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第180話 対照的
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【 慎太郎・牡丹 組 1日目 PM 8:38 洋館 本館 3F 客間 】
俺と牡丹はワクワクしながら部屋を出る。するとそこは良い感じに薄暗いランタンのような照明が等間隔に設置されている廊下が広がっていた。左を向くと長い通路の先が突き当たりになっており、左へと続いている。
右を向くと同様の長い通路の先が突き当たりになり、右へと続いている。
その通路の間にいくつかの部屋があり、その様相が俺の興奮をさらに掻き立てる。
「…雰囲気もバッチリじゃね?」
俺はこの興奮を分かち合えるであろう牡丹に小声で声をかける。
「…そうですね。これで殺人鬼やゾンビといった類が出て来たら言うことなしです。」
「…最高にわかる!」
ーー慎太郎と牡丹ははしゃいでいた。かつてないほどはしゃいでいた。
牡丹は慎太郎と二人っきりでイベントに臨めた事で舞い上がっていた。前回の時は別々になり非常にストレスが溜まっていたのだ。それが今回は慎太郎と一緒、しかも二人っきり。はしゃがないはずがない。
オマケにホラー要素満載のエリアによって年相応の無邪気さが珍しく出ていた。
慎太郎も同様にホラー要素満載のエリアを子供のように満喫していた。オッさんのくせに。
それに牡丹がホラー好きという自分の趣味を共有できる相手を見つけた事でより一層楽しさが増していた。オッさんのくせに。
ーーそれが大きな油断であった。
慎太郎と牡丹にプレイヤーの手が迫っている事に全く気づいていない。
いや、気づけと言うのが難しいのかもしれない。2人に迫るプレイヤーはダブルスーパーレアスキル《隠密》を使用している。
このスキルはプレイヤーに気配を気取られる事無く相手へと近づき先制攻撃を可能にすると言う優れものだ。当然大概の場合それで決着が着く。ダブルスーパーレアの中で最強といわれるスキルの一つだ。
ーー敵プレイヤー2人は慎太郎と牡丹に近づく。
標的は慎太郎に定められている。男女がいれば男を先に倒そうとするのは至って正常な事だ。男を殺した後に女を自分たちの奴隷にして好きな事をする。それが彼らのシナリオであった。
事実この手で彼らは多くのプレイヤーを葬り去って来た。一度も気取られる事も無ければ反撃を喰らう事も無かった。
だが彼らに慢心は無い。どんな時でも慎重に事を進める、それだけであった。
持っている剣を振りかぶり慎太郎を背後から斬りつけようとするーー
ーーその時だった。突如として牡丹が振り返り、
ゼーゲンで男たちを斬りつけた。男たちは何の防御も取る事が出来なかった。牡丹の超人的な剣速を防御しろというのは難しいのかもしれないが、何より反撃に合う事など想定していなかった。
血飛沫を上げながら男たちは床へと倒れた。何故自分たちは負けたのか?それだけを考えながら男たちはその命を終えていった。
ーー先にも言ったが牡丹は完全に油断していた。なのに何故それを察知する事が出来たのだろうか?答えは簡単だ。牡丹は慎太郎が絡むと人が変わる。それはもはや常識。だがそれ以外に慎太郎に危機が訪れる時にも人が変わるのだ。牡丹の細胞が、本能が、慎太郎に危険が迫ると無意識に身体が動く。そしてその能力は通常時を遥かに凌駕する。言って仕舞えば深すぎる愛により生まれてしまった異能だ。そんな異能を男たちは知る由も無い。
相手が悪かった。そう言うしか無いであろう。
「うぉ…!?全然気配感じなかったぞ…!?凄いな牡丹は…」
「いえ…私も全然わからなかったです。ですが身体が勝手に反応したと言いますか…良くわかりません…」
ーーそう、真に恐ろしいのは牡丹が無自覚だと言う事だ。慎太郎が絡む時に起こる人格の変化をまるで気づいていない。それどころか記憶すら無い。誠に恐ろしいものである。
「それをやってのけちゃうんだから牡丹はやっぱり凄いな。気づいてくれなきゃヤバかったんだから。」
ーーそう言って慎太郎は牡丹の頭を撫でる。それを牡丹は頬を染めて幸せを感じる。こうして慎太郎に依存していく。まさに誑し。女誑しの所業である。オッさんのくせに。
「何だ、コイツら普通のプレイヤーじゃん。」
「本当ですね。」
「ガッカリだな。」
「ガッカリですね。」
「やっぱり殺人鬼とかゾンビなんかいるわけないかー…それにオレヒスだもんなー…」
「そう…ですね…」
ーー2人のテンションが下がり、ショボーンとした空気が2人に漂う。
だが何かを思いついたように慎太郎が顔を上げる。
「でもさ…ここでゲシュペンスト現れたらそれっぽくない?」
ーー慎太郎の発言に牡丹は激しく頷く。
「それっぽいですね!」
ーー2人は顔を見合わせて無邪気な顔をして笑う。
「よっし!探すぞ!!ゲシュペンストを探すぞ!!」
「はい!!」
ーー呑気な2人の洋館探索は続く。
********************
「ここは…?」
周囲を見渡すと古ぼけた大部屋に私と美波ちゃん、アリスちゃんがいる。
タロウさんのマンションに戻ったと同時に視界が暗くなったのは覚えている。当然ながらいつものオレヒスだろう。
だがこの状況は大問題だ。だってーー
「か、楓さん…私…怖いの無理です…」
「わ、私もですっ…この雰囲気ってどう見ても心霊スポットですよねっ…」
「ウフフ、奇遇ね、私も怖いの全然ダメよ。足が震えてるもの。」
ーー慎太郎と牡丹とは対照的な3人の洋館探索が始まる。
俺と牡丹はワクワクしながら部屋を出る。するとそこは良い感じに薄暗いランタンのような照明が等間隔に設置されている廊下が広がっていた。左を向くと長い通路の先が突き当たりになっており、左へと続いている。
右を向くと同様の長い通路の先が突き当たりになり、右へと続いている。
その通路の間にいくつかの部屋があり、その様相が俺の興奮をさらに掻き立てる。
「…雰囲気もバッチリじゃね?」
俺はこの興奮を分かち合えるであろう牡丹に小声で声をかける。
「…そうですね。これで殺人鬼やゾンビといった類が出て来たら言うことなしです。」
「…最高にわかる!」
ーー慎太郎と牡丹ははしゃいでいた。かつてないほどはしゃいでいた。
牡丹は慎太郎と二人っきりでイベントに臨めた事で舞い上がっていた。前回の時は別々になり非常にストレスが溜まっていたのだ。それが今回は慎太郎と一緒、しかも二人っきり。はしゃがないはずがない。
オマケにホラー要素満載のエリアによって年相応の無邪気さが珍しく出ていた。
慎太郎も同様にホラー要素満載のエリアを子供のように満喫していた。オッさんのくせに。
それに牡丹がホラー好きという自分の趣味を共有できる相手を見つけた事でより一層楽しさが増していた。オッさんのくせに。
ーーそれが大きな油断であった。
慎太郎と牡丹にプレイヤーの手が迫っている事に全く気づいていない。
いや、気づけと言うのが難しいのかもしれない。2人に迫るプレイヤーはダブルスーパーレアスキル《隠密》を使用している。
このスキルはプレイヤーに気配を気取られる事無く相手へと近づき先制攻撃を可能にすると言う優れものだ。当然大概の場合それで決着が着く。ダブルスーパーレアの中で最強といわれるスキルの一つだ。
ーー敵プレイヤー2人は慎太郎と牡丹に近づく。
標的は慎太郎に定められている。男女がいれば男を先に倒そうとするのは至って正常な事だ。男を殺した後に女を自分たちの奴隷にして好きな事をする。それが彼らのシナリオであった。
事実この手で彼らは多くのプレイヤーを葬り去って来た。一度も気取られる事も無ければ反撃を喰らう事も無かった。
だが彼らに慢心は無い。どんな時でも慎重に事を進める、それだけであった。
持っている剣を振りかぶり慎太郎を背後から斬りつけようとするーー
ーーその時だった。突如として牡丹が振り返り、
ゼーゲンで男たちを斬りつけた。男たちは何の防御も取る事が出来なかった。牡丹の超人的な剣速を防御しろというのは難しいのかもしれないが、何より反撃に合う事など想定していなかった。
血飛沫を上げながら男たちは床へと倒れた。何故自分たちは負けたのか?それだけを考えながら男たちはその命を終えていった。
ーー先にも言ったが牡丹は完全に油断していた。なのに何故それを察知する事が出来たのだろうか?答えは簡単だ。牡丹は慎太郎が絡むと人が変わる。それはもはや常識。だがそれ以外に慎太郎に危機が訪れる時にも人が変わるのだ。牡丹の細胞が、本能が、慎太郎に危険が迫ると無意識に身体が動く。そしてその能力は通常時を遥かに凌駕する。言って仕舞えば深すぎる愛により生まれてしまった異能だ。そんな異能を男たちは知る由も無い。
相手が悪かった。そう言うしか無いであろう。
「うぉ…!?全然気配感じなかったぞ…!?凄いな牡丹は…」
「いえ…私も全然わからなかったです。ですが身体が勝手に反応したと言いますか…良くわかりません…」
ーーそう、真に恐ろしいのは牡丹が無自覚だと言う事だ。慎太郎が絡む時に起こる人格の変化をまるで気づいていない。それどころか記憶すら無い。誠に恐ろしいものである。
「それをやってのけちゃうんだから牡丹はやっぱり凄いな。気づいてくれなきゃヤバかったんだから。」
ーーそう言って慎太郎は牡丹の頭を撫でる。それを牡丹は頬を染めて幸せを感じる。こうして慎太郎に依存していく。まさに誑し。女誑しの所業である。オッさんのくせに。
「何だ、コイツら普通のプレイヤーじゃん。」
「本当ですね。」
「ガッカリだな。」
「ガッカリですね。」
「やっぱり殺人鬼とかゾンビなんかいるわけないかー…それにオレヒスだもんなー…」
「そう…ですね…」
ーー2人のテンションが下がり、ショボーンとした空気が2人に漂う。
だが何かを思いついたように慎太郎が顔を上げる。
「でもさ…ここでゲシュペンスト現れたらそれっぽくない?」
ーー慎太郎の発言に牡丹は激しく頷く。
「それっぽいですね!」
ーー2人は顔を見合わせて無邪気な顔をして笑う。
「よっし!探すぞ!!ゲシュペンストを探すぞ!!」
「はい!!」
ーー呑気な2人の洋館探索は続く。
********************
「ここは…?」
周囲を見渡すと古ぼけた大部屋に私と美波ちゃん、アリスちゃんがいる。
タロウさんのマンションに戻ったと同時に視界が暗くなったのは覚えている。当然ながらいつものオレヒスだろう。
だがこの状況は大問題だ。だってーー
「か、楓さん…私…怖いの無理です…」
「わ、私もですっ…この雰囲気ってどう見ても心霊スポットですよねっ…」
「ウフフ、奇遇ね、私も怖いの全然ダメよ。足が震えてるもの。」
ーー慎太郎と牡丹とは対照的な3人の洋館探索が始まる。
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