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第379話 彼からの信頼
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「間に合ったようだな。まだ練習中だしその間に俺らも昼メシ食っちゃおう。」
私たちは練習が終わってから都内にある野球場へと向かった。目的は優勝をする上での最大の障害である3Aの2人が所属する成城リトルシニアを偵察する為。食事を摂ったら私も何か貢献出来るように考えないと。でも先ずは…タロウさんの手料理よね。
タロウさんが手に持っている保冷バッグからサンドイッチが入ってると思われるケースとウエットティッシュを取り出す。
「さっきちゃんと手を洗ったけど食べる前にはもう一度除菌しないとな。ほい、ウエットティッシュ。」
タロウさんが手渡して来るので私と未央はそれを受け取る。ちゃんとアルコール除菌のやつだ。
「準備がイイねー!センセー絶対モテるでしょ。」
「あはは、そうだったらいいな。」
本当にこの人は有能よね。まあ…今はそんな事より…タロウさんの手料理が早く食べたいわ。……手料理食べさせる前に食べさせてもらうのはどうかと思うけど。
ーー楓ちゃんは料理出来ないもんね。一度カレー作ろうとして慎太郎のマンション燃やしかけたんだよね。
私の料理技術を上げるのは今後の課題として今はタロウさんの手料理を全力で味わおう。ウフフ、こんなの牡丹ちゃんが知ったら泣いて羨ましがるだろうな。
ーーそれぐらいで済めばいいけどね。
「口に合うかわからんけど気持ちは入ってるから。」
そう言ってタロウさんがケースを開ける。中に入っていたのはタマゴサンド、ハムサンド、トマトサンドにポテトサラダサンドの4種。そして唐揚げだ。凄く美味しそうじゃない。タロウさんって料理出来たのね。
「うわっ!美味しそう!えっ!?コレって楓の家のシェフに作ってもらったの?」
「いや、俺が作ったやつだよ。唐揚げもイチから揚げた。だから2人の口には合わないかもしれんけど。」
ここまで本格的だとは思わなかった。家にある食材を挟んだだけだと思ってた。コレ相当手が込んでるわよね。タマゴサンドなんてどうやって作るのかしら。
「ね、食べていい?」
「おう。」
「楽しみー!!楓、食べよー!!」
「そうね。」
私は先ずはタマゴサンドを手に取る。未央はポテトサラダサンド。私たちは互いに目配せをしてそれを口へと運んで一噛みする。
お、おいしい!?クリーミーさと塩加減が絶妙じゃない!?今まで食べたタマゴサンドの中でダントツに美味しいわよ!?
「おいしー!?何これ!?ポテトサラダも自分で作ったの!?」
「おう。」
「ウチのシェフよりおいしーんだけど!?」
「このタマゴサンドも凄く美味しいですよ。」
「美味しいなら良かった。」
そう言ってタロウさんは嬉しそうな顔を私に見せる。これだけ料理が上手ならやっぱりタロウさんには家にいてもらって大丈夫ね。主夫やってもらって私が稼げばいいもの。
「唐揚げもおいしー!!センセーやってないでシェフになった方がいいよ!!」
「あはは、そんなに美味しいって思ってもらえるなら作った甲斐があったよ。お、練習は終わりか。」
タロウさんがそう言うのでグラウンドに目をやる。両チームが集まり整列をしていた。そうよね。今は浮かれてる場合じゃなくてシーンクリアに集中しないと。私たちが優勝する為の最大の障害は3A。その中心選手である2人を抑える方法を考えるのが今日の課題。
「未央、あの2番と4番の子でいいんだよね?」
「うん。」
背番号2番の人は170cm以上ありそうな人だ。大人の私も170あるけど中学女子でその身長はかなり大きいわよね。
対する背番号4番の人は平均的な中学女子の身長だ。体格だけ見るならば普通の子にしか見えないがレベルが高い環境でましてや男子と混ざってやってレギュラーを奪い取るのだから相当なポテンシャルを秘めているのだろう。
「スクリーンにオーダーが表示されたな。どれどれ…本田って子が4番で三条って子は通常通り1番か。未央の代わりで4番に入るんだからやっぱり相当な強打者って事か。」
「だね。本田先輩はホームランだけで言うなら私より上かな。」
「あの体格だからな。あ、楓、自分が投げてるつもりで見ていて。」
「どういうことですか?」
「相手ピッチャーの球種はチェンジアップとシンカーなんだよ。ストレートは楓より速いだろうけどイメージ的には近いと思う。」
「へー!そこまで調べてきたんだー!さっすがー!」
本当にこの人は一生懸命やってくれる。私の為に。なんか嬉しいな。
「わかりました。きっちりシミュレーションしてみます。」
だが、結果としては私の想像していたよりも遥かに厳しいものであった。
試合の結果は7対1。圧倒的大差という訳ではないが中身が悪い。
初回、先頭の三条先輩がヒットで塁に出る。2番、3番は打ち取られるが4番の本田先輩が先制のツーランホームランで2点を先取する。
3回、三条先輩がツーベースヒットで塁に出る。2番はライトフライで凡退するが続く3番はフォアボールで塁に出る。ツーアウト一、二塁となり本田先輩が走者一掃のタイムリーツーベースヒットを放ちここで4点目。
5回、3番から始まる成城打線だが3番が打ち取られ、ワンナウトランナー無し。だが4番の本田先輩が場外へと運ぶソロホームランで5点目。
7回、1番から始まる好打順で初回と同じ三条先輩のヒットと本田先輩のこの日3本目となるツーランホームランで7点目。
2人は共に4打数4安打。圧倒的だった。
「…で、どうよ?」
未央が笑顔のない顔でタロウさんに尋ねる。どれだけ考えが甘かったのか思い知らされた。素人の私にこの2人を抑えられるとは到底思えない。どうすればいいのかもわからない。途方に暮れそうだった。
「んー…想像以上だったかな。」
「勝算は?」
未央がズバッと聞く。あまりにもハッキリと聞くのでなんだか胸がえぐられるような気分になる。
「楓なら大丈夫だよ。きっと抑えてくれる。」
「えっ?」
想像していなかったタロウさんの言葉に私は素っ頓狂な声を出してしまう。
タロウさんがこちらを向き私に微笑みかける。
「あのピッチャーが楓より下だとは俺は思わない。楓ならやれるよ。俺は信じてる。」
「タロウさん…」
ーー2人が見つめ合う。とても良い雰囲気だ。
「ふぅーん。」
ーーもう1人がいなければ。
「お熱いですなぁ。」
「未央!!」
ーー楓のシーンもいよいよ終盤に突入する。
私たちは練習が終わってから都内にある野球場へと向かった。目的は優勝をする上での最大の障害である3Aの2人が所属する成城リトルシニアを偵察する為。食事を摂ったら私も何か貢献出来るように考えないと。でも先ずは…タロウさんの手料理よね。
タロウさんが手に持っている保冷バッグからサンドイッチが入ってると思われるケースとウエットティッシュを取り出す。
「さっきちゃんと手を洗ったけど食べる前にはもう一度除菌しないとな。ほい、ウエットティッシュ。」
タロウさんが手渡して来るので私と未央はそれを受け取る。ちゃんとアルコール除菌のやつだ。
「準備がイイねー!センセー絶対モテるでしょ。」
「あはは、そうだったらいいな。」
本当にこの人は有能よね。まあ…今はそんな事より…タロウさんの手料理が早く食べたいわ。……手料理食べさせる前に食べさせてもらうのはどうかと思うけど。
ーー楓ちゃんは料理出来ないもんね。一度カレー作ろうとして慎太郎のマンション燃やしかけたんだよね。
私の料理技術を上げるのは今後の課題として今はタロウさんの手料理を全力で味わおう。ウフフ、こんなの牡丹ちゃんが知ったら泣いて羨ましがるだろうな。
ーーそれぐらいで済めばいいけどね。
「口に合うかわからんけど気持ちは入ってるから。」
そう言ってタロウさんがケースを開ける。中に入っていたのはタマゴサンド、ハムサンド、トマトサンドにポテトサラダサンドの4種。そして唐揚げだ。凄く美味しそうじゃない。タロウさんって料理出来たのね。
「うわっ!美味しそう!えっ!?コレって楓の家のシェフに作ってもらったの?」
「いや、俺が作ったやつだよ。唐揚げもイチから揚げた。だから2人の口には合わないかもしれんけど。」
ここまで本格的だとは思わなかった。家にある食材を挟んだだけだと思ってた。コレ相当手が込んでるわよね。タマゴサンドなんてどうやって作るのかしら。
「ね、食べていい?」
「おう。」
「楽しみー!!楓、食べよー!!」
「そうね。」
私は先ずはタマゴサンドを手に取る。未央はポテトサラダサンド。私たちは互いに目配せをしてそれを口へと運んで一噛みする。
お、おいしい!?クリーミーさと塩加減が絶妙じゃない!?今まで食べたタマゴサンドの中でダントツに美味しいわよ!?
