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0歳 人喰い狼と、薔薇の子ども
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「まずは、この子にご飯をあげないとね」
離れたところから赤ん坊を眺めている私に、サラが言った。
赤ん坊の食事がなにか、さすがの私にも分かる。
「乳か」
「ええ。当たり前だけど、私もあんたも出せないでしょ。
この子のお腹が空く前に、何とかしないと」
確かに、精霊であるサラは実体がないし私は雄だ。
こればかりは、代わりとなるものを外から調達してくるしかない。
乳が出る人間を森の外から連れてくるという手もあるが、人喰い狼が住まう森に来たがる人間はいないだろう。
どうしたものか……。
先に答えを出したのはサラだった。
ふわりと上下に揺れて、微かに瞬く。
「そうね……馬の乳なら、人間でも消化できたはずだわ。
モノケロースに分けてもらいましょう」
モノケロースというのは、この森に住む一角獣だ。
姿はユニコーンと似ているが、気性の荒いユニコーンと違って穏やかで意思疎通が取りやすい。
身体も大きいので、運がよければ赤ん坊一人分の乳を分けてもらえるかもしれない。
「では、私が頼みに行ってこよう」
サラの方が人間に関する知識は深いので、留守番を任せることにした。
私では、赤ん坊に何かあっても対処しきれない可能性が高い。
マギアスの手伝いで獣や魔物の子のお守りをしたことはあるが、人間の相手は殆ど経験が無いのだ。
肉食の私と草食のモノケロースとは本来相性が悪いが、この森に住まう彼らとはマギアスがまだ生きていた頃から付き合いがある。
普段もモノケロースは狩らないように気をつけているので、無碍に追い返されることはないはずだ。
「くれぐれも失礼のないようにね」と念を押すサラに頷いて、外へ出る。
頼み事をするのなら、まずは手土産が必要だ。
庭に生えている薬草を何種類か籠に詰めて、持っていくことにした。
動物や魔物をよく保護していたマギアスが、怪我の手当をする時に少しでも効き目のよいものをと品種改良を重ねて作り出した特別な薬草だ。
彼らが好む果実とどちらにしようか迷ったが、こちらの方が喜んでもらえるだろう。
庭に出ると、マギアスが生前育てていた薬草が当時と変わらぬ姿で青々と茂っていた。
薬草の生命力が強いのはもちろんだが、サラの手入れのおかげでもある。
私だけなら、とっくに枯らしていただろう。
血止めや痛み止め、打撲や骨折の治療に効き目のある薬草を選んで摘み取り、籠を満たす。
このくらいあれば、十分だろう。
早速、モノケロースの元へ向かうことにした。
朝よりも日が高くなり、明るくなった森の中を進むとモノケロースの匂いがしてきた。
こちらが気がつくくらいだ。鼻のいい彼らなら、私が近くに来ていることが分かっているだろう。
更に先へ進むと、白銀の毛並みと黄金の角が美しい若いモノケロースが私の前に現れた。
「こんにちは、パステールさん。
ここから先は、モノケロースの集落ですよ。何かご用ですか?」
モノケロースの口調は、その藍色の瞳同様に穏やかだった。
マギアスが生きていた時からの付き合いで、私が群れを襲いに来たのではないと分かっているためだろう。
薬草の入った籠を一旦降ろして、口を開く。
「ああ。少々頼みたいことがあってな」
簡潔に事情を説明すると、モノケロースは「人間の子ですか」と深いため息を吐いた。
その目には深い悲しみが宿っている。
「せっかく産まれてきたというのに、かわいそうに。
長に、乳を分けることの出来るモノケロースがいないか尋ねてきます。
少々お待ちを」
そう言って、若いモノケロースは急ぎ足で集落へともどっていった。
モノケロースはどれほど力の無い個体でも切りすてずになんらかの役割を与え、集落全体で育てる種族だ。
親に捨てられた人間の子を哀れに思ったのだろう。
しばらくすると、若いモノケロースが再びもどってきた。
長く立派な角の先には、木を削って作られた簡素な器が揺れている。
中の乳を零さないようにか、その足取りは慎重だ。
「お待たせしました。
これだけあれば足りるでしょうか」
差し出された器をのぞき込むと、真っ白な液体がなみなみと注がれていた。
これだけあれば、赤ん坊の腹を十分に満たせるだろう。
「ああ。本当に助かった。
これは礼だ」
「マギアス殿の薬草ですね。ありがとうございます」
持ってきた薬草を差し出すと、モノケロースは嬉しそうに籠を角に引っかけた。
森にも薬草は生えているが、マギアスが改良した薬草は通常より効き目がいい。
おかげで大きな怪我をした個体でも再び走れるようになったと、モノケロースの長が以前言っていた。
モノケロースから貰った乳を零さないよう慎重に運んで家に帰ると、赤ん坊の大きな泣き声が聞こえた。
私の帰りに気がついたサラがこちらに来て「待ってたわ」と上下に揺れる。
「あの子、もうお腹が空いちゃったみたいでさっきから大泣きよ。
もどってきてくれて助かったわ」
サラに急かされて赤ん坊を置いた部屋へ戻ると、籠の中に入った赤ん坊が顔を真っ赤にして泣いていた。
あわてて乳が入った器を下ろすと、サラが魔法で哺乳瓶の中に乳を詰めた。
マギアスが魔物や獣の乳飲み子を保護した際に使っていた哺乳瓶が、まだ残っていたのだろう。
彼が生前に掛けた保存の魔法には感謝しなければならないな。
「はい、ごはんよ。たんと飲みなさい」
そう言ってサラが魔法で浮かせた哺乳瓶を赤ん坊の口元へ持っていくと、赤ん坊はすぐに乳を飲み始めた。
よほど腹が減っていたのか、哺乳瓶の中の乳がみるみるうちに減っていく。
哺乳瓶が空になった頃、赤ん坊は満足げに吸い口から口を離した。
「これだけミルクを飲めるなら、問題なさそうね」
「うむ。いい飲みっぷりだ。
この調子で、どんどん大きくなるがいい」
そういうと、赤ん坊は「分かった」というように手足をばたつかせた。
まさか私やサラの言葉を理解しているわけではないだろうが、そうと分かっていても反応が返されるのは嬉しいことだ。
「お腹は満たされたようだし、次にこの子の名前を決めないとね」
「名前か」
「そうよ。いつまでも「人間」とか「赤ん坊」じゃ不便だもの。
あんただって、使い魔になった時にパステールって名前を貰ったでしょう。
センスがいいのを考えてあげないとね」
そうは言われても、マギアス以外の人間の名前などこれまで気にしたこともない。
いきなり付けろといわれても、お手上げだ。
「そういうと思った。
っていっても、わたしも人間の名前にそう詳しいわけでもないよね……。
なにか、この子を見てイメージするものとか将来この子になってほしいものとかをつけたらいいんじゃないかしら」
「元気よく育ってくれればそれでいい」
できればマギアスのように優れた魔法使いになってもらいたいが、それは贅沢だろう。
魔法使いとなるには、豊富な魔力と精霊に好かれる素質の両方を併せ持たなければならない。
魔法は、自身の魔力を精霊と共に形にするものだからだ。
魔狼ほどではないが、人間も魔力を持つ種族だ。ほとんどの人間が、ある程度の魔力は持っている。
精霊も請えば一定の力を貸してくれる故に魔法を扱える人間は多い。
だが、魔法使いと呼ばれるほど威力や精度の高い魔法を扱える人間は滅多にいなかった。
まして「ビブリオ」の称号を与えられたマギアスほどの高みを目指せと今から願っては、将来重荷になるかもしれない。
