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22話 グレンの過去
しおりを挟む翌日もまた、朝から馬車の護衛の仕事として御者席に座りながら話をする。
もちろん、周囲への警戒は怠らない。
「そういえば、フリージアはなんで冒険者になったんだ?」
「実は‥‥」
まだ言っていなかっただろうかと思いながらも妹の病気のことを簡単に説明する。
「そうだったのか」
「グレンの方こそどうして冒険者になったんだ?」
「俺は大した理由はなかったな。実家が商人で裕福だったし、上に兄貴が2人いるから俺は何してても良かったんだ。それでなんとなく選んだって感じかな。
でもな、強くなろうと思ったのにはきっかけがある」
「俺は20の時に冒険者を辞めて、ルーベントで騎士になったんだ。隊長も優しい人で充実してたんだが、ある時、街の外で黒いオーガに遭遇してな。今になって思えばヴァンパイアの眷属だったんだろう。
異常なほど強くて俺たちはなす術もなかった。
そして、隊長は一人でオーガの足止めをして俺たちを逃がしてくれたが、隊長は生死をさまよう大怪我を負ったんだ。
だが、騎士団長は、黒いオーガなんて聞いたことないと言って、隊長から騎士の資格を剥奪しやがった。それに反発して俺たちの部隊は全員が脱隊し、俺は冒険者に戻った。それが四年前の話だ」
「その後、隊長はうちの商会で保護したんだが、後遺症で左手が動かなくなっていてな。それに、隊長には病弱な娘さんがいるから、その二人の薬代を稼がなきゃならなかった。これが俺の強くなろうと決意した理由だ。
とはいえ、もう隊長も娘さんも元気になって、今は商会の用心棒をしてもらってるんだけどな。
今となってはあの、黒いオーガを俺の手で倒したいというのが一番の理由だな」
グレンは話している間中、見たこともないくらい真剣な表情をしていた。
俺もマーガレットの病気を治すために強くなろうと思った。それと同じだったのだろう。
「グレンも俺と似た理由だったんだな」
「まぁ、お前の場合は家族のことだし、エリクサーがないと治らない難病なのに対して、俺のは高い薬があれば治るって違いはあるがな。大体は似たようなもんだ」
「俺が天輪花の入手を手伝ってやる、代わりに黒いオーガを倒すのを手伝って欲しい。少し前に居場所がわかっんだが、今の俺でも倒せるかわからん。どうだ?一緒にパーティーを組まねぇか?」
その提案は俺にとって魅力的な提案だった。
俺の答えは決まっている。
「是非、よろしく頼むよ」
こうして、しばらくの間はグレンと一緒にパーティーを組むことになった。
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