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12話 黒いゴブリン
しおりを挟む強大な魔物が三体も近づいてきていることに気づいてすぐ、隠蔽状態で魔法陣の構築に取り掛かった。
空間魔法を応用することで、目視できる範囲内なら構築した魔法陣を別の場所に転移させることも可能だ。
そして、あと少しで完成するところで三体の魔物が現れた。
中央の黒いゴブリンの咆哮には本当に焦った。
完成しかけていた魔法陣の一部が欠けてしまったからだ。
それに、俺自身が久々に恐怖を覚えた。
すぐさま魔法陣を修復し、黒いゴブリンの足元に転送する。
しかし、黒いゴブリンの放つ魔力によって位置を少しずらされてしまった。
俺の構築した魔法『フレイムゲイザー』は、黒いゴブリンの周りに円形に展開され、ゴブリンキングに大ダメージを与え、黒いゴブリンにも多少の火傷を与えた。
これでようやく五分といったところだろう。
ゴブリンキングはあの火傷では戦えないだろうし、黒いゴブリンにもダメージを与えた。
だが、黒いゴブリンは気にした様子もなく、咆哮をあげるとこちらに突っ込んできた。
あまりの速さに驚愕するが、ほとんど勘で回避に成功する。
「『アースウォール』」
「グォアアアア!!」
バキィという音を立ててアースウォールが破壊される。
ここまで簡単に破壊されるとは思わなかったので何度目かわからないが驚愕する。
薄々わかっていたことだが、このゴブリンは異常なほどに強い。
ガンツの時みたいに油断はしない。最初から全力全開で仕留めにかかる。
「『ソニックブースト』」
速度上昇魔法を掛けると回避に専念しながら魔法を構築していく。
「母なる大地よ、我が敵を拘束せよ『アースバインド』」
土属性の拘束魔法を使うが、すぐに破られる。
だが、そんなことくらい分かっている。その少しの時間だけでも拘束できればいいのだ。
「『ブレイズサークル』!!」
さっき使ったフレイムゲイザーが広範囲攻撃なのに対し、ブレイズサークルは小さな円形の隔絶結界を作り、その中を高温の空間にして焼き殺す、空間魔法と火属性魔法の合成魔法。その威力は炎系統の最上級魔法をも上回るほどだ。
これで倒せるかと思っていたが、黒いゴブリンの魔力が高いからか、両腕は炭化して崩れ落ちたがまだ生きているようだった。
そして、トドメを刺そうとした時だった。
フレイムゲイザーを受けて以来動きを見せなかったキングゴブリンが自ら体を黒いゴブリンに差し出した。
黒いゴブリンはキングゴブリンの体を食べ、体が急激に回復していった。
悪い予感がしたので咄嗟に放った風刃は回復した直後の右腕を切断し、更に追い討ちをかけることで完全に絶命させた。
残るキングゴブリン一体も魔法で処分し、戦闘は終了した。
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