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第44話 強制参加イベント告知
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ーー誰かに呼ばれている
ーー安心する声だ
ーー美波か
ーー起きなきゃ
「タロウさんっ!起きて下さいっ!」
目を覚ますと美波が目の前にいる。
「おはよう、美波。やっぱり起きた時に美波がいると安心するな。」
「ふふっ、そうですね。タロウさんがいないと変な感じです。やっぱりこれが落ち着きます。」
「そうだね。ありがとう美波。ちゃんとシーンをクリアする事ができた。美波のおかげだよ。」
「そんな!私は何も…!」
「美波がいてくれたからだよ。きっと美波がいなかったら心が折れていたと思う。何も変わらずゲームオーバーだった。美波にカッコ悪いところを見せられない、そう思ってがんばれた。ありがとう美波。」
「タロウさん…。力になれたのなら私は嬉しいですっ。」
俺たちの間にはなんとも言えない心地良い空気が流れている。お互いに何かを話すわけでもなく、ただ沈黙しているだけだがとても心地良い。美波はどうかはわからないが、俺にとって美波はとても大きい存在になっている。
「そうだ、アスカに変化があったか調べてみてもいいかな?」
「そうですよね。事故が無くなっていればいいですけど…」
「そうだね…」
小学校の卒アルをクローゼットから取り出す。外観には変化は無い。事故が無くなっていればこの中にアスカがいるかもしれない。俺は軽く息を吐いて卒アルを開く。中を確認していくと…アスカがいた。
だが…いるにはいるが…
「タロウさん…」
「運命は変えられないか…くそっ…!」
アスカは俺のクラスの集合写真の中にいた。みんなの列には入らずに1人だけ宙に浮かぶ形となってそこに存在していた。
「でも…変化は起きました。」
「え…?」
「確かに結果は変わらなかったかもしれません。でも、アスカさんは転校をしなかった。それはタロウさんがアスカさんをしっかりと守って転校させなかったという事です。タロウさんはちゃんと運命を変えましたよ。」
やった事を認められる事なんていつ以来だろう。記憶には無い。アスカを救う事はできなかったけど、それに対する努力はした。それを美波は認めてくれた。とても嬉しい、幸せな気持ちになった。
「そんな風に優しい顔で言われると泣きそうになるんだけど。」
「ふふっ、いいですよ。そうしたら頭を撫でてあげます。」
オッさんが女子大生に頭を撫でてもらうとかどんなお店だよ。
「ありがとう美波。次のシーンこそはアスカを救ってみせる。」
「はいっ!私もお手伝いしますっ!」
「よろしく頼むね。でもその前に次は美波のシーンだ。そのサポートを俺は全力でするよ。」
「いいんですか?」
「もちろん。俺が美波を助けたいんだ。」
「お願いしますねっ!」
「おう!じゃあまずはーー」
どデカイ腹の音が部屋に鳴り響くーー
「…腹ごなしかな。」
「ふふっ!すぐに準備しますねっ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつも通り仕事が終わり小山駅へと着く。駅の改札を出る時にいつものオッさんと会った。オッさんは相変わらずコンビニに向かう。俺は家へと向かう。すまんなオッさん、俺はもうコンビニには寄らないよ。家に女神がいるからな。
そんな事を考えながら歩いているとすぐにマンションに着いた。部屋の明かりは点いている。俺は急いでエレベーターに乗り最上階まで一気にワープする。最上階まで着いたら足早に部屋の前まで行くと、中から美味しそうな匂いが外に漏れている。今日はハンバーグだな。その美味しそうな匂いを早く口にしたく部屋の扉を開く。
「ただいま。」
「おかえりなさいっ!今日もご苦労様でしたっ!」
艶のある黒い長い髪をポニーテールにし、ピンクの可愛いエプロンを装着しながら美波が俺を出迎える。何この可愛いの。凄まじい殺傷能力なんだけど。
「どうしましたか…?」
俺がアホヅラ下げながらガン見しているから美波が不審に思ってしまっている。落ち着け俺。クールだ、クールになれ田辺慎太郎!
