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第409話 それぞれのトート・シュトライテン 3
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ーー砦から煙が上がる。
敵の手により砦が落とされたのだろう。それを少し離れた森の中から見ている男と女がいる。
ーー砦から煙が上がり始めて十数分が経った頃、残党狩りをしている敵軍の軍勢が森へと到着した。
「ヘッヘッヘ、見つけたぜぇ!!」
「テメェらはもう包囲されてる。観念しな!!」
ーー敵軍の大将級と思わしき男たちが彼らに通告する。彼らの言う通り男と女を取り囲むような形で700人近いプレイヤーがその場に集まっていた。
「テメェらの『王』はどこだ?それともテメェらが『王』か?……ん?オイ、この女…水口杏奈じゃね?」
「うっわっ!!マジじゃん!!水口杏奈じゃん!!クッソ可愛いんだけど!!」
「しかも水着とか堪んね!!」
ーー敵軍の大将級たちが女を見て興奮している。
ーー女の方は水口杏奈。今一番人気のある芸能人だ。俳優としての仕事もしているがメインの仕事は歌を歌ったり、グラビアに出たりといった所謂アイドルだ。
少し長めの髪をアップにし、右手には厚めの本を持ち、服装は何故かビキニにビーサンという夏全開のビーチスタイル。撮影でもやっていたのかとツッコミを入れたくなる。
「ヘッ、流石は人気者のアイドル様だな。野郎どもがサカってやがるぜ。そんなカッコで来っからワリーんだよ。」
「うっさいなぁ。マイページで次の撮影の衣装決めてたんだからしょーがないでしょ。そういう凱亜だって仕事着じゃん。」
「俺はいつだってこのスタイルなんだよ。コレ以外だと落ち着かねぇ。」
「女を喰い物にするダメホストスタイルね。」
「あぁ!?」
ーー男の方は矢祭凱亜。俺'sヒストリー最強プレイヤーに位置付けられている”五帝”の一角である。手にしている武器は大槍。神聖さから察するに2段階解放ゼーゲンだ。そんな大槍を190cmを超える長身に筋肉質な身体から扱われる様は圧巻の一言だろう。
だがホスト感丸出しの服装と髪型にはいささか合わないと感じてしまう。そしてお約束である超絶イケメンという正に慎太郎の予想通りの展開である。
「凱亜…?」
ーー杏奈が呟いた言葉を敵軍の大将級の1人が聞き取る。そして凱亜の顔を見てそれに気づく。
「アイツ…!?矢祭凱亜じゃねぇか!?」
「あ?矢祭?お前、それって”五帝”のか!?」
「水口杏奈が今そう呼びやがった!!」
「そりゃ名前が一緒なだけじゃねぇか?」
「いや、間違いない。俺は前に矢祭と同じエリアに配置された事がある。間違いないなくアイツだった!!」
ーー敵軍が狼狽え出す様を見て杏奈はからかうような口調で凱亜を弄る。
「さっすが有名人。みんなビビっちゃってるじゃん。」
「うるせえ。」
ーー凱亜は凄くウザそうな顔で杏奈の弄りをあしらう。
「別に矢祭だからってビビっ事はねぇ。こっちはこんなにいんだ。矢祭殺して水口杏奈を頂いちまえばそれでオッケーだろ。」
「そうだな。名声は手に入るわ、あんな良い女は奴隷に出来るわで最高じゃねぇか。」
ーー敵軍の男たちが各々の武器を手にし、顔を欲望に染めながら杏奈たちに襲いかかろうとする。
だが杏奈を見て男の1人が何かに気づく。それと同時に男は戦慄に襲われ身震いが起こる。
「ん?どうしたよ謙也?」
「アレ…見ろよ…」
ーー謙也と呼ばれる男が杏奈の胸を指差す。
「ヘッヘッヘ、お前は胸が好きだもんなぁ。」
「ちげーよ…水口杏奈の左胸見て見ろよ…」
