底辺男のミセカタ 〜ゴミスキルのせいで蔑まれていた俺はスキル『反射』を手に入れて憎い奴らに魅せつける〜

筋肉重太郎

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 そうと決まれば善は急げだ。すぐにでも上に上がって奴らを見つけ出さなくてはならない。
 俺は上へ続く下水道の通路に向かって歩こうとする。

「まて、どこに行くんじゃ?」

「そんなの決まってんだろ、すぐにでも上に行って奴らを叩き潰すんだよ。ここに俺がいると感づかれる前に襲えば何とかなるかもしれない」

 俺がそう言うと、ハカセは呆れたような動きをしながら言う。

「はぁ……よいか? 今のオヌシには奴らを叩くことはできんよ。絶対、確実にな」

 ハカセが突拍子もないことを言い出す。
 なぜだ? 俺は復讐できるんじゃないのか?
 そう考えているとハカセは淡々と告げる。

「確かにオヌシの新たなスキルがあれば、意表はつけるかもしれん。だがそこまでだ。それ以上のことをする事はできない。」

「…………」

 ハカセはまるで、最初からそう言おうと思っていたかのようにすらすらと言葉を発する。 

「理由は2つじゃ、1つ目はお前が1人であると言う事。1人であやつらを敵にすると言う事は、東京派閥全てを敵に回すと言う事と同義。それに1人で戦うと言うのはあまりにも無謀すぎる。そういうのはもっとその新たなスキルの理解を深めてからじゃろう」

「2つ目は……オヌシも知っているじゃろう。無力化部隊……通称レベルダウンの連中の存在じゃ」

 ……レベルダウン……奴らは東京派閥直属の部隊であり、東京派閥をここまで押し上げた立役者といえる連中だ。

 ……その存在は、戦争初期の頃まで遡る。

 東京はその知名度と優秀なスキルを持った人間を多く排出したため大量の派閥に狙われ一度、劣勢に立たされたことがあったと言う。
 その時、新たに確認された新しいスキル……無力化と言うスキルが誕生した。
 これに東京が大いに沸き立ち皆が皆勝利を確信したと言う。それも当然だ。無力化なんて聞いてしまえば皆、考えるのは、小説やライトノベルなんかによくあるチート能力の1つ。期待してしまうのも当然だ。




 だが真実は……まったく別のものだった。




スキル名 無力化

所有者 ?

スキルランク NORMALノーマル

スキル内容
 対象者の行動を1つだけ無効化する。



 ……というものであった。この対象者の行動と言うのは複雑なものであり、右腕を動かせなくする。と言うおおざっぱなものは不可能で右腕を下から上に突き出す動作を無効化する、などの動作を無効化というあまりにも弱すぎるスキルだったのだ。
 こんなもの何の使いようにもならない。人々が再び肩を落とし残念がった時……


 ……やはりこの世の中には天才が1人はいるのである。


 その天才は無力化のスキルを持つ人間を大量に集め、1つの部隊を編成した。その部隊は戦場に出ると全員で対象者1人のそれぞれ別の動きを無効化した。
 するとどうだろうか、対象者は全くと言っていいほど動かなくなったのだ。そしてそのままハイパーだった対象者は全員に殴りかかられ死亡した。
 仕組みを説明すると、何十何百と集めた無力化を持ったスキルを持つ人間を集め対象者を1人に絞ることによって、対象者のあらゆる動きを無効化し、最終的には指1本すら動くことも許されない。まるで石にされたかのように動かなくなるのだ。
 それにより、東京派閥は敵対派閥の有力な人間を次々と無効化し今の地位を築いたと言う。

「レベルダウンがいる限り、オヌシの行動に合わせてあいつらが動き出し邪魔をされ、東京に敗北はなくワシらに勝利はないじゃろう」

「じゃぁどうするって言うんだよ?」

 俺は少しイラつきながら言葉を発する。そしてハカセはニヤリと笑い、

「そこでじゃ……ワシと組まんか?」

「……!」

「ワシにはレベルダウンを潰す良い作戦がある。さらにオヌシにとってはいい情報源になり協力者も増える。一度で2つの問題を一気に解決できる良い手段だと思うんだがね?」

 思いもよらなかった提案。俺とハカセが組む? ハカセに何のメリットがあると言うのだ。情報屋と言う仕事上派閥が攻撃されるのには何の意味もないと思うが。

「なぁに、わしにもいろいろ事情があっての、東京派閥に少しちょっかいをかけなければならなくなったのじゃよ」

 事情? ……まぁハカセ側もいろいろとあるのだろう。それを聞くのは野暮と言うやつだ。

 だが手を組むと言うのは悪い話ではない。むしろ渡りに船と言うやつだろう。何の条件もなしに情報屋と協力できるなんてチャンスめったにない。

「どうじゃ? 伸太、わしと組むか?」

 答えは決まっている。

「ああ……よろしく頼むぜ、ハカセ」

 すると博士はうれしそうに顔を綻ばせて……

「よし! ならばまずは作戦会議じゃ! 東京派閥を叩き潰すぞい!」

「おいおい……」


 この日、俺の本当の人生は進み始めた。



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