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第167話 共に
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【 アリス・楓・牡丹 組 1日目 PM 6:25 】
ーー上空で2人の天使たちが剣戟を鳴らし激戦を繰り広げている。
だがその戦いも佳境を迎える。
楓はもう限界だ。体力をほぼ使い果たし技にキレが無い。そして葵はそれを見逃さない。
「終わりだね。つまらなかったよ楓ちゃん。もういいよ、休みな。」
ーー楓を遥かに上回る速度を出し一瞬で背後を取る。そして楓は背中からゼーゲンで斬りつけられ、天使の翼を散らせながら地表へと堕とされる。
勝敗が決した瞬間であった。
「楓さんッ…!?」
私は声を出す事しかできなかった。楓さんの敗北をただ眺めているだけだった。
「…最後までその傲慢さは直らなかったね。これだけの力量差を知りながら剣帝に頼ろうとしない、心を開かない、救いようが無いね。」
「……」
ーーもはや楓に立ち上がる力は無い。葵の一撃により背中からの出血も酷く、放っておけば死に至るのは時間の問題だ。
「せめてもの情けだよ。騎士としてカノーネで火葬してあげる。」
ーー葵が飛翔し、上空に魔法陣を展開させる。その魔法陣からはカノーネが4基現れ、金色のエフェクトを発動させる。
「ああぁぁぁ…!!楓さん…!!!」
ダメだ…殺されちゃう…どうにかしないと…どうにかーー
「ーーアリスちゃん。」
狼狽えている私に牡丹さんが話しかける。
「先程申した事を撤回させて下さい。」
「え…?」
「あなたの命、私に預けて下さい。私は楓さんを助けに行きます。例えこの命が果てようとも楓さんを1人で逝かせるわけにはいきません。」
「牡丹さん!!!」
「だから…」
「いいです!!私の命なんていりません!!楓さんを見捨てて生きながらえても嬉しくなんてありません!!」
「アリスちゃん…行きましょう。」
「はい!!」
牡丹さんが前方に魔法陣を展開させる。そして私もマヌスクリプトを開き、魔法詠唱の準備に入る。
「やめなさい、もう勝負はついたのよ。無駄に命を散らす事は無いわ。」
「無駄ではありません。仲間の為に、友の為に命を散らせられるのなら誉れ高い事だと思います。私は楓さんを1人で逝かせはしない。きっとタロウさんも私の行動に理解してくれるでしょう。」
「…仕方ないわね。なるべくは殺さないようにするけど四肢欠損ぐらいは許してもらうわよ。」
ーー
ーー
ーー
負けちゃった。完敗ね。死ぬのか。嫌だな。タロウさんに会えないまま死にたくないな。私が死んだら悲しんでくれるかな?
『死にたくないの?』
そりゃあそうよ。死にたくなんかない。
『どうして?』
タロウさんに会いたいもの。それに美波ちゃん、アリスちゃん、牡丹ちゃんにも会いたい。
『なら生きればいいじゃない。』
無理よ。私はこの女に勝てないもの。
『どうして助けを求めないの?』
できないわよ…私だけ…
『私だけ?』
未央は私に助けを求めた…それでも私は何もしてあげられなかった…それなのに私だけ助けを求めるなんて図々しいにも程がある。私は…誰にも助けてもらってはいけない…1人でやらないとダメなの…
『そんな事を本当に未央は望んでいるの?』
え…?
『きっと未央が今のあなたを見たら怒ると思うわ。仲間に頼れって。』
でも…私は…
『素直になりなよ。私はそんなカエデを見たくない。仲間に頼って。』
あなたは…もしかして…
『立ちなさい。そして倒しましょう。アタシたちの力で。アタシはあなたの仲間であり友達でしょ?』
うん…当たり前じゃない。
『まったく…カエデは本当に素直じゃないわね。そんなんじゃシンタロウに嫌われるわよ?』
やだ。
『それに関しては素直なんだから。』
ウフフ。…ごめんね、ブルドガング。
『いいわよ。』
私に力を貸して下さい。私は弱いから…1人じゃ戦えません。助けて下さい。
『もちろん。カエデに勝利を捧げるわ。行きましょう、2人で。』
行きましょう。共にーー
ーー
ーー
「さようなら傲慢なお姫様。」
ーー葵のカノーネ4基が一点に集まりフルバーストの体勢を取る。そして黄金の輝きを放ち始めた時だった。
ーー楓の身体が黄金色に輝き前方に魔法陣を展開させる。そして魔法陣からは剣帝ブルドガングが召喚される。半透明では無い、実体化された剣帝が此処に降臨する。
「”具現”!?へぇ…でももう遅いよ!!やりな!!私のカノーネ!!」
ーーカノーネたちがフルバーストの高粒子砲を楓とブルドガング目掛けて放つ。その速度と熱量はレーザー砲に相当する程であった。直撃すれば影すら残らないだろう。
ーーだがブルドガングがラウムからゼーゲンのような剣を取り出す。そして鞘からそれを引き抜くと雷のエフェクトを纏った神聖なる刀身が露わになる。
その剣で向かって来るカノーネのフルバーストを叩き飛ばし、近未来的なビルへと直撃して倒壊させる。
ブルドガングにとってカノーネの一撃など気にかける事ですらなかった。
『そんなモンがこのアタシに通用すると思ってんの?』
ーーカノーネの一撃を苦もなく弾き飛ばすブルドガングを見る葵の顔には初めて笑みが消えた。
『第3ラウンド…始めよっか?』
ーー上空で2人の天使たちが剣戟を鳴らし激戦を繰り広げている。
だがその戦いも佳境を迎える。
楓はもう限界だ。体力をほぼ使い果たし技にキレが無い。そして葵はそれを見逃さない。
「終わりだね。つまらなかったよ楓ちゃん。もういいよ、休みな。」
ーー楓を遥かに上回る速度を出し一瞬で背後を取る。そして楓は背中からゼーゲンで斬りつけられ、天使の翼を散らせながら地表へと堕とされる。
勝敗が決した瞬間であった。
「楓さんッ…!?」
私は声を出す事しかできなかった。楓さんの敗北をただ眺めているだけだった。
「…最後までその傲慢さは直らなかったね。これだけの力量差を知りながら剣帝に頼ろうとしない、心を開かない、救いようが無いね。」
「……」
ーーもはや楓に立ち上がる力は無い。葵の一撃により背中からの出血も酷く、放っておけば死に至るのは時間の問題だ。
「せめてもの情けだよ。騎士としてカノーネで火葬してあげる。」
ーー葵が飛翔し、上空に魔法陣を展開させる。その魔法陣からはカノーネが4基現れ、金色のエフェクトを発動させる。
「ああぁぁぁ…!!楓さん…!!!」
ダメだ…殺されちゃう…どうにかしないと…どうにかーー
「ーーアリスちゃん。」
狼狽えている私に牡丹さんが話しかける。
「先程申した事を撤回させて下さい。」
「え…?」
「あなたの命、私に預けて下さい。私は楓さんを助けに行きます。例えこの命が果てようとも楓さんを1人で逝かせるわけにはいきません。」
「牡丹さん!!!」
「だから…」
「いいです!!私の命なんていりません!!楓さんを見捨てて生きながらえても嬉しくなんてありません!!」
「アリスちゃん…行きましょう。」
「はい!!」
牡丹さんが前方に魔法陣を展開させる。そして私もマヌスクリプトを開き、魔法詠唱の準備に入る。
「やめなさい、もう勝負はついたのよ。無駄に命を散らす事は無いわ。」
「無駄ではありません。仲間の為に、友の為に命を散らせられるのなら誉れ高い事だと思います。私は楓さんを1人で逝かせはしない。きっとタロウさんも私の行動に理解してくれるでしょう。」
「…仕方ないわね。なるべくは殺さないようにするけど四肢欠損ぐらいは許してもらうわよ。」
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負けちゃった。完敗ね。死ぬのか。嫌だな。タロウさんに会えないまま死にたくないな。私が死んだら悲しんでくれるかな?
『死にたくないの?』
そりゃあそうよ。死にたくなんかない。
『どうして?』
タロウさんに会いたいもの。それに美波ちゃん、アリスちゃん、牡丹ちゃんにも会いたい。
『なら生きればいいじゃない。』
無理よ。私はこの女に勝てないもの。
『どうして助けを求めないの?』
できないわよ…私だけ…
『私だけ?』
未央は私に助けを求めた…それでも私は何もしてあげられなかった…それなのに私だけ助けを求めるなんて図々しいにも程がある。私は…誰にも助けてもらってはいけない…1人でやらないとダメなの…
『そんな事を本当に未央は望んでいるの?』
え…?
『きっと未央が今のあなたを見たら怒ると思うわ。仲間に頼れって。』
でも…私は…
『素直になりなよ。私はそんなカエデを見たくない。仲間に頼って。』
あなたは…もしかして…
『立ちなさい。そして倒しましょう。アタシたちの力で。アタシはあなたの仲間であり友達でしょ?』
うん…当たり前じゃない。
『まったく…カエデは本当に素直じゃないわね。そんなんじゃシンタロウに嫌われるわよ?』
やだ。
『それに関しては素直なんだから。』
ウフフ。…ごめんね、ブルドガング。
『いいわよ。』
私に力を貸して下さい。私は弱いから…1人じゃ戦えません。助けて下さい。
『もちろん。カエデに勝利を捧げるわ。行きましょう、2人で。』
行きましょう。共にーー
ーー
ーー
「さようなら傲慢なお姫様。」
ーー葵のカノーネ4基が一点に集まりフルバーストの体勢を取る。そして黄金の輝きを放ち始めた時だった。
ーー楓の身体が黄金色に輝き前方に魔法陣を展開させる。そして魔法陣からは剣帝ブルドガングが召喚される。半透明では無い、実体化された剣帝が此処に降臨する。
「”具現”!?へぇ…でももう遅いよ!!やりな!!私のカノーネ!!」
ーーカノーネたちがフルバーストの高粒子砲を楓とブルドガング目掛けて放つ。その速度と熱量はレーザー砲に相当する程であった。直撃すれば影すら残らないだろう。
ーーだがブルドガングがラウムからゼーゲンのような剣を取り出す。そして鞘からそれを引き抜くと雷のエフェクトを纏った神聖なる刀身が露わになる。
その剣で向かって来るカノーネのフルバーストを叩き飛ばし、近未来的なビルへと直撃して倒壊させる。
ブルドガングにとってカノーネの一撃など気にかける事ですらなかった。
『そんなモンがこのアタシに通用すると思ってんの?』
ーーカノーネの一撃を苦もなく弾き飛ばすブルドガングを見る葵の顔には初めて笑みが消えた。
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