「なんでもないよ。凄い美味そうな匂いがしてトリップしちゃったよ。」
「ふふっ。今日のハンバーグは自信作ですっ!着替えている間に食べられると思いますっ!」
「それは楽しみだな。すぐに着替えて来るよ。」
「はいっ!」
ーーその時だった。
ほのぼのとした雰囲気に水を差すようにスマホの通知音が鳴り響く。俺だけではなく美波のスマホも同時に鳴っているのだから何の通知なのか想像がつく。
俺たちは目配せし、内容を確認する。
『いつもご利用ありがとうございます。俺'sヒストリー運営事務局です。この度、俺'sヒストリーのプレイヤー数がなんと5万人を突破致しました。これも皆様のお陰でございます。誠にありがとうございます。
ですが、残念な事にイベントに参加されていないプレイヤーが数多くおられます。その為、我々運営事務局と致しましては非常に遺憾ながら強制参加イベント、 トート・ツヴィンゲンの開催を決定致しました。こちらのイベントは強制参加になりますので拒否権は一切認められません。時間になりましたらバトルエリアに強制転送させて頂きます。
イベント内容としましては、50組のプレイヤーと100体のゾルダートを配備したバトルロイヤル形式とさせて頂きます。開催期間は最低1日とさせて頂きます。そして1日を経過し、プレイヤーの数が20組を切りましたら終了とさせて頂きます。20組を切らなければ半永久的に終了しませんのでお気をつけ下さい。
当然報酬もございます。プレイヤー、ゾルダートを合わせて100体以上撃破されたプレイヤーにはアルティメットレア確定ガチャチケットを1枚差し上げます。
そして生存された全プレイヤーにメモリーダストを1つと、3連ガチャを1回無料で行う事ができます。
また、これまでの戦功に応じてラウム内にアイテムを支給しておりますのでご活用くださいませ。
最後に日時ですが、明日の夕方よりランダムで転送致しますのでよろしくお願い致します。
皆様のご武運を心よりお祈りしております。』
「た、タロウさん…これって…」
「楓さんの言った通りになっちまったな…」
ーー安心する声だ
ーー美波か
ーー起きなきゃ
「タロウさんっ!起きて下さいっ!」
目を覚ますと美波が目の前にいる。
「おはよう、美波。やっぱり起きた時に美波がいると安心するな。」
「ふふっ、そうですね。タロウさんがいないと変な感じです。やっぱりこれが落ち着きます。」
「そうだね。ありがとう美波。ちゃんとシーンをクリアする事ができた。美波のおかげだよ。」
「そんな!私は何も…!」
「美波がいてくれたからだよ。きっと美波がいなかったら心が折れていたと思う。何も変わらずゲームオーバーだった。美波にカッコ悪いところを見せられない、そう思ってがんばれた。ありがとう美波。」
「タロウさん…。力になれたのなら私は嬉しいですっ。」
俺たちの間にはなんとも言えない心地良い空気が流れている。お互いに何かを話すわけでもなく、ただ沈黙しているだけだがとても心地良い。美波はどうかはわからないが、俺にとって美波はとても大きい存在になっている。
「そうだ、アスカに変化があったか調べてみてもいいかな?」
「そうですよね。事故が無くなっていればいいですけど…」
「そうだね…」
小学校の卒アルをクローゼットから取り出す。外観には変化は無い。事故が無くなっていればこの中にアスカがいるかもしれない。俺は軽く息を吐いて卒アルを開く。中を確認していくと…アスカがいた。
だが…いるにはいるが…
「タロウさん…」
「運命は変えられないか…くそっ…!」
アスカは俺のクラスの集合写真の中にいた。みんなの列には入らずに1人だけ宙に浮かぶ形となってそこに存在していた。
「でも…変化は起きました。」
「え…?」
「確かに結果は変わらなかったかもしれません。でも、アスカさんは転校をしなかった。それはタロウさんがアスカさんをしっかりと守って転校させなかったという事です。タロウさんはちゃんと運命を変えましたよ。」
やった事を認められる事なんていつ以来だろう。記憶には無い。アスカを救う事はできなかったけど、それに対する努力はした。それを美波は認めてくれた。とても嬉しい、幸せな気持ちになった。
