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『高嶺の花にはトゲがある(6)』
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『高嶺の花にはトゲがある(6)』
「では早速、その証拠と覚悟を見せていただきます。よろしいですか?」
「え、ええ、大丈夫よ」
何をさせられるのかと身を硬くする私に春日井さんはこう言った。
「では立ってください。それで窓際の方へ」
「?」
なんだろう。
そう思いながら私は席を立ち、言われた通りに窓際へ。
すると春日井さんはケータイを取り出した。
「書類選考のようなものです。彼も相手の容姿に興味があるでしょうから、一応、事前に先に写真を見ていただこうかと」
確かにそうよね。
もちろん私が"彼"の写真を見る事はできないだろうけれど。
「……その、彼の好みってどういうカンジかしら?」
「ご心配なく。まず間違いなく会長は気に入られると思いますから。書類選考なんて言いましたけれど、こちらは私が彼に紹介するときに必要かなと思いまして」
「そ、そうなのね」
春日井さんの太鼓判に、私は安堵する。
「会長」
「え、なにかしら?」
「ただ立っているだけでは寂しいので、何かポーズをつけてください」
「ポ、ポーズ?」
「はい。これでは証明写真のようで、華がありませんから」
そんなこと急に言われても。
モデルでもなんでもない素人が突然ポーズをとれと言われて、はい撮って、と決められるはずもない。
しかも。
「会長。性的アピールが目的ですから色っぽくお願いします」
無理よ!
「この写真で彼の興味の度合も変わるかもしれませんし、恥ずかしがっている場合じゃありませんよ」
う。そういわれると確かに。
少しでも盛らないと、せっかくのチャンスを棒に振るかもしれない。
私は覚悟を決めて心の中で、あっはーん、とつぶやきながらそれっぽいポーズをとってみる。
春日井さんはそれを無表情のままパシャパシャと撮っている。
せめて何か言って、恥ずかしい。
と、そんな私の気恥ずかしさを感じ取ったのか。
「ご安心を。この写真は私と彼以外、絶対に見せませんから」
「それ、本当にお願いよ? こんな写真が学内で出回ったら、私不登校になるからね?」
こんな写真が流出したら、一生の笑いものになる。
微妙に目線を変えて十枚ほど撮影したところで、春日井さんがスマホを下げる。
ようやく終わったわ。
「では会長」
「ええ、彼にくれぐれもよろしくね」
「いえ、まだ終わっていませんよ?」
「え?」
あれだけ撮ったのに、まだ足らないの?
「次は制服の上を……いえ、スカートだけ脱いでもらえますか?」
「えぇ!?」
春日井さんがとんでもない事を言い出した。
「彼の気を引くためですから」
「そ、それはさすがにおかしいわ。女の下着姿なんて見てどうするのよ!?」
「どうすると言われても。セックスをする相手の体格や容姿を見定めるための、大事な判断材料なんですから当然です」
「セ……って」
確かに。確かにそうかもしれないけれど。
「会長がもし逆の立場だったらどうですか? 見ず知らずの女を性的な目的で紹介される彼の立場になった時、どういう相手か気になるでしょう?」
「う、む、ん」
まったくの正論。しかし、やっぱり下着姿を撮られるという抵抗感に、私は言葉にならない抗議をあげる。
「けれど会長のとまどうお気持ちも理解できます。それでしたらさきほどの写真だけ彼にお見せしてきますけれど、よろしいですか?」
「……」
さきほど撮った、あっはーんした私の写真。
男性の立場からしたらどうなんだろう。
単純に女の私と置き換えるには難しいけれど。
例えば女性週刊誌やファション雑誌の表紙で、ビシっとしたスーツで決めているイケメンモデルさんの写真より……そのあとのカラーページで、着乱れたスーツのモデルさんの写真の方が嬉しいに決まっている。
けれどそれは女の言い分であって、男性からしたら女の下着姿なんて気持ち悪いだけでしょうと私の中の常識と羞恥が戸惑い、ストップをかける。
だけど、もしその彼が女の……いえ、私の下着姿なんかを見て喜ぶのなら、ここで私をアピールしないのは絶対にマイナスだ。
だけど。
「か、春日井さん! あの、一緒に! とか、ダメかしら?」
私は手を合わせて、春日井さんにお願いする。
やっぱり、恥ずかしいものは恥ずかしい!
「では早速、その証拠と覚悟を見せていただきます。よろしいですか?」
「え、ええ、大丈夫よ」
何をさせられるのかと身を硬くする私に春日井さんはこう言った。
「では立ってください。それで窓際の方へ」
「?」
なんだろう。
そう思いながら私は席を立ち、言われた通りに窓際へ。
すると春日井さんはケータイを取り出した。
「書類選考のようなものです。彼も相手の容姿に興味があるでしょうから、一応、事前に先に写真を見ていただこうかと」
確かにそうよね。
もちろん私が"彼"の写真を見る事はできないだろうけれど。
「……その、彼の好みってどういうカンジかしら?」
「ご心配なく。まず間違いなく会長は気に入られると思いますから。書類選考なんて言いましたけれど、こちらは私が彼に紹介するときに必要かなと思いまして」
「そ、そうなのね」
春日井さんの太鼓判に、私は安堵する。
「会長」
「え、なにかしら?」
「ただ立っているだけでは寂しいので、何かポーズをつけてください」
「ポ、ポーズ?」
「はい。これでは証明写真のようで、華がありませんから」
そんなこと急に言われても。
モデルでもなんでもない素人が突然ポーズをとれと言われて、はい撮って、と決められるはずもない。
しかも。
「会長。性的アピールが目的ですから色っぽくお願いします」
無理よ!
「この写真で彼の興味の度合も変わるかもしれませんし、恥ずかしがっている場合じゃありませんよ」
う。そういわれると確かに。
少しでも盛らないと、せっかくのチャンスを棒に振るかもしれない。
私は覚悟を決めて心の中で、あっはーん、とつぶやきながらそれっぽいポーズをとってみる。
春日井さんはそれを無表情のままパシャパシャと撮っている。
せめて何か言って、恥ずかしい。
と、そんな私の気恥ずかしさを感じ取ったのか。
「ご安心を。この写真は私と彼以外、絶対に見せませんから」
「それ、本当にお願いよ? こんな写真が学内で出回ったら、私不登校になるからね?」
こんな写真が流出したら、一生の笑いものになる。
微妙に目線を変えて十枚ほど撮影したところで、春日井さんがスマホを下げる。
ようやく終わったわ。
「では会長」
「ええ、彼にくれぐれもよろしくね」
「いえ、まだ終わっていませんよ?」
「え?」
あれだけ撮ったのに、まだ足らないの?
「次は制服の上を……いえ、スカートだけ脱いでもらえますか?」
「えぇ!?」
春日井さんがとんでもない事を言い出した。
「彼の気を引くためですから」
「そ、それはさすがにおかしいわ。女の下着姿なんて見てどうするのよ!?」
「どうすると言われても。セックスをする相手の体格や容姿を見定めるための、大事な判断材料なんですから当然です」
「セ……って」
確かに。確かにそうかもしれないけれど。
「会長がもし逆の立場だったらどうですか? 見ず知らずの女を性的な目的で紹介される彼の立場になった時、どういう相手か気になるでしょう?」
「う、む、ん」
まったくの正論。しかし、やっぱり下着姿を撮られるという抵抗感に、私は言葉にならない抗議をあげる。
「けれど会長のとまどうお気持ちも理解できます。それでしたらさきほどの写真だけ彼にお見せしてきますけれど、よろしいですか?」
「……」
さきほど撮った、あっはーんした私の写真。
男性の立場からしたらどうなんだろう。
単純に女の私と置き換えるには難しいけれど。
例えば女性週刊誌やファション雑誌の表紙で、ビシっとしたスーツで決めているイケメンモデルさんの写真より……そのあとのカラーページで、着乱れたスーツのモデルさんの写真の方が嬉しいに決まっている。
けれどそれは女の言い分であって、男性からしたら女の下着姿なんて気持ち悪いだけでしょうと私の中の常識と羞恥が戸惑い、ストップをかける。
だけど、もしその彼が女の……いえ、私の下着姿なんかを見て喜ぶのなら、ここで私をアピールしないのは絶対にマイナスだ。
だけど。
「か、春日井さん! あの、一緒に! とか、ダメかしら?」
私は手を合わせて、春日井さんにお願いする。
やっぱり、恥ずかしいものは恥ずかしい!
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