俺'sヒストリー

かつしげ

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第37話 トート・シュピール リザルト

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いつものように闇の中からツヴァイが現れたが何だろう、何かがおかしい。何とも言えない気持ち悪さが俺の心を支配している。

『どうかされましたカ、タナベシンタロウサマ。』

「いや、何でもない。」

コイツに聞いても何かがわかるわけでもない。それに何かを知っていても答えるような奴ではない事はわかっている。

「それよりもリザルトなのに何で俺たちだけなんだ?」

このリザルトの空間にいるのは俺と美波と楓さんだけだ。他、6組のプレイヤーたちの姿はどこにも見られない。

『カカカカカ!この場に居合わせたら都合が良くない者たちばかりでショウ。彼らには別の場所でリザルトを行なっておりまス。』

なるほど。澤野の奴が生きてるかどうかは知らないが、仮に生きてたとしても美波と鉢合わせたくはない。運営なりの配慮といったところか。

「そういえば身体の傷も治ってるな。肋が折れたりして重症だったのに何事もなかったみたいだ。」

『イベントやシーンで負った傷はリザルトで回復致しまス。ですガ、千切れたリ、潰れたリ、といった傷は治りませんので御注意して下さいマセ。』

嫌な言い方だな。まぁ、そんな事にならないようにするけどさ。

『そろそろ始めましょうカ。勝ち残りおめでとうございマス。御見事でしタ。流石はアルティメットの所持者といったところデショウカ。』

「俺はそんなに大した事はしてねぇよ。美波と楓さんのおかげで勝ち残れただけだ。」

「そんな事ありませんっ!タロウさんが私を甲斐から守ってくれたんです!」

「いや、今回は反省しなきゃいけない事がたくさんある。美波をちゃんと守れなかったのは事実だ。」

「タロウさん…」

「だから満足はしちゃいけない。もう二度と同じ過ちは繰り返さないようにする。本当にごめん。」

「…1人で抱え込まないで下さい。私たちは仲間じゃないですか。失敗する事はあります。確かにあの局面での失敗はしちゃいけない事です。でも、それを補い合うのが仲間だと思います。」

「美波…」

「タロウさんが失敗しちゃいそうな時は私も助けます!だから…抱え込まないで下さい!私だって強くなってタロウさんを守れるようになります!」

いや、それはどうなんだろう。女の子に守られるってなんか情けなくないか。

「ウフフ、そうですよ、私も助けます。タロウさんを守り、美波ちゃんを守る。その為にもっと強くなります。みんなで支え合えば怖いものなんてありません。」

もう現時点であなたは相当強いですよ。最強プレイヤーアワードにノミネートされてるんじゃないですか。

「ふふっ、そうですねっ!私たちは最強で最高の仲間ですもんね!」

「本当ね、ウフフ。」

美女がキャッキャしてる姿は尊くていいんだけどさ…

途中まで良い話だったのもわかるんだけどさ…

君らに守られてたら俺の存在意義が無くなるんだよね。ただの無能なオッさんじゃん。パーティーのリストラ候補筆頭だよね。イケメン勇者が加入したら戦力外確定キャラじゃん。

『話を続けてよろしいデショウカ?』

話を中断させられたツヴァイは不快感を露わにするーー

『時間も無いので簡潔に終わらせマスネ。最終順位の発表を致しまス。』

そうだった。最下位は奴隷になるんだよな。すっかり忘れていた。流石に最下位では無いだろうけど不安だな。ドキドキする。

『孤島エリア1位のプレイヤーはセリザワカエデサマでス。』

「わぁ!流石楓さんですっ!」

「ウフフ、ありがとう。」

すげーな。でもそうだよな、半分のプレイヤー倒してるんだから当然だよな。て事は、仮に俺らが最下位でも楓さんの奴隷になるだけか。楓さんの奴隷か…楓さんって結構Sだよな。でもなんか良いよね。うん。
…ダメだ!ダメだぞ慎太郎!仲間を、親友の楓さんにいやらしい妄想を抱いては最低だ!

『獲得BPは85となっておりまス。』

「85?35の間違いではないのですか?私は5人としか戦ってませんよ?」

『いエ、85BPで間違い御座いまセン。貴女は『ゼーゲン』を見つけましタ。ゼーゲンの獲得は50BPとなっておりまス。』

「ゼーゲン?」

『その腰に差してある剣の事デス。ゼーゲンは『召喚系』のアルティメットを持つ者には必須装備となっておりマス。』

「初めて聞くワードが多いのだけれど教えてもらえるのかしら?」

『もちろんで御座いまス。先ずアルティメットの詳細について話しましょうカ。アルティメットは大きく分けて3種類存在致しまス。『強化系』、『召喚系』、『時空系』デス。セリザワカエデサマとタナベシンタロウサマが持っておられる召喚系ハ、英傑を呼び出して力を借りるのが主な効果とナリマス。当然ながら英傑は自分の身体では無いので真の力を発揮する事はできまセン。力を解放する為にはゼーゲンが必要にナリマス。』

「何の為に?」

『鍵なのでスヨ。ゼーゲンは英傑の力を解放する為の鍵デス。英傑を召喚する際に六芒星の魔法陣が現れますヨネ?あの魔法陣は召喚する為のモノでは無ク、力を封じる為のモノなのです。そして解放する為には6本のゼーゲンが必要にナリマス。』

「ゼーゲンはそんな簡単に手に入る代物なのかしら?」

『いえいエ。ゼーゲンを手にしたプレイヤーは貴女が初めてで御座いまス。イベント、シーンで入手は可能ですガ、正確な所在は誰にも分かりまン。入手は非常に困難デス。』

「ブルドガングの力の解放は夢物語って事ね。」

『その分強力なのは確かデス。それにゼーゲンは使用者の身体能力を飛躍的に上昇させまス。デメリットは多いですがメリットも非常に多いシロモノでしょウ。』

「なるほど、身体の動きが異常だとは思っていたけどそういう事だったのね。」

『ゼーゲンには救済措置も御座いまス。今回のようなイベントの時にセリザワカエデサマが最下位になった場合には身代りとして代用できまス。支配下プレイヤーにはなりませんので御安心下さイ。』

ゼーゲンってのはいい事ずくめだな。俺も何とかして手に入れて美波に渡したいな。そうすれば美波も少しは安心してオレヒスできるだろうし。

『それト、ゼーゲンの譲渡はできませんのでお気をつけ下さイ。』

お前、俺の心読んでんのかよ。ならゼーゲンぽいのを見つけたら美波に回収させるしかないか。

『そして『強化系』ですガ、これは基本的に身体能力を向上させる効果デス。』

それは言われなくても想像ついたけどな。

『最後に『時空系』ですガ、これは時間や空間に干渉する効果を及ぼしまス。』

「どうみても強そうな名前ですよね…でも、時間は想像できますけど空間というのは何でしょうか?」

『例えば空気中に漂う湿気を使って攻撃したりとかデス。詳しくは言えませン。時間はアイバミナミサマを解放する為に生贄にした《巻戻し》などでス。召喚系は強力ですがあまりにも晩成型すぎマス。単純に考えれば時空系がアルティメット最強のスキルと言えまス。』

「そんなすごいスキルを私なんかの為に…」

美波がネガティブモードになってきてるな。

「美波、何度も言うけど俺は後悔してないよ。そんな物より美波が笑顔でいてくれる方が俺は大切だ。」

「タロウさん…すみません、こうやってネガティブになるのが私の悪い癖ですね。」

「そんな事ないよ。美波は感謝の気持ちが強い子なんだよ。だからそうやって考えてしまうだけであって悪い癖なんかじゃないよ。」

美波が熱っぽい目で俺を見だしてきたぞ。やっぱり美波って俺の事がーー

『話を続けますがよろしいデショウカ?』

くっ…!こいつ、邪魔しやがって…!
…いや、待てよ。これが魔法使いの悪い所だろ。美波は熱っぽい目で見てたんじゃなくて責任感じて泣きそうだったから目が潤んでただけだろ。危ねぇ。勘違いする所だったぜ。これだから童貞は。

