俺'sヒストリー

かつしげ

文字の大きさ
上 下
403 / 539

第403話 卑怯なのは嫌いや

しおりを挟む
【 楓・アリス・みく 組 4日目 AM 1:32 自軍砦内東棟 】


ウチたちは夏目のいる東棟へと急ぐ。途中にプレイヤーたちがいるが楓チャンが容赦無く斬りまくる。敵も味方も関係なく斬りまくる。楓チャンが味方やなかったらと思うとゾッとするで。


『キャアアアッ!!』


東棟3階の階段を昇っていると女の人の悲鳴が聞こえて来た。


「女の悲鳴って事は夏目かもしれないわね。」

「せやね。」

「死角から中の様子を探りましょう。女性がピンチなら助けるかもだけど。」


ウチは楓チャンのその言葉がちょっと意外だった。女の人なら助けるってコトかな?確かにまだ女の人と相対してないけど楓チャンは女の人には優しいんかな?

ーー百合属性持ちだからそうなんじゃない?

そんな事を考えながら階段を駆け上がっているとあっという間に3階に着く。激しい戦闘音だ。ウチたちは互いに無言で合図を送る。
大広間の中の様子を伺ってみると30人ぐらいの男たちを相手に大男が長槍を持って戦っている。その後ろには女の人たち10人ぐらいが身を寄せ合って震えがながら顛末を見届けている。夏目の周囲には死体がゴロゴロと転がってる。10人ぐらいやろか。この図式を見る限りだと夏目が女の人を守りながら戦っとるよーに見えるけど実際どうなんやろ?みんなに聞いてみよかな。


「…アレって夏目が女の人守っとるんかな?」

「…どうでしょう?この状況だけみるとそう見えますがなんとも言えませんよね。」

ウチが2人に聞いてみるとアリスチャンはウチが思ったのと同じような答えが返って来る。やっぱり判断つかんよね。


「…女を自分の所有物だと思って守ってるだけじゃないの。自分の財産奪われそうになったら守るでしょ?それと同じよ。」


楓チャンはなんだか不愉快そうな顔でウチの質問に答える。楓チャンは男嫌いなんかな?それなら行動にも納得いく。あー、楓チャンは女の子が好きなんかな?だから女の子に優しいんか。でもタロチャンの事は好きなんだよね?うーん、わからん。

ウチが割とどうでもいい事を考えていると夏目たちが会話を始め出す。


「流石は『大蛇』の夏目竜也だな。精鋭相手にこの立ち回り、それも女を守りながらってトコが見事としか言いようがねぇ。」


敵側のリーダーっポイ男が上から目線で夏目を讃えている。てかコイツら卑怯だよね。多勢に無勢すぎやん。


「テメェら程度が俺様とケンカすんならこれぐらいのハンデがなきゃ勝負になんねぇだろ。」

「だがチィと調子に乗りすぎだな。俺たちは10人がゼーゲンを持ってる。その内解放済みのゼーゲンは5人。2段階解放は3人もいんだぜ?テメェ1人でどうにかなるようなレベルじゃねぇだろ。」

「ククク、なんか知らねえがツイてねぇなぁ夏目。こんな振り分けもあるんだなぁ。お前以外にゼーゲン持ちがいねぇなんてよ。」


敵側の男たちが夏目を嘲笑っている。
…なんかムカつくなぁ。別に夏目なんて助ける義理はないけどウチは大人数で一人を囲むっていうのが大嫌いや。そんなんフェアやない。正々堂々勝負しろって話や。


「それがどうした?俺様のゼーゲンだって2段階解放だぜ?この長槍でテメェらみんな貫いてやるよ。」

「その強がりがどこまで続くか見せてもらうぜ。オイ、やっちまえや。」


リーダー格の男の一声で7人のゼーゲン持ちが夏目に襲いかかる。解放済み5人と未解放2人の7人だ。実力的には圧倒的に優っているが連携の取れた攻撃に加えて1対7という数の差、それに後ろの女の子を守りながらの戦いにより夏目の劣勢は明白だ。加えて2段階解放済みの3人が加われば夏目の負けは確定的なものになる。せめて女の子を見捨てれば戦況は変わるだろう。なんでこの男は見捨てへんのやろ。今まで見た来たクズ男とは少し違うんやろか。いや、楓チャンの言う通りに自分の所有物だと思っとるだけかもしれん。タロチャンみたいな考えなわけがない。でも…多対一ってのは嫌いや。


「…楓チャン、ごめん。ウチ行ってくるわ。」

「…夏目に加勢するって事?別にあんな男に情けをかける事なんてないんじゃない?それに夏目が背後から襲ってこないとも言い切れないわよ。」

「…それはわかっとる。でも大勢で一人をやるってのが気に入らんねん。」


ウチの言葉に対して楓チャンは目を合わせてくれない。ウチが自分勝手な事を言ってるのはわかってる。最終的に1つのクランしか残らないのに他の連中に情けをかけたってしゃーない。それにここで敵軍の連中が夏目を倒してくれるならウチらにとってはノーリスク。どう見たってウチのただのワガママや。サブリーダーの楓チャンの方針に逆らっとるだけや。奴隷のウチがそんな事を言う立場やない。ううん、そんな事を言っていいわけがない。クランを追放されたっておかしくないぐらいの事をしようとしとる。でも…そんな卑怯なのは許せんのや。


「…楓さん、私もあの光景は好きじゃありません。あれはただのイジメです。前回のイベントの時に白河って人を4人で囲んで戦った私たちが言えた義理ではないかもしれませんけど…」


アリスチャンがウチを擁護してくれる。


「…まあ…胸くそ悪いのは確かだけどね。はあ…仕方ないわね。みくちゃん、行くわよ。アリスちゃんはここで隠れてて。周囲は警戒してないとダメよ?」

「…ええの?」

「…ここで見捨てたらみくちゃんの中で後を引きずる事になるでしょ。私は夏目を助けるんじゃなくてみくちゃんを助けるの。それにあそこの女の子たちも助けてあげなくちゃいけないし。」

「…楓チャン、ありがと。」

「…じゃ、行くわよ。さっさとケリつけて旅行に行かなくちゃ。」

「うんっ!」


ーーみくと楓がゼーゲンを装備し夏目の援護へと向かう。

ーーみくたち側のイベントは佳境を迎える。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈 
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

無職だけど最強でした〜無職と馬鹿にされたが修行して覚醒したから無双してくる〜

えんじょい
ファンタジー
ある日、いつものように幼なじみと学校から帰宅している時に、交通事故に遭い幼なじみと共に死んでしまった… 気がつくとそこは異世界だった。 俺は転生してしまったらしい。 俺が転生してきた世界は、職というものがあり、その職によって人生が決まるという。 俺は職受礼の儀式という神々から職をもらう儀式で、無職という職を貰う。 どうやら無職というのは最弱の職らしい。 その職により俺は村から追放された。 それから修行を重ね数年後、初めてダンジョンをクリアした時に俺の職に変化が起きる。 俺の職がついに覚醒した。 俺は無職だけど最強になった。 無職で無双してやる! 初心者ですが、いい作品を書けるように頑張ります! 感想などコメント頂けると嬉しいです!

処理中です...