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10話 エーデルとマーガレット
しおりを挟む「にいにー!‥‥って、きょうはおきてるんだね!」
いつものようにエーデルが起こしに来てくれるが、今日はもうすでに起きていた。
「おはようエーデル」
「おはよう!今日はゴブリン倒しに行くんだっけ?」
昨日は帰ってからギルドであったことを家族に話した。
両親は実技試験の話で驚いていたが、弟妹は目をキラキラさせていた。かわゆい。
「そうだよ。夕方には帰ってくるから待っててね。お土産にお肉持って帰ってくるから」
「おにく!にいに、早く帰ってきてね!」
「あぁ、待っててくれよ!‥‥マーガレットの調子はどうだ?」
マーガレットは俺の義妹のことだ。
障魔病に侵されていて、ご飯と風呂の時以外部屋から出ない。
俺も1日に何回かは様子を見に行くが、エーデルはほぼ一日中マーガレットのところにいる。
エーデルはしばらく黙った後、意を決したように口を開いた。
「にいに、ぼく、ぼうけんしゃになる。ぼうけんしゃになってエリクサーをみつけてマーガレットのびょうき治すんだ!」
「エーデル‥‥」
エーデルは昔からお菓子が好きで、少し前まではケーキ屋さんになりたいと言っていた。
そんな子供らしく可愛らしいエーデルを微笑ましく思っていたのも記憶に新しい。
だが、エーデルは冒険者になりたいと言った。
マーガレットの病はそのうち治ると両親が伝えていたはずなのにどこかで聞いたのか、あるいは自分で調べたのかもしれない。
俺も両親も障魔病についての資料はたくさん読んだから、その資料はうちの倉庫に残っているしありえない話ではない。
いつまでも弟妹は可愛らしい子供だと思っていた。
しかし、エーデルも、そしてマーガレットもまた、成長しているということを思い知らされた。
エーデルの決意に満ちた眼差しを受けてすぐに言葉が出なかったが、すぐに気を取り直して頭を撫でながら語りかける。
「エーデルはマーガレットのこと大事にしてるんだね。でも、無理はしないでいいんだよ。エーデルはエーデルのやりたい仕事を見つければいい。エリクサーは俺に任せればいい。な?」
「にいに‥‥もしかして、にいにがぼうけんしゃになったのって?」
「エーデルと同じだよ。家族だからな」
それだけ言って立ち上がる。
「マーガレットのことは頼んだぞ」
「うん!うん!にいにありがとう!だいすき!」
俺はエーデルの頭をもう一度撫でると、一緒に階下に降りていった。
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