371 / 415
『伏せられた三枚のカード』
しおりを挟む
『伏せられた三枚のカード』
駅前商店街のメインストリートから少し外れた場所にあったカラオケ店というコトもあり、近くにある喫茶店も人の入りは少ない。
「あそこにしよっか」
「あ、はいッス」
近くにあった喫茶店は店内は広いものの、客はオレたちの他に二組と閑散としていた。
オレはあまり目立たない、店の一番奥の四人掛けボックス席を選んで、そこに座る。
薫ちゃんもおずおずといった顔で目の前に座った。
お冷を持ってきた店員さんに、オレはカフェオレ、薫ちゃんがクリームソーダを注文した後。
「さて。お店のお手伝いまで、あんまり時間もないかな?」
「あ、えっと、はい」
薫ちゃんの視線はオレがテーブルの上に置いた『王様と従者』に釘付けだった。
「薫ちゃん」
「は、はい」
オレはカードを開封して、数枚のそれを手に取る。
「ルールを追加しようか」
「え、あ……ッス」
薫ちゃんに見えないようにして、アクションカードに書き足していく。
三枚のカードを書き終えたところで、付属のダイスを薫ちゃんに見せる。
「追加ルールは三つ。カードを書くのはボクだけ」
「え? あ、はい」
薫ちゃんが残念そうで、それでいて安心した顔になった。
オレが書き足したものなら、オレが拒否する事がないからだろう。
自分が変な事を書いて、オレに嫌われるような事態はない。
「二つ目。ダイスの目は自分で決められる事にしようか。あ、先に振るのはボクね」
「え?」
次は理解できないという顔。
それではダイスを振る意味がない。
薫ちゃんは気づいていない。
だからこそ、ダイスの存在意味はあるというコトを。
「三つ目。互いのダイスの結果をボクが拒否したらゲームは終わり。いいかな?」
「え、えっと……?」
薫ちゃんはますます混乱している。
どういう事かを理解するため考え込んでいる。
オレが言ったことは、つまりこういう事だ。
オリジナルの追加アクションを書くのはオレだけ。
そしてオレが先にダイスを振る為、薫ちゃんは王様か従者を選ぶことができる。
けれどその結果がオレの望むものでなければゲームはおしまい。
つまり。
オレを常に王様にする、でなければゲームはおしまい、という話だ。
「……それ、は、その? なんというか……ですね?」
公平とはいい難いルールに薫ちゃんが引け腰になる。
オレは笑って。
「ふふ、そんなに構えなくてもいいんだよ。薫ちゃんがイヤだと思ったらボクより大きな数字にして王様になればいいんだから。そうすればイヤな事が書いてあってもしなくて済むよね?」
「あ、えっと、それはそうッスね、でもそれだと……」
「うん。ボクのやる気がなくなってゲームが終わるかもしれないかな」
薫ちゃんの顔が曇る。
並べられた理不尽な条件を考えれば当然だろう。
しかし断れない。
もし不満を述べればオレの機嫌を損ねる。
せっかくこんなエロいイケメン先輩と知り合えたのに、その縁が切れる可能性があるからだ。
もしこれを過去の自分が生きた頃にあてはめたらどうなる?
エロカワイイ先輩に、アタシのエッチなゲームにつきあいなさいと暗に言われたら?
そんなの聞くまでもないだろう?
「まあまあ。まずは一枚目、やってみない?」
「あ、はいッス」
とはいえ、勢いで押すにも最初はソフトにいこう。
薫ちゃんにも心の準備は必要だろうからね。
オレは最初のカードを伏せたまま薫ちゃんの前に差し出す。
「めくってみて」
「は、はい」
そこには『かわいく笑う』と書いてある。
「え?」
「ふふ? じゃあ、ボクが先にダイスを振るね」
振る、といっても好きな数字を上にするだけだ。
オレは02と書かれた面を上にする。
「はい、次は薫ちゃんの番だよ」
薫ちゃんはおずおずと……01の面を上にした。
正解。
「うん。いいね。薫ちゃんはお利口さんだ。ボクは素直な子が大好きだよ」
「あ、あざッス」
薫ちゃんが笑う。
かわいい笑顔だ。
「うんうん。いいね。かわいく笑えてるよ」
「え、えへへへ」
先ほどまであった緊張感がなくなり、薫ちゃんがはにかんだ。
「じゃあ、次ね」
オレは次のカードを伏せたまま差し出す。
差し出されたカードをニコニコしながらめくる薫ちゃん。
その笑顔が凍り付いた。
「え……」
「どうしたの?」
「あ、あの……これ」
開けられたカードには『ここで下着を脱ぐ』とあったからだ。
---
今月末は慌ただしい更新でしたが、お付きあいありがとうございました。
投票やエール、ブックマークや栞での応援、いつもありがとうございます!
これからもよろしくお願いします(*´ω`*)ノ
駅前商店街のメインストリートから少し外れた場所にあったカラオケ店というコトもあり、近くにある喫茶店も人の入りは少ない。
「あそこにしよっか」
「あ、はいッス」
近くにあった喫茶店は店内は広いものの、客はオレたちの他に二組と閑散としていた。
オレはあまり目立たない、店の一番奥の四人掛けボックス席を選んで、そこに座る。
薫ちゃんもおずおずといった顔で目の前に座った。
お冷を持ってきた店員さんに、オレはカフェオレ、薫ちゃんがクリームソーダを注文した後。
「さて。お店のお手伝いまで、あんまり時間もないかな?」
「あ、えっと、はい」
薫ちゃんの視線はオレがテーブルの上に置いた『王様と従者』に釘付けだった。
「薫ちゃん」
「は、はい」
オレはカードを開封して、数枚のそれを手に取る。
「ルールを追加しようか」
「え、あ……ッス」
薫ちゃんに見えないようにして、アクションカードに書き足していく。
三枚のカードを書き終えたところで、付属のダイスを薫ちゃんに見せる。
「追加ルールは三つ。カードを書くのはボクだけ」
「え? あ、はい」
薫ちゃんが残念そうで、それでいて安心した顔になった。
オレが書き足したものなら、オレが拒否する事がないからだろう。
自分が変な事を書いて、オレに嫌われるような事態はない。
「二つ目。ダイスの目は自分で決められる事にしようか。あ、先に振るのはボクね」
「え?」
次は理解できないという顔。
それではダイスを振る意味がない。
薫ちゃんは気づいていない。
だからこそ、ダイスの存在意味はあるというコトを。
「三つ目。互いのダイスの結果をボクが拒否したらゲームは終わり。いいかな?」
「え、えっと……?」
薫ちゃんはますます混乱している。
どういう事かを理解するため考え込んでいる。
オレが言ったことは、つまりこういう事だ。
オリジナルの追加アクションを書くのはオレだけ。
そしてオレが先にダイスを振る為、薫ちゃんは王様か従者を選ぶことができる。
けれどその結果がオレの望むものでなければゲームはおしまい。
つまり。
オレを常に王様にする、でなければゲームはおしまい、という話だ。
「……それ、は、その? なんというか……ですね?」
公平とはいい難いルールに薫ちゃんが引け腰になる。
オレは笑って。
「ふふ、そんなに構えなくてもいいんだよ。薫ちゃんがイヤだと思ったらボクより大きな数字にして王様になればいいんだから。そうすればイヤな事が書いてあってもしなくて済むよね?」
「あ、えっと、それはそうッスね、でもそれだと……」
「うん。ボクのやる気がなくなってゲームが終わるかもしれないかな」
薫ちゃんの顔が曇る。
並べられた理不尽な条件を考えれば当然だろう。
しかし断れない。
もし不満を述べればオレの機嫌を損ねる。
せっかくこんなエロいイケメン先輩と知り合えたのに、その縁が切れる可能性があるからだ。
もしこれを過去の自分が生きた頃にあてはめたらどうなる?
エロカワイイ先輩に、アタシのエッチなゲームにつきあいなさいと暗に言われたら?
そんなの聞くまでもないだろう?
「まあまあ。まずは一枚目、やってみない?」
「あ、はいッス」
とはいえ、勢いで押すにも最初はソフトにいこう。
薫ちゃんにも心の準備は必要だろうからね。
オレは最初のカードを伏せたまま薫ちゃんの前に差し出す。
「めくってみて」
「は、はい」
そこには『かわいく笑う』と書いてある。
「え?」
「ふふ? じゃあ、ボクが先にダイスを振るね」
振る、といっても好きな数字を上にするだけだ。
オレは02と書かれた面を上にする。
「はい、次は薫ちゃんの番だよ」
薫ちゃんはおずおずと……01の面を上にした。
正解。
「うん。いいね。薫ちゃんはお利口さんだ。ボクは素直な子が大好きだよ」
「あ、あざッス」
薫ちゃんが笑う。
かわいい笑顔だ。
「うんうん。いいね。かわいく笑えてるよ」
「え、えへへへ」
先ほどまであった緊張感がなくなり、薫ちゃんがはにかんだ。
「じゃあ、次ね」
オレは次のカードを伏せたまま差し出す。
差し出されたカードをニコニコしながらめくる薫ちゃん。
その笑顔が凍り付いた。
「え……」
「どうしたの?」
「あ、あの……これ」
開けられたカードには『ここで下着を脱ぐ』とあったからだ。
---
今月末は慌ただしい更新でしたが、お付きあいありがとうございました。
投票やエール、ブックマークや栞での応援、いつもありがとうございます!
これからもよろしくお願いします(*´ω`*)ノ
31
お気に入りに追加
854
あなたにおすすめの小説
シン・三毛猫現象 〜自然出産される男が3万人に1人の割合になった世界に帰還した僕はとんでもなくモテモテになったようです〜
ミコガミヒデカズ
ファンタジー
気軽に読めるあべこべ、男女比モノです。
以前、私がカクヨム様で書いていた小説をリメイクしたものです。
とあるきっかけで異世界エニックスウェアに転移した主人公、佐久間修。彼はもう一人の転移者と共に魔王との決戦に挑むが、
「儂の味方になれば世界の半分をやろう」
そんな魔王の提案に共に転移したもう一人の勇者が応じてしまう。そんな事はさせないと修は魔王を倒そうとするが、事もあろうに味方だったもう一人の勇者が魔王と手を組み攻撃してきた。
瞬間移動の術でなんとか難を逃れた修だったが、たどり着いたのは男のほとんどが姿を消した異世界転移15年後の地球だった…。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う
月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!
男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る
電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。
女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。
「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」
純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。
「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる