120 / 151
久しぶりのお買い物
しおりを挟む
「どうしたんですか! 急に外へのお誘いだなんて~あなたも遂に感謝の心と言うものができたんですか~?」
「あんまり調子に乗るな……」
あの後、俺たちは互いに外用の服に着替え、まだまだ明るい外へ向かうため、ドアを開けて外に出た。
袖女はいつもの私服で。俺は古着屋で買った私服で。
そして、袖女に至っては、外に出てからずっとこんな感じだ。
(うっぜぇ…………)
ウザいウザいウザすぎる。袖女とは、9月の序盤から付き合いがあるが、関係が始まってからでダントツのウザさだ。
「俺のせいでお前仕事休んだだろ? その埋め合わせだよ……」
「ふ~ん、そうですか~! そうなんですか~!!」
「…………マジでそれだけだからな」
(調子に乗りやがって……)
正直、2ヶ月前まで殺し合う関係とは思えないほどだ。
つまり、この袖女は今、2ヶ月前に殺されかけた相手と服を買いに出かけている。
こちらから誘った話だが、なんとも凄い話だ。
「……そういえば、お前はどこに行きたいんだ?」
ただの俺の先入観だが、女と言うものはかなりブランドを気にするものだ。漫画とかのセリフで、「すご~い! この服どこのやつ~?」と女キャラが喋っていたのを死ぬほど見たことがある。漫画とかの知識なので、これを聞くと気持ち悪いと思われるかもしれないが、そこは安心してくれ。あの幼馴染経由で、現実でも、1.2回は小耳に挟んだ事はある。
「ん~……そういえば……その服どこのやつ何ですか?」
袖女は俺の服の裾を引っ張りながら、その言葉を発してくる。
「え? ……ただの古着屋だけど……」
「へぇ~……じゃ、そこで」
(えぇ……)
「そ、そこでいいのか?」
「そっちのほうがいいんでしょう?」
「あ、ああ……」
女と言うのはよくわからん。こういうのは新品が欲しいと言うと思ったのだが、まぁ安価で済むと言うのはいいことだが、やっぱり女と言うものはよくわからない。
「ここですか……?」
「ああ……店を変えるなら今のうちだぞ」
それから数十分後。何事もなく古着屋までの道を歩いていた俺たちは、ついにその古着屋へ到達した。
本当に何もなかった。ただ歩いているだけだった。ただそれだけのことなのに、今までが非常識すぎたせいで、何事もないことに少し違和感を感じてしまう。これも1種の職業病なのだろう。
俺がそんなことを思っている最中、袖女は古着屋を見ながらボーッと立ち尽くしていた。
(まぁ……そうなるのも当然か)
この古着屋は、服はもちろんのこと建物もかなり古い。木製の柱もかなりボロボロで、今にも倒れそうだ。周りに小綺麗なビルや施設がある分、古着屋がさらにボロく見えてしまう。
(……さすがに嫌か)
これはあくまで俺のためではなく、袖女に看病した話とストレスを引っ張られないようにするためのメンタルケアだ。無理にここに入って、袖女に我慢させては意味がない。
少々お金を使ってしまうが、ここは他の店に切り替えた方が賢明だろう。
「……なぁ、別にーーー」
今からでも変えていい。そう言おうとすると……
「じゃ、いきましょっか」
(……マジ?)
「いいのか?」
「言ったじゃないですか、ここでいいって……あ、やせ我慢とかじゃないですからね」
……まぁ、こんなこともう2度としないだろうし、こちらとしてはとてもありがたい。袖女も歳は知らないがしっかりと大人だ。後でまた拗ね出すみたいなのはないだろう。もしそんなのが起これば俺が外に叩き出す。
そんな事を考えながら、開けっ放しのドアの暖簾をくぐり、古着屋の中へ入った。
「ここに来るのも久しぶりだな……」
中に入った瞬間、木造建築特有の木の匂いが鼻を通る。
ここに来たのは2週間近くぶり。普通に考えればそこまで久しぶりでもないが、その間に起きたことの内容の濃さにより、俺の体感的には久しぶりに感じてしまう。
「いらっしゃーい……って、あの時の兄ちゃん! 久しぶりだねぇ」
「覚えててくれたんですか?」
「こんな店に来てくれる若い人なんてそうそういないからねぇ。印象に残るんだよ」
「そっすか……」
「またうちに来てくれるなんてうれしいねぇ……ん?」
おばちゃんと俺が話していると、後ろからコツコツと店に入る足音が聞こえる。
「へぇ……こうゆうレトロなのもいいですね」
「俺も1回しか来たことないんだけどな……ほら、さっさと選べ」
「……あなたは本当に余計なことを言うのが得意ですね」
袖女はぶつぶつと小言を述べながら、店の奥へと入っていった。
(俺も行くか……)
俺も片足を一歩前に出し、俺も店の奥に入ろうとした時、おばちゃんが慌てた様子で俺に駆け寄ってくる。
「ち、ちょっと兄ちゃん! 今のは……」
どうやら、おばちゃんは袖女の事が気になっているようだ。
(う~ん……)
一瞬教えるかどうか悩んだが、どうせ相手はおばちゃんだ。同居しているとかの重要な情報以外は教えてもいいだろう。
「ああ……まぁ、知り合い? って感じだけど…」
「あんなべっぴんさん見たことないよ!! あんな人と知り合いなんて…………チャンスなんじゃないのかい!?」
おばちゃんに、妙に興奮した様子で詰められる。いくら歳をとろうと女は女。こういうことは大好物のようだ。
「いや……別にそういうのは思ったことないし」
「何いってるんだい! ああゆうタイプはいざ付き合うと尽くすタイプだよ!! おばちゃんにはわかる!!」
「はぁ……」
(尽くすタイプねぇ……)
俺の目線には、店の奥で服を選ぶ袖女の姿。
確かに家事などはやってくれるし、尽くすタイプかもしれないが、元々敵同士だし、今はそういう風には見えない。よくある敵同士の禁断の恋なんかは夢物語なのだ。
そんなことを思いつつ、おばちゃんとの話を切り上げ、俺も店内に進んでいった。
「あんまり調子に乗るな……」
あの後、俺たちは互いに外用の服に着替え、まだまだ明るい外へ向かうため、ドアを開けて外に出た。
袖女はいつもの私服で。俺は古着屋で買った私服で。
そして、袖女に至っては、外に出てからずっとこんな感じだ。
(うっぜぇ…………)
ウザいウザいウザすぎる。袖女とは、9月の序盤から付き合いがあるが、関係が始まってからでダントツのウザさだ。
「俺のせいでお前仕事休んだだろ? その埋め合わせだよ……」
「ふ~ん、そうですか~! そうなんですか~!!」
「…………マジでそれだけだからな」
(調子に乗りやがって……)
正直、2ヶ月前まで殺し合う関係とは思えないほどだ。
つまり、この袖女は今、2ヶ月前に殺されかけた相手と服を買いに出かけている。
こちらから誘った話だが、なんとも凄い話だ。
「……そういえば、お前はどこに行きたいんだ?」
ただの俺の先入観だが、女と言うものはかなりブランドを気にするものだ。漫画とかのセリフで、「すご~い! この服どこのやつ~?」と女キャラが喋っていたのを死ぬほど見たことがある。漫画とかの知識なので、これを聞くと気持ち悪いと思われるかもしれないが、そこは安心してくれ。あの幼馴染経由で、現実でも、1.2回は小耳に挟んだ事はある。
「ん~……そういえば……その服どこのやつ何ですか?」
袖女は俺の服の裾を引っ張りながら、その言葉を発してくる。
「え? ……ただの古着屋だけど……」
「へぇ~……じゃ、そこで」
(えぇ……)
「そ、そこでいいのか?」
「そっちのほうがいいんでしょう?」
「あ、ああ……」
女と言うのはよくわからん。こういうのは新品が欲しいと言うと思ったのだが、まぁ安価で済むと言うのはいいことだが、やっぱり女と言うものはよくわからない。
「ここですか……?」
「ああ……店を変えるなら今のうちだぞ」
それから数十分後。何事もなく古着屋までの道を歩いていた俺たちは、ついにその古着屋へ到達した。
本当に何もなかった。ただ歩いているだけだった。ただそれだけのことなのに、今までが非常識すぎたせいで、何事もないことに少し違和感を感じてしまう。これも1種の職業病なのだろう。
俺がそんなことを思っている最中、袖女は古着屋を見ながらボーッと立ち尽くしていた。
(まぁ……そうなるのも当然か)
この古着屋は、服はもちろんのこと建物もかなり古い。木製の柱もかなりボロボロで、今にも倒れそうだ。周りに小綺麗なビルや施設がある分、古着屋がさらにボロく見えてしまう。
(……さすがに嫌か)
これはあくまで俺のためではなく、袖女に看病した話とストレスを引っ張られないようにするためのメンタルケアだ。無理にここに入って、袖女に我慢させては意味がない。
少々お金を使ってしまうが、ここは他の店に切り替えた方が賢明だろう。
「……なぁ、別にーーー」
今からでも変えていい。そう言おうとすると……
「じゃ、いきましょっか」
(……マジ?)
