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第145話 信じています
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休み時間になるとタロウさんの席の周りには女子たちが集まって来る。さっきまでは異性になんて興味無いような顔をしていたくせに今は完全に女の顔になっている。本当に浅ましい連中だ。
「ねぇねぇ、田辺くんはいつも何してるのー?」
タロウさんは私と一緒に住んでるんです。そして日中はつきっきりで勉強を教えてくれているんです。どうですか?羨ましいでしょう。
「ゲームやってる時が多いかな。」
「私も一緒にやりたーい。」
あなたには無理ですよ。タロウさんは私とやるんです。ていうか近くありませんか?タロウさんから離れて下さい。
ーーそんな感じのやり取りが放課後まで続いた。
最初はタロウさんとの学生生活が楽しみだと思っていたけど考えが甘かった。タロウさんは普通にモテる。それが私にとって非常に面白くない。早い話が嫉妬だ。他の女が近くに寄るだけでイライラしてしまう。美波さんたちにはそんな事思わないのにな…
「おーい、アリスー、何で先に帰っちゃうんだよー。」
私が先に帰っていると後ろからタロウさんが小走りで近づいてくる。
「…別に。一緒に住んでるのバレたら面倒だから帰ったんですよ。」
私はすぐに自己嫌悪に陥る。大好きなタロウさん相手にどうしてこんな嫌な言い方をしてしまったんだろう。
「えっと…怒ってる…?」
「…少し。」
「えーっとー…理由聞いていい?」
「…誰かさんがデレデレしてるからじゃないですか。」
私のバカ!なんでそんな嫌な言い方するのよ!!タロウさんには凄くお世話になってるのにそんな事を言っていいはずがないのに。
「デレデレって…そんなのしてないよ。」
「…女の子に囲まれてデレデレしてました。」
頭ではわかっているのに口が自然と動いてしまう。こんなんじゃ嫌われちゃう…
「ま、デレデレは確かにしてたかもしれないな。」
「えっ?」
えっ?
「アリスと一緒に学校通うってなったらそりゃあデレデレしちゃうよ。こんな可愛い子がクラスメイトとか最高じゃん。」
この人はそういう事をしれっと言うからズルい。嫉妬していた自分が本当にバカみたいだ。そしてそんな台詞を聞いてニヤけてしまう私は本当にチョロい。
「お、笑ってくれた。」
ニヤけた顔がバレないように後ろを向いていたのにタロウさんが私の顔を覗いてくる。
「うぅ~…!!もう帰りますよ!!」
********************
夜になり私たちは床についている。私の住んでるアパートの間取りは2DKだ。隣がお父さんとお母さんの部屋。そしてここが私とタロウさんの部屋だ。つまりは同じ部屋で隣同士で寝ているのだ。それにより私の心臓は破裂寸前だ。今までだってタロウさんと2人っきりで寝た事なんてなかった。美波さんや楓さん、牡丹さんがいるのだからそんな状況になんてなるはずがない。それが今は2人っきりなのだ。心臓が口から飛び出そう…どうしよう…何を話せば…
「…アリス、起きてる?」
「はっ、はいっ!!起きてます!!」
不意に話しかけられたのでつい大声になってしまった。
「…お父さんとお母さんに会ってどうだった?」
「…嬉しいです。本当に会えるなんて思ってなかったので…」
「凄く良いご両親だな。」
「はい。私の誇りです。」
「絶対2人を救おう。俺はその為ならなんだってする。」
「ありがとうございます。やっぱりタロウさんは優しいです。」
「それはアリスたちにだけだよ。」
ここで『アリスにだけだよ』と言って欲しいと思うのは私の我儘だろうか。いつかこの人にその台詞を言って欲しいな。
「だが問題なのはこのシーンだな。なんたって星5のシーンだ、一筋縄でいくわけがない。【主張をしろ】って言ったって何をだよって突っ込みたくなる。あまりにもヒントが無さすぎだ。」
「…恐らくはクラスの事だと思います。」
「クラス?」
「初日で気づかれたと思いますが私は友達がいません。こういった田舎では私みたいなのは珍しいみたいです。だから小さい頃から輪の中に入れてはもらえませんでした。段々と当時の記憶が戻っていく中で思い出したんです、近い内…もしかしたら明日かもしれませんが私はクラスの子たちにイジメられます。両親が亡くなるまでの間ですが行われ続けます。」
こんな情けない事をタロウさんに話すのは恥ずかしい、とは思わなかった。タロウさんなら私の全てを受けとめてくれるはず。そういった絶対的な信頼があるから恥ずかしいなんて思わなかった。
そして私の予想通りにタロウさんはそれを受けとめてくれた。何も言わず私の頭を撫でて身体を抱き寄せ、そのまま抱き締めてくれた。
「大丈夫だよ。今は俺がいる。俺がアリスを守るよ。」
「ふふふっ、そう言ってくれると思っていました。私のナイト様は心強いです。」
「…結構ドジで姫様を危険に晒してるけどな。」
「大丈夫です。お姫様は魔法が使えるからナイト様を守れます。」
