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38話 ギルドマスター レヴィン

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翌日、昼頃にグレンとフリージアは冒険者ギルドに向かった。

朝は依頼書の奪い合いで混雑する冒険者ギルドだが、この時間にもなると碌な依頼は残っておらず、冒険者のほとんどは出払っているため閑散としている。

グレンとフリージアはそのまま受付へと進んだ。

「Sランクのグレンだ。総ギルド長と面会しに来た」
「はい、伺っております。そちらの方はフリージア様でしょうか?」
「Aランクのフリージアです」

グレンに続いて俺も自分のギルドカードを提示する。

「確認しました。では、グレン様、フリージア様、総ギルド長の部屋へご案内します」

受付の奥の階段を上り、2階のギルド長の部屋へと向かう。

「総ギルド長、グレン様とフリージア様をお連れしました」
「入れ」
「失礼します」

案内してくれた受付嬢がドアを開き、グレンに次いで部屋へと入る。
部屋の奥にはギルド長と思われる大柄な男性が座っていた。

「まずは来てくれてありがとう。私は総ギルド長のレヴィンだ」
「グレンだ」
「フリージアです」

レヴィンと名乗ったギルド長は日に焼けた肌をした男性で、腕の筋肉などを見ると相当の実力者であると推測できる。
さらに、鋭い表情などから理知的な様子も見られる。
ただ強いだけではなく頭も回るからこそ、総ギルド長という大役を全うできるのだろう。

「君についてはユラシルのギルド長から聞いているよ。昇格試験で無茶をさせたみたいで申し訳ない」
「いえ、結果的に無事だったので大丈夫です」
「彼は実力を見極める能力に長けているから君なら大丈夫だと判断したのだと思う。だが、情報を与えなかったのはいけなかった」

心の準備ができたので知らせて欲しかったけど、ランクをAに上げてもらえたので結果的にはよかったと思う。
どちらにせよ黒いゴブリンという想定外は起きただろうし。

「本当に気にしてないので大丈夫です。早くランクを上げたかったので好都合でした」
「それならよかったが、責任者としてできるだけの補償はしよう。総ギルド長として正式にフリージア君をAランクとして認める。それからヴァンパイアの討伐も含めて、2人のパーティーをSランクに認定する」
「ありがとうございます」

ヴァンパイアという伝説級の魔物を討伐したのだから、パーティーランクがSランクに上がるのは当然のことだが、目標に近づいているのが実感できて嬉しかった。

「フリージア君は実力はともかく実績が足りないからSランクにはできないが、他に頼みがあれば言ってくれ」

Sランクになるには実力だけでなく実績や名声、素行も大切だ。
実力は足りていてもまだ冒険者になったばかりで他が足りないからSランクにはできないらしい。

「可能なら天輪花の在処を教えてもらえませんか?」
「天輪花?姫様の薬か?」
「それもありますが、僕の妹も同じ障魔病を患っているんです。僕が冒険者になった目的も、妹の病気を治すために天輪花を手に入れることでしたから」

「なるほど。事情はわかった」
「なら」
「だが、天輪花の在処を教えることはできない。今はな」
「そうですか‥‥」

妹の病について話したときに同情するような表情をしていたからいけるかと思ったがダメだったみたいだ。

「別にフリージア君の実力が不足しているからではないんだ」

明らかなほどに落ち込んだ俺の姿を見て、ギルド長は慌てたように弁明する。

「ギルドが把握している天輪花の在処は一箇所あった。だが先月、そこにドラゴンを含む大量の魔物が現れたことで、そのエリア一帯をSSランクに認定して封鎖することになっている」

現在SSランク冒険者はおらず、SSランクパーティーはSランク冒険者が最低3人から4人必要とされている。
ただでさえ少ないSランク冒険者がそれだけ集まることはほぼないので、実質的に誰も入れるつもりがないということらしい。

「天輪花を手に入れるには、ドラゴンがいなくなるのを待つか、Sランク冒険者を他に集めるか、フリージア君自身がSSランクになるか、だ。ドラゴンがいついなくなるかはわからないし、フリージア君がSSランクになるにしても時間がかかりすぎる。仲間を集めるのが一番手っ取り早いだろう」
「分かりました。ありがとうございます」

グレンのツテでSランク冒険者をあたるにしてもかなり時間がかかる。
俺はスキルの効果で毎日かなりのレベルが上げられるから、そちらの方が早いかもしれない。
どちらにせよ、仲間を探しながら自分もレベルを上げていくのがベストだろう。

「では本題に入らせてもらおうか。ヴァンパイアについて色々教えて欲しい」

自分の中でも明確な目標が定まったところで、総ギルド長が本題を切り出してきた。
グレンと一緒に、ガンツ達のことやヴァンパイアとの戦い、ヴァンパイアの目的などを伝えた。
その後、質問に答えたり、雑談などをしてから面会は終了した。
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