幼馴染の引き立て役に徹してきたモブ令嬢、突然の魔力解放により王太子に執着されて逃げ出せません

麦畑ムギ

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 結果的に、オリヴィアとリリーはプリシラの突撃訪問を回避して植物園を楽しむことができた。
 家の裏手に馬車を一台回してもらい、裏口からこっそり出発したのだ。
 オリヴィアの機転と使用人たちの連携プレーが功を奏した。

 「良かったわ、無事に逃げられて。楽しみにしていたの」

 美しい花々や木々を見ながら、リリーはほっとして笑っていた。
 オリヴィアも笑った。
 あのプリシラをうまく出し抜くことができて、なんだか不思議な達成感があった。

 「私もよ、邪魔されたくなかったから嬉しいわ。うちの両親がいなかったからできたことだけど。…プリシラのお父様は今をときめく有力者だから、仲良くするよううるさく言われるのよ」

 リリーはうんうんと頷いた。

 「どこも同じよね。うちもそうよ。私はそこまで親しくないから助かっているけれど、あなたは近所だし幼馴染だから大変よね」

 「そうなのよ…。どうにか距離を置きたいんだけれど」

 一瞬顔を曇らせたオリヴィアだったが、せっかくの楽しい時間を暗いものにしたくはなくて話題を変えた。

 「まあそれはまた考えるわ。ところで…来月の誕生日のお祝い、来てくれるかしら?」

 「もちろんよ、喜んで伺うわ!十六歳の誕生日は特別だもの、必ずお祝いさせてもらうわよ」

 リリーはにっこり笑って言った。

 オリヴィアとリリーは気が合うし、趣味も似ている。
 二人は対等で良好な関係を築いており、お互いを大切に思っていた。

 天気の良い日で、歩いているうちに暑くなって来たので二人は休憩することにした。
 冷たい飲み物を買い、テラス席に腰掛ける。
 オリヴィアは指をくるっと回し、風魔法で冷風を起こした。

 「涼しーい!風魔法の適性があるって良いわねぇ」

 リリーは大喜びだ。

 「私は魔力が弱いから、大したことはできないけどね」

 「私だって魔力は強くないわ、でも生きていくには十分だから良いじゃない。王宮魔導士になりたいわけじゃないし」
 
 「それもそうね」

 オリヴィアは笑った。
 地味でも平和に暮らせたらそれで良い。
 彼女は心からそう思っていた。
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