『そして2位はタナベシンタロウサマ、アイバミナミサマでス。』

「やったっ!タロウさんっ!やりましたねっ!」

「そうだね。」

「おめでとうございます。私たちで上位独占なんて流石は生涯の友ですね。」

どんどんクラスチェンジしてない?よっぽど友達ができて嬉しいんだな。

『獲得BPは24となっておりまス。』

計算合わなくないか?誰かと1回戦って勝った事あったっけ?それに澤野とのアレは俺の負け換算かな。

『1位のセリザワカエデサマにはスキルアップカードを1枚とメモリーダスト1つを進呈致しまス。タナベシンタロウサマたちにはメモリーダストを2つ進呈致しまス。』

「2つ?俺と美波それぞれにメモリーダスト1つ貰えるのか?」

『はイ。支配下の数だけ差し上げマス。アイバミナミサマは支配下ではありませんガ、”赤い糸”で結んでありますので待遇としては同様にナリマス。』

なるほど。奴隷の数が多いほど有利ってのは報酬についても同じなわけか。そもそもメモリーダストを集めて自分の歴史を変えるのがこのゲームの目的だもんな。

『最後に1つ謝罪が御座いまス。本来ならば1位のセリザワカエデサマには最下位プレイヤーを支配下に置く権利が御座いまス。ですが今回はそれが叶わなくなりましタ。』

「別に私は奴隷なんかいらないから構わないけど理由を聞かせてもらってもよろしいかしら?」

『理由は単純で御座いまス。最下位プレイヤーが死亡した為でス。』

「そういう事ね。わかりました。因みに誰だったのかしら?」

『カイリュウジというプレイヤーになりまス。』

「甲斐だって!?」

確かに重症ではあったが一体誰に…?動けるプレイヤーなんていなくないか…?

『ムラナカタケシサマにより殺害されましタ。ムラナカタケシサマはカイリュウジからアルティメットを奪っておりますので御注意下さイ。カレはタナベシンタロウサマの事を恨んでおりますノデ。』

「村中?誰だっけ?」

「1日目にタロウさんが海岸で猫を追っかけていた男を追い払った事がありましたよね?その時の男が確か村中って呼ばれていましたよ?」

そんな事あったっけ?言われてみればあったような。あー、BPの計算合わなかった件はそいつとのバトルを勘定に入れてないからか。やばいな健忘症かな。

「うーん、ごめん。全然覚えてないな。覚えてない奴に恨まれるってのも辛いな。」

『色々とありましたからネ。ではそろそろ御開きと致しましょウ。それでは御機嫌ヨウ。』


半強制的にリザルトを終わらされ意識が朦朧としていく

ーーーー

ーーー

ーー



































『さテ、何か言い分はありますカ、アオイ。』

「はいはい、ありませんよー。調子に乗ってすみませーん。」

『サーシャに感謝をする事デスネ。』

「本当よ。あの距離でブルドガングの一撃をもらっていたらあなた死んでいたかもしれないわよ。」

「いやー、ゼーゲンの力を甘く見てたよ。それにバルムンクの奥義に驚いちゃってさ。あはは。」

「笑い事じゃないわよ。自重しなさい。」

「はーい。」

『どうでしたか彼らハ。』

「そうね、芹澤楓は相当にできるわね。ゼーゲンが無くてもトップクラスじゃないかしら?」

『タナベシンタロウはどうでス?』

「特に何の取り柄もない男にしか見えないわ。バルムンクの力を全然使えていない。」

「こらこら!たーくんの悪口はダメだよー?私に水をくれたし、暴漢から守ってくれた優しい男なんだから!」

「優しいだけでしょ。」

「顔もイケメンだよー。」

「美人を2人も侍らせてニヤついてるああいう軽薄な男は私は嫌いだわ。」

「そんな男じゃないっての。ま、弱いってのは否定しないけどねー。近い内に死んじゃうんじゃないかな?」

「ツヴァイ、あなたはずいぶんと田辺慎太郎に目をかけているみたいだけど私にはそれ程の男には思えないのだけど。」

『フフ、わかってませんネ。カレは簡単に測れるような男ではナイ。』

「知り合いなの?」

サーシャがツヴァイに尋ねるが返答はないーー






『タナベシンタロウ、私は貴方に期待していル。きっと貴方なら私のーー』
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