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『黙り込む薫の理由』
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『薫、黙り込むその理由』
「そうだねぇ。まず左手を洗うかな。利き手が右だからね」
「そ、そっうすね。なるほどッス!」
なるほどと言われるほどでもないが、薫ちゃんは興奮状態だ。
シャワーで濡れたオレの全裸でも想像しているのだろう。
「左手を洗った次はどこだと思う?」
「み、右手ッスね!」
正解。
「そうだね。じゃあ腕を洗ったら次はどこ?」
「え、ええと……足ですか?」
正解。
「そうだね。さてどっちの足からかな? 右足? 左足?」
「えっと、ええと……」
薫ちゃんも元気を取り戻したし、そろそろ始めるとしよう。
「薫ちゃん。ヒントあげる。もしかしたら右でも左でもないかもしれないよ?」
「え?」
薫ちゃんが一瞬、考えた混んだところを狙って。
「ふふ」
オレはテーブルをはさんでいる薫ちゃんにもよくわかるように、大きな動きで組んでいた足を組み替えた。
「真ん中の足だったりして?」
「え? ハッ、うっ……!?」
さすがに理解したらしい。
顔を真っ赤にする薫ちゃん。
ガタっと近くの席でイスがズレる音がした。
そちらを見れば、女子大生ぐらいの三人組がペンか何かを落としていた所だった。
視線を戻すと薫ちゃんは、顔を赤くしたままオレを見ている。
「それで、どの足だと思う?」
「そ、それは、そのっ!」
「ふふ。右足からだよ。それから左足」
「は、はい」
ならその次に洗う場所はどこッスか? と薫ちゃんの目が口ほどにものを言っているがオレはここで切り返す。
「今度はボクが質問する番だよね? 薫ちゃんは何でも答えてくれるのかな?」
「え、は? あ……はいッス!」
急に話題を変えられて残念そうな顔になったが、一瞬でそれを消してオレの質問を待つ薫ちゃん。
ここでお返しとばかりに「薫ちゃんはお風呂でどこから洗うの?」などと質問してもいいが、それではあまりに芸が無さすぎる。
そして初心すぎる薫ちゃんにはもっと大胆になって欲しいという意味も込めて、オレはこう質問した。
「薫ちゃん」
「はいッス」
「昨日、オナニーした?」
「うぶっ!」
さっきとは違う別の席で激しい音がした。
見れば主婦らしきご婦人二人組の一人がグラスを床に落としてしまったらしい。
さきほど挨拶した女性スタッフがやってきて、慌てて片づけを始めている。
「え、えっと!?」
「昨日はゴメンね? あんな事しちゃったら、健全な女の子は悶々としちゃうよね?」
泣くまでさんざんお尻を撫でまわしたのだ。
ただでさえ男女比の差が激しく、異性と接触する機会が乏しいこの世界で、イケメンの先輩に泣くほど体をイジられればそりゃあさぞかしオカズになるはずだ。多分。
「どうだった? ボクをオカズにして気持ちよくなれた?」
「え、ええ、ええっと、えっと……」
視線をあちこちにさまよわせるものの、絶対にオレを見ない薫ちゃん。
まさかの逆セクハラにとまどう薫ちゃん。
しかしオレの追撃のセクハラは止まらない。
「薫ちゃんって手でするタイプ? それとも道具とか使うの?」
「あ、あ、あの、あのですね!」
手でアワアワし始めた薫ちゃん。
「ねえ、ボクの質問に答えてくれないの?」
「あ。あー、ああー……」
ついに薫ちゃんが言葉にならない声を発しだした。
案外とブレーカーが落ちるのが早い。もう少し加減しよう。
「薫ちゃん。冗談だよ? 薫ちゃんみたいなカッコいい硬派な子がオナニーなんかするはずないものね?」
「え、あ、そ、そうッス! ウチ、硬派なんで!」
オレの垂らした蜘蛛の糸にすがる薫ちゃん。
小動物的な可愛さが止まらない。
「ふふ。そうだね。じゃあ、こういうエッチなお話はやめとこうか?」
「そ、そうッスね! 別のお話をしましょう!」
自分からオレにどこから体を洗うかと聞いた事も忘れて、何度も首を縦ふる薫ちゃん。
「じゃあ、今度は薫ちゃんが質問する番だね」
「あ、はい! え、えっと。京センパイは、ええと……」
薫ちゃんが何を聞こうかと思いめぐらして、ふと自分の胸を見た。
「……」
少しだまりこんだ後。
オレの目を見て。
「京センパイは、胸の大きな女はどう思いますか?」
夏木さんという存在を知って、しかもオレがその夏木さんとどいう関係かも知って、なおたずねてくる。
それほどこの世界において胸の大きな女性というのはコンプレックスの象徴なのだろう。
ここはからかうシーンじゃない。
オレはごくごく自然に。
「好きか嫌いっていう話なら好きだよ」
と、答えた。
とはいえ、もともと大好きなのだからウソでもなんでもないし、不自然な態度になるはずもない。
むしろ、今のオレは深い愛に満ち満ちた微笑みを浮かべていたはずだ。
「え、あ」
あまりにもアッサリと肯定したオレの言葉と、愛が止まらないイケメンスマイルに薫ちゃんがまたも言葉を失うものの。
「はい……はいッス!」
「じゃあ、次はボクが質問する番だね。薫ちゃんは……」
薫ちゃんが今日で一番の笑顔を見せてくれた。
そうして、オレとしてはセクハラをずいぶんと抑え気味の質問を繰り返していった。
だというのに、薫ちゃんは時に顔を赤らめ、時にうつむきく、時に怒ったような顔になりながら、オレと互いに質問を繰り返していった。
次第にそれは質問ではなく、何気ない会話に形を変えて、今や。
「いや、京センパイ。それはないッスよ」
「いやいや。男っていうのは本当はね、とってもスケベな生き物なんだよ? 常におっぱいとお尻の事しか考えていない、そういう生物なんだ」
「そんなの京センパイだけッス」
と、こんな軽口を叩きあえるほど打ち解けられた。
ちなみにオレは今のように本心からの言葉を真摯に綴っているのだが、薫ちゃんは今やまったく本気にすることもなく冗談として受け取っている。
シンプルに言えば、オレがボケ、薫ちゃんがツッコミというポジションとなり、気軽に言葉を交わしている。
「そうだねぇ。まず左手を洗うかな。利き手が右だからね」
「そ、そっうすね。なるほどッス!」
なるほどと言われるほどでもないが、薫ちゃんは興奮状態だ。
シャワーで濡れたオレの全裸でも想像しているのだろう。
「左手を洗った次はどこだと思う?」
「み、右手ッスね!」
正解。
「そうだね。じゃあ腕を洗ったら次はどこ?」
「え、ええと……足ですか?」
正解。
「そうだね。さてどっちの足からかな? 右足? 左足?」
「えっと、ええと……」
薫ちゃんも元気を取り戻したし、そろそろ始めるとしよう。
「薫ちゃん。ヒントあげる。もしかしたら右でも左でもないかもしれないよ?」
「え?」
薫ちゃんが一瞬、考えた混んだところを狙って。
「ふふ」
オレはテーブルをはさんでいる薫ちゃんにもよくわかるように、大きな動きで組んでいた足を組み替えた。
「真ん中の足だったりして?」
「え? ハッ、うっ……!?」
さすがに理解したらしい。
顔を真っ赤にする薫ちゃん。
ガタっと近くの席でイスがズレる音がした。
そちらを見れば、女子大生ぐらいの三人組がペンか何かを落としていた所だった。
視線を戻すと薫ちゃんは、顔を赤くしたままオレを見ている。
「それで、どの足だと思う?」
「そ、それは、そのっ!」
「ふふ。右足からだよ。それから左足」
「は、はい」
ならその次に洗う場所はどこッスか? と薫ちゃんの目が口ほどにものを言っているがオレはここで切り返す。
「今度はボクが質問する番だよね? 薫ちゃんは何でも答えてくれるのかな?」
「え、は? あ……はいッス!」
急に話題を変えられて残念そうな顔になったが、一瞬でそれを消してオレの質問を待つ薫ちゃん。
ここでお返しとばかりに「薫ちゃんはお風呂でどこから洗うの?」などと質問してもいいが、それではあまりに芸が無さすぎる。
そして初心すぎる薫ちゃんにはもっと大胆になって欲しいという意味も込めて、オレはこう質問した。
