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56話 

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56話

天輪山は異様な魔力に包まれていた。

一歩天輪山に足を踏み入れた途端、膨大な聖力に押しつぶされそうになる。
ギルドがこの地を封鎖したのは、ここにいる魔物が強いからだけではなく、そもそも実力が足りない者はこの魔力濃度の中で生きられないからかもしれない。

「静かね。魔物の気配も全然ないわ」
「闇魔の森とは大違いだな。これが普通なのか、それとも何か異変が起きてるのか‥‥どちらにせよ、慎重にいこう」
「偵察は俺がやるぜ。『影遣い』」

エイルさんが唱えると丸い影が3つ、正面と左右に向けて地を這って行った。

「今のは‥‥?」
「偵察用の影だ。支配下にある影を飛ばすことで遠くの気配とかを掴むことができるんだ。まぁ、かなり疲れるからあんまり使わないけどな」

他にも影を経由して移動したり、遠距離でも影を操って攻撃したりすることもできるらしい。
なにより、これらが魔力を消費することなく使えるというあたり、流石はエクストラスキルといったところだ。

「嫌な予感がするし、できるだけ纏まって動いた方がよさそうだからな」

これほどの魔力が豊富な地でここまで魔物の気配がないというのは不気味でしかない。
ヴァンパイアがいる可能性も出てきた以上、戦力を分散させるのは危険だ。

「何か見つけたら教えてくれ」
「分かってる」



「どうだ?」
「魔物は見つからないが、足跡とか痕跡はたくさん見つかった。頂上から遠ざかっているみたいだ」
「なるほどな。頂上ということはドラゴンか‥‥強力な魔物達が逃げるというのは相当だな」
「あぁ、ほぼ間違いなく高位のドラゴンだな。アークかエレメントか、最悪エンシェントの可能性もあるか」
「エレメントまでなら1人でなんとかなるけど、エンシェントは流石に面倒ね」

古龍はSSランクに定められているが、そもそも討伐の実績自体が少ないことや、古龍は一定以上の魔力量の高位龍が1万年以上生きることで進化した姿であり、古龍になりたてのものとしばらく経ったものでは実力に大きな差があることなどから、どれくらい強いものがいるか分からない。

「古龍は縄張りを動くことがほとんどないから大丈夫だと思うが‥‥もし古龍が相手だった時には逃げるしかないな」
「それは仕方ないよ。その時は他国まで天輪花を探しに行くさ」
「そうなったら俺も手伝おう」





「!何か来る!」

しばらく山を登っていると、急にエイルさんが叫んだ。

「グレン!」
「あぁ、シールド」
「シールド」

グレンに合わせて俺もシールドを貼る。
すると、右の方から辛うじて目で追えるくらいの速さで魔物が突っ込んできて、シールドに跳ね返された。

「エクスプロージョン」

すかさずマリベルが爆発魔法で追い討ちをかけるが、すぐに起き上がり、後ろに跳んで回避した。

「こんな魔物見たことないな」
「俺もだ。スピードもかなり速いし厄介な相手だな」

そうしている間に再び魔物が体制を立て直して攻撃に移ろうとしている。

「来るぞ!」
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