底辺男のミセカタ 〜ゴミスキルのせいで蔑まれていた俺はスキル『反射』を手に入れて憎い奴らに魅せつける〜

筋肉重太郎

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「んむぅ……」

 次の日。眠っていた俺は、じゅうじゅうと聞こえる心地良い音楽と共に目を覚ました。窓から入ってくる光がまぶしい。基本的に夜型な俺にはまぶしすぎる光だ。

 あの後、家に帰った俺たちは、何も喋ることなく家に帰り、何もすることなくそのまま眠りについた。

 ただ、俺も言いたいことを言いきってスッキリしたのか、そこまで気まずい感じは無く、次の日は取引日だった為、早めに就寝した。

「んしょ……」

 音を聞くに、袖女が朝ご飯を作っているようだ。焼いているような音なので、目玉焼きか何かだろうか。

 時間を確認すると、まだまだ午前8時。約束の時間の午前10時にはゆっくり支度をしても余裕で着く時間帯だ。

 俺はむくりと体を持ち上げ、寝起きで潤む目で音がする方向を見る。

 そこには…………


「……おはようございます」

「……おう」


 料理をしながら、俺に向かって喋りかける袖女の姿があった。

「朝ご飯はもうすぐなので待っててくださいね~……」

「ん……ん? まて、なんでお前まだ家にいるんだ?」

 俺の記憶が正しければ、この時間には袖女はパートに出ているはず。ここにいるのはおかしいのだ。

「今日は休みだからいいんですよ」

「ああ……そゆこと」

 と言うと、料理が終わったのか、袖女は両手に器を持って、テーブルに並べていく。

 近づいてみてみると、そこには目玉焼きではなく卵焼き、そして味噌汁。ご飯に漬物。朝ご飯には贅沢すぎるほどの食卓が並んでいた。

「おお……!」

 さすがは袖女。作るご飯はとてもうまそうだ。漫画から出てきたと思うような料理たち。食材が喜んでいるようだ。

 そして、いつもと違うことが1つ。

「2つずつ……?」

 そう、2つずつ。

 味噌汁もご飯も漬物も卵焼きも、全てが全て2つずつ。

 その意味が理解できないほど、俺は鈍感では無い。

はそう、つまり――――

「……あなたの分ですよ」

 俺の分だ。

「……マジ?」

「大マジです」

 信じられない。あの袖女が俺の分を作ってくれるなんて。

 まるで雷にでも打たれたかような衝撃。とてもじゃないが信じられない事実。ここ最近で何かあったのだろうか?

「頭打ったの? 大丈夫か?」

「首飛ばしますよ?」

 袖女の口から衝撃の一言が飛び出す。ここまで猟奇的な暴言もない。

「……まぁ、さすがにこのまま作ってあげないっていうのも、体に悪いし……あなたにはまだまだ稼いでもらわないといけないんです。だからそれだけですよ」

「そっか……」

 まじか。食えるのか。袖女の飯が。

「……普通の朝食ですよ」

「わ、わかってるって! そんなこと!!」

 そう言われたとしても、じっと朝ご飯を見つめてしまう。
 今まで袖女が作った中で食べれたものなんて、卵粥ぐらいしかなかった。
 目の前で見ていただけのものが、ついに俺の胃に入ると思うと、ただの朝ご飯なのに緊張してしまう。

「よ、よし……」

 俺は箸を持ち、目の前の卵焼きを掴むと…………

 満を持して、卵焼きを口の中に放り込んだ。


「うおっ……」


 瞬間、口の中で卵焼きがふわりと宙を舞う。
 いや、実際は宙を舞ってはいないのだが、本当にそう表現するしかないほどふわふわしているのだ。
 そして、その後に卵焼きが唾液によってとろける感覚。食物なら当たり前にあるその感覚だが、この卵焼きは違う。電子レンジではない、出来立て特有の暖かさがその感覚を強く引き立たせる。

 さらに、1つ気づいたことがある。

「これ、この卵焼き……」

「ああ、それだし巻き卵ですよ」

「すごいな……」

 このだしの風味。やはりだし巻き卵だった。

 それにしても凄い。朝ご飯にだし巻き卵なんて、料亭でもないと出てこない。ここまでのものが朝に作れると言うのはもはや才能と言うしかないだろう。

 無論、だし巻き卵だけではない。味噌汁も漬物も白飯も、何もかもが特別に、うまく感じた。








 ――――








「ここだ……!」

 ついに朝10時。手に設計図を握り締め、指定された場所にたどり着いた。

「さすがですね……時間ぴったりです」

 そこにはもちろん、胸ポケットにお守りを入れ、スーツケースを持った黒スーツの男。

 俺に金を渡してくれる、大事な人物がそこにいた。

「ほら、これがアンタラのお目当てだろ? とっとと受け取って金をくれ」

「まぁまぁ落ち着いて……今回は取引のためだけに来たわけじゃないんですよ」

「何?」

(取引のためだけじゃないだと?)

 黒スーツは、持っているスーツケースをがちゃりと開け、言葉を綴る。

「1つはヤクザ壊滅のボーナス。プラス100万」

 そこから取り出されたのは、平民では1度も触れられないであろう厚みの札束。その分厚さを見るに200万は確実に超えている。

 それを俺に手渡すと、黒スーツは続きの言葉を放った。

「そして、もう一つは……」

 黒スーツは懐から1枚のカードを取り出し……



「うちの専属になりませんか?」



「……え」


 予想外の誘いだった。

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