底辺男のミセカタ 〜ゴミスキルのせいで蔑まれていた俺はスキル『反射』を手に入れて憎い奴らに魅せつける〜

筋肉重太郎

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大突入

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「さてと……到着!」

「ワン!」

 俺とブラックは外に出て、すでに目的地、つまり、ヤクザの本拠地のちょうど庭の外に到着していた。ヤクザの本拠地は大阪派閥のB市にある。ちょうど首都大阪の少し上だ。

 外装は和風の屋敷で、ドラマでもよく見る感じだ。

 首都大阪よりも遠いため、反射で移動しても20分ほどかかったが、任務に支障はない。後は例の設計図とやらを奪うだけだ。最近のゆるい任務で緩んだ体に喝を入れ、目の前の目的地に向き直る。

 普通ならば何かしらをして潜入したいところだ。余計なリスクを負うことなくことを進めることが可能。いいことだらけだ。

 しかし、その方法が問題なのだ。服を偽装して入るにしても、外には誰もいない。ガードマンの1人位いると思ったのだが……あてが外れた様だ。
 次に肝心なのが、敵の数と質だ。家でのメールには、内部構造などが書かれていたが、敵の川などの詳細な情報は記載されていなかった。誰もいないタイミングを狙うとしても、昔の情報がわからない以上、タイミングを図るのは難しすぎる。

 故に、仮に潜入しようとしても、多大な時間がかかってしまう。誰かが外に出てくるのを待つにしても、既に中の人間が眠っていたらそこまでだ。不確定すぎる。

 つまり……

「ブラック、俺の肩にしっかり捕まっとけよ」

 潜入は無理。そして今はみんなが寝静まる時間帯。少し騒いだところで、そこまで騒ぎにはならないだろう。

 ならば、今俺がとる行動は1つ。

 俺は元いた場所から10メートルほど離れ、ヤクザの本拠地の玄関に向かってクラウチングスタートの構えを取る。

「思いっきり……」

 そのまま反射を使い、一気にダッシュする。風を体中で感じる。足は暗闇で見えなくなり、視界が踏み込みによって揺れ、目に見える風景が後ろに飛んでいく。

「全力で……」

 俺は、ある一定の距離まで進むと、踏み込むのをやめ、そのままの勢いで滑空する。まるで空を飛んでいるようだ。地面は3センチほど下にあるがな。

 そのまま空中で体制を変え、玄関に向かってキックする姿勢になる。

 もうまんまラ○ダーキックだ。

「殴り込むっ!!!!」

 大突入。

 玄関にあったガラスは跡形もなく砕け散り、屋根もはげ落ち、飾ってあった食器や高そうな絵画は見るも無残な状態になった。

「なんだ!?」

「何の騒ぎだ!!」

「敵襲だぁ! お前ら!! とっとと着替えろ!!!」

 家の奥から驚いている様な声が無数に聞こえる。やはり、休んでいたり、眠っていたりした様だ。

 俺は突っ込んだ勢いを少し緩め、ダッシュで廊下の中を走る。
 廊下はかなり長く、誰も邪魔をしてこない。この事から屋敷はかなりの広さだという事がわかる。

 それにしても、さっきの悩む展開から逆転。こちらがかなり優勢となった。理由は簡単だ。俺がさっき思ったように、敵が休んだり眠ったりしていて、対応が遅れている。玄関に突入するまでは疑惑だったが、玄関での声を聞いた瞬間、その疑惑は確信に変わった。

 今のうちだ。今のうちにできる限り奥へ。奥へ行くのだ。奥へ行った分だけ有利になる。目当ての設計図に近づけるのだ。

「設計図の場所はわからない……だが!!!」

 ヤクザと言うのは結束力が強い。敵の1人を拷問して聞こうにも、はいわかりましたと場所を吐くとは思えない。

 だったら……

「全部全部ぶっ壊す!!!」

「ワン!!!」

 俺は左手のひらの皮を強く噛み、血を滴らせる。ダッシュしながら廊下に血を飛ばしていく。
 ダッシュしながら血を飛ばしているため、ダッシュの勢いで少量の血でも薄く広く、辺り一面に飛んでいく。

 そして一気に……

「反射する」

 俺が反射のスキルを発動した瞬間、後ろから爆破音が聞こえる。少し後ろを振り返ってみると、血が古い方から爆破しているようで、連鎖的に爆破しているのが見えた。

 これだけ見ると、まるでアクション映画のワンシーンのようだ。少しテンションが上がってしまう。

 なぜ俺がこのような行動をとったのか。

 理由は、俺が設計図の場所を知らないことにある。
 ヤクザがわざわざ危険を犯して、大阪派閥から盗むほどの設計図なのだ。そりゃあ大事にしたい。

 ならば守るはずだ。

 たとえ、俺が起こしたこの爆発でも。

 それが俺の狙い。俺は破壊工作を行った後、残ったヤクザの連中が今もっている品物を奪う。ただそれだけでいい。

 連中だって大阪派閥の本拠地から、物を奪うほどの実力者集団なのだ。何かを隠密系のスキルを持っていて、そのおかげで奪えたのかとも思ったが、敵がヤクザだとわかっているのだ。隠密系と考えるより、実力者だからと思った方が自然だろう。

(……まぁ、俺にとって実力者かどうかは別だがな)

 それなら設計図のある部屋ぐらいは守れるはず。ヤクザ達の強さを信じた上での行動だ。

 つまり、俺は全てを破壊しなければならない。



 ……俺は今から。




 屋敷を全て破壊する。








 ――――








「虎は無事に送り出せたかい? ネーリエン」

「問題ない。今出発したところだ。30分ほど経てば設計図を持ってきてくれるだろう」

「なるほど……それなら安心だね」





「…………でもさ、ネーリエン。僕は心配性なんだ。何か異常はなかったかい?」

「異常か? ……突入する場所も、少し強いただのヤクザだからな……特に何もないはずだが……」

「……そう、それならいいんだけどね」
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