「それってナイト様必要なくない!?むしろ姫様たくましすぎだよね!?」
「あははっ!」
楽しいな。幸せだな。神様、この幸せがずっと続きますように。
「ねぇねぇ、田辺くんはいつも何してるのー?」
タロウさんは私と一緒に住んでるんです。そして日中はつきっきりで勉強を教えてくれているんです。どうですか?羨ましいでしょう。
「ゲームやってる時が多いかな。」
「私も一緒にやりたーい。」
あなたには無理ですよ。タロウさんは私とやるんです。ていうか近くありませんか?タロウさんから離れて下さい。
ーーそんな感じのやり取りが放課後まで続いた。
最初はタロウさんとの学生生活が楽しみだと思っていたけど考えが甘かった。タロウさんは普通にモテる。それが私にとって非常に面白くない。早い話が嫉妬だ。他の女が近くに寄るだけでイライラしてしまう。美波さんたちにはそんな事思わないのにな…
「おーい、アリスー、何で先に帰っちゃうんだよー。」
私が先に帰っていると後ろからタロウさんが小走りで近づいてくる。
「…別に。一緒に住んでるのバレたら面倒だから帰ったんですよ。」
私はすぐに自己嫌悪に陥る。大好きなタロウさん相手にどうしてこんな嫌な言い方をしてしまったんだろう。
「えっと…怒ってる…?」
「…少し。」
「えーっとー…理由聞いていい?」
「…誰かさんがデレデレしてるからじゃないですか。」
私のバカ!なんでそんな嫌な言い方するのよ!!タロウさんには凄くお世話になってるのにそんな事を言っていいはずがないのに。
「デレデレって…そんなのしてないよ。」
「…女の子に囲まれてデレデレしてました。」
頭ではわかっているのに口が自然と動いてしまう。こんなんじゃ嫌われちゃう…
「ま、デレデレは確かにしてたかもしれないな。」
「えっ?」
えっ?
「アリスと一緒に学校通うってなったらそりゃあデレデレしちゃうよ。こんな可愛い子がクラスメイトとか最高じゃん。」
この人はそういう事をしれっと言うからズルい。嫉妬していた自分が本当にバカみたいだ。そしてそんな台詞を聞いてニヤけてしまう私は本当にチョロい。
「お、笑ってくれた。」
ニヤけた顔がバレないように後ろを向いていたのにタロウさんが私の顔を覗いてくる。
「うぅ~…!!もう帰りますよ!!」
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夜になり私たちは床についている。私の住んでるアパートの間取りは2DKだ。隣がお父さんとお母さんの部屋。そしてここが私とタロウさんの部屋だ。つまりは同じ部屋で隣同士で寝ているのだ。それにより私の心臓は破裂寸前だ。今までだってタロウさんと2人っきりで寝た事なんてなかった。美波さんや楓さん、牡丹さんがいるのだからそんな状況になんてなるはずがない。それが今は2人っきりなのだ。心臓が口から飛び出そう…どうしよう…何を話せば…
「…アリス、起きてる?」
「はっ、はいっ!!起きてます!!」
不意に話しかけられたのでつい大声になってしまった。
「…お父さんとお母さんに会ってどうだった?」
「…嬉しいです。本当に会えるなんて思ってなかったので…」
「凄く良いご両親だな。」
「はい。私の誇りです。」
「絶対2人を救おう。俺はその為ならなんだってする。」
「ありがとうございます。やっぱりタロウさんは優しいです。」
「それはアリスたちにだけだよ。」
ここで『アリスにだけだよ』と言って欲しいと思うのは私の我儘だろうか。いつかこの人にその台詞を言って欲しいな。
「だが問題なのはこのシーンだな。なんたって星5のシーンだ、一筋縄でいくわけがない。【主張をしろ】って言ったって何をだよって突っ込みたくなる。あまりにもヒントが無さすぎだ。」
「…恐らくはクラスの事だと思います。」
「クラス?」
「初日で気づかれたと思いますが私は友達がいません。こういった田舎では私みたいなのは珍しいみたいです。だから小さい頃から輪の中に入れてはもらえませんでした。段々と当時の記憶が戻っていく中で思い出したんです、近い内…もしかしたら明日かもしれませんが私はクラスの子たちにイジメられます。両親が亡くなるまでの間ですが行われ続けます。」
こんな情けない事をタロウさんに話すのは恥ずかしい、とは思わなかった。タロウさんなら私の全てを受けとめてくれるはず。そういった絶対的な信頼があるから恥ずかしいなんて思わなかった。
そして私の予想通りにタロウさんはそれを受けとめてくれた。何も言わず私の頭を撫でて身体を抱き寄せ、そのまま抱き締めてくれた。
「大丈夫だよ。今は俺がいる。俺がアリスを守るよ。」
「ふふふっ、そう言ってくれると思っていました。私のナイト様は心強いです。」
「…結構ドジで姫様を危険に晒してるけどな。」
「大丈夫です。お姫様は魔法が使えるからナイト様を守れます。」
「それってナイト様必要なくない!?むしろ姫様たくましすぎだよね!?」
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