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第158話 欲望
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「ここは…?」
見渡す限り森しか無い。私が転送された場所は自然溢れる森だった。森の動物たちでもいればとても楽しそうな場所に思えるが相変わらず生き物の気配は感じられない。それにより得体の知れない恐怖感を感じてしまう。やはり実在する場所では無いのだろうか。
「それよりも早くみんなを探さないと…!私一人しか転送されなかったのかしら…」
少し不安になり辺りを見渡すと草むらをベッドに眠っているタロウさんがいた。
「タロウさんっ!!やった…!タロウさんと一緒だ!!」
ふふっ、やっぱりこれが正ヒロインの力よねっ。最近扱いが雑だったけどこういう時に二人きりになれる引きをもってるのが正妻なのよっ!!
「でも…タロウさんだけいつも寝てるけど何か理由あるのかな…?」
タロウさんだけ寝てるってやっぱり変だよね…?悪い事じゃなければいいけど…
…それより寝てるんだから膝枕でもした方がいいかな…?せ、せっかく二人きりなんだもんねっ!!む、むしろ…キスしたら目を覚ますんじゃないかなっ!?昔話的には定番だもんねっ!?
「…し、しちゃおうかな。」
『うむ、やってしまえ。』
「そ、そうだよねっ!もうキスはしてるんだから彼女みたいなものだしねっ!!」
『左様。さっさと既成事実を作ってしまえ。』
「う、うんっ!!よ、よしっ!!じゃあ行きま……」
『ん?どうした?さっさとやれ。』
「…一つ聞いてもいいかな?」
『どうした我が友よ?』
「…なんで勝手に出てるの?」
『ククク、妾がーー』
「それはわかってるわよっ!!」
『むっ?何を怒っておるのだ?』
「せっかく二人っきりだったのに邪魔されたら怒るでしょ!!」
『妾の事は気にするな。この誑しを骨抜きにする為の指南をミナミにしてやるだけだ。』
「気にするわよっ!!そもそも指南って何!?私に何をさせる気!?」
『何ってナニに決まっておろう。』
「す、す、す、するわけないでしょ!?そ、そういうのはその…結婚してからというか…でもタロウさんがしたいならその…でも…なんていうか。ムードも大事というか…」
ーー美波が妄想モードに入っていると慎太郎が目を覚ます。
慎太郎はくねくねと動きながら独り言を言っている美波を死んだ魚のような目で見ている。
「…ノートゥング、聞いてもいい?」
『…何だ誑し。』
「…美波は一体何をしてるんだ?」
『…女には色々あるのだ。』
********************
【 美波・慎太郎 組 1日目 AM 8:03 】
うぅ…死にたい…タロウさんが起きてるのに私は一体何をしていたのだろう…そもそも何でノートゥングは教えてくれないのよっ!
『ん?どうした?』
「なんでもないっ!!」
…落ち着きなさい美波。クールよ、クールになるのよ。ちょっと変な所を見られちゃったけど私は正ヒロインで正妻なんだから余裕を持ちなさい。
「さて、俺たちは2人組になっちゃったけど…なんか久しぶりだな。」
「え?」
「いやさ、美波と2人っきりでイベントに臨むなんて久しぶりじゃん。奇しくも前回のトート・シュピールの時以来だし。あの時はさ…美波を守れなかった。楓さんが来てくれなかったら取り返しのつかない事になっていた。でもさ…もう美波を不安にはさせないから。必ず俺が守るから。だから俺に人生を預けてくれ。」
な、何この展開!?これってプロポーズ!?人生ってそういう事だよねっ!?何よりタロウさんの目が真剣だ…!凛々しい…!カッコいいっ…!!
よしっ!返事よ美波!!返事をするのよっ!!お嫁さんにして下さいって言うのよっ!!
「はいっ!!タロウさんのおよーー」
ーーその時だった。スマホの通知音が鳴り響く。なぜかいつもより大きい音量により美波の台詞はかき消されてしまった。
……だからさぁ、私の扱いって雑じゃないかな?何でこのタイミングで鳴るかな?おかしいよね?しかも何この音量!?大きすぎだよねっ!?丸聞こえだよっ!?他のプレイヤー近くにいたら居場所バレバレだよっ!?
「やたらとデカい音だな。近くにプレイヤーいたらどうすんだよ。」
『いや、近くには誰もおらんぞ。』
「えっ?そーなの?」
『ああ。気配は全く感じぬ。』
「スゲーな。流石は剣王。」
『フッ、当然であろう。感謝をしておるのなら戻ったらあいすくりぃむを補充しておけ。』
「はいはい、わかりましたよ。他にもスイーツ買って来るよ。プリンとか。」
『ぷりん?なんだそれは?あいすくりぃむのぷりんの事とは違うのか?』
「アレはアイスの味だよ。それとは違ってプリンって食べ物があるんだよ。カスタードの部分は甘くて美味しい。だが、上にかかっているキャラメルソースがほんのり苦くてこれがまた最高なんだな。」
『な、なんだそれは!?食べたい!!食べさせよ!!』
「コンビニでもあるからイベント終わったら買って来るよ。」
『良いのか?』
「そんなに食べたいなら買って来るよ。」
『フフフ、そうか。それは楽しみだな。』
「なんだ、ノートゥングも普通に女の子みたいな笑いできんじゃん。そっちの方が可愛いぞ?」
『貴様ッ…!!何を言っておる!?誰に向かって口を利いておるのだ!!』
「テレなくたっていいじゃん。」
『テレてなどおらぬわッ!!』
……何コレ?何で私はタロウさんとノートゥングのイチャイチャを見せつけられないといけないの?なんかムカムカするなぁ。
「2人とも!!集中して下さいっ!!今はイベント中ですよっ!!」
「あ、そうだった。すまない美波。」
『そうであったな。妾とした事がうっかりしておった。』
全く何をしてるのかな?緊張感が無いよ2人とも。
「まずは通知を見てみるか。いつものパターンなら昨日来た内容と同じだと思うけど。」
ーー慎太郎がスマホを取り出し運営からの通知を確認する。
『只今より、トート・シュピールを開催致します。
そしてこの”監獄エリア”に配置されましたプレイヤーの方々は非常に幸運の持ち主といえましょう。
このエリアはレアエリアとなっております。他エリアとの違いは『特殊装備』が入手できるという点です。『特殊装備』はエリアボスを倒す事により入手できます。今後の戦いを生き残る為にも入手を目指されてはいかがでしょうか?
ただし、エリアボスは非常に強力です。エリアボスを倒さなくてもクリアには何の影響もございません。放置されるのも戦略の一つかと思います。
エリアボスはBP10000となっております。倒せば必然的に一位通過となりますので支配下プレイヤーを獲得されるビッグチャンスとなる事でしょう。残念ながら生存が4組以下となった際は支配下プレイヤーは獲得できなくなってしまいますがね(笑)
また、監獄地下2階層を解放しておりますのでよろしくお願い致します。
皆様の御武運を御祈りしております。』
「レアエリアって楓さんがエンゲルを手に入れた所の事だよね?」
「そうだと思います。確か監獄エリアって言ってたと思うので同じ場所だと思いますけど…」
「となれば監獄を目指すのが得策だよな。エリアボスを倒して特殊装備を手に入れれば戦力大幅アップは間違い無いし。」
『エリアボスに負ければ全滅だがな。』
「これから行こうとしてるのに不吉な事言うのやめてくれる!?」
確かに目指すのが得策よね。私かタロウさんのどちらかが特殊装備を手に入れればクランとして相当な戦力アップは間違い無い。
それに…もし私が手に入れればーー
ーー
ーー
ーー
【美波's妄想ストーリー】
『喰らいなさいっ!!美波特殊装備アターック!!』
『ぐはぁー!!』
美波の一撃によりプレイヤーたち数十人が一掃される。
『凄いじゃないか!流石は俺の嫁だな。正妻パワーは伊達じゃない。』
『ふふっ、そんなに褒めたって何も出ませんよ?』
『俺の愛が溢れ出そうだよ。』
『た、タロウさんっ!!』
『美波…今晩は寝かさないからな?覚悟しろよ?』
ーー
ーー
ーー
ーーみたいな事になるんじゃないかな!?
良いっ!!良いよっ!!絶対特殊装備を手に入れないとっ!!
「よしっ!!監獄に行きますよっ!!」
「え?」
「ほらっ!!グズグズしてると誰かに取られますっ!!急いで下さいっ!!」
ーーやる気満々の美波がズンズンと先へ進んで行く。
「随分とやる気満々だな。」
『良いではないか。妾がいる以上お前たちに負けは無い。取れる物は取っておく。必然であろう。』
「女王様のその自信がとても頼もしいですよ。」
「何やってるんですかっ!!早く来て下さいっ!!」
「わかったわかった。今行くよ。」
ーー美波の欲望が渦巻く中、第二次トート・シュピールが開戦する。
見渡す限り森しか無い。私が転送された場所は自然溢れる森だった。森の動物たちでもいればとても楽しそうな場所に思えるが相変わらず生き物の気配は感じられない。それにより得体の知れない恐怖感を感じてしまう。やはり実在する場所では無いのだろうか。
「それよりも早くみんなを探さないと…!私一人しか転送されなかったのかしら…」
少し不安になり辺りを見渡すと草むらをベッドに眠っているタロウさんがいた。
「タロウさんっ!!やった…!タロウさんと一緒だ!!」
ふふっ、やっぱりこれが正ヒロインの力よねっ。最近扱いが雑だったけどこういう時に二人きりになれる引きをもってるのが正妻なのよっ!!
「でも…タロウさんだけいつも寝てるけど何か理由あるのかな…?」
タロウさんだけ寝てるってやっぱり変だよね…?悪い事じゃなければいいけど…
…それより寝てるんだから膝枕でもした方がいいかな…?せ、せっかく二人きりなんだもんねっ!!む、むしろ…キスしたら目を覚ますんじゃないかなっ!?昔話的には定番だもんねっ!?
「…し、しちゃおうかな。」
『うむ、やってしまえ。』
「そ、そうだよねっ!もうキスはしてるんだから彼女みたいなものだしねっ!!」
『左様。さっさと既成事実を作ってしまえ。』
「う、うんっ!!よ、よしっ!!じゃあ行きま……」
『ん?どうした?さっさとやれ。』
「…一つ聞いてもいいかな?」
『どうした我が友よ?』
「…なんで勝手に出てるの?」
『ククク、妾がーー』
「それはわかってるわよっ!!」
『むっ?何を怒っておるのだ?』
「せっかく二人っきりだったのに邪魔されたら怒るでしょ!!」
『妾の事は気にするな。この誑しを骨抜きにする為の指南をミナミにしてやるだけだ。』
「気にするわよっ!!そもそも指南って何!?私に何をさせる気!?」
『何ってナニに決まっておろう。』
「す、す、す、するわけないでしょ!?そ、そういうのはその…結婚してからというか…でもタロウさんがしたいならその…でも…なんていうか。ムードも大事というか…」
ーー美波が妄想モードに入っていると慎太郎が目を覚ます。
慎太郎はくねくねと動きながら独り言を言っている美波を死んだ魚のような目で見ている。
「…ノートゥング、聞いてもいい?」
『…何だ誑し。』
「…美波は一体何をしてるんだ?」
『…女には色々あるのだ。』
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【 美波・慎太郎 組 1日目 AM 8:03 】
うぅ…死にたい…タロウさんが起きてるのに私は一体何をしていたのだろう…そもそも何でノートゥングは教えてくれないのよっ!
『ん?どうした?』
「なんでもないっ!!」
…落ち着きなさい美波。クールよ、クールになるのよ。ちょっと変な所を見られちゃったけど私は正ヒロインで正妻なんだから余裕を持ちなさい。
「さて、俺たちは2人組になっちゃったけど…なんか久しぶりだな。」
「え?」
「いやさ、美波と2人っきりでイベントに臨むなんて久しぶりじゃん。奇しくも前回のトート・シュピールの時以来だし。あの時はさ…美波を守れなかった。楓さんが来てくれなかったら取り返しのつかない事になっていた。でもさ…もう美波を不安にはさせないから。必ず俺が守るから。だから俺に人生を預けてくれ。」
な、何この展開!?これってプロポーズ!?人生ってそういう事だよねっ!?何よりタロウさんの目が真剣だ…!凛々しい…!カッコいいっ…!!
よしっ!返事よ美波!!返事をするのよっ!!お嫁さんにして下さいって言うのよっ!!
「はいっ!!タロウさんのおよーー」
ーーその時だった。スマホの通知音が鳴り響く。なぜかいつもより大きい音量により美波の台詞はかき消されてしまった。
……だからさぁ、私の扱いって雑じゃないかな?何でこのタイミングで鳴るかな?おかしいよね?しかも何この音量!?大きすぎだよねっ!?丸聞こえだよっ!?他のプレイヤー近くにいたら居場所バレバレだよっ!?