「そんな風に優しい顔で言われると泣きそうになるんだけど。」
「ふふっ、いいですよ。そうしたら頭を撫でてあげます。」
オッさんが女子大生に頭を撫でてもらうとかどんなお店だよ。
「ありがとう美波。次のシーンこそはアスカを救ってみせる。」
「はいっ!私もお手伝いしますっ!」
「よろしく頼むね。でもその前に次は美波のシーンだ。そのサポートを俺は全力でするよ。」
「いいんですか?」
「もちろん。俺が美波を助けたいんだ。」
「お願いしますねっ!」
「おう!じゃあまずはーー」
どデカイ腹の音が部屋に鳴り響くーー
「…腹ごなしかな。」
「ふふっ!すぐに準備しますねっ!」
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いつも通り仕事が終わり小山駅へと着く。駅の改札を出る時にいつものオッさんと会った。オッさんは相変わらずコンビニに向かう。俺は家へと向かう。すまんなオッさん、俺はもうコンビニには寄らないよ。家に女神がいるからな。
そんな事を考えながら歩いているとすぐにマンションに着いた。部屋の明かりは点いている。俺は急いでエレベーターに乗り最上階まで一気にワープする。最上階まで着いたら足早に部屋の前まで行くと、中から美味しそうな匂いが外に漏れている。今日はハンバーグだな。その美味しそうな匂いを早く口にしたく部屋の扉を開く。
「ただいま。」
「おかえりなさいっ!今日もご苦労様でしたっ!」
艶のある黒い長い髪をポニーテールにし、ピンクの可愛いエプロンを装着しながら美波が俺を出迎える。何この可愛いの。凄まじい殺傷能力なんだけど。
「どうしましたか…?」
俺がアホヅラ下げながらガン見しているから美波が不審に思ってしまっている。落ち着け俺。クールだ、クールになれ田辺慎太郎!
「なんでもないよ。凄い美味そうな匂いがしてトリップしちゃったよ。」
「ふふっ。今日のハンバーグは自信作ですっ!着替えている間に食べられると思いますっ!」
「それは楽しみだな。すぐに着替えて来るよ。」
「はいっ!」
ーーその時だった。
ほのぼのとした雰囲気に水を差すようにスマホの通知音が鳴り響く。俺だけではなく美波のスマホも同時に鳴っているのだから何の通知なのか想像がつく。
俺たちは目配せし、内容を確認する。
『いつもご利用ありがとうございます。俺'sヒストリー運営事務局です。この度、俺'sヒストリーのプレイヤー数がなんと5万人を突破致しました。これも皆様のお陰でございます。誠にありがとうございます。
ですが、残念な事にイベントに参加されていないプレイヤーが数多くおられます。その為、我々運営事務局と致しましては非常に遺憾ながら強制参加イベント、 トート・ツヴィンゲンの開催を決定致しました。こちらのイベントは強制参加になりますので拒否権は一切認められません。時間になりましたらバトルエリアに強制転送させて頂きます。
イベント内容としましては、50組のプレイヤーと100体のゾルダートを配備したバトルロイヤル形式とさせて頂きます。開催期間は最低1日とさせて頂きます。そして1日を経過し、プレイヤーの数が20組を切りましたら終了とさせて頂きます。20組を切らなければ半永久的に終了しませんのでお気をつけ下さい。
当然報酬もございます。プレイヤー、ゾルダートを合わせて100体以上撃破されたプレイヤーにはアルティメットレア確定ガチャチケットを1枚差し上げます。
そして生存された全プレイヤーにメモリーダストを1つと、3連ガチャを1回無料で行う事ができます。
また、これまでの戦功に応じてラウム内にアイテムを支給しておりますのでご活用くださいませ。
最後に日時ですが、明日の夕方よりランダムで転送致しますのでよろしくお願い致します。
皆様のご武運を心よりお祈りしております。』
「た、タロウさん…これって…」
「楓さんの言った通りになっちまったな…」
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