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第208話 エリアボスってなんなんだろう
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【 慎太郎・牡丹 組 3日目 PM 8:39 洋館 本館 1F 通路 】
ーーアインスから”特殊装備”『フライハイト』と『フリーデン』、それにアンドロメダ座の鍵を受け取った慎太郎と牡丹は破竹の勢いで脱出口への道を切り開いていた。
途中でのプレイヤーやゾルダードとの戦闘など物ともせずあっという間に駆けていった。
ーーそして1F正面エントランスへの扉を開けると、今までとは違う狂気に満ちた地獄絵図のようなフロアが広がっていた。
床や壁には夥しい血が付着し、臓物と思われる肉片が各所に散らばっている。
中でも一番の猟奇さが出ているのは玄関扉の前に綺麗に並べられた生首だ。その数は50を軽く超えている。一見オブジェのように置かれてはいるが明らかに人間の生首である。
「…なんか人の死に慣れたっていうか…こんな光景が見慣れたっていうか…この感覚ヤバいよな。」
「そうですね。普通に生きていたらこのような事は物語の中でしか起こり得ない事です。」
「そんで極め付けはあそこにいる殺人鬼とのエンカウントだよな。」
ーー慎太郎が指を指す方角に不規則に気持ちの悪い動きをする3mは超えるであろう化け物がいた。顔が頭以外に両肩にもあり、腕の太さと長さは常人の倍、そして身体は鱗のようなもので覆われている完全なる化け物だ。
「はい。人間では絶対勝てない化け物から逃げないと生きては帰れない、B級ホラーによくある展開です。」
「ちょっとああいうのは俺の趣味とは違うなぁ。人型の奴じゃないとホラー感が台無しなんだよなぁ。」
「ふふふ、やはり私たちは感覚が同じなのですね。私も同じ事を思っておりました。」
「フッ、流石は牡丹だな。これが終わってビデオ屋に行くのが楽しみだぜ。」
ーーまたバカップルがイチャつき始めた時であった。
『ギェェゲェェェェゲ!!!!』
ーー化け物が奇声を上げ始める。
「戦闘開始の合図かな。んじゃ俺が倒して来るから姫は待っていて下さい。」
「…タロウさん、申し訳ありませんがアレは私が始末致します。」
牡丹が出す空気がいつもと違う。それだけで俺は悟ってしまう。
「…結構ヤバい感じ?」
「このような言葉を言ってしまうのは大変心苦しいのですが…」
「ハッキリ言っていいよ。」
ま、俺にはちょっと勝つのは厳しいとかぐらいだろ。それぐらいなら俺のメンタルでも傷つかんよ。
「わかりました。では正直に申しますとタロウさんではすぐに殺されてしまうのが簡単に予測出来るので後ろに下がっていてもらってもよろしいでしょうか?」
「予想してたより辛辣だった!?」
「恐らくアレはエリアボスでしょう。洋館を出ようとする者、洋館に来ようとする者、その両者を始末するのがアレの役目と思われます。」
「牡丹がそう思うぐらいの相手なら仕方ないな。俺は姫の応援をしてるよ。ヤバくなったら俺も参戦するからな。」
「わかりました。そのような事をタロウさんにさせないよう頑張ります。」
俺は後方へと下がるが牡丹が俺に向かないであの化け物を見ている事を考えるとかなりヤバい相手なのは確かなようだ。
自惚れて言う訳じゃないが牡丹が俺を見ないなんて有り得ない。そこから考えても危険度が高い事がわかる。
「がんばれ、牡丹。」
ーー奇声を上げながら化け物が牡丹へと向かって来る。速度はそれ程速くはないが、巨体から手を振り乱すように向かって来る様は圧力と恐怖を感じる。
対する牡丹はゼーゲンを抜き、金色のエフェクトを発動させると上空に魔法陣が形成される。
「時空系ーー《水成》か。」