「やたらとデカい音だな。近くにプレイヤーいたらどうすんだよ。」
『いや、近くには誰もおらんぞ。』
「えっ?そーなの?」
『ああ。気配は全く感じぬ。』
「スゲーな。流石は剣王。」
『フッ、当然であろう。感謝をしておるのなら戻ったらあいすくりぃむを補充しておけ。』
「はいはい、わかりましたよ。他にもスイーツ買って来るよ。プリンとか。」
『ぷりん?なんだそれは?あいすくりぃむのぷりんの事とは違うのか?』
「アレはアイスの味だよ。それとは違ってプリンって食べ物があるんだよ。カスタードの部分は甘くて美味しい。だが、上にかかっているキャラメルソースがほんのり苦くてこれがまた最高なんだな。」
『な、なんだそれは!?食べたい!!食べさせよ!!』
「コンビニでもあるからイベント終わったら買って来るよ。」
『良いのか?』
「そんなに食べたいなら買って来るよ。」
『フフフ、そうか。それは楽しみだな。』
「なんだ、ノートゥングも普通に女の子みたいな笑いできんじゃん。そっちの方が可愛いぞ?」
『貴様ッ…!!何を言っておる!?誰に向かって口を利いておるのだ!!』
「テレなくたっていいじゃん。」
『テレてなどおらぬわッ!!』
……何コレ?何で私はタロウさんとノートゥングのイチャイチャを見せつけられないといけないの?なんかムカムカするなぁ。
「2人とも!!集中して下さいっ!!今はイベント中ですよっ!!」
「あ、そうだった。すまない美波。」
『そうであったな。妾とした事がうっかりしておった。』
全く何をしてるのかな?緊張感が無いよ2人とも。
「まずは通知を見てみるか。いつものパターンなら昨日来た内容と同じだと思うけど。」
ーー慎太郎がスマホを取り出し運営からの通知を確認する。
『只今より、トート・シュピールを開催致します。
そしてこの”監獄エリア”に配置されましたプレイヤーの方々は非常に幸運の持ち主といえましょう。
このエリアはレアエリアとなっております。他エリアとの違いは『特殊装備』が入手できるという点です。『特殊装備』はエリアボスを倒す事により入手できます。今後の戦いを生き残る為にも入手を目指されてはいかがでしょうか?
ただし、エリアボスは非常に強力です。エリアボスを倒さなくてもクリアには何の影響もございません。放置されるのも戦略の一つかと思います。
エリアボスはBP10000となっております。倒せば必然的に一位通過となりますので支配下プレイヤーを獲得されるビッグチャンスとなる事でしょう。残念ながら生存が4組以下となった際は支配下プレイヤーは獲得できなくなってしまいますがね(笑)
また、監獄地下2階層を解放しておりますのでよろしくお願い致します。
皆様の御武運を御祈りしております。』
「レアエリアって楓さんがエンゲルを手に入れた所の事だよね?」
「そうだと思います。確か監獄エリアって言ってたと思うので同じ場所だと思いますけど…」
「となれば監獄を目指すのが得策だよな。エリアボスを倒して特殊装備を手に入れれば戦力大幅アップは間違い無いし。」
『エリアボスに負ければ全滅だがな。』
「これから行こうとしてるのに不吉な事言うのやめてくれる!?」
確かに目指すのが得策よね。私かタロウさんのどちらかが特殊装備を手に入れればクランとして相当な戦力アップは間違い無い。
それに…もし私が手に入れればーー
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【美波's妄想ストーリー】
『喰らいなさいっ!!美波特殊装備アターック!!』
『ぐはぁー!!』
美波の一撃によりプレイヤーたち数十人が一掃される。
『凄いじゃないか!流石は俺の嫁だな。正妻パワーは伊達じゃない。』
『ふふっ、そんなに褒めたって何も出ませんよ?』
『俺の愛が溢れ出そうだよ。』
『た、タロウさんっ!!』
『美波…今晩は寝かさないからな?覚悟しろよ?』
ーー
ーー
ーー
ーーみたいな事になるんじゃないかな!?
良いっ!!良いよっ!!絶対特殊装備を手に入れないとっ!!
「よしっ!!監獄に行きますよっ!!」
「え?」
「ほらっ!!グズグズしてると誰かに取られますっ!!急いで下さいっ!!」
ーーやる気満々の美波がズンズンと先へ進んで行く。
「随分とやる気満々だな。」
『良いではないか。妾がいる以上お前たちに負けは無い。取れる物は取っておく。必然であろう。』
「女王様のその自信がとても頼もしいですよ。」
「何やってるんですかっ!!早く来て下さいっ!!」
「わかったわかった。今行くよ。」
ーー美波の欲望が渦巻く中、第二次トート・シュピールが開戦する。
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