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49話 グレンVSマリベル

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「これからどうするかは決まっているのかな?」
「いえ、急なことだったのでまだ決めていません。ですが、なるべく早めに行くつもりです」

ギルドマスターの質問にグレンが代表して答える。
元々の予定では、後1、2週間はマリベルを含めた3人の連携を練習しながら他のSランク冒険者が来るのを待つ予定だった。
だが、俺がSランクに昇格したので、これ以上待つ必要も無くなった。
妹の病のことなので、今すぐにでも取りに行きたいくらいだ。

「そうか。では、グランドギルドマスターの名で危険エリアへの立ち入り許可証を作成しよう。明日には渡せると思うから、行く前に受け取りに来てくれ」
「分かりました。それでは失礼します」




ギルドを出ると、そのまま3人でリオード商会へ向かった。
今後の予定を話したり、少し遅めの昼食を摂ったりしようとしたが、今の街では落ち着くことができないだろう。
その点、リオード商会ならグレンの家族が経営するだけあって誰にも邪魔されず、昼食などの用意も頼めるからだ。

「今後の予定だが、明日一日は休んで、明後日に移動を開始するってことでいいか?」
「私はいいわよ」
「俺もいいと思う。急ぎたい気持ちもあるが、さっきの戦いの疲れが完全に癒えるまでは我慢した方が良さそうだ」
「それじゃあ決まりだな。俺とマリベルはこれから訓練場に行くが、フリージアはどうする?」
「俺も見に行くよ」
「その方が良さそうね」




昼飯を食べてから、再びギルドへと戻った。

「それじゃあ始めましょう」
「あぁ。フリージア、開始の合図を頼む」
「分かった。‥‥‥始め!」

「エクスプロージョン!」
「フレイムサンダー!」

開始と同時にマリベルが爆発魔法を放ち、グレンも雷魔法で応戦する。
俺のシールドでは防げないような威力の魔法だが、グレンは雷魔法で相殺している。
最近使えるようになった、エクストラスキル「雷霆」の派生スキル『雷変化』の効果で炎に強い性質に変化させた雷魔法だ。

とはいえ、魔法の撃ち合いとなれば流石にグレンの方が分が悪い。
グレンもそれが分かっているため、近づく隙を探っている。
だが、マリベルもそのグレンの思惑が分かっているため、爆発魔法を連発して近づく隙を与えない。
お互いに相手の実力を分かった上で、自分が有利な状況に持ち込もうとしている。

「ライトニングフォース!!おらあぁぁ!」

先に動いたのはグレンだった。
このままでは消耗するだけだと判断し、多少のダメージを覚悟で強引に距離を詰めていく。
とはいえ、グレンもただ突撃するだけではなく、先ほどと同じく雷変化により炎に強い雷を纏うことで少しでもダメージを抑えようとしている。

攻守が逆転する。
フォース状態のグレンを止めるのは容易ではない。まして、近接戦の苦手なマリベルでは一方的にやられてしまうだけだろう。

そう思っていたが、さらに予想外の事態が起こる。

「スチームブラスト!」
「っ!?」

爆発魔法を受ける覚悟で突撃していたグレンが危険を感じて退避する。
そこに着弾した魔法は、これまでの数倍近い威力を誇り、頑丈な訓練所の地面に大きな穴が空いている。
これほどの威力の魔法を受けていれば、グレンでもただじゃ済まなかっただろう。

「これは複合魔法か‥‥?」
「ええ、水魔法と爆発魔法の複合よ。確実に仕留めるつもりだったけど失敗したわ」

一般的に、炎と水の複合魔法は互いに打ち消し合うために不適合だとされている。
マリベルは爆発魔法という炎の高位魔法と水の組み合わせで文字通り爆発的な強化に成功したのだ。

よく見ると、スキル「爆炎姫」の効果で自分の爆発魔法のダメージを受けないはずのマリベルも怪我を負っている。
どうやら、複合魔法の水魔法の分だけダメージを負っているようだ。

「お前が爆発魔法以外の魔法を使うとは思わなかったぜ」
「グレンに勝つために覚えたのよ」

再びグレンとマリベルの距離が離れる。
だが、未だにグレンが優勢といえる状況にあった。
というのも、マリベルは複合魔法を撃ち続けるしかないからだ。
もしマリベルが通常の爆発魔法を使えば、その隙にグレンは突撃するだろう。
マリベルは、スチームブラストの自傷ダメージで倒れる前にグレンを倒すしかないのだ。


そこからはさらに戦闘は加熱していった。
開き直ったマリベルは複合魔法をすごい早さで連発し、グレンはマリベルの魔法を避けながら攻撃の隙を窺う。

最終的には、スチームブラストのダメージが溜まったせいか魔法が外れ、その隙をグレンが見逃すはずもなく、グレンの勝ちで勝負は決することとなった。



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