「いいのか?」
「言ったじゃないですか、ここでいいって……あ、やせ我慢とかじゃないですからね」
……まぁ、こんなこともう2度としないだろうし、こちらとしてはとてもありがたい。袖女も歳は知らないがしっかりと大人だ。後でまた拗ね出すみたいなのはないだろう。もしそんなのが起これば俺が外に叩き出す。
そんな事を考えながら、開けっ放しのドアの暖簾をくぐり、古着屋の中へ入った。
「ここに来るのも久しぶりだな……」
中に入った瞬間、木造建築特有の木の匂いが鼻を通る。
ここに来たのは2週間近くぶり。普通に考えればそこまで久しぶりでもないが、その間に起きたことの内容の濃さにより、俺の体感的には久しぶりに感じてしまう。
「いらっしゃーい……って、あの時の兄ちゃん! 久しぶりだねぇ」
「覚えててくれたんですか?」
「こんな店に来てくれる若い人なんてそうそういないからねぇ。印象に残るんだよ」
「そっすか……」
「またうちに来てくれるなんてうれしいねぇ……ん?」
おばちゃんと俺が話していると、後ろからコツコツと店に入る足音が聞こえる。
「へぇ……こうゆうレトロなのもいいですね」
「俺も1回しか来たことないんだけどな……ほら、さっさと選べ」
「……あなたは本当に余計なことを言うのが得意ですね」
袖女はぶつぶつと小言を述べながら、店の奥へと入っていった。
(俺も行くか……)
俺も片足を一歩前に出し、俺も店の奥に入ろうとした時、おばちゃんが慌てた様子で俺に駆け寄ってくる。
「ち、ちょっと兄ちゃん! 今のは……」
どうやら、おばちゃんは袖女の事が気になっているようだ。
(う~ん……)
一瞬教えるかどうか悩んだが、どうせ相手はおばちゃんだ。同居しているとかの重要な情報以外は教えてもいいだろう。
「ああ……まぁ、知り合い? って感じだけど…」
「あんなべっぴんさん見たことないよ!! あんな人と知り合いなんて…………チャンスなんじゃないのかい!?」
おばちゃんに、妙に興奮した様子で詰められる。いくら歳をとろうと女は女。こういうことは大好物のようだ。
「いや……別にそういうのは思ったことないし」
「何いってるんだい! ああゆうタイプはいざ付き合うと尽くすタイプだよ!! おばちゃんにはわかる!!」
「はぁ……」
(尽くすタイプねぇ……)
俺の目線には、店の奥で服を選ぶ袖女の姿。
確かに家事などはやってくれるし、尽くすタイプかもしれないが、元々敵同士だし、今はそういう風には見えない。よくある敵同士の禁断の恋なんかは夢物語なのだ。
そんなことを思いつつ、おばちゃんとの話を切り上げ、俺も店内に進んでいった。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります
まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。
そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。
選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。
あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。
鈴木のハーレム生活が始まる!

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる