底辺男のミセカタ 〜ゴミスキルのせいで蔑まれていた俺はスキル『反射』を手に入れて憎い奴らに魅せつける〜

筋肉重太郎

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到着

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 それから時間は経ち、深夜。

 任務の作戦決行時間が現れた。

 俺は既に俺は首都、大阪に向けて、いつものように足の反射を使い、ビルからビルへと移動していた。服装は古着屋で買った古着を着こなし、口には神奈川の時と同じく、黒マスクをつけている。

 そう、いつもの様に……

 いつもの…………

「……なぁ、お前大丈夫か? 無理してたら足折れるぞ?」

「キュウ~……ンー! ンー!」

 ジェット機に近い速度でビル間を移動する俺の肩には、夜の暗闇と被って見づらい黒い物体が乗っかっていた。

「はぁ~……やっぱり帰ったほうがいいんじゃないか?ブラック」

 俺の肩にいる黒い物体は……まぁ、今更もったいぶる事もあるまい。もちろんブラックだ。

「ク~ン……」

 だが、ブラックは俺の肩をつかんで離そうとしない。意地でも俺から離れたくないらしい。
 こんなのは、俺が家から出ようとしてからずっと続いている。ドアを開けた瞬間から、俺の裾やら体やらを咥えてきたりして離してくれなかった。なのでしぶしぶではあるが、吠えたりするなと念を入れた後、ブラックも一緒に連れて行く流れとなったのだ。

(ただなぁ……こいつが吠えるなと言う事ををわかっているのかどうか……)

 地頭は相当良いので、わかってくれていると良いのだが……邪魔にならないことを祈るばかりだ。




 そうして、さらに時間は経ち……5分後。




「到着っと……」

 ついに大阪派閥の首都、大阪へとたどり着く事ができた。俺が本拠地としたところも相当な都会だったが、やはり首都。レベルが1段階も2段階も違う。

 東京や神奈川の様に、スマートにビル群が立ち並ぶとまではいかないが、光り輝く大きな看板。大阪特有のワイワイ感が溢れ出ており、レトロな雰囲気を醸し出している。

 個人的にはこちらの方が好みだ。

「おお……! お! 見ろよブラック!! あっちにたこ焼きがあるぞ! 任務が終わったら食いに行こう!」

「ワン!!」

 俺は、見たことがないタイプの都会に目を輝かせ、邪魔だと言っていたブラックに喋りかける。こういうのの話し相手になってくれるのは、俺のメンタルケアにもありかもしれない。初めてブラックがいて良かったと思える瞬間である。

「……おっと、見とれている場合じゃないな……え~っと、万場家は……」

 深夜なんてものは意外とあっという間だ。まだ2時、まだ3時と思っていると、いつの間にか5時になっている。昼夜逆転生活を行っている方々なら、理解できる考えだと思う。

 と言うわけで寄り道はせず、万場家に直行だ。そういうのはもっと強くなってから。強キャラが寄り道して遅れるのって憧れる。

 そんなこんなで、万場家を目指した…………








 ――――








「……ふぅ、到着」

「ワン!」

 まぁなんとも手際良くなったことだ。東京と神奈川での生活がどれだけ過酷だったのかがうかがえる。大阪なんてあの二県と比べたらぬるま湯だ。
 万場家はザ•ギンギラギンな洋風の建物と言うより、物静かな古風な建物。いや物静かと言うのは嘘か、めちゃくちゃ城だ。屋敷のレベルじゃなくね?5.6階ぐらいあるんだけど。

「それくらい富豪ってことか……」

 うらやましい。少しはその運とお金を分けてもらいたいものだ。こんな裏社会に片足突っ込んだだけでも不運だと言うのに……

(まぁ、そんな不運の先に生きる理由を見つけたんだから、少しは幸運もあったのかもな)

 そう思いながら、ビルの上からあの家を見据える。あの凄い迫力の家とは裏腹に警備はかなりザルだ。警備員も2.3人しか見つからない。不用意にも見えるが、逆に言えば、この周辺は安全だということがよくわかる。住民同士の中がとても良いのだろう。

 あ、そういえば……


(やべ、これからのこと考えてなかった)


 驚異的なやらかし。家では任務の情報の少なさが仇になると思い、急ピッチの情報収集が行われていたが、肝心の任務を成功させるための作戦を思いついていなかった。

 凡ミス。東京と神奈川では、主にハカセが作戦を考えてくれていたので、自分で作戦を考えると言う事については初心者だった。それゆえに、作戦を考えると言う重要な手順を忘れ、情報収集に没頭してしまったと言うわけである。

「あぁ~……どうしよう……」

「キュウウ? キューン……」

 俺がクソみたいなミスに落ち込んでいると、ブラックも俺と同じように落ち込んでくれる。まじで犬の中では相当賢い。人間で例えるならば、IQ140はあるだろう。

 こんな時、ハカセならどうするのだろう……いや、そもそもハカセはこんな状況になる前に作戦を決めているか……

ならば、人並みしかない俺の脳をフル回転させ、今、金の象像を奪うための最善の手段を考えていく。
持ち物は、ズボンのポケットに入った財布、俺が念じれば右手に出てくる黒剣のみ……ここから組み立てられる作戦といえば……簡単なやつしか思い浮かばない。

「……やっぱ、誰でも考えつきそうな事しか思い浮かばないな……」

 もっと良い作戦があるのかもしれない。もっと簡単に宝を手に入れられる方法があるのかもしれない。だが、凡庸な俺の脳では、もはやこれ以外の作戦は思い浮かばなかった。

 俺はビルから飛び降り、万場家の領地内へと着地する。そこには目の前にボディーガードがおり、突如上空から現れた俺の姿に驚いているようだ。

「だっ、誰だ!! お前は!!」

「あー……えっと……」







「とりあえず……金庫とかある? 泥棒しに来たんだけど」
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