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第三章 かわいそうなちいたん
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フカフカのベッドで眠っていたはずのちいたんは、田んぼのど真ん中にボチャンと落ちた。田植えのため綺麗に整えられた田んぼを満たす栄養たっぷりの泥はちいたんをチョコレートフォンデュのようにくまなくコーティングした。
「グェエッ、ゲホッ、ヴェポッ…!!」
口の中にまでたっぷりと入った泥を必死で吐き出しながら、ちいたんはパニックになっていた。怖い夢を見ていたような気がするが、これも夢の続きなのだろうか。涙と鼻水をダラダラ流し、涎と泥をボタボタ垂らしながら苦しむちいたんには、何が何だか全く分からなかった。
「ヴッ、ウウッ…ヴーッ!!ウワァァーーーン!!」
ちいたんの叫びは空中に空しく消えた。辺りには誰もいなかった。
「ウッウッ…!ウ… わ~ん わ~んッ!」
誰かが声に気がついて、助けてくれるはずだ。ちいたんは出せる限りの大声で助けを呼んだ。
「ベ、べッ…!パ、マッ、マ…」
必死で家族を呼んでみる。きっと近くにいるはずだ。しかしどれだけ呼んでも答えはなく、どれだけ見回しても誰もいなかった。
バサッと音がして、ちいたんは体をビクッと震わせた。白い羽を持った、見たこともない大きな鳥が目の前に舞い降りた。
「ナンダ、オマエ」
「エ…?」
「ハア~ァ…エサカト、オモッタノニ…マズソッ。ナンカクサッ」
「エッ」
「アブラミ…ハラコワスカラ…バイバイ」
鳥はバサバサと去って行った。
「エーッ…」
ちいたんはしばらくの間呆然として鳥が飛んでいった方を見ていたが、ハッと我に返って田んぼから這いずり出た。
「ンショ…ンショ……フーッ!」
重たい泥の中をから何とか脱出し、ちいたんはため息をついた。さっきの生き物はちいたんを助けてくれなかったが、きっと誰かが助けてくれる。そして家族の元に帰してくれる。ちいたんは頑張って助けを求めようと決意した。
「エイオー!エイッ、エイオー!!」
キリッとした表情で力強く拳を天に突き上げるちいたんは、何だか急に逞しくなったようだった。
「グェエッ、ゲホッ、ヴェポッ…!!」
口の中にまでたっぷりと入った泥を必死で吐き出しながら、ちいたんはパニックになっていた。怖い夢を見ていたような気がするが、これも夢の続きなのだろうか。涙と鼻水をダラダラ流し、涎と泥をボタボタ垂らしながら苦しむちいたんには、何が何だか全く分からなかった。
「ヴッ、ウウッ…ヴーッ!!ウワァァーーーン!!」
ちいたんの叫びは空中に空しく消えた。辺りには誰もいなかった。
「ウッウッ…!ウ… わ~ん わ~んッ!」
誰かが声に気がついて、助けてくれるはずだ。ちいたんは出せる限りの大声で助けを呼んだ。
「ベ、べッ…!パ、マッ、マ…」
必死で家族を呼んでみる。きっと近くにいるはずだ。しかしどれだけ呼んでも答えはなく、どれだけ見回しても誰もいなかった。
バサッと音がして、ちいたんは体をビクッと震わせた。白い羽を持った、見たこともない大きな鳥が目の前に舞い降りた。
「ナンダ、オマエ」
「エ…?」
「ハア~ァ…エサカト、オモッタノニ…マズソッ。ナンカクサッ」
「エッ」
「アブラミ…ハラコワスカラ…バイバイ」
鳥はバサバサと去って行った。
「エーッ…」
ちいたんはしばらくの間呆然として鳥が飛んでいった方を見ていたが、ハッと我に返って田んぼから這いずり出た。
「ンショ…ンショ……フーッ!」
重たい泥の中をから何とか脱出し、ちいたんはため息をついた。さっきの生き物はちいたんを助けてくれなかったが、きっと誰かが助けてくれる。そして家族の元に帰してくれる。ちいたんは頑張って助けを求めようと決意した。
「エイオー!エイッ、エイオー!!」
キリッとした表情で力強く拳を天に突き上げるちいたんは、何だか急に逞しくなったようだった。
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