403 / 415
『シャワーのない場所で(3)』
しおりを挟む
『シャワーのない場所で(3)』
普通の視線とは嫌悪感を出さない事だけではなく、特別な興味もないと振舞う事だ。
あのお胸の前で、オレは自然に振舞う事ができるだろうか?
否。断言できる。
「先生。ボクは大きいお胸が大好きですから、普通にしていられる自信はないですよ? 多分、隙あらばガン見すると思います」
「おい待て。つまり私はどうなんだ? そう言えばお前は私の胸を見る事があまりないな? 私は身長はともかくボディラインには自信があるぞ?」
自分の平坦な胸を張る冬原先生。
女性は男性の視線に敏感というが無いものは見ようがない。
「なんだ、その失礼な視線は。もしかしてお前は特殊な趣味の持ち主か? あ、いや、それは承知しているが、コッチもアッチも特殊性癖か?」
「今、ボク、ものすごく失礼な事を言われていると思いますけど、実際、全方向でウエルカムなので先生のお言葉に対して異存はありません」
「胸の大きさなど気にしないという言葉を聞き、お前の器の大きさに感心した私がバカだった。お前はただエロいだけのDKだ」
「褒めてもアレしか出ませんよ」
「そのイケメン顔でババアギャグはやめろ」
シンミリした雰囲気を感じ取ったので、下ネタをぶっこんでおく。
はぁ、とため息をつく先生。
「ともかく。お前さえ良ければ先輩を紹介する」
「ボクもあの方とはもう一度お会いしてお礼を言いたいと思っていましたし、紹介していただけるのはありがたいんですけど……もう少し詳しい仕事内容ってわかりませんか?」
肝心の仕事内容が、ふわっとしすぎている。
「ものすごく簡単に言うと、先輩のカバンを持って会合やパーティーに同伴出席し、後ろからついてまわる仕事だ。スーツなどの正装を求められるのはこのためだな。詳しい事は本人から聞けばいい」
「……へえ?」
金魚のフンをするだけ時給一万円? と思ったが、なるほどオレもこの世界になじんできた。
飾りとして男を連れまわす、というカンジかな?
「パーティーって、おいしいご飯とか出ます?」
「出るだろうな。私は行った事がないからわからん。そういう諸々も本人に聞け」
「わかりました。ではお願いします」
「ああ。つないでおこう。お前の予定は?」
「ボクはいつでも大丈夫です」
「よし。今週末に飲みに付き合えと言われていた。断るつもりだったが行って調整してこよう」
「あれ? 飲み会、断るつもりだったんですか? 先輩のいう事には従うと言っていませんでしたか?」
確か先ほどそんなような事を言っていたはずだが?
「時と場合による。お前とのお部屋デートの約束……若いイケメンが泊まりに来るのに、それを断ってまでどうして寂しく女同士で飲みに行かにゃならんのだ」
確かにここのところ週末ともなれば、先生の部屋に泊まり込んでいた。
特にデートと称していたわけではないが、それを言うのは野暮というものだ。
「しかし、お前のためなら私は何でもするぞ。バイトのつなぎなんてお安い御用だ。だから来週は今週のぶんまで色々と頼む」
「ふふ、わかりました。制服プレイ……は、もう何度もしていますし、今度は執事服でも着てみせましょうか?」
前世でいうメイド服のコスプレみたいなものだろうと、気軽に言ってみたところ。
「い、いいのか? そんな事まで……いいのか?」
「冗談のつもりでしたけど、先生がお望みならいつでも着ますよ?」
お、おお、おおお、と声にならない音を口から漏らしながら、先生がオレを拝み始めた。
前世のオレが現役女子高生にメイド服でオーケーですよ、と言われたら似たような奇行をするだろう。
そういえば、オレも先生にコスプレをしてもらおうと思っていたが、すっかり忘れていた。
先生には、相手にコスプレをさせるなら、自分もコスプレをする覚悟が必要という事を知って貰ういい機会でもある。
まぁ、それはまたいずれその時に。
「では、私は週末に先輩と会ってくる。さっきの名刺は預かってもいいか?」
「あ、はい。よろしくお願いします」
オレはテーブルの上にあったままの名刺を先生へと差し出す。
“氷雨 縁(ひさめ ゆかり)”。
そう書かれた名刺の主の姿を思い出す。
オレよりも背が高い美人さんだった事は覚えている。
しかし、お顔まではよく覚えていない。
美人だった印象はあるが、その整った顔の下にあった大きすぎる二つのふくらみの記憶があまりに強烈すぎるからだ。
しかもオレはアレを不可抗力とはいえ、わしづかみにしている。
夏木さんとはまた違った形と大きさ。
共通するのは、心までも包み込まれるような柔らかさだ。
などと美しい記憶をさかのぼっていたのが顔に出ていたのだろうか。
先生が今まで見た事もないようなジト目でオレを見て、ふぅ、とため息をついた。
「ともかく、先輩にもいい話ができそうだ」
「?」
先生は名刺を自分の財布にしまいこみ、立ち上がった。
「さて。一通りの話もついた。行くか」
「え? どこへですか?」
時計は二十時を回っている。
お互い明日も学校だし、後は送ってもらうだけかと思っていたのだが。
「決まっている! シャワーのある場所、つまり私の部屋だ! 今週末はお預けなんだからな!」
迷いのない顔でそう言われてしまった。
翌日、オレはけっこうな寝不足だったのに対して、朝のホームルームで連絡事項を伝える冬原先生は実にツヤツヤしていた。
普通の視線とは嫌悪感を出さない事だけではなく、特別な興味もないと振舞う事だ。
あのお胸の前で、オレは自然に振舞う事ができるだろうか?
否。断言できる。
「先生。ボクは大きいお胸が大好きですから、普通にしていられる自信はないですよ? 多分、隙あらばガン見すると思います」
「おい待て。つまり私はどうなんだ? そう言えばお前は私の胸を見る事があまりないな? 私は身長はともかくボディラインには自信があるぞ?」
自分の平坦な胸を張る冬原先生。
女性は男性の視線に敏感というが無いものは見ようがない。
「なんだ、その失礼な視線は。もしかしてお前は特殊な趣味の持ち主か? あ、いや、それは承知しているが、コッチもアッチも特殊性癖か?」
「今、ボク、ものすごく失礼な事を言われていると思いますけど、実際、全方向でウエルカムなので先生のお言葉に対して異存はありません」
「胸の大きさなど気にしないという言葉を聞き、お前の器の大きさに感心した私がバカだった。お前はただエロいだけのDKだ」
「褒めてもアレしか出ませんよ」
「そのイケメン顔でババアギャグはやめろ」
シンミリした雰囲気を感じ取ったので、下ネタをぶっこんでおく。
はぁ、とため息をつく先生。
「ともかく。お前さえ良ければ先輩を紹介する」
「ボクもあの方とはもう一度お会いしてお礼を言いたいと思っていましたし、紹介していただけるのはありがたいんですけど……もう少し詳しい仕事内容ってわかりませんか?」
肝心の仕事内容が、ふわっとしすぎている。
「ものすごく簡単に言うと、先輩のカバンを持って会合やパーティーに同伴出席し、後ろからついてまわる仕事だ。スーツなどの正装を求められるのはこのためだな。詳しい事は本人から聞けばいい」
「……へえ?」
金魚のフンをするだけ時給一万円? と思ったが、なるほどオレもこの世界になじんできた。
飾りとして男を連れまわす、というカンジかな?
「パーティーって、おいしいご飯とか出ます?」
「出るだろうな。私は行った事がないからわからん。そういう諸々も本人に聞け」
「わかりました。ではお願いします」
「ああ。つないでおこう。お前の予定は?」
「ボクはいつでも大丈夫です」
「よし。今週末に飲みに付き合えと言われていた。断るつもりだったが行って調整してこよう」
「あれ? 飲み会、断るつもりだったんですか? 先輩のいう事には従うと言っていませんでしたか?」
確か先ほどそんなような事を言っていたはずだが?
「時と場合による。お前とのお部屋デートの約束……若いイケメンが泊まりに来るのに、それを断ってまでどうして寂しく女同士で飲みに行かにゃならんのだ」
確かにここのところ週末ともなれば、先生の部屋に泊まり込んでいた。
特にデートと称していたわけではないが、それを言うのは野暮というものだ。
「しかし、お前のためなら私は何でもするぞ。バイトのつなぎなんてお安い御用だ。だから来週は今週のぶんまで色々と頼む」
「ふふ、わかりました。制服プレイ……は、もう何度もしていますし、今度は執事服でも着てみせましょうか?」
前世でいうメイド服のコスプレみたいなものだろうと、気軽に言ってみたところ。
「い、いいのか? そんな事まで……いいのか?」
「冗談のつもりでしたけど、先生がお望みならいつでも着ますよ?」
お、おお、おおお、と声にならない音を口から漏らしながら、先生がオレを拝み始めた。
前世のオレが現役女子高生にメイド服でオーケーですよ、と言われたら似たような奇行をするだろう。
そういえば、オレも先生にコスプレをしてもらおうと思っていたが、すっかり忘れていた。
先生には、相手にコスプレをさせるなら、自分もコスプレをする覚悟が必要という事を知って貰ういい機会でもある。
まぁ、それはまたいずれその時に。
「では、私は週末に先輩と会ってくる。さっきの名刺は預かってもいいか?」
「あ、はい。よろしくお願いします」
オレはテーブルの上にあったままの名刺を先生へと差し出す。
“氷雨 縁(ひさめ ゆかり)”。
そう書かれた名刺の主の姿を思い出す。
オレよりも背が高い美人さんだった事は覚えている。
しかし、お顔まではよく覚えていない。
美人だった印象はあるが、その整った顔の下にあった大きすぎる二つのふくらみの記憶があまりに強烈すぎるからだ。
しかもオレはアレを不可抗力とはいえ、わしづかみにしている。
夏木さんとはまた違った形と大きさ。
共通するのは、心までも包み込まれるような柔らかさだ。
などと美しい記憶をさかのぼっていたのが顔に出ていたのだろうか。
先生が今まで見た事もないようなジト目でオレを見て、ふぅ、とため息をついた。
「ともかく、先輩にもいい話ができそうだ」
「?」
先生は名刺を自分の財布にしまいこみ、立ち上がった。
「さて。一通りの話もついた。行くか」
「え? どこへですか?」
時計は二十時を回っている。
お互い明日も学校だし、後は送ってもらうだけかと思っていたのだが。
「決まっている! シャワーのある場所、つまり私の部屋だ! 今週末はお預けなんだからな!」
迷いのない顔でそう言われてしまった。
翌日、オレはけっこうな寝不足だったのに対して、朝のホームルームで連絡事項を伝える冬原先生は実にツヤツヤしていた。
42
お気に入りに追加
854
あなたにおすすめの小説
シン・三毛猫現象 〜自然出産される男が3万人に1人の割合になった世界に帰還した僕はとんでもなくモテモテになったようです〜
ミコガミヒデカズ
ファンタジー
気軽に読めるあべこべ、男女比モノです。
以前、私がカクヨム様で書いていた小説をリメイクしたものです。
とあるきっかけで異世界エニックスウェアに転移した主人公、佐久間修。彼はもう一人の転移者と共に魔王との決戦に挑むが、
「儂の味方になれば世界の半分をやろう」
そんな魔王の提案に共に転移したもう一人の勇者が応じてしまう。そんな事はさせないと修は魔王を倒そうとするが、事もあろうに味方だったもう一人の勇者が魔王と手を組み攻撃してきた。
瞬間移動の術でなんとか難を逃れた修だったが、たどり着いたのは男のほとんどが姿を消した異世界転移15年後の地球だった…。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う
月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!
男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る
電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。
女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。
「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」
純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。
「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる