら俺たち4人で持久戦に持ち込みゃあ絶対勝てる。」


ーーリーダー格の男の言葉に男たちは冷静さを取り戻す。指揮官は常に冷静でいなければはらない。そんなものは常識中の常識。それは慎太郎も学ばないといけないよ。あ、でも、今回はそんなの必要ないよ。だってどんなに冷静に判断したつもりでも相手が一枚も二枚も上手ならなんの意味もない。それは所詮”つもり”でしかないもの。


「アンタらアホちゃう?鎌鼬がウチの技やなんて誰がゆーた?鎌鼬はただこの場に風を集めただけの事や。」

「あ?何言ってんだテメェ?」

「見た目通り頭悪いんやね。なら説明したってどうせわからんやろ。それに百聞は一見にしかずゆーしな。身をもって体感せーや。」


ーーみくの身体を包む金色のエフェクトが黄金色に輝く。


「ーーシュタイフェブリーゼ」


ーーみくが両の手を前で交差させると集まっていた風がけたたましい音を立てて吹き上げる。その凄まじい風速により男たちの身体が一瞬でバラバラに引き裂かれ、肉片や血飛沫も風とともに跡形も無く吹き飛ばされる。
風の過ぎ去った廃工場跡には何も残らない。廃工場だった形跡すら何も無く、ただの荒野がそこには広がっていた。


「強っ…」


ーーみくの強さに驚愕しているように見える慎太郎。確かにその強さに驚いてはいるが、それと併せて『うわぁ…みくも技に名前つけちゃってるよ…恥ずかしくないのかな…絶対大人になったら黒歴史になって夜中に悶えちゃうぞ…』と、別の意味で驚愕していた。


ーー戦いを終えたみくが慎太郎たちの所へ戻って来る。ドヤりながら。


「終わったで。」

「すごいよみくちゃんっ!!さすがは”闘神”だねっ!!」

「こんなもん大した事やあらへんよ。」


ーー冷静な口調で言っているみくだが、美波が羨望の眼差しで見て来るので実はめっちゃ嬉しかった。


「ほら、どーやタロチャン。ウチはダメな子でしたかー?」

「侮ってすみませんでした。」


ーー慎太郎は深々と頭を下げるがそれでも心の中で『中二入ってんだからダメな子なのは間違いないんじゃねーかな。』と、まだ失礼な事を考えていた。


「そんなもんで許すわけないよね。足ナメさそ。」

「それやめない!?変態プレイやめようよ!?」

「私にも後からしてもらいますからねっ!!」

「ちょっと美波は黙っててくれる!?」


ーー戦闘が終わってイチャイチャし出す慎太郎たち。その百合百合しい光景をバディのおっさん2人は鼻息を荒くして眺めていた。


「あ、でもタロチャンが男に戻ってからね。今の姿でナメさせてもあんまり興奮しないから。」

「興奮って言っちゃったよこの子!?女子高生がそんなセリフ言っちゃダメだよ!?」

「そんじゃ戻ってからって事で。わかった?」


ーーなんだか怖い圧力をかけてくるみく。そんな様子を見てメンタル弱い慎太郎がとる行動は決まっている。


「…はい。」


ーー本当に情けない男である。
こうしてみくの力を知らしめて慎太郎sideの戦いは幕を閉じた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

無職だけど最強でした〜無職と馬鹿にされたが修行して覚醒したから無双してくる〜

えんじょい
ファンタジー
ある日、いつものように幼なじみと学校から帰宅している時に、交通事故に遭い幼なじみと共に死んでしまった… 気がつくとそこは異世界だった。 俺は転生してしまったらしい。 俺が転生してきた世界は、職というものがあり、その職によって人生が決まるという。 俺は職受礼の儀式という神々から職をもらう儀式で、無職という職を貰う。 どうやら無職というのは最弱の職らしい。 その職により俺は村から追放された。 それから修行を重ね数年後、初めてダンジョンをクリアした時に俺の職に変化が起きる。 俺の職がついに覚醒した。 俺は無職だけど最強になった。 無職で無双してやる! 初心者ですが、いい作品を書けるように頑張ります! 感想などコメント頂けると嬉しいです!

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

BLACK DiVA

宵衣子
ファンタジー
悪に染まった友達を止めるためにヒロインが奔走するお話です。(たぶん。笑) 更新不定期です。 多忙のため、何話か書き溜めて連続更新って形になるかと思います。 何話か更新したら間が結構空いてしまうと思いますが、楽しんで頂けたら幸いです(^^)

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

処理中です...