上 下
395 / 415

『風が感じる憧憬と快感(4)』

しおりを挟む
『風が感じる憧憬と快感(4)』
 
「夏と言えば、やっぱり海かな?」
「え」
 
青葉センパイも一緒で泊まりって、どういう事だろう?
 
「ふふ。イヤ?」
「い、いえ、ぜひお願いしたいッス!」
 
反射的に快諾してしまうものの、別に友人同士でお泊り旅行は不思議な事じゃない。
 
今の会話の流れだって、セフレとかそういう関係以外でも仲良くしてくれるっていう話だった。
 
「じゃあ、夏休みまでに行き先を考えておくね」
 
夏。
 
京センパイとの約束を思い出す。
 
ウチがどうしても怖くてできなかった、最後の一線を迎える期限。
 
もしそれを旅行先で、京センパイに面倒見てもらえるのなら……なんて考えてしまうがすぐに否定する。
 
一夏の思い出にイケメン先輩に処女を貰ってもらうとか、女子中学生が読むエロマンガでももっとリアリティあるって話。
 
けれど京センパイなら、という期待もあって、ついソワソワしてしまう。
 
「さて。薫ちゃん、そろそろ大丈夫?」
「……あ。あっ、はい!」
 
ウチはケータイを取り出し、時間を確かめる。
 
まだ余裕はあるけれど、いつまでも京センパイのお時間をいただくわけにはいかない。
 
ウチは、後輩で、セフレで。

だけど恋人じゃない。
 
こうして面倒をかけてしまった上に、引き留めたりしたらウザい女と見限られてしまう。
 
「今日は、その、色々とありがとうございました」
「ふふ。薫ちゃん。意地悪なセンパイにいじめられてお礼を言うの?」
 
いつもみたいに、笑顔でイジワルを言う京センパイ。
 
ウチは笑って。
 
「だって……ウチの初めてになる人ッスから」
 
つい口を出たセリフ。
 
自分でもなんて恥ずかしい事を言っているのだろうと思う。
 
まるで甘ったるいラブコメマンガだ。
 
笑われるかなぁ、と思いきや、けれど京センパイは。
 
「そうだね。その時が楽しみだね?」
 
と言って、ほっぺにチューをしてくれた。
 
あんなにエッチでスケベな事してくる京センパイが、少しだけ照れ臭そうにしていた。
 
ウチは。
 
本当に。
 
この学校にきて良かった!
 
 
 
***
 

 コトを終え、オレとカオルちゃんは売店の近くに設置されたベンチで横並びに座っている。

「んー。こういう時間もいいよね」
「え?」
 
自販機で買ったオレンジジュースをちびちび飲んでいる薫ちゃんを見る。
 
校内でイチャイチャなんて、前世ではかなわなかった夢。
 
しかもそれが自分を慕う制服姿の後輩、かつ従順なセフレとくれば、もう幻想レベルのシチュエーション。
 
それが今、手中にあるのだから、オレもつい笑顔になってしまう。
 
「ほら。セフレって別に体だけの関係だけじゃなくて。こうやって横に並んでジュース飲んでる時間もいいなって。お互いの事を色々と知れば、もっと仲良くなれるでしょ? もちろんカオルちゃんがイヤじゃなければだけど」
「ウ、ウチは大歓迎ッス!」
 
嬉しいお返事が返ってくる。
 
立場が逆ならオレだって、そう返事をするだろう。
 
突然、オレがこんなことを言い出したのは理由がある。
 
相手の日常を知るからこそ、エッチの時にギャップが生まれる。
 
近寄りがたい雰囲気の夏木さんには、家庭的な面とツンデレな面がある。
 
真面目で厳しいと思っていた冬原先生には、愉快な性格と意外な学生時代が。
 
真面目だと思っていた春日井さんの……あんまり知りたくなかった性癖と性欲。
 
そういう色々があってこそ、盛り上がる事もある。
 
正直、一癖二も二癖もある人達だが、学校で過ごすだけでは知る事のできなかった別の顔を知って良かったと思う。
 
というわけで、薫ちゃんとのエッチな時間をさらに充実させる為にも、もっと一緒に時間を過ごすのもいいだろう。

ゴーデルンウィークはすでに終わり、次に来るのは夏。
 
そして夏と言えば海。
 
学生カップルで海水浴なんて前世のオレからすればファンタジーだった。
 
しかし今ならイケる。
 
むしろ、さらにレベルアップさせた幻想物語、お泊り海水浴すら可能だろう。
 
だがオレは止まらない。
 
そこで満足していいほど、ビッチの道はやさしくない。
 
常に上へ、更に高みへ。
 
というわけで、薫ちゃんにそれとなく、今後の予定を匂わせておく。
 
「そう? じゃあ近いうちに少し遠出もしてみない? 夏木さんも一緒に。せっかくだから泊まりでね。夏と言えば、やっぱり海かな?」
 
薫ちゃんは「え?」と声を漏らした。
 
「ふふ。イヤ?」
「い、いえ、ぜひお願いしたいッス!」
 
オレが重ねて聞き返すと、すぐに快諾してくれた。
 
薫ちゃんは、夏木さんも誘うとはどういう事だろう? と思っている顔だが、オレはあえて説明しない。
 
どうもこうも、そういう事だ。
 
――3P。
 
ビッチであれば避けて通れない、避けてはいけない、いや、避けて通れるはずがない。
 
前世ではマンガか小説かモニタの中の出来事。
 
この世界のオレなら、それが実現できる。
 
すでに下準備は整った。
 
しかも! 誘うのは両手でも支えきれないお胸の持ち主の二人だ。
 
一人は目の前でとまどっている、先輩の言葉なら素直に聞く従順な後輩。
 
もう一人はツンデレの鑑のような、だいたい何でも言う事を聞いてくれるセフレのクラスメート。
 
しかも互いに知り合いで、互いにオレを共有する事に納得している。
 
これで3Pをしないなど、この世界に送ってくれた女神様への不敬ですらある。
 
薫ちゃんとの別れ際、ホッペにキスなどをして青春の味を満喫する。
 
何度もこちらを振り返りながら去っていく薫ちゃんを見送り、オレは考える。
 
「さて、どうしようか」
 
お泊り海水浴。
 
それを実現できる環境は揃えど、先立つものが手元にない。
 
要するにお金がない。
 
架空の親から生活費として振り込まれる額は、育ち盛りの高校生が腹いっぱい食ったらなくなってしまう額だ。
 
つまり。
 
「バイト、しないとなぁ」
 
ということ。
 
「アテが無いこともないけど」
 
シマ先輩のバイト先を紹介してもらうか。それとも。
 
「例のブルセラショップに興味もあるけど……」
 
今着ている学生服に顔を隠した自分の写真をつけて売れば、新品の学生服が十着は買えそうだが、あそこを頼るのは最終手段としておく。
 
「まぁ、頼るべきは年長者だよね」
 
と、いうわけで、オレはタイトルに『何か即金になるバイトを知りませんか』と打ちこみ、一件のメールを送信した。


---


先だってお伝えしておりました、ここまで投稿済みデータの全体の校正を終えました。
細かい矛盾や設定の齟齬が気になって始めたものの、ここまで手間と時間がかかるとわかっていたら、絶対にやらなかったです。
こちらは近いうちにノクターンにて投稿する予定です。

*主な修正内容として、

くどい表現を見直して一文を短めに。
春日井編に登場したスキル『性癖染色』が分かりにくい為、削除と調整(シンプルに春日井をさらにエロく変更)。
空手部が廃部・現存で矛盾していたため現存。顧問は冬原、副顧問に山崎。
現在進捗は五人目のヒロイン。

*今後の更新について。
校正後のデータをこちらに移し替えるのは、話数の増減や内容的にも難しくこのまま継続となります。
今後の投稿は校正後の設定に則った内容となり、設定に齟齬が生じますが全体の流れは変わっていません。
更新時期については、五人目ヒロインのデータをある程度書き溜められたらと思っています。

校正内容にご興味を持って頂けた方や、読み直して頂ける方など、良ければそちらもよろしくお願いいたします。
ではまた次の更新にて。

しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

シン・三毛猫現象 〜自然出産される男が3万人に1人の割合になった世界に帰還した僕はとんでもなくモテモテになったようです〜

ミコガミヒデカズ
ファンタジー
 気軽に読めるあべこべ、男女比モノです。  以前、私がカクヨム様で書いていた小説をリメイクしたものです。  とあるきっかけで異世界エニックスウェアに転移した主人公、佐久間修。彼はもう一人の転移者と共に魔王との決戦に挑むが、 「儂の味方になれば世界の半分をやろう」  そんな魔王の提案に共に転移したもう一人の勇者が応じてしまう。そんな事はさせないと修は魔王を倒そうとするが、事もあろうに味方だったもう一人の勇者が魔王と手を組み攻撃してきた。  瞬間移動の術でなんとか難を逃れた修だったが、たどり着いたのは男のほとんどが姿を消した異世界転移15年後の地球だった…。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...