【R18】転生先は男女比1:30の貞操逆転世界~ビッチを夢見る三十路の魂~

尾和 ハボレ

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『なついてくる後輩ってかわいいよね?』

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『なついてくる後輩ってかわいいよね?』

「あ」

それに気づいたのは登校した後、朝の教室だった。

ダウンした夏木さんをおいて学校に来たものの、彼女の部屋に忘れ物をしてしまった。

「お昼どうしよ」

学生カバンの中にあるはずの財布がない。

一食ぐらい抜いたところで、と言いたいところだが今朝は朝食も食べていない。

昨晩は体力も消費している。

育ち盛りのこの若い体はとてもエネルギーを欲する。

昨夜のラブラブプレイで精神ゲージは満足満タンだが、このままでは体力ゲージが赤くなるのも時間の問題だろう。

誰かに昼食代を借りるというのも考えたが、この世界で男が女性にお金を借りるというのはまず成立しない。特に昼食代程度ならなおさら。

女性であれば男が困っていれば出して当然という感覚だし、男側もそれを当然として受け入れる慣習があるので、後で返すというのも失礼になるらしい。

場合によってはその女性に対して、男からの拒否反応、さらにはイヤガラセととられることすらあるそうだ。

他にも色々と面倒なマナーもあって、不用意な一挙一動が女性相手に誤解を与える可能性を考えると金銭のやり取りはしたくない。

そもそも本意ではないとはいえ、結果的に学生におごらせるような事はしたくない。大事なお小遣いだしね。

というわけで冬原先生にゴチになりに行こうかなと思っていた時。

お尻のポケットに入れていたケータイが震える。

見るとメールの着信だった。

「ふふ」

つい笑みが漏れる。

送り主は夏木さんだった。

件名は『バカ、財布』。

本文を見れば『昼に校舎裏。メシも持って行ってやる』とだけだ。

絵文字も顔文字も無し。うーん、クール。

昨夜はあんなに可愛くツンデレデレデレしてくれたのにね。

ともあれこれでお昼の心配はなくなった。

と。

そんなわけで昼休み。

チャイムとともに校舎裏に向かったその途中で。

「おや、薫ちゃん」
「あっ、京センパイ! こんちゃッス!」

校舎の陰にさしかかったあたりで薫ちゃんと遭遇した。

オレを見るなり嬉しそうにテテテッと走り出した。

首あたりでそろえたストレートの銀髪を風で揺らし、それ以上にお胸を重力で揺らして駆け寄ってくる。

「どしたんスか、こんな所で?」
「裏で夏木さんと待ち合わせ」
「青葉センパイ? 教室、一緒なんスよね? あいびきってヤツですか? 秘密の校内デート? うらやましー!」

からかうような、それでいて好奇心満々といった顔でたずねてくる。

昨日はつい泣くまでイジめてしまったと反省していたが、この子もこの子で懲りない。

もちろんオレとしてはウエルカムだが。

「んー。夏木さん、今日お休みなんだよ。だけどボクが昨日夏木さんの部屋に財布を忘れちゃってね? それを届けにきてくれるっていうから」
「へー、そうなんスねー……え?」

薫ちゃんは何気にオレの言葉にうなずき返事をしていたが、どういう意味か気づいたらしい。

目を大きく開けてオレを見る薫ちゃん。

上から下までなめるように。

昨晩、このイケメンはナニをしていたんだろうか、という視線だ。

おそるおそる。

「あの。昨日、あれからホントに青葉センパイのおうちに……」

泊ったんですか? と唇だけが形作る。

「うん。夜中まで仲良くしてたんだけどね。夏木さんが先にダウンしちゃって。朝も腰が抜けてて学校に来られなかったんだ」
「あ、はい……マジすか」

薫ちゃんの目がどうにも艶っぽくなる。

うむ、実に心地よい視線だ。

自分にもワンチャンあるかも、そんな期待に濡れた瞳。

オレの方も薫ちゃんを狙っているしいつでもオーケーなのだが、物事には順序というものがあり、踏むべき段階というものがある。

ひとまずこの場は、淡い期待を持たせておくにとどめる。

オレは、オレisビッチという風格を醸し出す様に、薫ちゃんの若く青い視線に対して、少しメガネをずらして無言のイケメンスマイルを向ける。

魔眼展開――なんて言うとカッコいいが、ただのエロチートスキルである。女神様、今日もありがとう。

「ひゃっ」

薫ちゃんがちいさな声をあげてうつむいた。

見ているだけでも可愛いが、からかうともっと可愛い。

さて、それはともかく。

薫ちゃんはどうしてこんなところに?

「それで。薫ちゃんこそ、こんなトコロでどうしたの?」
「あー、その。ウチはですね」

急にもごもごとしだす薫ちゃん。

「ま、まぁ、ウチの事はいいじゃないですか! それより京センパイ、これからお昼ですよね? ウチもご一緒していいですか!」

薫ちゃんが手に持っていたコンビニ袋を掲げる。

白い袋から透けて見える中身は、菓子パンがいくつかとパックのコーヒー牛乳だ。

「んー、いいよー。ボクも夏木さんがお昼作って持ってきてくれるらしいし」
「あ、それってトーストサンドッスよね! いいなぁ、青葉センパイのサンドイッチ、めっちゃうまいんすよ!」

確かに同意だ。喫茶店のサンドイッチの風味と言ってと伝わるだろうか。

ご家庭で作るものとひと手間ふた手間かかっているのか何か違うのだ。

素人舌のオレでは何がどう違うのかはわからないが特別感がある。

「ふふふ。ではこの優しいイケメン先輩が少しわけてあげましょう」
「マジすか!」

そんなわけで、腹をすかせた我々はエサを求めて仲良く校舎裏に向かうのであった。
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