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59話 天輪花
しおりを挟む昼食を取った後少し休んでから、再び山を登り始めた。
相変わらず魔物の気配はないが、山頂に近づくにつれて魔力の濃度はどんどん濃くなってきている。
そして、休憩から1時間程度かけて、山頂へとたどり着いた。
「ここから先は俺の影も侵入できなかった。結界のようなものが張られてるみたいだな」
「どのレベルの敵がいるかだけでも知れるとよかったが仕方ないな。みんな覚悟はできてるか?」
「俺は大丈夫だ」
「私も大丈夫よ」
全員、魔力も体力も万全だ。
油断するわけではないが、これならエンシェントドラゴンが相手でも負けない自信がある。
「事前に話し合った通り、古龍以上だったら天輪花を採ってすぐ逃げるぞ」
「分かってるわ。じゃあいきましょう」
結界を抜けて頂上部へ入ると、神秘的なほどに鮮やかな自然が広がっていた。
草木は太陽の光を受けて青々と光っており、一面に咲き誇る花は赤、黄、白など、それぞれが少しずつ違った色の輝きを放っている。
そして、天輪花だと思しき虹色に輝く、膨大な魔力を秘めた花もいくつか咲いていた。
だが、この景色に似つかわしくない存在もいる。
「まさかここまで人が来るとは思わなかったわ」
「なぜここに‥‥?」
草原の中央には黒い鱗に紅瞳のドラゴンが鎮座し、そのドラゴンにもたれかかるように黒いマントを羽織った女性が立っている。
黒髪の女性が放つ魔力と、頭に生えた2本のツノと鋭い牙には見覚えがあった。
「なぜここにヴァンパイアが?」
「なぜって、それはこっちのセリフさ。王の森にアタシの眷属を置いてあったんだけどね」
「あのサイクロプスは眷属だったのか!?」
あの異常なほどの強さも、ヴァンパイアの眷属だったというなら納得だ。
それに、サイクロプスだけではなく、あの黒いドラゴンも眷属なのだろう。
「鍵を手に入れた以上、ここに残る理由もないね。クラウディア行くよ!」
「ゴオ゛オ゛ォォォォォ!」
ドラゴンは空気を震わせるような唸り声を上げると、ヴァンパイアを背に乗せて飛び上がった。
「ここで逃したら厄介なことになる。止めるぞ」
「分かったわ、エクスプロージョン!」
「ゴアアァァァァ!!」
「影鎖!」
マリベルの爆発魔法が直撃して空中でバランスを崩したところに、エイルさんが影を使って引きずり落とす。
「チッ!クラウディア、アタシが逃げれるようにこいつらの足止めをしろ!」
そう言うとヴァンパイアは、ドラゴンが地上に落ちる前に背から飛び降りて逃げていった。
「フリージア!天輪花だけ持ってあいつを追いかけろ!このドラゴンは俺たちが止める!」
「わ、分かった!」
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