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6話 冒険者ギルド

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 俺の住むユラシルの冒険者ギルドは東門の側に簡易支部があり、中央より少し西へ行ったところに冒険者ギルド ユラシル支部がある。
 簡易支部が東門のそばにある理由は、魔法袋を持っていない冒険者が魔物の死体などを町の中まで運ぶと住民に迷惑がかかるからだ。

 簡易支部でできることは魔物の素材の売却と、併設されている酒場での飲食くらいだ。
 以来の受注や、冒険者登録などは支部でしかできないので、俺が今日行くところは支部の方だ。


「いってきます!」

 気分良く家を出て、冒険者ギルドに向かって歩いていく。
 ギルドは家から歩いて10分くらいのところにある。

 そしてギルドまであと少しというところだった。

「やめてください!」
「黙れ!薄汚い獣人風情が俺様に刃向かうんじゃねぇ!」
「痛っ、助けて!」

 道路の端で何やら騒動が起きているようだった。

 この国は種族の平等が保障されているが、未だに獣人族に対する差別は根強く残っている。
 この国の王族はエルフであり、差別の根絶を目指して努力をしているが、もともと人族とエルフが対等だったのに対し、獣人族と人族では明確な力関係があった。
 エルフと獣人族との間に格差はなかったのだが、とても面倒な関係になっている。

 騒ぎに気づいている人はいるが、誰も剣も持っている大男相手に、それも獣人族の少女のために止めに入るつもりはなさそうで、気まずそうな顔をして通り過ぎていく。

 俺は宿屋の両親に育てられたため、獣人族が客としてくることもあり、差別意識などは持たない。その上、自分が強くなったせいか、大男に対して恐怖を感じることもない。

「何をしてるんだ?この国では種族間の差別は禁止されてるだろう?」

「なんだテメェは?俺様に文句あんのか!」

 そこまで喧嘩腰でかかったわけではないが、相手は俺に掴みかかってきた。

「そういうわけじゃないけどな。どうやら騒ぎが大きくなりすぎたみたいだぞ?衛兵がこっちに向かってるから捕まりたくなければ立ち去ることだ」

 大男らが後ろを振り返ると、5人ほどの武装した衛兵がこちらに向かっている最中だった。

「チッ、今回は見逃してやるよ。行くぞ、お前ら」
「命拾いしたな」
「兄貴に喧嘩売ったこと後悔するがいいっス」

 捨て台詞を残して去っていくチンピラ達を無視し、絡まれていた獣人族の少女に目を向ける。

「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます‥‥」

 少女は少し震えていた。
 俺にできることは特にないので、軽く励ましの言葉を送ると衛兵に事情を話して引き渡した。



 衛兵への説明に時間がかかったため、ギルドに来るのは昼過ぎになってしまった。

 ギルドに入ると、酒の匂いと騒々しさに包まれた。
 併設されている酒場が原因だろう。

 俺は酒場を通り過ぎ、まっすぐ受付に向かった。

「冒険者登録をしにきた。登録手続きを頼む」
「かしこまりました。こちらに必要事項を記入してください。‥‥試験の方はどうなさいますか?」
「実技試験で頼む」
「かしこまりました。用意が整い次第お呼びしますので、しばらくお待ちください」

 番号札をもらい、椅子にでも座ろうかと思っていた時だった。

「お前はさっきのガキじゃねぇか。こんなところに何しに来やがったんだ?」

 振り向くと先程獣人の少女に絡んでいたチンピラ共がいた。

「冒険者登録に来てこれから実技試験を受けるところだが、何か用か?」
「実技試験だと?ククッ、それなら俺たちが試験官をやってやるよ」
「いけません!ガンツさんはCランクでもBランク並の実力を持ってるんですから、試験官には役不足ですっ!」
「まあまあ、ちゃんと手加減くらいしてやっから心配すんじゃねぇよ」
「そう言って以前新人を散々痛めつけたじゃないですか!その人そのまま辞めてしまったんですからね!フリージアさんも嫌でしょう?」

 そう言って、受付嬢は俺にも同意を求めてきた。
 しかし、チンピラ‥‥ガンツたちは新人を潰したこともあるようで、やはり碌でもない連中だ。
 実力があるのにCランクなのは、Bランク以上は報酬の先払いのものもある代わりに信用がなければ上がることができないからだ。

「いや、別に問題ない。むしろ弱いものいじめして悦に浸るような奴が相手だと実力を見せられないかもしれないな」
「なんだとてめぇ!上等だ、俺様が教育してやるよ!」
「待ってください!ガンツさん!フリージアさんも本当にいいんですか!?」
「俺は構わない。こんな雑魚が相手で実力が測れるかは不安だがな」
「ふざけやがって!もういい、そっちから挑発してきたんだ、覚悟はできてんだろうな?」
「もちろんだ」


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