「あー?」
ーー謙也に言われ大将級の男が杏奈の左胸を見る。そしてそれに気づく。
「ただのタトゥーじゃねぇか。」
「タトゥーなんかマトモな芸能人が見える所に彫るわけねーだろ…特に水口杏奈みたいに清純派で売ってるようなアイドルなら尚更だ…」
ーー男たちの会話に凱亜が半笑いでツッコミを入れる。
「ハッ!清純派だってよ。この性悪女の本性知ったらコイツら卒倒すんじゃねぇか。」
「ひっどーい!!戻ったら美穂と幻夜に言う!!」
「オイ、やめろ。幻夜はともかく美穂に説教されると効くんだよ。」
ーー男たちは杏奈と凱亜を見ながら驚愕し始める。
「そ、そんなの偶々だろ!!シールかもしれねぇし!!」
ーー男たちの会話を聞き凱亜がネクタイを外し、ワイシャツのボタンを外して肌を露わにする。
「コイツの『紋』は本物だよ。シャクだけどな。」
ーー凱亜の胸に『紋』が無い事で男たちの顔が恐怖に染まる。
「あ、ありえねぇ…!?”五帝”の矢祭より水口杏奈のが上だってのか…!?」
「ビビんな!!別にどっちが上だろうとどうでもいい!!俺たちはこんだけの数がいんだ!!たった2人なんか目じゃねぇんだよ!!」
ーー男たちは怯えている。それでもそれを悟られないように懸命に努める。
「んじゃそろそろ終わりにしよっか。お風呂入りたいしお腹空いたし。」
「俺も風呂入りてぇな。」
「あはは。凱亜は潔癖だもんねー。」
「うるせえ。アンナ、どうする?俺が始末するか?」
「うーん、いいよ。私がやるから。」
「んじゃ任せた。」
ーー杏奈の言葉を聞き凱亜はそのまま地べたに座って腕組みをする。それを見て男たちの怒りが上昇する。
「テメェら…ナメてんのか?この数相手に女1人でやるってのか?あ?」
「そうだけど?」
ーー大将級の男の言葉に杏奈はしれっとした態度で返事をする。
「てゆーか別にナメてなんかいないよ?割と全力で倒そうと思ってるし。」
「ヘッ、面白え。だったらやってみろや!!」
「それじゃあ遠慮なく。」
ーー杏奈が手に持つ赤い本が黄金色に輝く。
そして杏奈の身体が金色のオーラに包まれ、瞳に蒼白い焔が灯る。
「『己が罪を認めず、煉獄に灼かれながら尚も朽ちぬ者。その罪を浄化し、天に還す為に我は逝こう。出でよ、リントヴルム。』」
ーー上空に無数の魔法陣が展開する。その魔法陣から焔が溢れ出し、赤い閃光が飛び交う中、空間を引き裂き中から赤い竜が現れる。
その大きさは20メートルはゆうに超えているであろう巨大さだ。絶対的なまでの威圧感、恐怖感、それを見るだけで大半のプレイヤーの戦意は喪失した。それでも大将級の連中の心は折れない。やってやる、倒してやる、そう意気込む気持ちは伝わって来た。
だが赤竜が咆哮をするとそんな気持ちは簡単に折れる。戦闘すら行われる事なく敵軍は水口杏奈の前に屈した。
「そんじゃ始めよっか。リントヴルムに勝手にかかって来ていいよ。」
ーーリントヴルムと呼ばれる赤竜の横に立つ杏奈が敵軍の男たちにそう伝える。だが男たちにもはや戦意は無い。
「いや…勘弁してくれ…俺たちはもうアンタらに逆らわない…俺たちを舎弟にしてくんねぇか!?必ず役に立ってみせる!!」
ーー大将級の男が杏奈へ降伏の姿勢を見せる。
「私たちは奴隷は持たない主義だから遠慮するかな。当然見逃す事もしない。最終的に残るのは1クランだけなんだから私たち以外は全滅させる。」
ーー杏奈を包む金色のオーラがより輝きを強める。
「死にたくなかったら必死に抗いなよ。でもそんなのムダだと思うけど。リントヴルム、お願い。」
