85 / 151
到着
しおりを挟む
それから時間は経ち、深夜。
任務の作戦決行時間が現れた。
俺は既に俺は首都、大阪に向けて、いつものように足の反射を使い、ビルからビルへと移動していた。服装は古着屋で買った古着を着こなし、口には神奈川の時と同じく、黒マスクをつけている。
そう、いつもの様に……
いつもの…………
「……なぁ、お前大丈夫か? 無理してたら足折れるぞ?」
「キュウ~……ンー! ンー!」
ジェット機に近い速度でビル間を移動する俺の肩には、夜の暗闇と被って見づらい黒い物体が乗っかっていた。
「はぁ~……やっぱり帰ったほうがいいんじゃないか?ブラック」
俺の肩にいる黒い物体は……まぁ、今更もったいぶる事もあるまい。もちろんブラックだ。
「ク~ン……」
だが、ブラックは俺の肩をつかんで離そうとしない。意地でも俺から離れたくないらしい。
こんなのは、俺が家から出ようとしてからずっと続いている。ドアを開けた瞬間から、俺の裾やら体やらを咥えてきたりして離してくれなかった。なのでしぶしぶではあるが、吠えたりするなと念を入れた後、ブラックも一緒に連れて行く流れとなったのだ。
(ただなぁ……こいつが吠えるなと言う事ををわかっているのかどうか……)
地頭は相当良いので、わかってくれていると良いのだが……邪魔にならないことを祈るばかりだ。
そうして、さらに時間は経ち……5分後。
「到着っと……」
ついに大阪派閥の首都、大阪へとたどり着く事ができた。俺が本拠地としたところも相当な都会だったが、やはり首都。レベルが1段階も2段階も違う。
東京や神奈川の様に、スマートにビル群が立ち並ぶとまではいかないが、光り輝く大きな看板。大阪特有のワイワイ感が溢れ出ており、レトロな雰囲気を醸し出している。
個人的にはこちらの方が好みだ。
「おお……! お! 見ろよブラック!! あっちにたこ焼きがあるぞ! 任務が終わったら食いに行こう!」
「ワン!!」
俺は、見たことがないタイプの都会に目を輝かせ、邪魔だと言っていたブラックに喋りかける。こういうのの話し相手になってくれるのは、俺のメンタルケアにもありかもしれない。初めてブラックがいて良かったと思える瞬間である。
「……おっと、見とれている場合じゃないな……え~っと、万場家は……」
深夜なんてものは意外とあっという間だ。まだ2時、まだ3時と思っていると、いつの間にか5時になっている。昼夜逆転生活を行っている方々なら、理解できる考えだと思う。
と言うわけで寄り道はせず、万場家に直行だ。そういうのはもっと強くなってから。強キャラが寄り道して遅れるのって憧れる。
そんなこんなで、万場家を目指した…………
――――
「……ふぅ、到着」
「ワン!」
まぁなんとも手際良くなったことだ。東京と神奈川での生活がどれだけ過酷だったのかがうかがえる。大阪なんてあの二県と比べたらぬるま湯だ。
万場家はザ•ギンギラギンな洋風の建物と言うより、物静かな古風な建物。いや物静かと言うのは嘘か、めちゃくちゃ城だ。屋敷のレベルじゃなくね?5.6階ぐらいあるんだけど。
「それくらい富豪ってことか……」
うらやましい。少しはその運とお金を分けてもらいたいものだ。こんな裏社会に片足突っ込んだだけでも不運だと言うのに……
(まぁ、そんな不運の先に生きる理由を見つけたんだから、少しは幸運もあったのかもな)
そう思いながら、ビルの上からあの家を見据える。あの凄い迫力の家とは裏腹に警備はかなりザルだ。警備員も2.3人しか見つからない。不用意にも見えるが、逆に言えば、この周辺は安全だということがよくわかる。住民同士の中がとても良いのだろう。
あ、そういえば……
(やべ、これからのこと考えてなかった)
驚異的なやらかし。家では任務の情報の少なさが仇になると思い、急ピッチの情報収集が行われていたが、肝心の任務を成功させるための作戦を思いついていなかった。
凡ミス。東京と神奈川では、主にハカセが作戦を考えてくれていたので、自分で作戦を考えると言う事については初心者だった。それゆえに、作戦を考えると言う重要な手順を忘れ、情報収集に没頭してしまったと言うわけである。
「あぁ~……どうしよう……」
「キュウウ? キューン……」
俺がクソみたいなミスに落ち込んでいると、ブラックも俺と同じように落ち込んでくれる。まじで犬の中では相当賢い。人間で例えるならば、IQ140はあるだろう。
こんな時、ハカセならどうするのだろう……いや、そもそもハカセはこんな状況になる前に作戦を決めているか……
ならば、人並みしかない俺の脳をフル回転させ、今、金の象像を奪うための最善の手段を考えていく。
持ち物は、ズボンのポケットに入った財布、俺が念じれば右手に出てくる黒剣のみ……ここから組み立てられる作戦といえば……簡単なやつしか思い浮かばない。
「……やっぱ、誰でも考えつきそうな事しか思い浮かばないな……」
もっと良い作戦があるのかもしれない。もっと簡単に宝を手に入れられる方法があるのかもしれない。だが、凡庸な俺の脳では、もはやこれ以外の作戦は思い浮かばなかった。
俺はビルから飛び降り、万場家の領地内へと着地する。そこには目の前にボディーガードがおり、突如上空から現れた俺の姿に驚いているようだ。
「だっ、誰だ!! お前は!!」
「あー……えっと……」
「とりあえず……金庫とかある? 泥棒しに来たんだけど」
任務の作戦決行時間が現れた。
俺は既に俺は首都、大阪に向けて、いつものように足の反射を使い、ビルからビルへと移動していた。服装は古着屋で買った古着を着こなし、口には神奈川の時と同じく、黒マスクをつけている。
そう、いつもの様に……
いつもの…………
「……なぁ、お前大丈夫か? 無理してたら足折れるぞ?」
「キュウ~……ンー! ンー!」
ジェット機に近い速度でビル間を移動する俺の肩には、夜の暗闇と被って見づらい黒い物体が乗っかっていた。
「はぁ~……やっぱり帰ったほうがいいんじゃないか?ブラック」
俺の肩にいる黒い物体は……まぁ、今更もったいぶる事もあるまい。もちろんブラックだ。
「ク~ン……」
だが、ブラックは俺の肩をつかんで離そうとしない。意地でも俺から離れたくないらしい。
こんなのは、俺が家から出ようとしてからずっと続いている。ドアを開けた瞬間から、俺の裾やら体やらを咥えてきたりして離してくれなかった。なのでしぶしぶではあるが、吠えたりするなと念を入れた後、ブラックも一緒に連れて行く流れとなったのだ。
(ただなぁ……こいつが吠えるなと言う事ををわかっているのかどうか……)
地頭は相当良いので、わかってくれていると良いのだが……邪魔にならないことを祈るばかりだ。
そうして、さらに時間は経ち……5分後。
「到着っと……」
ついに大阪派閥の首都、大阪へとたどり着く事ができた。俺が本拠地としたところも相当な都会だったが、やはり首都。レベルが1段階も2段階も違う。
東京や神奈川の様に、スマートにビル群が立ち並ぶとまではいかないが、光り輝く大きな看板。大阪特有のワイワイ感が溢れ出ており、レトロな雰囲気を醸し出している。
個人的にはこちらの方が好みだ。
「おお……! お! 見ろよブラック!! あっちにたこ焼きがあるぞ! 任務が終わったら食いに行こう!」
「ワン!!」
俺は、見たことがないタイプの都会に目を輝かせ、邪魔だと言っていたブラックに喋りかける。こういうのの話し相手になってくれるのは、俺のメンタルケアにもありかもしれない。初めてブラックがいて良かったと思える瞬間である。
「……おっと、見とれている場合じゃないな……え~っと、万場家は……」
深夜なんてものは意外とあっという間だ。まだ2時、まだ3時と思っていると、いつの間にか5時になっている。昼夜逆転生活を行っている方々なら、理解できる考えだと思う。
と言うわけで寄り道はせず、万場家に直行だ。そういうのはもっと強くなってから。強キャラが寄り道して遅れるのって憧れる。
そんなこんなで、万場家を目指した…………
――――
「……ふぅ、到着」
「ワン!」
まぁなんとも手際良くなったことだ。東京と神奈川での生活がどれだけ過酷だったのかがうかがえる。大阪なんてあの二県と比べたらぬるま湯だ。
万場家はザ•ギンギラギンな洋風の建物と言うより、物静かな古風な建物。いや物静かと言うのは嘘か、めちゃくちゃ城だ。屋敷のレベルじゃなくね?5.6階ぐらいあるんだけど。
「それくらい富豪ってことか……」
うらやましい。少しはその運とお金を分けてもらいたいものだ。こんな裏社会に片足突っ込んだだけでも不運だと言うのに……
(まぁ、そんな不運の先に生きる理由を見つけたんだから、少しは幸運もあったのかもな)
そう思いながら、ビルの上からあの家を見据える。あの凄い迫力の家とは裏腹に警備はかなりザルだ。警備員も2.3人しか見つからない。不用意にも見えるが、逆に言えば、この周辺は安全だということがよくわかる。住民同士の中がとても良いのだろう。
あ、そういえば……
(やべ、これからのこと考えてなかった)
驚異的なやらかし。家では任務の情報の少なさが仇になると思い、急ピッチの情報収集が行われていたが、肝心の任務を成功させるための作戦を思いついていなかった。
凡ミス。東京と神奈川では、主にハカセが作戦を考えてくれていたので、自分で作戦を考えると言う事については初心者だった。それゆえに、作戦を考えると言う重要な手順を忘れ、情報収集に没頭してしまったと言うわけである。
「あぁ~……どうしよう……」
「キュウウ? キューン……」
俺がクソみたいなミスに落ち込んでいると、ブラックも俺と同じように落ち込んでくれる。まじで犬の中では相当賢い。人間で例えるならば、IQ140はあるだろう。
こんな時、ハカセならどうするのだろう……いや、そもそもハカセはこんな状況になる前に作戦を決めているか……
ならば、人並みしかない俺の脳をフル回転させ、今、金の象像を奪うための最善の手段を考えていく。
持ち物は、ズボンのポケットに入った財布、俺が念じれば右手に出てくる黒剣のみ……ここから組み立てられる作戦といえば……簡単なやつしか思い浮かばない。
「……やっぱ、誰でも考えつきそうな事しか思い浮かばないな……」
もっと良い作戦があるのかもしれない。もっと簡単に宝を手に入れられる方法があるのかもしれない。だが、凡庸な俺の脳では、もはやこれ以外の作戦は思い浮かばなかった。
俺はビルから飛び降り、万場家の領地内へと着地する。そこには目の前にボディーガードがおり、突如上空から現れた俺の姿に驚いているようだ。
「だっ、誰だ!! お前は!!」
「あー……えっと……」
「とりあえず……金庫とかある? 泥棒しに来たんだけど」
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります
まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。
そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。
選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。
あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。
鈴木のハーレム生活が始まる!

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる