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20話 ウォーミングアップ
しおりを挟む訓練場に移動してゲイルと向かい合う。
グレンは観覧席の方に移動してこちらを眺めている。
他にも、さっきの場にいた冒険者たちも観覧席で俺たちを観ている。グレンとの模擬戦を観に来たんだろう。
「俺が勝ったらAランクだと言うのは撤回してもらおうか」
「別に構わん」
「言ったな?絶対だぞ」
「もういい、始めていいぞ」
これ以上会話をするのも面倒になってきた。さっさとウォーミングアップを済ましてグレンとの模擬戦に移ろう。
「後悔させてやるぞ!ウォーターショット」
開始の合図はない。
しいて言えば、ゲイルの魔法が開始の合図といったところだろうか。
Aランクと言うだけあり、かなり威力の強い魔法だ。
だが、俺の相手ではない。それに、あくまでもウォーミングアップのつもりなので本気を出すこともない。
魔法で身体能力をあげると「ウォーターショット」に向けて拳を全力で振り抜く。
「ッ!なにをした!」
いとも容易く自分の魔法がかき消された事にゲイルは狼狽するが、答えることはない。
「今度はこっちの番だ」
以前、ガンツと戦った時には魔法をメインで戦った。
理由は相手が戦士だったからだ。
それに対し、ゲイルは魔道士だ。
その相手にわざわざ魔法で戦う理由などない。
戦士と魔道士の間には有利、不利がある。
近接戦闘なら戦士、遠距離なら魔道士が有利となる。
どちらも使うことができる俺は、有利な方だけを使えばいい。今回の場合は近接戦闘だ。
速度上昇魔法『ソニックブースト』を使うとゲイルとの距離を詰めていく。
「チッ!ウォーターウォール」
ゲイルは水の壁で俺の接近を阻止しようとする。
だが、これは悪手だ。
あくまで脅しのつもりだったのだろうか。あまり魔力が込められていない。
それを見破ったのならば突っ切ってやればいい。
防御魔法を自分の正面に出して水の壁から身を守ると、そのまま突っ込んでいく。
それを超えると少し離れたところで驚いた表情のゲイルがこちらを見ていた。
「バカな!俺の魔法が破られるなんて」
「俺だってAランクだぞ?このくらい想定しておくべきだったな」
本当に俺がAランクだと思っていなかったようだ。
ここのギルドでは間違いなくこいつが最高位だっただろうから調子に乗っていたのだろう。
拳を腹に打ち込むと、接近戦の不得手な魔道士らしくたいした抵抗もなく崩れ落ちる。
勝敗が決したのでゲイルの体を起こし、回復魔法を使ってやる。
「チッ!最後までナメた真似しやがって!」
ゲイルは悪態を吐いて去っていく。
煽ったのは悪かったが、今は俺なんかいけないことしたか?
「フリージア流石だな。あいつもAランクなだけあってそれなりにやれるようだったが相手にならねぇか」
グレンが観覧席を降りて訓練場に出てくる。
「ウォーミングアップは済んだ。早速始めようか」
本番はここからだ。
今の自分の実力を確かめるためにも、自分に足りないものを見つけるためにも本気で挑ませてもらおう。
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