ーー杏奈の呼びかけにリントヴルムが反応を示す。杏奈を背に乗せ上空へと羽ばたき、地上へ向けて魔法陣を展開させる。敵軍はそれを察知し、蜘蛛の子散らしたように逃げ惑う。だが絶対的な力の前に抗う事ほど無益な事は無い。
『ーーフェーゲフォイアー』
ーーリントヴルムが詠唱破棄魔法を発動し、アリスの放つ魔法の数十倍の威力のフェーゲフォイアーが地上へ向けて放たれる。凄まじい熱量のマグマの塊が雨のように降り注いでいく。地上では断末魔の叫びがあちこちで轟き、その紅き光景と相まって正に地獄の様相を呈している。だがそれもほんの数十秒の話だ。それが済めば静寂が戻り、辺りには何事もなかったかのような世界が広がる。
ーー決着がつくとリントヴルムは胡座をかいている凱亜の元へと降下する。
「相変わらずスゲェな。」
「これで詠唱破棄の下級魔法なんだからドラゴンの力はすごいよねー。」
「ちげーよ。リントヴルムもそうだが俺はアンナの事を言ってんだ。火の最上級魔法を使ってリントヴルムを召喚してるのがスゲェ。アインスの話じゃ中級魔法だって使えるプレイヤーはいねぇそうじゃねぇか。それがお前は最上級魔法を使える。ハンパじゃねぇよ。」
「凱亜が褒めるなんて明日は雪だね。撮影あるのにどうしてくれんの。」
「知るか。」
ーー2人は笑い合う。
「ま、それがみんなの力になれるなら私は嬉しいよ。私は絶対このゲームをクリアしたい。凱亜と美穂と幻夜と。誰1人欠ける事なく。」
「ああ、そうだな。誰が来ても俺がブチ殺す。 」
ーー彼らには絆があるのだろう。強い絆が。その気持ちはよく分かる。
「てかさ、美穂と幻夜大丈夫かな?」
「大丈夫だろ。2人とも鬼のように強えしな。仮に”五帝”がいやがっても負けやしねぇよ。リザルト部屋に行きゃ2人でいつも通りの顔してやがるだろうよ。」
「そうだよね。それじゃ暗くなって来たし元気よくリザルト部屋に行こっか。」
「ああ。」
ーー闇に包まれ2人の姿はエリアから消える。
ーーこれはもう1人の主人公、水口杏奈の一幕である。
敵の手により砦が落とされたのだろう。それを少し離れた森の中から見ている男と女がいる。
ーー砦から煙が上がり始めて十数分が経った頃、残党狩りをしている敵軍の軍勢が森へと到着した。
「ヘッヘッヘ、見つけたぜぇ!!」
「テメェらはもう包囲されてる。観念しな!!」
ーー敵軍の大将級と思わしき男たちが彼らに通告する。彼らの言う通り男と女を取り囲むような形で700人近いプレイヤーがその場に集まっていた。
「テメェらの『王』はどこだ?それともテメェらが『王』か?……ん?オイ、この女…水口杏奈じゃね?」
「うっわっ!!マジじゃん!!水口杏奈じゃん!!クッソ可愛いんだけど!!」
「しかも水着とか堪んね!!」
ーー敵軍の大将級たちが女を見て興奮している。
ーー女の方は水口杏奈。今一番人気のある芸能人だ。俳優としての仕事もしているがメインの仕事は歌を歌ったり、グラビアに出たりといった所謂アイドルだ。
少し長めの髪をアップにし、右手には厚めの本を持ち、服装は何故かビキニにビーサンという夏全開のビーチスタイル。撮影でもやっていたのかとツッコミを入れたくなる。
「ヘッ、流石は人気者のアイドル様だな。野郎どもがサカってやがるぜ。そんなカッコで来っからワリーんだよ。」
「うっさいなぁ。マイページで次の撮影の衣装決めてたんだからしょーがないでしょ。そういう凱亜だって仕事着じゃん。」
「俺はいつだってこのスタイルなんだよ。コレ以外だと落ち着かねぇ。」
「女を喰い物にするダメホストスタイルね。」
「あぁ!?」
ーー男の方は矢祭凱亜。俺'sヒストリー最強プレイヤーに位置付けられている”五帝”の一角である。手にしている武器は大槍。神聖さから察するに2段階解放ゼーゲンだ。そんな大槍を190cmを超える長身に筋肉質な身体から扱われる様は圧巻の一言だろう。