「おいしー!?何これ!?ポテトサラダも自分で作ったの!?」
「おう。」
「ウチのシェフよりおいしーんだけど!?」
「このタマゴサンドも凄く美味しいですよ。」
「美味しいなら良かった。」
そう言ってタロウさんは嬉しそうな顔を私に見せる。これだけ料理が上手ならやっぱりタロウさんには家にいてもらって大丈夫ね。主夫やってもらって私が稼げばいいもの。
「唐揚げもおいしー!!センセーやってないでシェフになった方がいいよ!!」
「あはは、そんなに美味しいって思ってもらえるなら作った甲斐があったよ。お、練習は終わりか。」
タロウさんがそう言うのでグラウンドに目をやる。両チームが集まり整列をしていた。そうよね。今は浮かれてる場合じゃなくてシーンクリアに集中しないと。私たちが優勝する為の最大の障害は3A。その中心選手である2人を抑える方法を考えるのが今日の課題。
「未央、あの2番と4番の子でいいんだよね?」
「うん。」
背番号2番の人は170cm以上ありそうな人だ。大人の私も170あるけど中学女子でその身長はかなり大きいわよね。
対する背番号4番の人は平均的な中学女子の身長だ。体格だけ見るならば普通の子にしか見えないがレベルが高い環境でましてや男子と混ざってやってレギュラーを奪い取るのだから相当なポテンシャルを秘めているのだろう。
「スクリーンにオーダーが表示されたな。どれどれ…本田って子が4番で三条って子は通常通り1番か。未央の代わりで4番に入るんだからやっぱり相当な強打者って事か。」
「だね。本田先輩はホームランだけで言うなら私より上かな。」
「あの体格だからな。あ、楓、自分が投げてるつもりで見ていて。」
「どういうことですか?」
「相手ピッチャーの球種はチェンジアップとシンカーなんだよ。ストレートは楓より速いだろうけどイメージ的には近いと思う。」
「へー!そこまで調べてきたんだー!さっすがー!」
本当にこの人は一生懸命やってくれる。私の為に。なんか嬉しいな。
「わかりました。きっちりシミュレーションしてみます。」
だが、結果としては私の想像していたよりも遥かに厳しいものであった。
試合の結果は7対1。圧倒的大差という訳ではないが中身が悪い。
初回、先頭の三条先輩がヒットで塁に出る。2番、3番は打ち取られるが4番の本田先輩が先制のツーランホームランで2点を先取する。
3回、三条先輩がツーベースヒットで塁に出る。2番はライトフライで凡退するが続く3番はフォアボールで塁に出る。ツーアウト一、二塁となり本田先輩が走者一掃のタイムリーツーベースヒットを放ちここで4点目。
5回、3番から始まる成城打線だが3番が打ち取られ、ワンナウトランナー無し。だが4番の本田先輩が場外へと運ぶソロホームランで5点目。
7回、1番から始まる好打順で初回と同じ三条先輩のヒットと本田先輩のこの日3本目となるツーランホームランで7点目。
2人は共に4打数4安打。圧倒的だった。
「…で、どうよ?」
未央が笑顔のない顔でタロウさんに尋ねる。どれだけ考えが甘かったのか思い知らされた。素人の私にこの2人を抑えられるとは到底思えない。どうすればいいのかもわからない。途方に暮れそうだった。
「んー…想像以上だったかな。」
「勝算は?」
未央がズバッと聞く。あまりにもハッキリと聞くのでなんだか胸がえぐられるような気分になる。
「楓なら大丈夫だよ。きっと抑えてくれる。」
「えっ?」
想像していなかったタロウさんの言葉に私は素っ頓狂な声を出してしまう。
タロウさんがこちらを向き私に微笑みかける。
「あのピッチャーが楓より下だとは俺は思わない。楓ならやれるよ。俺は信じてる。」
「タロウさん…」
ーー2人が見つめ合う。とても良い雰囲気だ。
「ふぅーん。」
ーーもう1人がいなければ。
「お熱いですなぁ。」
「未央!!」
ーー楓のシーンもいよいよ終盤に突入する。
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