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第291話 慎太郎の成長
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ーーリリとの戦闘が始まり十数分が経過した。慎太郎がゼーゲンを何度も振るがリリへとその刃が届く事は無い。幾度と無く振った刃は空を切り、カウンターでリリの拳や蹴りを貰う事となる。しかしながら拳や蹴りを貰うとは言ったが、実際に喰らった訳では無い。全て寸止めで終わり、慎太郎は一つのダメージも受けてはいない。依然としてリリからは凄まじいプレッシャーが放たれてはいるがそれは慎太郎の実戦での力を図る為の事だろう。戦いが始まる前の強い言葉も慎太郎を嗾ける為の芝居。そしてそれは慎太郎も既に理解している。そんなリリの思いを理解しているからこそ慎太郎も攻撃の手を緩めない。全力で当たるのがリリの思いに対する応え。そう思うからこそ慎太郎はリリへ全力で剣を振るうのだ。
当たらねぇ。カスリもしねぇ。それどころか剣を使わせる事すら出来てねぇ。強えのはわかってるけどここまで遠いのかよ。
ーーそう、リリは慎太郎に危害を加えるつもりは毛頭無いが、寸止めで終わった攻撃は全て急所を突いている。その回数は183回。本当ならこの十数分の間に慎太郎は183回死んでいるのだ。
”剣聖”の名を継ぐ者へ届く刃はあまりにも遠いものであった。
「うん、こんなもんかな。」
ーーリリがそう言うと後方へ大きく跳ねる。
「タロウくんの力はわかったから終わりにしよっか。」
ーーリリが戦闘の終了を慎太郎へと告げる。
「はあっ…!はあっ…!ま…まだ終わってねぇよ…!」
ーー完全にバテている慎太郎だが、まだ諦めきれないのだろう。または、剣すら使ってもらえないのは彼の中のプライドが許さないのかもしれない。何にしても慎太郎の目はまだ死んではいなかった。
「もう終わりだよ。それともリリちゃんの事が憎い?さっきあんな言い方したから嫌いなっちゃった?」
「…そんな訳ないだろ。さっきのはリリの本心じゃなくて、俺をやる気にさせる為のもんだろ。それぐらいわかるよ。」
ーー慎太郎のその言葉にリリは嬉しそうな顔をする。
「…なるほどね。あの子の気持ちもわからなくはないかな。」
「えっ?なんだって?」
「なんでもな~い。じゃ、もう戦いは終わりね。Okay ?」
「オッケー。」
ーー慎太郎がゼーゲンを鞘に収め、ラウムの中へとしまい込む。
「よしよし。それじゃ講評ね~。正直、剣の腕は悪くないよ。センスは間違いなくある。」
「マジっすか!?師匠に褒められるとマジで嬉しいんですけど。」
「あはは。良かったね~!タロウくん、出来る子だよ~!」
ーー慎太郎はあまり人から認められた事が無い為、リリに褒められて心の底から嬉しかった。
「それなのに楓ちゃん、牡丹ちゃんとの差があるのは呼吸を読んで無い所だよ。」
「呼吸?気配を探る的な?」
「ま~、近いといえば近いかな~?戦いにおいて相手の呼吸を読む事は大事なの。呼吸を読む事によって気配を消したり、攻撃の察知、隙を見つけたり出来る。基本でもあるけど極意でもある、それだけ重要な事なんだよ。」
あー、牡丹がよく言ってるやつか。俺には気配なんてさっぱりわからなかったけど牡丹は普通にわかっていた。牡丹がいなければ杉沢村に行く途中の道でヘンカーに殺されてたかもわからんもんな。そういえば楓さんもそんな事言ってたし。2人の強さの理由がわかった気がする。才能の問題なんだろうな。俺とは違うもんな。
「つまりは才能って事だよね…?俺は才能無いから諦めろ的な?」
才能無い奴は何をやってもダメだもんな。俺には相応しい末路なのかもしれない。
「才能?う~ん?才能は確かにあるかもしれないよね~。努力だけでどうにかなる事なんて中学生ぐらいまでじゃないかな~?全くセンスが無い人が強くなれるわけないし。」
だよね。うん、知ってた。
「でもその才能って言葉を使うならタロウくんにはそれがあるんじゃないかな?」
「えっ?あんの?」
ーー慎太郎は予想だにしていない言葉をリリが発するので素っ頓狂な声を出してしまう。
「うん。少なくとも私はそれがあると思うよ。タロウくんは技術が不足してるだけだよ。」
「じゃあ俺もその呼吸を読むってのが出来るようになるのか?」
「もちろん。」
ーーリリがニコっと笑って慎太郎に答える。その言葉を聞いて慎太郎の身体は打ち震えていた。やっと自分にも強くなるチャンスが来る。それによる喜びに満ち溢れていた。
「俺は、俺はどうすればいい!?何でもする!!」
ーー慎太郎がリリの両肩を掴み必死に懇願する。タンクトップにより露出している生肌を掴みながら。
「全ての物から呼吸を感じてみて。生き物でも、生きてない物でも、全ての物は呼吸をしている。それを感じてみて。」
「うっ…超難しいな…」
ーー困った顔をする慎太郎。リリはそんな慎太郎を見ながら慎太郎の手を取ると、そのままその手を自分の胸へと持ってくる。
「おおおお!?ちょ、ちょっと何してんの!?」
ーー女の胸など触ったのは初めてな慎太郎は動揺しまくる。服の上からだがタンクトップ一枚しか着ていないリリの胸の感触がしっかりわかる慎太郎は動揺しまくる。
「感じるでしょ?」
「な、な、な、何が!?」
「私がここにいるって。」
「そりゃあ感じるでしょ!?」
「そういうコトだよ。」
「はい!?」
「今、タロウくんが感じてる感覚を全ての物からも感じとってみて。きっと出来るようになるから。」
ーー真剣な眼差しで見つめるリリを見て慎太郎から恥ずかしさが消える。きちんと今感じている感覚を忘れないように努める。
「…出来るかな?」
「うん、大丈夫。だって私の弟子でしょ?」
ーーリリが軽く微笑んで慎太郎の答えを待つ。
「…へっ。やってやるさ。師匠に恥をかかせる事なんて出来ないからな。速攻で習得してやるさ。」
「あはは。じゃ、それは宿題ね~?次に会う時はそれが出来てる前提だよ~?」
「おう。今日中にマスターしてやる。んで”具現”を使ってやるさ。」
ーー慎太郎がニカッと笑い、リリの言葉に応える。
「それじゃ、今日はここまでね。入替戦、気をつけてね。」
「ありがとう。リリも気をつけて。」
「あはは、ありがとう。またね、タロウくん。」
「おう。また。」
ーーそう言ってリリは公園から姿を消す。それを見届けた慎太郎も公園から出て自宅へと戻った。
帰る道々、慎太郎はリリから教わった感覚をあらゆる物から感じ取る特訓をしながら帰った。慎太郎はそれが楽しかった。一歩ずつ自分が強くなる事、自分の力を信じてくれている人がいるという事。それらの事が慎太郎にはとても嬉しかったのだ。
当たらねぇ。カスリもしねぇ。それどころか剣を使わせる事すら出来てねぇ。強えのはわかってるけどここまで遠いのかよ。
ーーそう、リリは慎太郎に危害を加えるつもりは毛頭無いが、寸止めで終わった攻撃は全て急所を突いている。その回数は183回。本当ならこの十数分の間に慎太郎は183回死んでいるのだ。
”剣聖”の名を継ぐ者へ届く刃はあまりにも遠いものであった。
「うん、こんなもんかな。」
ーーリリがそう言うと後方へ大きく跳ねる。
「タロウくんの力はわかったから終わりにしよっか。」
ーーリリが戦闘の終了を慎太郎へと告げる。
「はあっ…!はあっ…!ま…まだ終わってねぇよ…!」
ーー完全にバテている慎太郎だが、まだ諦めきれないのだろう。または、剣すら使ってもらえないのは彼の中のプライドが許さないのかもしれない。何にしても慎太郎の目はまだ死んではいなかった。
「もう終わりだよ。それともリリちゃんの事が憎い?さっきあんな言い方したから嫌いなっちゃった?」
「…そんな訳ないだろ。さっきのはリリの本心じゃなくて、俺をやる気にさせる為のもんだろ。それぐらいわかるよ。」
ーー慎太郎のその言葉にリリは嬉しそうな顔をする。
「…なるほどね。あの子の気持ちもわからなくはないかな。」
「えっ?なんだって?」
「なんでもな~い。じゃ、もう戦いは終わりね。Okay ?」
「オッケー。」
ーー慎太郎がゼーゲンを鞘に収め、ラウムの中へとしまい込む。
「よしよし。それじゃ講評ね~。正直、剣の腕は悪くないよ。センスは間違いなくある。」
「マジっすか!?師匠に褒められるとマジで嬉しいんですけど。」
「あはは。良かったね~!タロウくん、出来る子だよ~!」
ーー慎太郎はあまり人から認められた事が無い為、リリに褒められて心の底から嬉しかった。
「それなのに楓ちゃん、牡丹ちゃんとの差があるのは呼吸を読んで無い所だよ。」
「呼吸?気配を探る的な?」
「ま~、近いといえば近いかな~?戦いにおいて相手の呼吸を読む事は大事なの。呼吸を読む事によって気配を消したり、攻撃の察知、隙を見つけたり出来る。基本でもあるけど極意でもある、それだけ重要な事なんだよ。」
あー、牡丹がよく言ってるやつか。俺には気配なんてさっぱりわからなかったけど牡丹は普通にわかっていた。牡丹がいなければ杉沢村に行く途中の道でヘンカーに殺されてたかもわからんもんな。そういえば楓さんもそんな事言ってたし。2人の強さの理由がわかった気がする。才能の問題なんだろうな。俺とは違うもんな。
「つまりは才能って事だよね…?俺は才能無いから諦めろ的な?」
才能無い奴は何をやってもダメだもんな。俺には相応しい末路なのかもしれない。
「才能?う~ん?才能は確かにあるかもしれないよね~。努力だけでどうにかなる事なんて中学生ぐらいまでじゃないかな~?全くセンスが無い人が強くなれるわけないし。」
だよね。うん、知ってた。
「でもその才能って言葉を使うならタロウくんにはそれがあるんじゃないかな?」
「えっ?あんの?」
ーー慎太郎は予想だにしていない言葉をリリが発するので素っ頓狂な声を出してしまう。
「うん。少なくとも私はそれがあると思うよ。タロウくんは技術が不足してるだけだよ。」
「じゃあ俺もその呼吸を読むってのが出来るようになるのか?」
「もちろん。」
ーーリリがニコっと笑って慎太郎に答える。その言葉を聞いて慎太郎の身体は打ち震えていた。やっと自分にも強くなるチャンスが来る。それによる喜びに満ち溢れていた。
「俺は、俺はどうすればいい!?何でもする!!」
ーー慎太郎がリリの両肩を掴み必死に懇願する。タンクトップにより露出している生肌を掴みながら。
「全ての物から呼吸を感じてみて。生き物でも、生きてない物でも、全ての物は呼吸をしている。それを感じてみて。」
「うっ…超難しいな…」
ーー困った顔をする慎太郎。リリはそんな慎太郎を見ながら慎太郎の手を取ると、そのままその手を自分の胸へと持ってくる。
「おおおお!?ちょ、ちょっと何してんの!?」
ーー女の胸など触ったのは初めてな慎太郎は動揺しまくる。服の上からだがタンクトップ一枚しか着ていないリリの胸の感触がしっかりわかる慎太郎は動揺しまくる。
「感じるでしょ?」
「な、な、な、何が!?」
「私がここにいるって。」
「そりゃあ感じるでしょ!?」
「そういうコトだよ。」
「はい!?」
「今、タロウくんが感じてる感覚を全ての物からも感じとってみて。きっと出来るようになるから。」
ーー真剣な眼差しで見つめるリリを見て慎太郎から恥ずかしさが消える。きちんと今感じている感覚を忘れないように努める。
「…出来るかな?」
「うん、大丈夫。だって私の弟子でしょ?」
ーーリリが軽く微笑んで慎太郎の答えを待つ。
「…へっ。やってやるさ。師匠に恥をかかせる事なんて出来ないからな。速攻で習得してやるさ。」
「あはは。じゃ、それは宿題ね~?次に会う時はそれが出来てる前提だよ~?」
「おう。今日中にマスターしてやる。んで”具現”を使ってやるさ。」
ーー慎太郎がニカッと笑い、リリの言葉に応える。
「それじゃ、今日はここまでね。入替戦、気をつけてね。」
「ありがとう。リリも気をつけて。」
「あはは、ありがとう。またね、タロウくん。」
「おう。また。」
ーーそう言ってリリは公園から姿を消す。それを見届けた慎太郎も公園から出て自宅へと戻った。
帰る道々、慎太郎はリリから教わった感覚をあらゆる物から感じ取る特訓をしながら帰った。慎太郎はそれが楽しかった。一歩ずつ自分が強くなる事、自分の力を信じてくれている人がいるという事。それらの事が慎太郎にはとても嬉しかったのだ。
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