時空系は恐ろしい程に強力なのはわかっているがクラウソラスを出すわけじゃないのか。それだけ余裕があるのか、それとも余力を残しておきたいのか。あ、そうか。さっき手に入れた『フリーデン』があるのか。それの試し斬りをしようとしてるのかもしれないな。
ーー慎太郎が解析していると、牡丹のゼーゲンに水のような液体が絡みついていく。
「ーー紅千鳥。」
ーー牡丹がその場でゼーゲンを振り抜くと刀身に絡みついていた液体が五つに分かれ、それぞれが化け物の五体目掛けて放たれていく。五つ全てが化け物の五体に当たると液体が内部へと浸入し、皮膚の下を蠢く。そしてそれが中で分離し、身体中を駆け回った後に中の肉を喰い破り外へと飛び出す。飛び出して来た液体は身体中の血液を引き連れ、噴水のように噴き出している。凄まじい激痛なのだろう、化け物が奇声を上げ身体を掻き毟るようにしている。
「ふふふ、血が噴き出している様は千鳥が遊んでいるようでしょう?あなたのような大量殺人鬼にはお似合いの末路だと思います。」
ーー化け物は牡丹に近づく前にその場に勢いよく崩れ落ちる。出血の量から見ても絶命しているのは明らかだった。
「つ…つえぇ…!!」
一撃やん。俺じゃ死んじゃうような強キャラだった訳でしょ?それが一撃って。そもそも毎度毎度エリアボスってなんなの?エリアボス(笑)じゃん。
てかなんなのあの残虐性の高い技。怖いんだけど。牡丹を選ばなかったらアレを喰らわされるなんて事にならないだろうな。
ーー圧倒的武力により化け物を沈黙させた牡丹がくるりと慎太郎へ向き直る。
「お怪我はありませんか?」
「うん、あるわけないよね。めっちゃ余裕じゃん。圧倒的じゃん。俺'sヒストリー最強キャラじゃん。」
「ふふふ、ありがとうございます。」
「てかそんな余裕なのに何であんなに険しい顔してたの?あんまり余裕無いと思ってめっちゃ緊張したよ。」
「険しい…ですか…?そんな顔をしていましたか?」
「あの化け物と戦い始める時だよ。なんていうか…いつもは俺の事めっちゃ見てるけど全然見ないであの化け物見てたからさ。」
「あ。その時ですか。それは違います。少し考え事をしていて…」
「考え事?」
「はい。損をした事に気付いてしまったのです。」
「損??どういう事??」
「私たちは2日目の夜にアインスの居た部屋に入りましたよね?」
「おう。」
「そして出て来たら3日目の夜になっておりました。」
「そうだね。」
「どうもおかしいと思っていたんです。落ち着かないというか…禁断症のようなものが出てるなと、部屋を出てから思っていました。」
「ごめん、話が見えないんだけど。」
「そして気付いたんです。あ、タロウさんと2回分接吻をしていないと。」
「戦いの最中に何を考えてたの!?」
「充電が切れているからこんなに苛立つんだと思っていました。」
「だからあんな残虐な技使ったんだね!?納得したよ!?」
「タロウさんと目を合わせると、もう戦いなんてどうでもいいから抱きついてしまおうと思っている私の中の悪魔が勝ってしまいそうなので堪えておりました。」
「うん、その悪魔は後でエクソシストにでも祓ってもらってね!?戦いには集中してね!?」
「では2回分して頂いてよろしいでしょうか?あ、今日の夜の分もありましたね。3回分です。」
「えっ!?ここで!?いや…それは…」
「して頂けないのですか?」
「やめて!!この流れ知ってるから!!剪定バサミ出さないでね!?」
「10分程お願い致します。」
「10分も!?楓さんたち追いかけないといけないからダメだよね!?」
「いいえ、楓さんたちはここには来ておりません。門番としての役割を務めていたあの化け物が倒されていないのが何よりの証拠です。そもそも楓さん程の方が負けるはずがありません。あの程度の相手なら10体いてもものともしないでしょう。」
「そりゃそうだけど…」
「さぁ、お願い致します。そして首狩り村へと参りましょう。」
「わ、わかったよ…俺の気も知らないで…我慢するの大変なんだからな…」
ーーとうとう脱出口へと辿り着いた慎太郎と牡丹。謎に包まれた首狩り村へと進行を開始する。
ーーアインスから”特殊装備”『フライハイト』と『フリーデン』、それにアンドロメダ座の鍵を受け取った慎太郎と牡丹は破竹の勢いで脱出口への道を切り開いていた。
途中でのプレイヤーやゾルダードとの戦闘など物ともせずあっという間に駆けていった。
ーーそして1F正面エントランスへの扉を開けると、今までとは違う狂気に満ちた地獄絵図のようなフロアが広がっていた。
床や壁には夥しい血が付着し、臓物と思われる肉片が各所に散らばっている。
中でも一番の猟奇さが出ているのは玄関扉の前に綺麗に並べられた生首だ。その数は50を軽く超えている。一見オブジェのように置かれてはいるが明らかに人間の生首である。
「…なんか人の死に慣れたっていうか…こんな光景が見慣れたっていうか…この感覚ヤバいよな。」
「そうですね。普通に生きていたらこのような事は物語の中でしか起こり得ない事です。」
「そんで極め付けはあそこにいる殺人鬼とのエンカウントだよな。」
ーー慎太郎が指を指す方角に不規則に気持ちの悪い動きをする3mは超えるであろう化け物がいた。顔が頭以外に両肩にもあり、腕の太さと長さは常人の倍、そして身体は鱗のようなもので覆われている完全なる化け物だ。
「はい。人間では絶対勝てない化け物から逃げないと生きては帰れない、B級ホラーによくある展開です。」
「ちょっとああいうのは俺の趣味とは違うなぁ。人型の奴じゃないとホラー感が台無しなんだよなぁ。」
「ふふふ、やはり私たちは感覚が同じなのですね。私も同じ事を思っておりました。」
「フッ、流石は牡丹だな。これが終わってビデオ屋に行くのが楽しみだぜ。」
ーーまたバカップルがイチャつき始めた時であった。
『ギェェゲェェェェゲ!!!!』
ーー化け物が奇声を上げ始める。
「戦闘開始の合図かな。んじゃ俺が倒して来るから姫は待っていて下さい。」
「…タロウさん、申し訳ありませんがアレは私が始末致します。」
牡丹が出す空気がいつもと違う。それだけで俺は悟ってしまう。
「…結構ヤバい感じ?」
「このような言葉を言ってしまうのは大変心苦しいのですが…」
「ハッキリ言っていいよ。」
ま、俺にはちょっと勝つのは厳しいとかぐらいだろ。それぐらいなら俺のメンタルでも傷つかんよ。
「わかりました。では正直に申しますとタロウさんではすぐに殺されてしまうのが簡単に予測出来るので後ろに下がっていてもらってもよろしいでしょうか?」
「予想してたより辛辣だった!?」
「恐らくアレはエリアボスでしょう。洋館を出ようとする者、洋館に来ようとする者、その両者を始末するのがアレの役目と思われます。」
「牡丹がそう思うぐらいの相手なら仕方ないな。俺は姫の応援をしてるよ。ヤバくなったら俺も参戦するからな。」
「わかりました。そのような事をタロウさんにさせないよう頑張ります。」
俺は後方へと下がるが牡丹が俺に向かないであの化け物を見ている事を考えるとかなりヤバい相手なのは確かなようだ。
自惚れて言う訳じゃないが牡丹が俺を見ないなんて有り得ない。そこから考えても危険度が高い事がわかる。
「がんばれ、牡丹。」
ーー奇声を上げながら化け物が牡丹へと向かって来る。速度はそれ程速くはないが、巨体から手を振り乱すように向かって来る様は圧力と恐怖を感じる。
対する牡丹はゼーゲンを抜き、金色のエフェクトを発動させると上空に魔法陣が形成される。
「時空系ーー《水成》か。」
時空系は恐ろしい程に強力なのはわかっているがクラウソラスを出すわけじゃないのか。それだけ余裕があるのか、それとも余力を残しておきたいのか。あ、そうか。さっき手に入れた『フリーデン』があるのか。それの試し斬りをしようとしてるのかもしれないな。
ーー慎太郎が解析していると、牡丹のゼーゲンに水のような液体が絡みついていく。
「ーー紅千鳥。」
ーー牡丹がその場でゼーゲンを振り抜くと刀身に絡みついていた液体が五つに分かれ、それぞれが化け物の五体目掛けて放たれていく。五つ全てが化け物の五体に当たると液体が内部へと浸入し、皮膚の下を蠢く。そしてそれが中で分離し、身体中を駆け回った後に中の肉を喰い破り外へと飛び出す。飛び出して来た液体は身体中の血液を引き連れ、噴水のように噴き出している。凄まじい激痛なのだろう、化け物が奇声を上げ身体を掻き毟るようにしている。
「ふふふ、血が噴き出している様は千鳥が遊んでいるようでしょう?あなたのような大量殺人鬼にはお似合いの末路だと思います。」
ーー化け物は牡丹に近づく前にその場に勢いよく崩れ落ちる。出血の量から見ても絶命しているのは明らかだった。
「つ…つえぇ…!!」
一撃やん。俺じゃ死んじゃうような強キャラだった訳でしょ?それが一撃って。そもそも毎度毎度エリアボスってなんなの?エリアボス(笑)じゃん。
てかなんなのあの残虐性の高い技。怖いんだけど。牡丹を選ばなかったらアレを喰らわされるなんて事にならないだろうな。
ーー圧倒的武力により化け物を沈黙させた牡丹がくるりと慎太郎へ向き直る。
「お怪我はありませんか?」
「うん、あるわけないよね。めっちゃ余裕じゃん。圧倒的じゃん。俺'sヒストリー最強キャラじゃん。」
「ふふふ、ありがとうございます。」
「てかそんな余裕なのに何であんなに険しい顔してたの?あんまり余裕無いと思ってめっちゃ緊張したよ。」
「険しい…ですか…?そんな顔をしていましたか?」
「あの化け物と戦い始める時だよ。なんていうか…いつもは俺の事めっちゃ見てるけど全然見ないであの化け物見てたからさ。」
「あ。その時ですか。それは違います。少し考え事をしていて…」
「考え事?」
「はい。損をした事に気付いてしまったのです。」
「損??どういう事??」
「私たちは2日目の夜にアインスの居た部屋に入りましたよね?」
「おう。」
「そして出て来たら3日目の夜になっておりました。」
「そうだね。」
「どうもおかしいと思っていたんです。落ち着かないというか…禁断症のようなものが出てるなと、部屋を出てから思っていました。」
「ごめん、話が見えないんだけど。」
「そして気付いたんです。あ、タロウさんと2回分接吻をしていないと。」
「戦いの最中に何を考えてたの!?」
「充電が切れているからこんなに苛立つんだと思っていました。」
「だからあんな残虐な技使ったんだね!?納得したよ!?」
「タロウさんと目を合わせると、もう戦いなんてどうでもいいから抱きついてしまおうと思っている私の中の悪魔が勝ってしまいそうなので堪えておりました。」
「うん、その悪魔は後でエクソシストにでも祓ってもらってね!?戦いには集中してね!?」
「では2回分して頂いてよろしいでしょうか?あ、今日の夜の分もありましたね。3回分です。」
「えっ!?ここで!?いや…それは…」
「して頂けないのですか?」
「やめて!!この流れ知ってるから!!剪定バサミ出さないでね!?」
「10分程お願い致します。」
「10分も!?楓さんたち追いかけないといけないからダメだよね!?」
「いいえ、楓さんたちはここには来ておりません。門番としての役割を務めていたあの化け物が倒されていないのが何よりの証拠です。そもそも楓さん程の方が負けるはずがありません。あの程度の相手なら10体いてもものともしないでしょう。」
「そりゃそうだけど…」
「さぁ、お願い致します。そして首狩り村へと参りましょう。」
「わ、わかったよ…俺の気も知らないで…我慢するの大変なんだからな…」
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