だがホスト感丸出しの服装と髪型にはいささか合わないと感じてしまう。そしてお約束である超絶イケメンという正に慎太郎の予想通りの展開である。
「凱亜…?」
ーー杏奈が呟いた言葉を敵軍の大将級の1人が聞き取る。そして凱亜の顔を見てそれに気づく。
「アイツ…!?矢祭凱亜じゃねぇか!?」
「あ?矢祭?お前、それって”五帝”のか!?」
「水口杏奈が今そう呼びやがった!!」
「そりゃ名前が一緒なだけじゃねぇか?」
「いや、間違いない。俺は前に矢祭と同じエリアに配置された事がある。間違いないなくアイツだった!!」
ーー敵軍が狼狽え出す様を見て杏奈はからかうような口調で凱亜を弄る。
「さっすが有名人。みんなビビっちゃってるじゃん。」
「うるせえ。」
ーー凱亜は凄くウザそうな顔で杏奈の弄りをあしらう。
「別に矢祭だからってビビっ事はねぇ。こっちはこんなにいんだ。矢祭殺して水口杏奈を頂いちまえばそれでオッケーだろ。」
「そうだな。名声は手に入るわ、あんな良い女は奴隷に出来るわで最高じゃねぇか。」
ーー敵軍の男たちが各々の武器を手にし、顔を欲望に染めながら杏奈たちに襲いかかろうとする。
だが杏奈を見て男の1人が何かに気づく。それと同時に男は戦慄に襲われ身震いが起こる。
「ん?どうしたよ謙也?」
「アレ…見ろよ…」
ーー謙也と呼ばれる男が杏奈の胸を指差す。
「ヘッヘッヘ、お前は胸が好きだもんなぁ。」
「ちげーよ…水口杏奈の左胸見て見ろよ…」
「あー?」
ーー謙也に言われ大将級の男が杏奈の左胸を見る。そしてそれに気づく。
「ただのタトゥーじゃねぇか。」
「タトゥーなんかマトモな芸能人が見える所に彫るわけねーだろ…特に水口杏奈みたいに清純派で売ってるようなアイドルなら尚更だ…」
ーー男たちの会話に凱亜が半笑いでツッコミを入れる。
「ハッ!清純派だってよ。この性悪女の本性知ったらコイツら卒倒すんじゃねぇか。」
「ひっどーい!!戻ったら美穂と幻夜に言う!!」
「オイ、やめろ。幻夜はともかく美穂に説教されると効くんだよ。」
ーー男たちは杏奈と凱亜を見ながら驚愕し始める。
「そ、そんなの偶々だろ!!シールかもしれねぇし!!」
ーー男たちの会話を聞き凱亜がネクタイを外し、ワイシャツのボタンを外して肌を露わにする。
「コイツの『紋』は本物だよ。シャクだけどな。」
ーー凱亜の胸に『紋』が無い事で男たちの顔が恐怖に染まる。
「あ、ありえねぇ…!?”五帝”の矢祭より水口杏奈のが上だってのか…!?」
「ビビんな!!別にどっちが上だろうとどうでもいい!!俺たちはこんだけの数がいんだ!!たった2人なんか目じゃねぇんだよ!!」
ーー男たちは怯えている。それでもそれを悟られないように懸命に努める。
「んじゃそろそろ終わりにしよっか。お風呂入りたいしお腹空いたし。」
「俺も風呂入りてぇな。」
「あはは。凱亜は潔癖だもんねー。」
「うるせえ。アンナ、どうする?俺が始末するか?」
「うーん、いいよ。私がやるから。」
「んじゃ任せた。」
ーー杏奈の言葉を聞き凱亜はそのまま地べたに座って腕組みをする。それを見て男たちの怒りが上昇する。
「テメェら…ナメてんのか?この数相手に女1人でやるってのか?あ?」
「そうだけど?」
ーー大将級の男の言葉に杏奈はしれっとした態度で返事をする。
「てゆーか別にナメてなんかいないよ?割と全力で倒そうと思ってるし。」
「ヘッ、面白え。だったらやってみろや!!」
「それじゃあ遠慮なく。」
ーー杏奈が手に持つ赤い本が黄金色に輝く。
そして杏奈の身体が金色のオーラに包まれ、瞳に蒼白い焔が灯る。
「『己が罪を認めず、煉獄に灼かれながら尚も朽ちぬ者。その罪を浄化し、天に還す為に我は逝こう。出でよ、リントヴルム。』」
ーー上空に無数の魔法陣が展開する。その魔法陣から焔が溢れ出し、赤い閃光が飛び交う中、空間を引き裂き中から赤い竜が現れる。
その大きさは20メートルはゆうに超えているであろう巨大さだ。絶対的なまでの威圧感、恐怖感、それを見るだけで大半のプレイヤーの戦意は喪失した。それでも大将級の連中の心は折れない。やってやる、倒してやる、そう意気込む気持ちは伝わって来た。
だが赤竜が咆哮をするとそんな気持ちは簡単に折れる。戦闘すら行われる事なく敵軍は水口杏奈の前に屈した。
「そんじゃ始めよっか。リントヴルムに勝手にかかって来ていいよ。」
ーーリントヴルムと呼ばれる赤竜の横に立つ杏奈が敵軍の男たちにそう伝える。だが男たちにもはや戦意は無い。
「いや…勘弁してくれ…俺たちはもうアンタらに逆らわない…俺たちを舎弟にしてくんねぇか!?必ず役に立ってみせる!!」
ーー大将級の男が杏奈へ降伏の姿勢を見せる。
「私たちは奴隷は持たない主義だから遠慮するかな。当然見逃す事もしない。最終的に残るのは1クランだけなんだから私たち以外は全滅させる。」
ーー杏奈を包む金色のオーラがより輝きを強める。
「死にたくなかったら必死に抗いなよ。でもそんなのムダだと思うけど。リントヴルム、お願い。」
ーー杏奈の呼びかけにリントヴルムが反応を示す。杏奈を背に乗せ上空へと羽ばたき、地上へ向けて魔法陣を展開させる。敵軍はそれを察知し、蜘蛛の子散らしたように逃げ惑う。だが絶対的な力の前に抗う事ほど無益な事は無い。
『ーーフェーゲフォイアー』
ーーリントヴルムが詠唱破棄魔法を発動し、アリスの放つ魔法の数十倍の威力のフェーゲフォイアーが地上へ向けて放たれる。凄まじい熱量のマグマの塊が雨のように降り注いでいく。地上では断末魔の叫びがあちこちで轟き、その紅き光景と相まって正に地獄の様相を呈している。だがそれもほんの数十秒の話だ。それが済めば静寂が戻り、辺りには何事もなかったかのような世界が広がる。
ーー決着がつくとリントヴルムは胡座をかいている凱亜の元へと降下する。
「相変わらずスゲェな。」
「これで詠唱破棄の下級魔法なんだからドラゴンの力はすごいよねー。」
「ちげーよ。リントヴルムもそうだが俺はアンナの事を言ってんだ。火の最上級魔法を使ってリントヴルムを召喚してるのがスゲェ。アインスの話じゃ中級魔法だって使えるプレイヤーはいねぇそうじゃねぇか。それがお前は最上級魔法を使える。ハンパじゃねぇよ。」
「凱亜が褒めるなんて明日は雪だね。撮影あるのにどうしてくれんの。」
「知るか。」
ーー2人は笑い合う。
「ま、それがみんなの力になれるなら私は嬉しいよ。私は絶対このゲームをクリアしたい。凱亜と美穂と幻夜と。誰1人欠ける事なく。」
「ああ、そうだな。誰が来ても俺がブチ殺す。 」
ーー彼らには絆があるのだろう。強い絆が。その気持ちはよく分かる。
「てかさ、美穂と幻夜大丈夫かな?」
「大丈夫だろ。2人とも鬼のように強えしな。仮に”五帝”がいやがっても負けやしねぇよ。リザルト部屋に行きゃ2人でいつも通りの顔してやがるだろうよ。」
「そうだよね。それじゃ暗くなって来たし元気よくリザルト部屋に行こっか。」
「ああ。」
ーー闇に包まれ2人の姿はエリアから消える。
ーーこれはもう1人の主人公、水口杏奈の一幕である。
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