「そりゃそうだけど……その前にこの子、女の子? 男の子?」
「……確認、するしかないか」
「気をつけなさいよ」
おそるおそる近づくと、赤ん坊がこちらを向いて大きく声を上げた。
機嫌はよいようだが、先ほどのことがある以上油断は出来ない。
再びヒゲを捕まれないよう気をつけながら赤ん坊を籠から出し、その身体を包んでいる布をほどいた。
「……女の子だな」
「あら。じゃあ、成長したらきっと美人になるわね。
肌が白いし、目鼻立ちもくっきりしているもの」
「そうなのか? 私には、よく分からないが……」
確かに、その赤ん坊は雪のように白い肌をしていた。
瞳は薔薇のように赤く、うっすらと生えている髪は私と同じく夜のような黒色だ。
マギアスを彷彿させる色合いは美しいと思うが、顔の美醜は私にはよく分からなかった。
目が二つあって、小さな鼻が一つに耳が二つ。頬はふくふくとしていて、丸く柔らかな輪郭をしている。
私に言えることはその位だろうか。
とりあえず、先ほどの一件で元気いっぱいな子に育ちそうだというのは分かったが……。
「元気な子に育つよう、グートという名前はどうだろう」
「女の子の名前にしては、ちょっと勇ましすぎやしないかしら」
グートとは、雪の国の言葉で「元気」という意味だ。
名は体を表すとよく言う。この子にはぴったりだと思うのだが、サラは不服そうだった。
なかなか、名付けというのは難しいものだ。
「……では、ローザというのはどうだろう」
次に、雪の国の言葉で「薔薇」という意味の言葉を名前としてあげると、今度はサラも「素敵な名前ね」と返してくれた。
もちろん、由来は赤ん坊の瞳の色からだ。
「では、お前はこれからローザだ。いいな」
少し離れたところから赤ん坊を見つめて伝えると、赤ん坊は嬉しそうに手足をばたつかせてよく分からない声をあげた。
どうやら気に入ってもらえたようだ。
「言っておくけど、たぶんそれ反射ってやつよ」
サラには、あっさりとそう言われてしまったが。
離れたところから赤ん坊を眺めている私に、サラが言った。
赤ん坊の食事がなにか、さすがの私にも分かる。
「乳か」
「ええ。当たり前だけど、私もあんたも出せないでしょ。
この子のお腹が空く前に、何とかしないと」
確かに、精霊であるサラは実体がないし私は雄だ。
こればかりは、代わりとなるものを外から調達してくるしかない。
乳が出る人間を森の外から連れてくるという手もあるが、人喰い狼が住まう森に来たがる人間はいないだろう。
どうしたものか……。
先に答えを出したのはサラだった。
ふわりと上下に揺れて、微かに瞬く。
「そうね……馬の乳なら、人間でも消化できたはずだわ。
モノケロースに分けてもらいましょう」
モノケロースというのは、この森に住む一角獣だ。
姿はユニコーンと似ているが、気性の荒いユニコーンと違って穏やかで意思疎通が取りやすい。
身体も大きいので、運がよければ赤ん坊一人分の乳を分けてもらえるかもしれない。
「では、私が頼みに行ってこよう」
サラの方が人間に関する知識は深いので、留守番を任せることにした。
私では、赤ん坊に何かあっても対処しきれない可能性が高い。
マギアスの手伝いで獣や魔物の子のお守りをしたことはあるが、人間の相手は殆ど経験が無いのだ。
肉食の私と草食のモノケロースとは本来相性が悪いが、この森に住まう彼らとはマギアスがまだ生きていた頃から付き合いがある。
普段もモノケロースは狩らないように気をつけているので、無碍に追い返されることはないはずだ。
「くれぐれも失礼のないようにね」と念を押すサラに頷いて、外へ出る。
頼み事をするのなら、まずは手土産が必要だ。
庭に生えている薬草を何種類か籠に詰めて、持っていくことにした。
動物や魔物をよく保護していたマギアスが、怪我の手当をする時に少しでも効き目のよいものをと品種改良を重ねて作り出した特別な薬草だ。
彼らが好む果実とどちらにしようか迷ったが、こちらの方が喜んでもらえるだろう。
庭に出ると、マギアスが生前育てていた薬草が当時と変わらぬ姿で青々と茂っていた。
薬草の生命力が強いのはもちろんだが、サラの手入れのおかげでもある。
私だけなら、とっくに枯らしていただろう。
血止めや痛み止め、打撲や骨折の治療に効き目のある薬草を選んで摘み取り、籠を満たす。
このくらいあれば、十分だろう。
早速、モノケロースの元へ向かうことにした。
朝よりも日が高くなり、明るくなった森の中を進むとモノケロースの匂いがしてきた。
こちらが気がつくくらいだ。鼻のいい彼らなら、私が近くに来ていることが分かっているだろう。
更に先へ進むと、白銀の毛並みと黄金の角が美しい若いモノケロースが私の前に現れた。
「こんにちは、パステールさん。
ここから先は、モノケロースの集落ですよ。何かご用ですか?」
モノケロースの口調は、その藍色の瞳同様に穏やかだった。
マギアスが生きていた時からの付き合いで、私が群れを襲いに来たのではないと分かっているためだろう。
薬草の入った籠を一旦降ろして、口を開く。
「ああ。少々頼みたいことがあってな」
簡潔に事情を説明すると、モノケロースは「人間の子ですか」と深いため息を吐いた。
その目には深い悲しみが宿っている。
「せっかく産まれてきたというのに、かわいそうに。
長に、乳を分けることの出来るモノケロースがいないか尋ねてきます。
少々お待ちを」
そう言って、若いモノケロースは急ぎ足で集落へともどっていった。
モノケロースはどれほど力の無い個体でも切りすてずになんらかの役割を与え、集落全体で育てる種族だ。
親に捨てられた人間の子を哀れに思ったのだろう。
しばらくすると、若いモノケロースが再びもどってきた。
長く立派な角の先には、木を削って作られた簡素な器が揺れている。
中の乳を零さないようにか、その足取りは慎重だ。
「お待たせしました。
これだけあれば足りるでしょうか」
差し出された器をのぞき込むと、真っ白な液体がなみなみと注がれていた。
これだけあれば、赤ん坊の腹を十分に満たせるだろう。
「ああ。本当に助かった。
これは礼だ」
「マギアス殿の薬草ですね。ありがとうございます」
持ってきた薬草を差し出すと、モノケロースは嬉しそうに籠を角に引っかけた。
森にも薬草は生えているが、マギアスが改良した薬草は通常より効き目がいい。
おかげで大きな怪我をした個体でも再び走れるようになったと、モノケロースの長が以前言っていた。
モノケロースから貰った乳を零さないよう慎重に運んで家に帰ると、赤ん坊の大きな泣き声が聞こえた。
私の帰りに気がついたサラがこちらに来て「待ってたわ」と上下に揺れる。
「あの子、もうお腹が空いちゃったみたいでさっきから大泣きよ。
もどってきてくれて助かったわ」
サラに急かされて赤ん坊を置いた部屋へ戻ると、籠の中に入った赤ん坊が顔を真っ赤にして泣いていた。
あわてて乳が入った器を下ろすと、サラが魔法で哺乳瓶の中に乳を詰めた。
マギアスが魔物や獣の乳飲み子を保護した際に使っていた哺乳瓶が、まだ残っていたのだろう。
彼が生前に掛けた保存の魔法には感謝しなければならないな。
「はい、ごはんよ。たんと飲みなさい」
そう言ってサラが魔法で浮かせた哺乳瓶を赤ん坊の口元へ持っていくと、赤ん坊はすぐに乳を飲み始めた。
よほど腹が減っていたのか、哺乳瓶の中の乳がみるみるうちに減っていく。
哺乳瓶が空になった頃、赤ん坊は満足げに吸い口から口を離した。
「これだけミルクを飲めるなら、問題なさそうね」
「うむ。いい飲みっぷりだ。
この調子で、どんどん大きくなるがいい」
そういうと、赤ん坊は「分かった」というように手足をばたつかせた。
まさか私やサラの言葉を理解しているわけではないだろうが、そうと分かっていても反応が返されるのは嬉しいことだ。
「お腹は満たされたようだし、次にこの子の名前を決めないとね」
「名前か」
「そうよ。いつまでも「人間」とか「赤ん坊」じゃ不便だもの。
あんただって、使い魔になった時にパステールって名前を貰ったでしょう。
センスがいいのを考えてあげないとね」
そうは言われても、マギアス以外の人間の名前などこれまで気にしたこともない。
いきなり付けろといわれても、お手上げだ。
「そういうと思った。
っていっても、わたしも人間の名前にそう詳しいわけでもないよね……。
なにか、この子を見てイメージするものとか将来この子になってほしいものとかをつけたらいいんじゃないかしら」
「元気よく育ってくれればそれでいい」
できればマギアスのように優れた魔法使いになってもらいたいが、それは贅沢だろう。
魔法使いとなるには、豊富な魔力と精霊に好かれる素質の両方を併せ持たなければならない。
魔法は、自身の魔力を精霊と共に形にするものだからだ。
魔狼ほどではないが、人間も魔力を持つ種族だ。ほとんどの人間が、ある程度の魔力は持っている。
精霊も請えば一定の力を貸してくれる故に魔法を扱える人間は多い。
だが、魔法使いと呼ばれるほど威力や精度の高い魔法を扱える人間は滅多にいなかった。
まして「ビブリオ」の称号を与えられたマギアスほどの高みを目指せと今から願っては、将来重荷になるかもしれない。
「そりゃそうだけど……その前にこの子、女の子? 男の子?」
「……確認、するしかないか」
「気をつけなさいよ」
おそるおそる近づくと、赤ん坊がこちらを向いて大きく声を上げた。
機嫌はよいようだが、先ほどのことがある以上油断は出来ない。
再びヒゲを捕まれないよう気をつけながら赤ん坊を籠から出し、その身体を包んでいる布をほどいた。
「……女の子だな」
「あら。じゃあ、成長したらきっと美人になるわね。
肌が白いし、目鼻立ちもくっきりしているもの」
「そうなのか? 私には、よく分からないが……」
確かに、その赤ん坊は雪のように白い肌をしていた。
瞳は薔薇のように赤く、うっすらと生えている髪は私と同じく夜のような黒色だ。
マギアスを彷彿させる色合いは美しいと思うが、顔の美醜は私にはよく分からなかった。
目が二つあって、小さな鼻が一つに耳が二つ。頬はふくふくとしていて、丸く柔らかな輪郭をしている。
私に言えることはその位だろうか。
とりあえず、先ほどの一件で元気いっぱいな子に育ちそうだというのは分かったが……。
「元気な子に育つよう、グートという名前はどうだろう」
「女の子の名前にしては、ちょっと勇ましすぎやしないかしら」
グートとは、雪の国の言葉で「元気」という意味だ。
名は体を表すとよく言う。この子にはぴったりだと思うのだが、サラは不服そうだった。
なかなか、名付けというのは難しいものだ。
「……では、ローザというのはどうだろう」
次に、雪の国の言葉で「薔薇」という意味の言葉を名前としてあげると、今度はサラも「素敵な名前ね」と返してくれた。
もちろん、由来は赤ん坊の瞳の色からだ。
「では、お前はこれからローザだ。いいな」
少し離れたところから赤ん坊を見つめて伝えると、赤ん坊は嬉しそうに手足をばたつかせてよく分からない声をあげた。
どうやら気に入ってもらえたようだ。
「言っておくけど、たぶんそれ反射ってやつよ」
サラには、あっさりとそう言われてしまったが。
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