底辺男のミセカタ 〜ゴミスキルのせいで蔑まれていた俺はスキル『反射』を手に入れて憎い奴らに魅せつける〜

筋肉重太郎

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幕間 ひよりの心情 その2

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「ああ…………任務が早く決まってな……まぁ、大丈夫か?」

「……? 何がですか?」

 ああ、くそっ……喉が痛くなってくる。胸がモヤモヤする。最初は彼を見て、まず思う感情は復讐心や怒りだったのに、今では恐怖心が先に来る。

「いや、まぁ……昨日…………」

(昨日の事ですか……)

 本心では、謝って欲しい気持ちの方が大きい。そりゃそうだ、あんだけ嫌な部分をつつかれまくったのだから。

 しかし、彼は私がまともに動けないことを知っている。彼の機嫌を損ね、彼がその気になってしまえば私はなすすべもなく殺されてしまうに違いない。

「…………ああ、別に大丈夫ですよ? 自分で聞いたことですし……自分で直しますよ」

 ここはご機嫌を取る。別に自分が謝る必要はないと、自分が罪悪感を感じる必要はないと思い込ませるのだ。恐怖心は、その間に克服する。恐怖心さえ克服できれば、こんな奴に今の私が負けるわけがないのだ。

「……そうか」

「…………」

 何を考えているのかは知らんが、今は我慢の時だ。

 恐怖心を克服した後、任務を終え、神奈川に帰った後、晴れてリベンジする。

 我慢、我慢だ。




 …………彼のご飯に鮭はないですけどね!








 ――――








 家の近くのスーパー。私はそこでパートとして働いていた。

「…………」

「あのう……浅間さん?」

 体がぼーっとなる。いつもとは違う精神状態であることが、仕事に集中できない理由となっていた。

「…………すいません。少しぼーっとしていて」

「全く、気をつけてくださいね?仕事中なんですから」

 パートの先輩からの指摘を受ける。

(まずい。少しは集中しなくては……集中、集中…………)

 私はあえて何も考えず、目の前の商品を整理する作業に集中する事にした。その方が余計なことを考えずに済む。幸いここはスーパーなので、彼を感じない。こうすればいつも通り。いつも通りに時間を過ごせる。




 数十分後。昼休みになり皆、休憩時間に入った。私にとっては帰りの準備をする時間だが、午後も仕事をする従業員は、楽しそうに話し合いをしながら、弁当をパクついていた。

 ちなみに、私は仕事上の事で話したり、仕事中にたわいもない話をしたりもするが、その程度の関係だ。私はそこまで他の従業員と仲良くはない。名前も覚えていない。

 どうせもうすぐやめる事になるのだ。余計な交流など、ただ時間を食うだけだと判断した結果だった。

(はぁ……やっと帰れる)

 帰ったら何をしようと考えながら、バックを手に持ち、帰ろうとしたその時。

「あっ! ちょっと! 浅間さん!!」

「…………なんですか?」

 仕事の中では、1番よく話す女性が私に向かって喋りかけてくる。その目の中には、何か好奇の視線というか、期待の視線というか……何か興味を示しているようだった。


「浅間さんに彼氏がいるって本当ですか!?」

「…………は?」








 ――――








 私は彼女に、どこでそんな話を聞いたかと聞いた。

 彼女の話によると、午後1時ごろ、私の家に男が入っていくのを従業員の1人が目撃したらしい。


 ……いやいや、私の家知ってたのか?



 いろいろツッコミたいところはあるが……それはひとまず置いといて。

 私の家に入った男と言うのは、ほぼ間違いなく彼だろう。彼以外に家に入ってきた人物は見たことがないし、私がいない間に入れたと考えても、男が家に入ってきたのは午後1時。その時間帯は確実に私が居る。彼が帰ってくる時間帯はランダムだが、もちろん午後1時に帰ってくるタイミングもあるため、不思議ではないだろう。

「はぁ…………なんて事を……」

「それで! 彼氏がいるんですか!! いるんですよね!!」

「ちょっ……」

 なんて強い威圧感だ……今の子はこんなに押しが強いのか。こちらに有無を言わせない迫力。この力が戦場でも生かせれば、最大の武器となるに違いない。

 ……と、そんな事を考えている暇は無い。今は誤解を解くことが先決。

「いや、心当たりはありませんが? ただの見間違いでしょう」

「いやいや! いるんでしょう? 早めに吐いた方が楽ですって~」

(……しつこいなぁ)

 今の子は、こういう色恋沙汰に興味が尽きない。私は先輩以外に友達と言える友達がいなかったので、こういうことを体験したことがないが……もしかして、今が1番女子としての人生を謳歌しているのかもしれない。

「…………いないですよ」

「またまたぁ~」

「…………いないって言ってるでしょう!!!」

 さすがにしつこい。ここは一喝入れてやらないと引き下がらないだろう。こちらは早く帰って家事をしないといけないのだ。

 私の大きな声に驚いたのか、聞いてきた彼女は目をまん丸にしている。

「では、失礼します」


(それにしても…………)

 私は話の種になった、彼の姿を思い浮かべる。

(彼氏ねぇ……)

「…………無理、論外」

 私はそのまま、家への帰路を歩いて行った…………


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