「薫ちゃん」
「はいッス」
「昨日、オナニーした?」
「うぶっ!」
さっきとは違う別の席で激しい音がした。
見れば主婦らしきご婦人二人組の一人がグラスを床に落としてしまったらしい。
さきほど挨拶した女性スタッフがやってきて、慌てて片づけを始めている。
「え、えっと!?」
「昨日はゴメンね? あんな事しちゃったら、健全な女の子は悶々としちゃうよね?」
泣くまでさんざんお尻を撫でまわしたのだ。
ただでさえ男女比の差が激しく、異性と接触する機会が乏しいこの世界で、イケメンの先輩に泣くほど体をイジられればそりゃあさぞかしオカズになるはずだ。多分。
「どうだった? ボクをオカズにして気持ちよくなれた?」
「え、ええ、ええっと、えっと……」
視線をあちこちにさまよわせるものの、絶対にオレを見ない薫ちゃん。
まさかの逆セクハラにとまどう薫ちゃん。
しかしオレの追撃のセクハラは止まらない。
「薫ちゃんって手でするタイプ? それとも道具とか使うの?」
「あ、あ、あの、あのですね!」
手でアワアワし始めた薫ちゃん。
「ねえ、ボクの質問に答えてくれないの?」
「あ。あー、ああー……」
ついに薫ちゃんが言葉にならない声を発しだした。
案外とブレーカーが落ちるのが早い。もう少し加減しよう。
「薫ちゃん。冗談だよ? 薫ちゃんみたいなカッコいい硬派な子がオナニーなんかするはずないものね?」
「え、あ、そ、そうッス! ウチ、硬派なんで!」
オレの垂らした蜘蛛の糸にすがる薫ちゃん。
小動物的な可愛さが止まらない。
「ふふ。そうだね。じゃあ、こういうエッチなお話はやめとこうか?」
「そ、そうッスね! 別のお話をしましょう!」
自分からオレにどこから体を洗うかと聞いた事も忘れて、何度も首を縦ふる薫ちゃん。
「じゃあ、今度は薫ちゃんが質問する番だね」
「あ、はい! え、えっと。京センパイは、ええと……」
薫ちゃんが何を聞こうかと思いめぐらして、ふと自分の胸を見た。
「……」
少しだまりこんだ後。
オレの目を見て。
「京センパイは、胸の大きな女はどう思いますか?」
夏木さんという存在を知って、しかもオレがその夏木さんとどいう関係かも知って、なおたずねてくる。
それほどこの世界において胸の大きな女性というのはコンプレックスの象徴なのだろう。
ここはからかうシーンじゃない。
オレはごくごく自然に。
「好きか嫌いっていう話なら好きだよ」
と、答えた。
とはいえ、もともと大好きなのだからウソでもなんでもないし、不自然な態度になるはずもない。
むしろ、今のオレは深い愛に満ち満ちた微笑みを浮かべていたはずだ。
「え、あ」
あまりにもアッサリと肯定したオレの言葉と、愛が止まらないイケメンスマイルに薫ちゃんがまたも言葉を失うものの。
「はい……はいッス!」
「じゃあ、次はボクが質問する番だね。薫ちゃんは……」
薫ちゃんが今日で一番の笑顔を見せてくれた。
そうして、オレとしてはセクハラをずいぶんと抑え気味の質問を繰り返していった。
だというのに、薫ちゃんは時に顔を赤らめ、時にうつむきく、時に怒ったような顔になりながら、オレと互いに質問を繰り返していった。
次第にそれは質問ではなく、何気ない会話に形を変えて、今や。
「いや、京センパイ。それはないッスよ」
「いやいや。男っていうのは本当はね、とってもスケベな生き物なんだよ? 常におっぱいとお尻の事しか考えていない、そういう生物なんだ」
「そんなの京センパイだけッス」
と、こんな軽口を叩きあえるほど打ち解けられた。
ちなみにオレは今のように本心からの言葉を真摯に綴っているのだが、薫ちゃんは今やまったく本気にすることもなく冗談として受け取っている。
シンプルに言えば、オレがボケ、薫ちゃんがツッコミというポジションとなり、気軽に言葉を交わしている。
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