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「ダメージは与えられなかったようですね……」

「……ちぃ」

 俺は改めて女を見る。明るい茶髪のショートでポニーテール、かなり目がくっきりしていて、童顔をと言うやつだろう。綺麗と言うより可愛らしい印象を持った。

「なら……もっと殴るだけです」

 そう言うと、女は正拳付きの構えをとる。どこにでもありそうな何の特徴もない構え。拳を突き出したとしてもその拳は空を切るだけだ。何の意味もない。
 そんな俺の心境なんてつゆ知らず、女は一呼吸いれて拳を勢い良く前に出す。


「オーラッ……ナックル!」

 大地が割れる。女の突き出した拳の先から、まるでレーザー砲でも撃ち込んでいるかのように大地がえぐれていく。それをまっすぐにそして高速で、俺に向かっていた。

(まずい!!)

 気付くのが遅かった。かわしきれない。とっさに腕をクロスさせ闘力操作を腕に使ってガードする。

 先のレベルダウンの戦いで、闘力は前とは比較にならないほど大きく増えている。いまや体全体を闘力操作で強化しても、1時間以上保つようになったのだ。

 しかし、威力が高すぎた。目に見えないエネルギーの圧。それはちょっとやそっと闘力を使った腕では防ぎきる事は不可能だった。

(このままじゃまた腕が折れちまう!)

 迷っている場合ではない。今を乗り切らなければ次は無いのだ。気絶しないギリギリまで闘力を腕に注ぎ込む。

 だが、肝心の体を支える脚を強化していなかった。

 体が大きく後ろに吹き飛び、駐車場の隣にあったマンションに体を叩きつけられる。

「ゲホッ……ゴホッ……」

 背中から叩きつけられた衝撃でえずいてしまう。腕で衝撃を緩和したおかげで、背骨が折れたような痛みは感じなかった。

「くそっ……」

 無意識的に後ろを振り向く。

(うそだろ……)

 そこは、確かに数秒前まであったマンションがなかった。
 代わりにあったのは瓦礫の山。破壊された後の残骸。それを見ると悪寒と同時に確信する。

(この女はレベルが違う! レベルダウンもやばかったが……この女は個としての強さが段違いだ!!)

 そうなると、ハカセを庇いながらの戦いはあまりにも部が悪すぎる。

「ハカセ! スチールアイに乗って逃げろ!! この女は今までのとは違う!! 俺でもハカセを庇いながらは戦えない!」

「う、うむ!」

 俺の言葉を聞いたハカセは、すぐさま巨大化したスチールアイに飛び乗り、空中に浮上する。

「意味のないことを……あなたを倒してすぐにあのご老人も捕まえてあげますよ」

「それは……できねえ……」

 俺は喋りながらゆっくりと構えをとる。それに反応し女も構えをとった。



「相談だなァ!!!! 袖女ァ!!!!」

「そうですかッ!!!!」



 お互いに距離を一気に縮め、拳と拳を合わせる。瞬間、周りの建物を揺らすほどの爆風が吹き荒れた。

「それとっ、私は袖女ではありませんっ!! ……ちゃんとした名前があるんですっ……!!」

「どうせ覚えねぇから問題ねぇんだよォォォォ!!!!」

 お互いに拳を拳にぶつけたまま俺は反射を使う。これにより、袖女の拳が弾かれて大きなスキが生まれる……はずだった。

「ッ! てめぇ……!」

「くうう……」

 俺の反射に対抗してきたのだ。この袖女、自分のパワーが跳ね返ってくると同時に新しく力をぶつけて、相殺させてきたのだ。要するに力を使ったごり押し。返ってきた自分の力にさらに強い力をぶつけてきたのだ。

 このままではらちがあかない。

 そう思った俺は、余った左腕を使って袖女に攻撃を仕掛ける。それにとっさに気づいたようで、袖女も余った左腕を使い俺の攻撃を受け止めようと左手を開く。

「なっ……」

 俺の攻撃を受け止めた瞬間、受け止めた袖女の左腕が弾き飛ばされる。どうやら、今のところ近距離で分があるの俺の方のようだ。

「このっ……オーラバースト!!!」

 袖女が叫んだ瞬間、袖女を中心にして衝撃波が発生する。
 その時、俺は反射を使用したのだが何故か反射は発動せず、俺はそのまま後ろに吹っ飛ぶ。

「……そこら辺のよりは、捕まえがいがありそうですね……」

「いてて……お前じゃ無理だよ、俺に勝つなんて」


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