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第193話 牢獄への道
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【 楓・美波・アリス 組 2日目 AM 9:19 洋館 東棟 2F 大食堂 】
ーーそれぞれの戦いを終え、一同が扉の前へと集まる。
「みんなお疲れ様。どうにか撃退出来たみたいね。」
「そうですねっ!」
「みんな凄かったです!」
ーー3人が歓喜に沸く中、ノートゥングの表情は冴えない。そして彼女が口を開く。
『アリスよ、すまんがミナミを回復させてやってはくれぬか?』
ーーノートゥングの言葉に3人が振り返る。美波は少し焦ったようにノートゥングへ応えた。
「私は大丈夫よっ!だから気にしないでっ!」
『強がるな。威力を抑えたとは言え奥義を放ち、連続での憑依は身体に堪えているはずだ。』
「だ、大丈夫だよっ!!軽い筋肉痛のようなものよ!」
ーー美波は明らかに無理をしていた。
身体へのダメージは軽い筋肉痛のようなもので済んではいない。背中、左腕、左足は筋挫傷を起こしたような激痛が走っている。
我慢しているから傍目にはわからないが、普通にしていても痛みにより脂汗をかいていた。この後にスキル無しでの戦闘は到底行えない程のダメージを美波は負っていたのだ。
そしてそれを感じ取った楓はアリスへスキルを使ってくれるように頼み込む。
「アリスちゃん、私からもお願い。美波ちゃんを回復してあげてもらえないかしら?」
「楓さん!?だ、大丈夫ですからっ!!気にしないで下さいっ!!」
ーー美波は勤めて明るく振る舞う。
だが動くだけで背中に脂汗が滴っている。その無理している表情が隠せない程に激痛が増していた。
「ダメよ。身体、凄く痛いんでしょ?」
「痛くありませんよっ!!軽い筋肉痛ぐらいだから我慢できますっ!!」
「本当に?嘘じゃない?私に嘘吐かない?」
「それは…」
ーーそう言われたら美波は何も言えない。当然楓はそれを分かっていて言ったのだ。
「美波ちゃん、仲間が苦しんでいるなら助けてあげたいって思うわよね?」
「もちろんですっ!!楓さんが、アリスちゃんが、牡丹ちゃんが、タロウさんが苦しんでいたら助けたいって思いますっ!!」
「それと同じよ。私も美波ちゃんが苦しんでいるなら助けてあげたい。どんな事でもしてたげたい。」
ーー楓の言葉に美波は何も言えなかった。何より嬉しかった。しかしその言葉には甘えてはいけない。なぜならまだ午前中だからだ。一日は長い。それなのにこの程度のダメージで甘えて後にとんでもない事になったら申し訳ないなんて言葉じゃ済まされない。美波はそう思っていた。
「でも…まだ時間が…」
「そんな事気にする必要無いわよ。立ちはだかる奴は私が全て斬り捨てる。私がみんなを守るわ。みんなを傷つけさせたりなんかしない。」
「楓さん…」
ーー楓は自信満々に微笑みながら美波に言った。
「そうです!私だって戦えます!」
「アリスちゃん…」
ーーアリスも同じだ。みんなの気持ちは同じなのだ。
『ミナミよ、お前が満足に動ければそれだけクランの勝率も上がるのだ。回復して悪い点など無いはずだ。』
「ノートゥング…。うん…そうだよね。みんなごめん、本当は身体が痛くてしょうがなかったんです。」
ーーみんなの気持ちを汲んで美波は正直に話した。
「まったく。親友なんだからちゃんと言わないとダメよ?めっ、だからね?」
「そうです!ちゃんと素直に言って下さい!」
「ふふっ、ごめんね。回復してもらっていいかな?」
「もちろんです!すぐに痛いの治しますからね!」
********************
ーー美波の回復も終わり、万全の態勢になった楓たちは先程開けた扉の前へと向かった。
「さてと、仕切り直しね。じゃあ先に進みましょうか。」
「う…やっぱり怖いですね…」
「はい…」
ーー先程までもっと恐ろしい相手と戦っていたはずなのだがどうやら美波とアリスには関係無いようだ。
「ウフフ、今の私ならこんな子供騙しに怖がったりしないわ。さ、行きましょう。」
『……おい、ならばどうして妾が先頭なのだ?』
ーー楓がノートゥングの背後に隠れ、前から2番目を激しく主張している。
「ウフフ、戦闘なら大丈夫なんだけどね。」
『…はぁ。もういい、とっとと行くぞ。』
ーーもうこの光景に慣れたノートゥングは諦めて歩みを進める。
薄暗い通路をしばらく歩くと、下の階へと降りる階段が現れる。
『単純に考えれば1階へと繋がっているのだろうが、地下まで一直線かもしれんな。牢があるのは地下と相場が決まっておる。ククク、もしかしたら誰かがおるのかもしれんな。』
「こっ、怖い事言わないでよっ!!」
もう心臓が止まりそうなんだけど。タロウさんに人工呼吸してもらいたいな。
ーーそして階段を降りた先にあったのは鉄で出来た扉だった。かなり年季の入った作りで、至る所に錆がある。その様相が3人の恐怖をさらに煽っていた。
ーーノートゥングがそんな3人に構う事無く扉を開けようとする。だが案の定鍵がかかっていて開ける事が出来ない。
『やはり鍵か。ここも持っている鍵で開けば良いが。』
「うぅ…開けた瞬間にさっきみたいに何か現れたりしないかなぁ…」
「この雰囲気でいきなり襲われたら心臓止まるかもしれません…」
「ウフフ、私もよ。」
『いいからさっさと開けろ。』
ーーノートゥングに促されるまま美波がペガサス座の鍵を取り出し鍵穴へと入れてみる。
しかし、
「あれ?回らない…」
『チッ、別の鍵か。』
「探しに戻らないといけませんね。」
ーー3人が落胆していると楓が声をあげる。
「みんな、これを見て。」
ーー楓が何かを見ているので3人が楓の元へと集まる。すると鉄の扉の左端にプレートのようなものが埋め込まれている。
「プレート…ですか…?」
「何か書いてありますね…?」
「ええ。また謎解きね。」
ーープレートにはこう書いてある。
『光を伝えし者と闇を伝えし者、それらの立場が入れ替わり、闇を伝えし者の支配が始まれば開かれん。』
「…なんでしょうか?よく意味がわかりませんね…」
「光を伝えし者、闇を伝えし者、これが理解出来ないわね。善人と悪人を指してるのかしら?それともプレイヤーと敵の事?」
ーー楓と美波が考えているとアリスが口を開く。
「あの…これって夜の事じゃないですか…?」
「「え?」」
「光を伝えし者は太陽で、闇を伝えし者が月、『立場が入れ替わり、闇を伝えし者の支配が始まれば』って言うのは太陽が沈んで夜になったらって事じゃないでしょうか?」
「確かに辻褄は合うわね…」
「すごいねアリスちゃん!」
「合ってるかはわかりませんけど…」
「試して見ましょう。可能性は高いと思うわ。」
「夜になったらまた来ますか?」
「ここで休んで待ちましょう。いつ休息が取れるかわからないからね。交代で眠って夜に備えましょう。」
「はいっ!」
「わかりました!」
ーー楓たちはここで夜になるまで待つ事にした。そしてアリスの読み通りに鉄の扉は開き、牢獄への道が開ける事となる。
ーーそれぞれの戦いを終え、一同が扉の前へと集まる。
「みんなお疲れ様。どうにか撃退出来たみたいね。」
「そうですねっ!」
「みんな凄かったです!」
ーー3人が歓喜に沸く中、ノートゥングの表情は冴えない。そして彼女が口を開く。
『アリスよ、すまんがミナミを回復させてやってはくれぬか?』
ーーノートゥングの言葉に3人が振り返る。美波は少し焦ったようにノートゥングへ応えた。
「私は大丈夫よっ!だから気にしないでっ!」
『強がるな。威力を抑えたとは言え奥義を放ち、連続での憑依は身体に堪えているはずだ。』
「だ、大丈夫だよっ!!軽い筋肉痛のようなものよ!」
ーー美波は明らかに無理をしていた。
身体へのダメージは軽い筋肉痛のようなもので済んではいない。背中、左腕、左足は筋挫傷を起こしたような激痛が走っている。
我慢しているから傍目にはわからないが、普通にしていても痛みにより脂汗をかいていた。この後にスキル無しでの戦闘は到底行えない程のダメージを美波は負っていたのだ。
そしてそれを感じ取った楓はアリスへスキルを使ってくれるように頼み込む。
「アリスちゃん、私からもお願い。美波ちゃんを回復してあげてもらえないかしら?」
「楓さん!?だ、大丈夫ですからっ!!気にしないで下さいっ!!」
ーー美波は勤めて明るく振る舞う。
だが動くだけで背中に脂汗が滴っている。その無理している表情が隠せない程に激痛が増していた。
「ダメよ。身体、凄く痛いんでしょ?」
「痛くありませんよっ!!軽い筋肉痛ぐらいだから我慢できますっ!!」
「本当に?嘘じゃない?私に嘘吐かない?」
「それは…」
ーーそう言われたら美波は何も言えない。当然楓はそれを分かっていて言ったのだ。
「美波ちゃん、仲間が苦しんでいるなら助けてあげたいって思うわよね?」
「もちろんですっ!!楓さんが、アリスちゃんが、牡丹ちゃんが、タロウさんが苦しんでいたら助けたいって思いますっ!!」
「それと同じよ。私も美波ちゃんが苦しんでいるなら助けてあげたい。どんな事でもしてたげたい。」
ーー楓の言葉に美波は何も言えなかった。何より嬉しかった。しかしその言葉には甘えてはいけない。なぜならまだ午前中だからだ。一日は長い。それなのにこの程度のダメージで甘えて後にとんでもない事になったら申し訳ないなんて言葉じゃ済まされない。美波はそう思っていた。
「でも…まだ時間が…」
「そんな事気にする必要無いわよ。立ちはだかる奴は私が全て斬り捨てる。私がみんなを守るわ。みんなを傷つけさせたりなんかしない。」
「楓さん…」
ーー楓は自信満々に微笑みながら美波に言った。
「そうです!私だって戦えます!」
「アリスちゃん…」
ーーアリスも同じだ。みんなの気持ちは同じなのだ。
『ミナミよ、お前が満足に動ければそれだけクランの勝率も上がるのだ。回復して悪い点など無いはずだ。』
「ノートゥング…。うん…そうだよね。みんなごめん、本当は身体が痛くてしょうがなかったんです。」
ーーみんなの気持ちを汲んで美波は正直に話した。
「まったく。親友なんだからちゃんと言わないとダメよ?めっ、だからね?」
「そうです!ちゃんと素直に言って下さい!」
「ふふっ、ごめんね。回復してもらっていいかな?」
「もちろんです!すぐに痛いの治しますからね!」
********************
ーー美波の回復も終わり、万全の態勢になった楓たちは先程開けた扉の前へと向かった。
「さてと、仕切り直しね。じゃあ先に進みましょうか。」
「う…やっぱり怖いですね…」
「はい…」
ーー先程までもっと恐ろしい相手と戦っていたはずなのだがどうやら美波とアリスには関係無いようだ。
「ウフフ、今の私ならこんな子供騙しに怖がったりしないわ。さ、行きましょう。」
『……おい、ならばどうして妾が先頭なのだ?』
ーー楓がノートゥングの背後に隠れ、前から2番目を激しく主張している。
「ウフフ、戦闘なら大丈夫なんだけどね。」
『…はぁ。もういい、とっとと行くぞ。』
ーーもうこの光景に慣れたノートゥングは諦めて歩みを進める。
薄暗い通路をしばらく歩くと、下の階へと降りる階段が現れる。
『単純に考えれば1階へと繋がっているのだろうが、地下まで一直線かもしれんな。牢があるのは地下と相場が決まっておる。ククク、もしかしたら誰かがおるのかもしれんな。』
「こっ、怖い事言わないでよっ!!」
もう心臓が止まりそうなんだけど。タロウさんに人工呼吸してもらいたいな。
ーーそして階段を降りた先にあったのは鉄で出来た扉だった。かなり年季の入った作りで、至る所に錆がある。その様相が3人の恐怖をさらに煽っていた。
ーーノートゥングがそんな3人に構う事無く扉を開けようとする。だが案の定鍵がかかっていて開ける事が出来ない。
『やはり鍵か。ここも持っている鍵で開けば良いが。』
「うぅ…開けた瞬間にさっきみたいに何か現れたりしないかなぁ…」
「この雰囲気でいきなり襲われたら心臓止まるかもしれません…」
「ウフフ、私もよ。」
『いいからさっさと開けろ。』
ーーノートゥングに促されるまま美波がペガサス座の鍵を取り出し鍵穴へと入れてみる。
しかし、
「あれ?回らない…」
『チッ、別の鍵か。』
「探しに戻らないといけませんね。」
ーー3人が落胆していると楓が声をあげる。
「みんな、これを見て。」
ーー楓が何かを見ているので3人が楓の元へと集まる。すると鉄の扉の左端にプレートのようなものが埋め込まれている。
「プレート…ですか…?」
「何か書いてありますね…?」
「ええ。また謎解きね。」
ーープレートにはこう書いてある。
『光を伝えし者と闇を伝えし者、それらの立場が入れ替わり、闇を伝えし者の支配が始まれば開かれん。』
「…なんでしょうか?よく意味がわかりませんね…」
「光を伝えし者、闇を伝えし者、これが理解出来ないわね。善人と悪人を指してるのかしら?それともプレイヤーと敵の事?」
ーー楓と美波が考えているとアリスが口を開く。
「あの…これって夜の事じゃないですか…?」
「「え?」」
「光を伝えし者は太陽で、闇を伝えし者が月、『立場が入れ替わり、闇を伝えし者の支配が始まれば』って言うのは太陽が沈んで夜になったらって事じゃないでしょうか?」
「確かに辻褄は合うわね…」
「すごいねアリスちゃん!」
「合ってるかはわかりませんけど…」
「試して見ましょう。可能性は高いと思うわ。」
「夜になったらまた来ますか?」
「ここで休んで待ちましょう。いつ休息が取れるかわからないからね。交代で眠って夜に備えましょう。」
「はいっ!」
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